春休みから最近の間に読んだ本の幾つかの感想を、忘れないうちに書き留めておこう。
1、中原昌也の短編集
2冊読んだんだけど、題名を忘れてしまった。一冊は、フィフィの虐殺ソングブックとかなんとかいう名前だった。いずれもこの作者の初期のものです。読んだきっかけは、学校の先生が、この人はソローキンに作風が似ているが、才能はソローキンに及ばない、と言っていたから。それで興味を持った。実際読んでみると、確かにソローキンに似て露悪的なところがあるものの、ソローキンの見事な文体(といっても翻訳ですが)と比べるとちょっと…という感じですね。あと、ソローキンは、世界を解体しようとしてその解体の様子を記述しているのに対して、中原昌也は、既に解体してしまった世界を記述しているように感じられた。抽象的な印象ですが。はっきりいってそんなにおもしろくなかった。
2、岩本和久『トラウマの果ての声』
これは現代ロシア文学の概説書で、翻訳では読めないロシア文学の紹介書となっています。だから当然おれも読んだことのない作品が幾つもあって、こんなのがあるんだあ、と素直に興味がもてた。その点で、もっと読書しなきゃな、と刺激になった。ノスタルジーというものをキーワードにしていて、一見ばらばらな評論集のようでいて、一貫して筋が通っている書物だ。
3、筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』
専門的関心から読んだ本だけど、とてもおもしろかった。これは「反復小説」とも言うべきもので、小説の中味も形式もことごとく反復している。ここまで徹底的に反復をやった小説っていうのは世界文学でもほとんど例を見ないのではないか。東浩紀の『ゲーム的リアリズムの誕生』にも影響を受けているそうで、筒井康隆の次回作はライトノベルになるとか。ちなみに、大学の先生曰く、「この本は一種のゲームだ」。ウリポのようなものらしい。ウリポってのは、フランス文学の一派で、文学に様々な制約を設けて執筆した連中です。
4、ペレーヴィン『恐怖の兜』
ペレーヴィンの比較的新しい小説。ミノタウロスの神話をモチーフにしている。この神話では、ミノタウロスを倒すべく迷宮に入っていった英雄が、アリアドネの糸のおかげで生還できた。この糸の名前が「スレッド」であることから、インターネットの掲示板の「スレッド」とかけて、チャットのおしゃべりを小説化した。もちろんアリアドネも登場。知らぬ間に見知らぬ部屋に閉じ込められていた男女が、その部屋に置かれているパソコンを通じてチャットをする。その部屋の外には、どうやら迷宮が広がっていて、得体の知れない兜を被ったミノタウロスのような生き物が徘徊しているらしいのだが…
で、感想ですが、意味分からん。ペレーヴィンは『虫の生活』は傑作だと思うけど、他のはどうも、おれはついていけないな…。ある口の悪い先生が、「あいつ(ペレーヴィンのこと)は薬物中毒だよ」と言っていた。
長くなったのでこのへんで。次回はアクーニンとフィツジェラルドについて書こうかな。
1、中原昌也の短編集
2冊読んだんだけど、題名を忘れてしまった。一冊は、フィフィの虐殺ソングブックとかなんとかいう名前だった。いずれもこの作者の初期のものです。読んだきっかけは、学校の先生が、この人はソローキンに作風が似ているが、才能はソローキンに及ばない、と言っていたから。それで興味を持った。実際読んでみると、確かにソローキンに似て露悪的なところがあるものの、ソローキンの見事な文体(といっても翻訳ですが)と比べるとちょっと…という感じですね。あと、ソローキンは、世界を解体しようとしてその解体の様子を記述しているのに対して、中原昌也は、既に解体してしまった世界を記述しているように感じられた。抽象的な印象ですが。はっきりいってそんなにおもしろくなかった。
2、岩本和久『トラウマの果ての声』
これは現代ロシア文学の概説書で、翻訳では読めないロシア文学の紹介書となっています。だから当然おれも読んだことのない作品が幾つもあって、こんなのがあるんだあ、と素直に興味がもてた。その点で、もっと読書しなきゃな、と刺激になった。ノスタルジーというものをキーワードにしていて、一見ばらばらな評論集のようでいて、一貫して筋が通っている書物だ。
3、筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』
専門的関心から読んだ本だけど、とてもおもしろかった。これは「反復小説」とも言うべきもので、小説の中味も形式もことごとく反復している。ここまで徹底的に反復をやった小説っていうのは世界文学でもほとんど例を見ないのではないか。東浩紀の『ゲーム的リアリズムの誕生』にも影響を受けているそうで、筒井康隆の次回作はライトノベルになるとか。ちなみに、大学の先生曰く、「この本は一種のゲームだ」。ウリポのようなものらしい。ウリポってのは、フランス文学の一派で、文学に様々な制約を設けて執筆した連中です。
4、ペレーヴィン『恐怖の兜』
ペレーヴィンの比較的新しい小説。ミノタウロスの神話をモチーフにしている。この神話では、ミノタウロスを倒すべく迷宮に入っていった英雄が、アリアドネの糸のおかげで生還できた。この糸の名前が「スレッド」であることから、インターネットの掲示板の「スレッド」とかけて、チャットのおしゃべりを小説化した。もちろんアリアドネも登場。知らぬ間に見知らぬ部屋に閉じ込められていた男女が、その部屋に置かれているパソコンを通じてチャットをする。その部屋の外には、どうやら迷宮が広がっていて、得体の知れない兜を被ったミノタウロスのような生き物が徘徊しているらしいのだが…
で、感想ですが、意味分からん。ペレーヴィンは『虫の生活』は傑作だと思うけど、他のはどうも、おれはついていけないな…。ある口の悪い先生が、「あいつ(ペレーヴィンのこと)は薬物中毒だよ」と言っていた。
長くなったのでこのへんで。次回はアクーニンとフィツジェラルドについて書こうかな。