春休みの読書の感想です。
●アクーニン『アキレス将軍暗殺事件』
「アクーニン」というのは本名チハルチシヴィリという名前のロシア人のペンネームで、日本の「悪人」がその由来です。というのも、この人は日本文学研究者で、三島由紀夫のロシア語への優れた翻訳者でもあるから。
さて、『アキレス将軍暗殺事件』。一言で言えば、めちゃくちゃおもしろい。これは「ファンドーリン・シリーズ」のひとつで、ファンドーリンという知力・体力共にスーパーマン的な男が様々な事件を解決してゆく推理小説です。この小説では、アキレス将軍という人物の死をきっかけに、大いなる陰謀にファンドーリンが立ち向かっていきます。作者が日本通なだけに、日本人にとって非常に興味深い要素が作品内に散見されます。たとえば、この小説でファンドーリンは日本から帰国したばかりで、マサという名の日本人を子分に従えています。このマサは元やくざという設定。他にも、手裏剣なんかが出てきます。あと、ファンドーリンは忍者の技を会得していることになっていて、なんと壁を走ることができます(!)日本人が読むとちょっと笑ってしまうのですが、そこが調度いいユーモアになっていて、とても楽しめます。
この小説は二部構成で、第一部がファンドーリンの視点から、第二部は暗殺者の視点から語られます。ストーリーはファンドーリンの物語(第一部)でほぼ全て語り尽くされてしまうのですが、暗殺者の物語は物語で非常に興味深いです。幾つかのエピソードが紹介されるのですが、中でも「裁判」の話がすごくよかったです。それだけで一編の短編小説になっています。
アクーニンの小説に共通するのはストーリーテリングの巧みさですが、他にもう一つ、切なさ、というのがあります。「アキレス将軍」の場合、それは暗殺者アキマスの人生に秘められています。ずっと忘れられなかった少女の面影。これです。もっとも、その切なさが分かりやすい形で表現されているので、あざとい、という評価もあるでしょう。実際、狙ってるな、と思わないではなかったし、別の小説『リヴァイアサン号殺人事件』でもそう思いました。ただ、そこは推理小説、ということで割り切って考えることもできます。もともとこのシリーズは、大衆文学と純文学の読者の隙間を埋めるために書かれたそうです。だから、二つの要素が交じり合ってるんですね。おれはけっこう好きですね。
●アクーニン『アキレス将軍暗殺事件』
「アクーニン」というのは本名チハルチシヴィリという名前のロシア人のペンネームで、日本の「悪人」がその由来です。というのも、この人は日本文学研究者で、三島由紀夫のロシア語への優れた翻訳者でもあるから。
さて、『アキレス将軍暗殺事件』。一言で言えば、めちゃくちゃおもしろい。これは「ファンドーリン・シリーズ」のひとつで、ファンドーリンという知力・体力共にスーパーマン的な男が様々な事件を解決してゆく推理小説です。この小説では、アキレス将軍という人物の死をきっかけに、大いなる陰謀にファンドーリンが立ち向かっていきます。作者が日本通なだけに、日本人にとって非常に興味深い要素が作品内に散見されます。たとえば、この小説でファンドーリンは日本から帰国したばかりで、マサという名の日本人を子分に従えています。このマサは元やくざという設定。他にも、手裏剣なんかが出てきます。あと、ファンドーリンは忍者の技を会得していることになっていて、なんと壁を走ることができます(!)日本人が読むとちょっと笑ってしまうのですが、そこが調度いいユーモアになっていて、とても楽しめます。
この小説は二部構成で、第一部がファンドーリンの視点から、第二部は暗殺者の視点から語られます。ストーリーはファンドーリンの物語(第一部)でほぼ全て語り尽くされてしまうのですが、暗殺者の物語は物語で非常に興味深いです。幾つかのエピソードが紹介されるのですが、中でも「裁判」の話がすごくよかったです。それだけで一編の短編小説になっています。
アクーニンの小説に共通するのはストーリーテリングの巧みさですが、他にもう一つ、切なさ、というのがあります。「アキレス将軍」の場合、それは暗殺者アキマスの人生に秘められています。ずっと忘れられなかった少女の面影。これです。もっとも、その切なさが分かりやすい形で表現されているので、あざとい、という評価もあるでしょう。実際、狙ってるな、と思わないではなかったし、別の小説『リヴァイアサン号殺人事件』でもそう思いました。ただ、そこは推理小説、ということで割り切って考えることもできます。もともとこのシリーズは、大衆文学と純文学の読者の隙間を埋めるために書かれたそうです。だから、二つの要素が交じり合ってるんですね。おれはけっこう好きですね。