かつての大関候補最有力が完全に復活してきた。東前頭2枚目の若隆景(29=荒汐)が関脇大栄翔を押し出し連勝を飾った。相手の突き押しにも下半身が乱れない力強い相撲に土俵下で見つめた幕内後半戦審判長の九重親方(元大関千代大海)が大絶賛。22年春場所で優勝し、関脇を6場所連続で務めた実力者も右膝の大けがで幕下まで番付を落としてからの復活。優勝争いで注目の存在となる。新大関の大の里に琴桜、豊昇龍と3大関は安泰だった。

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土俵下の九重審判長が若隆景の相撲に魅了された。大栄翔の突き押しにも、土俵に張り付いたような下半身はびくともせず、下から攻め上げて押し出した。

九重親方は「全盛期の若隆景を見ているようだった。体が張っているのが何より。スピードもあるし、けがする前以上の相撲がとれている。相手に相撲をとらせない、技術の高さがある」と大絶賛。若隆景は「下から攻めて前に出られたのでよかった。手ごたえは毎日1日一番、必死に相撲をとろうと思ってやっています」と淡々と言った。

22年春場所で初優勝を飾り、6場所連続で関脇の地位を守った。大関候補の最有力だったが、昨年春場所で右膝を痛め、右膝靱帯(じんたい)の再建手術を受けた。3場所連続全休で幕下まで番付を下げたが、今年名古屋場所で再入幕すると11勝、12勝とポテンシャルの高さを実証してきた。

昨年夏場所の小結以来の幕内上位に「久々の幕内上位なんで気を引き締めて相撲をとってます」。注目は先場所も12日目に対戦して勝った新大関大の里との一番。九重親方は「この2人が当たるのは楽しみだな。(若隆景が)土をつける材料はいっぱいある」。実力者・若隆景の完全復調は優勝争いの楽しみを大きく膨らませる。【実藤健一】」(原文ママ)