20代の頃、勤めた会社。
そこそこの規模の会社だったが勤務先は小さな営業所で女性社員は1人だった。
若い男性社員も多かったから、女1人でちやほやされると思ったら大間違いだった。
人手が足りず、でも社員を増やすと経費がかさむのでアルバイトの学生を雇っていた。
それも女の子ばかり。
当然、私は一番年上となる。
あるとき、取引先の人からかわいいキティのバックを貰った。
数があまりなく女の子だけで分けようという事になったのだが、数が足りなかった。
私は我慢しようと思ったのだが、1人のおじさん社員が言った。
「こんな可愛いのはもう君はほしがる年ではないだろう」と。
私は23歳にして『お局』だった。
なんだか、その言葉から常に年齢が気になるようになった。
「もう若くはないんだ」と言う言葉がいつも心の片隅にある。
その翌年、なんだが焦りからか職場でつきあってた人と結婚した。
今から考えるともっと後からでもいいではないかと思うのだけど、年齢的に今しないと駄目なような気がしたから・・・
「もう若くはないから」と。
出産を機に仕事を辞めたが、不況の波にのまれまた働かざるを得なくなった。
今度は自分より年上の多い会社だった。
よく年配の人から言われる。
「若いっていいわね」と。
逆に今度はそのたびに思う。
「それはあなた達から見ての事で本当はもう若くはない」と。
毎日、「若さ」の事を考える。
そうやって何年かが経っていった。
ある朝、化粧をするために鏡を覗いた。
知らないうちに白髪が結構出来ていた。
また思う「もう若くはないんだと」
その時、鏡の向こうに何かが見えた。
「!あれは!若い頃の私だ!」
キティのバックを欲しそうな顔をして見ている。
なんて肌がピチピチで若いんだろう。その横にいるアルバイトの女の子と対して違わないではないか!
そんなに若いのだったらキティちゃんだって持ってもおかしくないよ!
横のおじさんが何か言っている(「こんな可愛いのはもう君はほしがる年ではないだろう」と言ってるんだろうが)私は顔をゆがめ悲しい顔をした。
「そんなおやじ、ぶんなぐっちゃえ!それ持ってもおかしくないよ」思わず言葉が出た!
自分の声にはっとして鏡を再度見るとそこには若い頃の私なんて映ってなかった。
映っているのは嫌な白髪がぴょこんと一本飛び出た私の顔だ。
引っこ抜こうとしたときにどこからか声が聞こえたような気がした。
「そんなの白髪のうちにはいらないよ!まだ抜かなくていいよ!」
振り向いても誰もいなかった。
その日から私はあまり若さの事を考えなくなった。
あの聞こえたような気がした声は何年後かの私の声ではないかと思う。
今の私からのメッセージは23才の私には届かなかったが、もっと先の私からのメッセージは今の私に届いたのだ。
若さなんて関係なく今を大事に生きろと。
今の私だってその先の私から見たら若いのだ。そしてその先の私も・・・。
そんな「若さ」をうらやんでばかりいてもかえって若さは逃げる一方なのだ。
「若さ」と言う「ものさし」なんて誰が作ったものなんだろう・・・そんな変なありもしない「ものさし」に振り回されていた自分がばからしくなった。
元気に「おはようございます!」と言って更衣室に入った。
先に着替えをしてた先輩社員に
「あら、若いっていいわね、元気で」と言われた。
「ええ!そうですよ!」とまたもや私は元気良く答えた。
私は将来を夢見る・・・。
きれいにセットした白髪(ハクハツ)で素敵に微笑む自分を。
↑
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そこそこの規模の会社だったが勤務先は小さな営業所で女性社員は1人だった。
若い男性社員も多かったから、女1人でちやほやされると思ったら大間違いだった。
人手が足りず、でも社員を増やすと経費がかさむのでアルバイトの学生を雇っていた。
それも女の子ばかり。
当然、私は一番年上となる。
あるとき、取引先の人からかわいいキティのバックを貰った。
数があまりなく女の子だけで分けようという事になったのだが、数が足りなかった。
私は我慢しようと思ったのだが、1人のおじさん社員が言った。
「こんな可愛いのはもう君はほしがる年ではないだろう」と。
私は23歳にして『お局』だった。
なんだか、その言葉から常に年齢が気になるようになった。
「もう若くはないんだ」と言う言葉がいつも心の片隅にある。
その翌年、なんだが焦りからか職場でつきあってた人と結婚した。
今から考えるともっと後からでもいいではないかと思うのだけど、年齢的に今しないと駄目なような気がしたから・・・
「もう若くはないから」と。
出産を機に仕事を辞めたが、不況の波にのまれまた働かざるを得なくなった。
今度は自分より年上の多い会社だった。
よく年配の人から言われる。
「若いっていいわね」と。
逆に今度はそのたびに思う。
「それはあなた達から見ての事で本当はもう若くはない」と。
毎日、「若さ」の事を考える。
そうやって何年かが経っていった。
ある朝、化粧をするために鏡を覗いた。
知らないうちに白髪が結構出来ていた。
また思う「もう若くはないんだと」
その時、鏡の向こうに何かが見えた。
「!あれは!若い頃の私だ!」
キティのバックを欲しそうな顔をして見ている。
なんて肌がピチピチで若いんだろう。その横にいるアルバイトの女の子と対して違わないではないか!
そんなに若いのだったらキティちゃんだって持ってもおかしくないよ!
横のおじさんが何か言っている(「こんな可愛いのはもう君はほしがる年ではないだろう」と言ってるんだろうが)私は顔をゆがめ悲しい顔をした。
「そんなおやじ、ぶんなぐっちゃえ!それ持ってもおかしくないよ」思わず言葉が出た!
自分の声にはっとして鏡を再度見るとそこには若い頃の私なんて映ってなかった。
映っているのは嫌な白髪がぴょこんと一本飛び出た私の顔だ。
引っこ抜こうとしたときにどこからか声が聞こえたような気がした。
「そんなの白髪のうちにはいらないよ!まだ抜かなくていいよ!」
振り向いても誰もいなかった。
その日から私はあまり若さの事を考えなくなった。
あの聞こえたような気がした声は何年後かの私の声ではないかと思う。
今の私からのメッセージは23才の私には届かなかったが、もっと先の私からのメッセージは今の私に届いたのだ。
若さなんて関係なく今を大事に生きろと。
今の私だってその先の私から見たら若いのだ。そしてその先の私も・・・。
そんな「若さ」をうらやんでばかりいてもかえって若さは逃げる一方なのだ。
「若さ」と言う「ものさし」なんて誰が作ったものなんだろう・・・そんな変なありもしない「ものさし」に振り回されていた自分がばからしくなった。
元気に「おはようございます!」と言って更衣室に入った。
先に着替えをしてた先輩社員に
「あら、若いっていいわね、元気で」と言われた。
「ええ!そうですよ!」とまたもや私は元気良く答えた。
私は将来を夢見る・・・。
きれいにセットした白髪(ハクハツ)で素敵に微笑む自分を。
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