おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

ほくろクラブ株式会社14≪孫の代まで・・・その2≫

2007年06月17日 | ほくろクラブ
僕らは毎日運動会に向け、学校も家でも大忙しだった。
運動会の練習と応援の練習。
帰る前は必ず
「運動会で勝つぞ~!エイエイオー!」
と僕ら4人が中心になって勝どきをあげる。

帰ってからはどのような応援をするかの相談だ。
「行け行け!6年1組エイエイエオー!僕らの力で青組優勝!がぁーーーんばれぇ!」
旗も海賊のマークを書いた。
大きなホクロのある変なガイコツになってしまったが・・・。

朝からずっと一生懸命なので晩ごはんを食べながら居眠りをしてしまう毎日だった。
ご飯を口にいれたまま寝てしまってお母さんにすごく笑われた。
びっくりして起きてご飯を噴出してまた笑われた。

他の皆も一緒だと思う。
テンちゃんは運動神経がよくてクラスの期待の星だ。
走りも早い。だからもっと早くなるようにと練習を毎日公園でしている。
みずっちは走るのが遅いけどやっぱり皆に迷惑をかけたら駄目だからとテンちゃんと一緒に走っている。
やまさんは騎馬戦で上になるので帽子をとる練習だ。
僕は生徒の前をプラカードを持って歩く役に選ばれて、その歩く練習もしないといけない。
こんな光栄な役に選ばれたのがとてもうれしい。
体が小さい僕にとってプラカードは重いけどしっかり持って歩けるように頑張った。

そしていよいよ運動会が明日になった。
僕達6年生は最後の練習を学校でしていた。
組み体操でピラミッドを作る。
僕は小さくて軽いから一番上になる。
ただ、僕の下がみずっちなのだがどうも僕を支える力がなくて僕が登ろうとするといつもガクッとなる。
何回も僕はピラミッドから転がり落ちた。
毎日、打撲だらけになっていた。
この日また上がろうとした時にみずっちがガクッとなった。また僕は転がり落ちたのだが、その時みずっちの体に僕の足が引っかかった。

「いってっぇ~~!」

僕は大声をあげた。なんだか足の付け根が変な感じがした。
すごく痛かった。涙が出そうだったけどなんとか我慢した。

次はリレーの練習だった。
足は相変わらず痛くますますズキズキしてきた。
僕にバトンが回ってきたけど・・・もう僕は走れなかった。
痛さで涙も出てきた。こんな痛みは生まれて初めてだ。

「痛くて走れない・・・」
僕は情けなさも手伝ってボロボロ泣いた。
赤城先生が走ってきて僕をおぶって保健室までつれていってくれた。
そしてしばらくすると僕を病院まで連れていってくれた。
診察の順番を待っていると先生の知らせを受けお母さんが会社を早退し駆けつけてきた。
先生にお母さんが
「後で連絡しますので、ありがとうございました」と言うのが聞こえ先生は学校に戻って行った。

そして・・・診察を受けた。
レントゲンをとったり足を動かしたりしてまた僕は少し涙が出た。
僕は右足の付け根の捻挫だった。
「股関節捻挫です。」と先生は言った。
骨折とかではないからお母さんはほっとした様子だ。
僕は・・・僕は・・・痛さをこらえながら聞いた。

「明日、明日、運動会なんです!明日までに治るんですか?」

先生はちょっと悲しそうな顔して言った。
「残念だけど、しばらく痛みが収まるまで松葉杖をつこうね。明日は残念ながら参加は出来ないよ」

NO-----!

僕は暗闇に吸い込まれるような感じになった。
小学校最後の運動会。なんでこんな事になるのか!

痛い・・・。また涙が出てきた。痛いのか悔しいのかわからなくなって僕の涙はなかなか止まらなかった。

松葉杖を病院で借りた。
痛いほうの足をあげて松葉杖に体重をかけると痛みがましになった。
「松葉杖をついてしっかり治そうね」と先生は言った。
家に帰るとちょっとした段差が登れない。
お母さんが「ほら」と言って背中を向けてしゃがんだ。
僕は仕方がないのでお母さんにおぶさった。何年ぶりなんだろうお母さんにおんぶされるのって。
お母さんの背中は小さかった。
でも、暖かかった。僕はまた涙が出た。

「しっかり明日は応援しようね。お母さんもお父さんも行くから」とお母さんが言った。
そうか・・・まだ運動会に出れなくても応援がある。
僕はちょっとだけ希望が見えた気がした。

                             ≪その3へ続く≫

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