運動会当日。
僕はお父さんに連れられ松葉杖で学校に行った。
テンちゃんややまさんみずっち・・・皆驚いて集まってきた。
「今日は見学なんだ」と僕が言うと皆シーンとしてしまった。
「大丈夫だよ。一生懸命応援するから、よかったよ応援する事にして・・・出れなくても応援だけは参加できるからね」
と僕が出来るだけ元気に言ってもしばらく皆は黙ったままだった。
「ごめん。ウッチー僕が下でしっかり支えなかったから」
みずっちが下を向いて言った。
「違うよ、僕がちゃんと上がれなかったから落っこちたんだ」
僕が言うとまた皆シーンとした。
しばらく皆で黙っていたが急に
「応援頑張ろうな!」とテンちゃんが言った。
「そうだ!そうだ!ウッチー僕らが走るのをしっかり応援してくれよな!」とやまさん。
「任せとけ!」と僕が言うとやっとみんなで笑った。
僕が出れなくなったせいで赤城先生をはじめ他の先生も大忙しだ。
僕の代わりに急遽ピラミッドの上に登る事になった生徒やプラカードを持つ生徒を指導している。
僕は申し分けなくてちょっとだけ情けなくなった。
その時音楽の先生が通りかかった。
「あらあら内田君。災難だったわね。でも運動会の前日に捻挫して出れなくなるなんで、内田君の孫にまで思い出話として語れるわよ!」
そう言ってケラケラ笑うと去って行った。
なんて事を言うんだ・・・こんなに情けないのに。
いよいよ開幕。
皆が並んで僕は見学席に1人っきりになった。
やっぱり情けない。
体操をやっているのをぼーっと見ていると保護者の見学席にいるお父さんとお母さんの姿が見えた。
自分の子供が出ないのに朝からちゃんと見に来てくれている。
僕は少しだけ涙が出そうになった。
皆が体操から戻ってきて慌てて涙を拭いた。
短距離走・リレー・玉入れ 。
他の学年の時は皆と一緒に応援し、僕ら6年生の出番の時は一人ぼっちになったけど僕1人で応援した。
「行け行け!6年1組エイエイエオー!僕らの力で青組優勝!がぁーーーんばれぇ!」
僕が1人で応援していると下級生で仲のいい子が一緒に応援してくれた。
少しだけ気持ちが晴れてきた。
午前中の部が終わった。
僕はずっと見てくれていたお父さんとお母さんと一緒にお弁当を食べた。
お弁当はお正月のおせち料理を入れる入れ物にいっぱい入っていた。
お母さんが朝早くに起きて作ってくれた僕の大好物ばっかりだった。
「皆、頑張っているな、特に天童君なんか走りは全部一位だな」とお父さんが言うと
「そうね、勇気のお友達がすごく活躍してるわ。このまま行けば青組優勝ね。」とお母さんがうれしそうに言った。
「勇気も応援頑張ってるな。お父さんはちょっと感動したぞ」そう言うとお父さんは僕の頭をちょんと小突いた。
食べ終わるとほくろクラブの皆が来てくれた。
皆と一緒に児童席に戻ろうとすると
「ほら、おぶって行ってやるよ」と言ってやまさんがしゃがんだ。
僕がためらっているとテンちゃんが僕の松葉杖を持ってくれてみずっちが僕の水筒を持ってくれた。
僕は僕よりかない大きなやまさんにぶら下がるようにしておぶってもらって児童席に帰った。
友達っていいな・・・僕はまたやまさんの背中で涙が出そうになった。
お昼からの一番の目玉は6年生が出る騎馬戦と組み体操だ。
騎馬戦で勝敗が決まる。
僕はドキドキした。
なんと言っても赤組に超手ごわい大将がいる。
練習の時はいつもこの1人のせいで青組は全滅したんだ。
いよいよ騎馬戦が始まった。
やっぱり赤組の大将は強い。
でも、青組の大将のテンちゃんもたくさん帽子を取っている。
最後は・・・一騎打ちになった。
僕は一生懸命旗を振って応援した。
「行け行け!テンちゃん!テンちゃんの力で青組優勝!がぁーーーんばれぇ!」
赤の大将の長い手が延びてテンちゃんにかかる!少しテンちゃんがぐらついたように見えた瞬間テンちゃんの手が赤組の大将の帽子にかかった!
「ピッーーーーー!青の勝ち!」
先生の声が上がった!
誇らしげに帽子を高く掲げたテンちゃんの手が見えた。
その瞬間に青組の優勝が決まった。
わーーーっと言う声とともに皆が立ち上がって喜んでいる。
僕はうれしかったが・・・あの中にいない自分が少し悲しかった。
座ったままなのに足が痛くなった。
痛かったんだ・・・足が・・・一粒だけ涙がこぼれた。
興奮した皆が帰ってきた。
口々にさっきの騎馬戦の活躍の話をしている。
女子はもう修学旅行の話をしている。気が早いったら・・・まだ運動会終わってないぞ。
僕も笑いながら聞いた。笑っていようと思った。悲しさを悟られないように。
その時テンちゃん、やまさん、みずっちのが赤城先生と何か話していた。
僕の代わりにピラミッドのてっぺんに登るテンちゃんとの打ち合わせなんだろう。
そして最後の組み体操が始まった。
自分が練習している時はわからなかったけど、皆がきっちっとそろって演技しているのはきれいだ。
最大の見せ場のピラミッド。
こっちから見てたらまたみずっちがグラついたけど運動神経ばっちりのテンちゃんがなんとか持ちこたえた。
僕もああやればよかったんだ。
今更ながらそう思う。
テンちゃんが上に立つと会場からは盛大な拍手が起こった。
僕も大きく拍手をした。
大成功だった。
演技が終わり6年1組の皆が輪になった、するとその中心から赤城先生とテンちゃん、やまさん、みずっちが僕の方に駆けて来た。
赤城先生は僕を抱きかかえると輪の中心に連れていった。
そして・・・
「青組、優勝ばんざーーい!6年1組ばんさーーい!そして僕らの応援団長、ばんざーーーい!」
そう言って僕を中心にしてバンザイをした。
僕はもう何がなんだかわからないぐらいうれしくなってバンザイをした。
足がまた痛いような気がしたがもう気にならなかった。
こんなうれしい運動会は初めてだ。
最初に音楽の先生に言われた時は腹が立ったけど、僕に孫が出来て運動会に出る時、聞かせてやろう。
僕の大切な思い出話として・・・。
「おじいちゃんはね、運動会の前日に捻挫してね・・・」なあんてね。

僕はお父さんに連れられ松葉杖で学校に行った。
テンちゃんややまさんみずっち・・・皆驚いて集まってきた。
「今日は見学なんだ」と僕が言うと皆シーンとしてしまった。
「大丈夫だよ。一生懸命応援するから、よかったよ応援する事にして・・・出れなくても応援だけは参加できるからね」
と僕が出来るだけ元気に言ってもしばらく皆は黙ったままだった。
「ごめん。ウッチー僕が下でしっかり支えなかったから」
みずっちが下を向いて言った。
「違うよ、僕がちゃんと上がれなかったから落っこちたんだ」
僕が言うとまた皆シーンとした。
しばらく皆で黙っていたが急に
「応援頑張ろうな!」とテンちゃんが言った。
「そうだ!そうだ!ウッチー僕らが走るのをしっかり応援してくれよな!」とやまさん。
「任せとけ!」と僕が言うとやっとみんなで笑った。
僕が出れなくなったせいで赤城先生をはじめ他の先生も大忙しだ。
僕の代わりに急遽ピラミッドの上に登る事になった生徒やプラカードを持つ生徒を指導している。
僕は申し分けなくてちょっとだけ情けなくなった。
その時音楽の先生が通りかかった。
「あらあら内田君。災難だったわね。でも運動会の前日に捻挫して出れなくなるなんで、内田君の孫にまで思い出話として語れるわよ!」
そう言ってケラケラ笑うと去って行った。
なんて事を言うんだ・・・こんなに情けないのに。
いよいよ開幕。
皆が並んで僕は見学席に1人っきりになった。
やっぱり情けない。
体操をやっているのをぼーっと見ていると保護者の見学席にいるお父さんとお母さんの姿が見えた。
自分の子供が出ないのに朝からちゃんと見に来てくれている。
僕は少しだけ涙が出そうになった。
皆が体操から戻ってきて慌てて涙を拭いた。
短距離走・リレー・玉入れ 。
他の学年の時は皆と一緒に応援し、僕ら6年生の出番の時は一人ぼっちになったけど僕1人で応援した。
「行け行け!6年1組エイエイエオー!僕らの力で青組優勝!がぁーーーんばれぇ!」
僕が1人で応援していると下級生で仲のいい子が一緒に応援してくれた。
少しだけ気持ちが晴れてきた。
午前中の部が終わった。
僕はずっと見てくれていたお父さんとお母さんと一緒にお弁当を食べた。
お弁当はお正月のおせち料理を入れる入れ物にいっぱい入っていた。
お母さんが朝早くに起きて作ってくれた僕の大好物ばっかりだった。
「皆、頑張っているな、特に天童君なんか走りは全部一位だな」とお父さんが言うと
「そうね、勇気のお友達がすごく活躍してるわ。このまま行けば青組優勝ね。」とお母さんがうれしそうに言った。
「勇気も応援頑張ってるな。お父さんはちょっと感動したぞ」そう言うとお父さんは僕の頭をちょんと小突いた。
食べ終わるとほくろクラブの皆が来てくれた。
皆と一緒に児童席に戻ろうとすると
「ほら、おぶって行ってやるよ」と言ってやまさんがしゃがんだ。
僕がためらっているとテンちゃんが僕の松葉杖を持ってくれてみずっちが僕の水筒を持ってくれた。
僕は僕よりかない大きなやまさんにぶら下がるようにしておぶってもらって児童席に帰った。
友達っていいな・・・僕はまたやまさんの背中で涙が出そうになった。
お昼からの一番の目玉は6年生が出る騎馬戦と組み体操だ。
騎馬戦で勝敗が決まる。
僕はドキドキした。
なんと言っても赤組に超手ごわい大将がいる。
練習の時はいつもこの1人のせいで青組は全滅したんだ。
いよいよ騎馬戦が始まった。
やっぱり赤組の大将は強い。
でも、青組の大将のテンちゃんもたくさん帽子を取っている。
最後は・・・一騎打ちになった。
僕は一生懸命旗を振って応援した。
「行け行け!テンちゃん!テンちゃんの力で青組優勝!がぁーーーんばれぇ!」
赤の大将の長い手が延びてテンちゃんにかかる!少しテンちゃんがぐらついたように見えた瞬間テンちゃんの手が赤組の大将の帽子にかかった!
「ピッーーーーー!青の勝ち!」
先生の声が上がった!
誇らしげに帽子を高く掲げたテンちゃんの手が見えた。
その瞬間に青組の優勝が決まった。
わーーーっと言う声とともに皆が立ち上がって喜んでいる。
僕はうれしかったが・・・あの中にいない自分が少し悲しかった。
座ったままなのに足が痛くなった。
痛かったんだ・・・足が・・・一粒だけ涙がこぼれた。
興奮した皆が帰ってきた。
口々にさっきの騎馬戦の活躍の話をしている。
女子はもう修学旅行の話をしている。気が早いったら・・・まだ運動会終わってないぞ。
僕も笑いながら聞いた。笑っていようと思った。悲しさを悟られないように。
その時テンちゃん、やまさん、みずっちのが赤城先生と何か話していた。
僕の代わりにピラミッドのてっぺんに登るテンちゃんとの打ち合わせなんだろう。
そして最後の組み体操が始まった。
自分が練習している時はわからなかったけど、皆がきっちっとそろって演技しているのはきれいだ。
最大の見せ場のピラミッド。
こっちから見てたらまたみずっちがグラついたけど運動神経ばっちりのテンちゃんがなんとか持ちこたえた。
僕もああやればよかったんだ。
今更ながらそう思う。
テンちゃんが上に立つと会場からは盛大な拍手が起こった。
僕も大きく拍手をした。
大成功だった。
演技が終わり6年1組の皆が輪になった、するとその中心から赤城先生とテンちゃん、やまさん、みずっちが僕の方に駆けて来た。
赤城先生は僕を抱きかかえると輪の中心に連れていった。
そして・・・
「青組、優勝ばんざーーい!6年1組ばんさーーい!そして僕らの応援団長、ばんざーーーい!」
そう言って僕を中心にしてバンザイをした。
僕はもう何がなんだかわからないぐらいうれしくなってバンザイをした。
足がまた痛いような気がしたがもう気にならなかった。
こんなうれしい運動会は初めてだ。
最初に音楽の先生に言われた時は腹が立ったけど、僕に孫が出来て運動会に出る時、聞かせてやろう。
僕の大切な思い出話として・・・。
「おじいちゃんはね、運動会の前日に捻挫してね・・・」なあんてね。
