おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

ほくろクラブ株式会社9≪プレゼント・・・その2≫

2007年05月31日 | ほくろクラブ
次の日、僕らは親の了解がとれたかどうか確認しあった。
僕はOK。テンちゃんもOK。やまさんはお母さんはいなかったけど、いつも自分の責任がとれる範囲ならいいといわれてるからという事でもちろんOK。
みずっちは・・・。

「・・・大丈夫だよ・・・」と言った。なんだかちょっと元気がない。

やまさんが心配して
「無理するなよ。もし来れなかったら植物採集したあとの作業を手伝ってくれればいいんだから」と言ったら

「大丈夫なんだって!お母さんもいいって言ったんだ!」とみずっちが叫んだ。

やっぱりちょっと元気がないとこが気になったけど皆これでOKだ。
どうやって行こうかと言う話しになったんだけど、自転車で行く事になった。道は僕が知っている。
僕らは赤城先生に報告をしに行った。

赤城先生は「良し!それなら気をつけて行くように。ちゃんとご両親に連絡が取れるようにしておけよ。そしてちゃんと報告を月曜日に先生に誰かが報告に来る事」と言った。
先生は夏休みでも学校に来ているらしい。大変なんだな。

丸山さんに詳しい時間と仕事の内容を聞きに言った。
「そっか~~!皆大丈夫だったんだね。時間はお昼の1時半からでいいらしいよ。多分3時ぐらいには終わると思うからそのあとは遊んで帰ったら?仕事の内容は次の日に『森の木で作る工作』と言うのをするらしいから、その木を集めたり運んだりするのと道具や机の用意を手伝ってほしいらしいの」
とまた一気にまくしたてた。
僕らは仕事が済んだ後、夏休みの宿題の自由研究として植物採集がしたいのでおじさんに植物の名前を教えてもらえないだろうか・・・と聞いた。

「もちろん、大事丈夫だと思うよ。それが報酬という事でおじさんに言っておくね!じゃ!私は帰ってすぐにおじさんにまた連絡しておくから!」と言ってバタバタと走って行った。いつも忙しい人だ。

僕らの夏休みの最初の計画。
なんてわくわくするんだろう。
それから、夏休みにはいるまでの2週間、僕らはこの日の事ばかり話していた。

僕は休みの日は自転車の調整をして、山にはえている植物の事を調べたりした。
おしば標本の作り方なんて言うのもインターネットで調べてたりもした。植物は根からとってくるのがいいらしい。標本を作るには新聞紙が必要だ。
たくさん用意しないといけないなあ~。
皆もいろんな事を調べてきてあれもしようこれもしようなって一日で出来れないほどの話しになった。
だから別の日にも遊びに出掛けようと言う事になった。お弁当を持って一日中いるのもいいななんて。
こんな楽しみな夏休みは初めてだ。

ただ・・・この話をしている時やっぱりみずっちがあんまり元気がないのが少し気になった。
どうしてだろう。お母さんの許しも出たと言うのに。
体力がないみずっちの事だ。自転車で坂道を走るのが不安なんだろうか。
出来るだけ皆にゆっくり走ってくれるように言わないとけないな。

そして・・・待ちに待った夏休みがやってきた!
通知簿の事は聞かないでね。だってそれはプライバシーの問題だから。
長い、長い夏休み!なんて楽しみなんだろう!
そして明日はいよいよ森林公園に皆で行く日だ!
僕は枕元にリュックを用意した。お昼から出掛けるのにね。

お母さんが言った。
「勇気はお父さんとそっくりね。お父さんも楽しみな事があると一週間ぐらい前から用意するもの」

そう言えばお父さんはゴルフに出掛けるとき何日も前から用意をしてお母さんに怒られる。
納屋からゴルフバックを一週間前からだし、玄関に出して「邪魔よ!」と言って怒られもう一度納屋にしまっている。
でも、お父さんの気持ちわかるな~。楽しみな事は早くから用意をしたいよね。
明日はどんな楽しい事が起きるんだろうと思いながら僕は眠ってしまった('-'*)

                         ≪その3へ続く≫

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ほくろクラブ株式会社8≪プレゼント・・・その1≫

2007年05月29日 | ほくろクラブ
あの中学生の話を聞いてから1週間ちょっとたった頃僕らは赤城先生に呼ばれて・・・すごく怒られた。
どうやら僕のお母さんから連絡が入ったらしい。
先生は、ちゃんと報告しないで自分達で調べに言った事について延々と怒り、今回の事はハンコはやれない最後に言った。
ただ、あの二人の中学生達の事は中学校でもうわさになっていて、すぐに調べられ彼らがやった事だったとわかったそうだ。
そのあと彼らがどうなったのかは先生は教えてくれなかかった。

職員室から出る前に先生は言った。
「お前達、会社としての活動をちゃんとしてるのか?探偵団ではなかったはずだぞ」

僕達は早速その日、また僕のうちの庭で会議をした。
社長(そう言えばそう決めたんだな)のやまさんが
「今度はどんな事をしようか?」と言うも全然話は決まらず、結局話はどんどん脱線していった。
やまさんは最近、飼犬の『ポンちゃん』をつれてドックランに行ったらしい。
そこでおじさんとキュンに会ったんだと言った。
やまさんちのポンは雑種で白い犬だ。やまさんに似て?とても大きい。でもとてもおとなしくてキュンと一緒でとても賢い犬だ。
僕はいつもやまさんちに行くとポンに挨拶をする。ポンはクルッした尻尾を振って僕に挨拶を返してくれる。僕はさわる事は出来ないけどポンは大好きだ。
キュンとはすぐに親友になったそうだ。
僕は犬も親友と言うのがあるのか・・・と突っ込みそうになったがやまさんがそう言うなら2匹は親友なんだろう。
休みの日はおじさんと待ち合わせをしてキュンとポンを遊ばせようという話になったらしい。2匹は一緒に駆け回りとっても楽しそうなんだとやまさんは言った。
僕らは次にする活動の事なんて全然忘れてキュンとポンの事ばかり話した。

バイクの音がした。
お母さんが帰ってきて僕らは解散となった。
結局何をするか全然決まらなかった。

それから数日立ったある日、僕の横の席の女子の丸山さんが声をかけてきた。
「ねえ、平社員の内田君。ほくろクラブに引き受けてほしい仕事があるんだけど」
僕はなんていいタイミングなんだ!と丸山さんに
「引き受けた!」と言った。
「ばかねぇ!まだ何も話してないでしょ。実は私のおじさんなんだけど森林公園の管理やイベントの仕事をしてるんだけど今度夏休み入ってからすぐの日曜日にあるイベントの準備を手伝ってほしいの。日曜日にあるから用意をするのは前の日の土曜日。本当は私とお兄ちゃんが行くはずだったんだけど急に家族で旅行に行く事になってしまって・・・。そこで思いだしたのがほくろクラブなの!クラスの役に立つのがほくろクラブなんでしょ!だからクラスの困っている私のお願い聞いてよ!」
丸山さんは一気にまくし立てた。
僕は「上司と顧問に聞いて見ます」と返事をした。

森林公園は僕らのうちからバスに乗って10分ほどのところにある。ただ、自転車で行けば30分ほどだ。僕は何回かお父さんと一緒に自転車で行った事がある。

僕はやまさんみずっちテンちゃんとお昼休みに相談した。
やまさんとテンちゃんは大賛成だ。イベントの準備って何をするのかわからないけどなんだか楽しそうだ。
でも、黙り込んでいるみずっちが少し気になった。
「なんだ?みずっち。反対なの?」と聞くと
「そうじゃないんだ。僕もいきたんだ」と少し小さな声で言った。

僕らは放課後赤城先生のところに今度の仕事の依頼の報告に行った。
先生は「校区外になるからちゃんと皆お父さんやお母さんの了解をとること。ただ、あちらでは丸山のおじさんがいるから大丈夫だろう。そうだ、丸山のおじさんは山の植物や生き物の事くわしいぞ。夏休みの宿題の自由研究も一緒にしてきたらどうだ」と言った。

職員室を出て帰ろうとして靴箱のところに行くと丸山さんにあった。
引き受ける事を告げると丸山さんは「早速、おじさんに連絡して詳しい話し聞くわね!」と言った。

僕らはなんだかうれしくなっていろいろ相談しながら帰った。
「自由研究、植物採集なんてどう?そして丸山さんのおじさんに説明聞くんだ」とテンちゃん。
「そうしようよ!いつも自由研究最後まで残って大変なんだ」と僕。
「自転車で行こうな!坂道大変だけど。みずっちついてこれるか?」とやまさんが言って僕らは
振り返った。
笑顔の僕らと対象でみずっちの顔は暗かった。
「みずっち、自転車無理だったらバスでもいいよ」とテンちゃんが言った。
みずっちは少し体が弱い。自転車で坂道・・・と聞いて暗くなったのかと思ったが・・・

「そうじゃないんだ!多分、僕のお母さんが駄目だって言うから」とみずっちが言った。

みずっちのお母さんはみずっちの事をいつも心配している。暗くなるまで遊んでいる僕ら3人とは違いみずっちは少し早めに帰る。
今度のキュンや中学生の事で帰りが遅くなったかなり怒られたらしく、しばらくの間は遊ぶの禁止になったほどだ。

僕らはしばらく黙って歩いた。
やまさんが言った。
「みずっち、今回はみずっち抜きで僕らだけで行く事にするよ。もう丸山さんには引き受けたから。でも、採ってきた植物の整理は一緒にやろうぜ」
「そうだよ。押し花にしたり、調べたりあとの作業はいっぱいあるぜ」とテンちゃん。

みずっちは黙ったままだった。
そして別れるときに
「とりあえず一度お母さんに聞いて見る」と言いながら手を振った。

僕らはみずっちのお母さんが許してくれることを祈って別れた。

僕は夕飯を食べながらお母さんに行ってもいいかと聞いた。
もちろんOKだった。ただ、丸山さんのおじさんの連絡先を聞いてきなさいねとだけ言った。
僕のお母さんはこういった事には反対はあまりしない。
ちゃんと話をして行き先と連絡先を言えばいいのだいつも言う。
みずっちのお母さんは何故反対するんだろう。
僕らはもう6年生なのに。

そのあと帰ってきたお父さんにもその事を話し、みずっちのお母さんは何故反対するのかと聞いた。
お父さんは
「そりゃあ、勇気。うちのお母さんは太っ腹だからなぁ!見た目どおり」と言ってお母さんに持っていた本で叩かれた。
そのあとお父さんと一緒にお風呂に入り、山の中にある植物や虫の話をしているとすっかりみずっちを心配してた事は忘れてしまった。

でも、布団入ってから思いだし、何かの神様にお願いしてみようと思った。
「みずっちのお母さんが許してくれますように」と。
何かの神様って?なにの神様でいいんだ。僕のお願いをきいてくれるなら。

そしてまたすぐに眠ってしまった・・・ZZZZZZ

≪その2へ続く≫
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一族

2007年05月28日 | ショート・ショート
大学を卒業してから俺はずっとブラブラしていた。
家は代々続いた由緒ある華道の家元である。
家を継げばいいじゃいかと思うかもしれないが兄が継いでいるし俺にはどうも才能がない。
親父はブラブラしてないで早く職につけと言う。
だが、母親は「時がくればこの子は自分にあった道を選びますよ」と親父をなだめる。
俺は「時」って言うのはどういうときなんだろうと思いながらやっぱり毎日をブラブラとしてすごした。
俺1人ブラブラしてたって傾く家でもなし、それ以上は両親も何も言わなくなった。

そんなある日。俺はテレビを寝転がって見ていた。テレビでは伝統の技なんていう特集をしていた。
手書きの友禅の工房が出てきた。
俺はなんだか画面に吸い込まれるように起き上がった。
「これだ!」俺は叫んでいた。

なんだかわからないが俺の職業だと感じた。いても立ってもいられなくなり両親に「やりたい仕事が出来た。家を出る」と告げた。
親父は腰を抜かしていたが、母親はゆったりと微笑んで「頑張ってね」と言った。

テレビにうつっていた工房を必死で探し、そこをたずねた。
そこは父親と娘二人でやっている工房だった。
「弟子にしてください」と頼みこむが、父親の方が「弟子はとらないんだよ。うちは代々、一族の者だけが継ぐことになっている。うちの技は一族の者にしか何故か伝わらない。代々受け継がれた才能と言うのがまぎれもなくあるのだよ」と言った。
俺はそれでも引き下がらなかった。全然、何もわからないのに何故こんなに必死になるのかわからないが・・・。
「そこをなんとかお願いします」と頼みこんで顔をあげたときに娘の方と目が合った。
娘はぽっと赤くなり父親に言った。
「お父さん、置いてあげて見たら」と。
俺は自分で言うのもなんだが結構イケメンの部類に入ると思う。
「ありがとう」と娘に向かって微笑んだ。また、娘は今度は首まで赤くなった。

という事で俺はその工房で働くことになった。
そして、働いて初めてわかった事だけど俺にはまったくと言っていいほど才能はなかった。何故、あんなに弟子になりたいなんて思ったのか自分でも不思議である。
でもそうわかった時、俺は娘と恋に落ちていた。娘に惚れたと言うより俺はその才能にほれ込んでしまっていた。そして娘の方が俺にぞっこんだった。
父親の方は案外喜んでくれた。俺には絵の才能はなかったが経営の方の才能は「そこそこ」あった。
何せ小さな工房なのでそこそこの才能があればやっていける。二人はその方面にはまったくの無頓着だったので俺が入った事により経営は今まで以上安定してきた。
実家では婿に入るというので親父は少し反対したが、またもや母親が説得してくれた。

そして俺はその娘と結婚する事になった。
妻にはすごい才能がありそのうちに義父の腕を超えるまでになっていった。
俺は妻の仕事を調節し、2人に足りない経理的な面をサポートしていった。とは言っても実際に商品をうむのは妻なので私の生活は非常にゆったりとしたものだった。

それでも2人の娘にも恵まれ生活も安定していた。妻の方にも不満はなかたっと思う。
お互いに幸せだった。
ただ、上の娘は妻のあとを継ぐように舅も妻も教え込むがまったくと言っていいほど才能がなかった。
そのかわり下の娘は誰が教えることでもないのに勝手に工房の仕事を覚えどんどん上達していった。
そんな娘二人は成長して行ったのだが・・・
上の娘は短大卒業後、就職もせずブラブラとすごす毎日だった。なんだか昔の自分を見ているような気分になり、毎日小言を言い続けた。
下の娘はその才能を発揮し、今ではその若い感覚で妻を抜く勢いである。
可哀想なことに上の娘は妻の方の一族の血を受け継がなかったようだ。

そんなある日、上の娘はふらっと出ていったかと思うと1人の青年を連れて帰ってきた。
「私、この人と結婚します」と。
聞けばその青年はある音楽一家の1人息子で今注目の若手のバイオリン奏者だと言う。
上の娘は言った。
「ある日、テレビを見てたらこの人が映って私もなんだかバイオリンを弾いて見たくなってこの人のところに押しかけて行ったの」
押しかけられたほうはさぞびっくりしただろうが、娘は家を継ぐ才能はなかったが、親の口から言うのもなんだがすごい美貌の持ち主である。
この青年はひと目で娘の美貌に目を奪われたのだろう。
ただ、娘はまったく音楽などをやった事もなく、バイオリンなんて弾いたこともない。
この縁談は我家も結構由緒正しい家柄なのですんなりと進んだ。

上の娘は俺の血を引いている。道を歩きながら考えた。
足元にあったタンポポの綿毛を踏んだ。
すると種が風に吹かれ飛んで行った。
ふと思う。
妻の一族は代々その才能を受け継いできたのだと言う。そうするともしかすると俺の一族はこうやってよりよい生活を送れるように生きる場所を探し、時期が来たら飛んで行くのではないかと。タンポポの綿毛のように。
俺の母親の微笑を思いだした。母親もまたかなりの美貌の持ち主で、父と結婚してからは幸せで優雅な生活を送ってきた。
上の娘は幸せに生きるだろう。なんだかそんな気がした。
これも俺の一族の才能なのだ。

心配なのは下の娘である。妻の才能を継いで工房の後継者ではあるが、残念ながら我が一族の血は受け継がなかったようだ。上の娘に比べ容貌がかなり見劣りする。
ふと、母親に連絡をとってみようかと思った。親族の中で俺のようなのはいなのかと・・・。

でも、無理かもしれない。あの飛んでいる綿毛のように我が一族は自分でえらんで飛んで行ってしまうのだから。
飛んでいって自分によりよい環境で根をおろし、そしてまた自分の子孫を飛ばす。こんな一族だってあってもいいではないか。

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ほくろクラブ株式会社7≪行け!キュン!その2≫

2007年05月27日 | ほくろクラブ
おじさんとキュンと会ってから数日がたった。
僕らはおじさんとキュンは犯人じゃなかった事を伝えた。
クラスの皆は今度おじさんとキュンに会ったら声をかけてみようと話していた。

雨が続いている。今日は降ってないけど結構どんよりした空で気温が低い。
どうせプールには入れなかったなと思った時、僕の横の席にいた通称「トミー」と言う女子が声をかけてきた。
「あのね、うちのお兄ちゃんのクラスで最近話題になってるんだけど。お兄ちゃんのクラスの中のちょっとワルの二人組みがさぁ、小学校のプールに犬のふんを入れたって言ってるらしいよ」
なんと!トミーのお兄ちゃんは近くの中学校に通う中学3年生だ。
僕はトミーにその2人組みの名前を聞き、いつも6時ごろに公園の前の道を通る事も知った。

早速、ほくろクラブのメンバーに話をした。
「えーーっ!中学生なんて怖いよ」とみずっち。
「そうだよな。何か言ったら仕返しされそうだよな」とやまさん。
僕はうーんとうなってしまった。
僕だって中学生でおまけに3年生なんて怖い。
最初に犯人を捕まえようぜ!なんて言ってた勢いはどこ吹く風で僕らはちょっと(x_x;)シュンとなってしまった。
その時、僕の横で黙っていたテンちゃんが急に立ち上がった!

「駄目だ!キュンやおじさんのうたがいをはらしてあげないといけない!今日皆で確かめに行くぞ!」

テンちゃんはまたもや手を組んで上を向いて闘志に燃える目をしてした。
そして僕らはつられて言ってしまった!

「おーー!頑張ろうぜ!」

・・・そしてその日の放課後。
僕らはまたもや公園で集まりその2人組みの中学生が来るのをまった。
トミーの話ではズボンをちょっとだらしなくずらした二人組みだからすぐにわかるよ、と言うことだった。
またもや遊びに夢中になって本来の目的を忘れかけていた頃、なんとその二人組みがやってきてベンチに腰をかけた。
僕らは後ろのしげみかくれた。

2人の会話が聞こえてきた。
「面白かったよな、この前プールに犬のふんを入れたの」
「おー!なんだか胸がすっきりしたよな。今度は中学のプールにいれようか。」
「それは駄目だ。俺らが入れないじゃないかよ」
「そうだな!もうなんだか水が入れ替わったみたいだぜ。またうちの犬のふんでも持ってくるか!」
「くせーけどな!」
「確かにな!」

二人はゲラゲラと笑った。

その時だった・・・

テンちゃんが立ち上がった!

「そんな事はさせないぞ!」

テンちゃんはまた空を見上げて腕を組んで口をへの字にまげていた。

僕らあとの3人は口がぽかーんと開いてしまった。

最初その中学生もびっくりしたようだが、すぐにすごく怖い顔になってテンちゃんと僕らをにらみつけた。

「なんだと、こいつ!やる気か!」
「生意気だな!やっちまおうぜ!」

二人が先にテンちゃんにつかみかかろうとした時だった。

「行け!キュン!吠えろ!」

と大きな声がした。そして

『ワン!ワン!ウゥゥゥ!!!!ワン!!!』

と大きな吠える声が聞こえて、キュンがものすごい勢いで駆けてきた。

「やばい!逃げろ!」

と中学生は叫ぶと駆け出して逃げて言ってしまった。

「よし、キュン。もういい」
おじさんの落ち着いた声が聞こえた。

しげみに隠れて腰を抜かしていた僕ら3人と立ったまま固まってしまっていたテンちゃんは同時に
「ふぅーーーー!」と声を出した。
みずっちなんて少し涙が出ていた。
僕は・・・口があいたままだったが。

テンちゃんが言った。
「キュン!ありがとう!おじさん!ありがとう!」
僕らも口々にキュンとおじさんにありがとうを言って交代でキュンを抱きしめた。
いつものようにキュンを公園で遊ばせようとしていたおじさんが僕らが中学生に殴られそうなのが見えてとっさにキュンを吠えさせたそうだ。
僕らはおじさんが通ってくれた事に感謝した。
おじさんは別れるときに言った。

「でも、やっぱり公園でキュンをはなすのは行けないことだな。今日の事誰かが見てたらきっともっと注意をされるだろう。おじさんは君達と友達になったキュンを悪者にする事はできない。明日からキュンにリードをつけるよ」

僕らはおじさんとキュンに手をふってそれぞれの家に帰った。

帰ってから僕はまた目が腫れた。
今度は思いっきりキュンを抱き締めたからかなり重症になった。
もう黙ってられなくてお母さんにこれまでの事を白状させられた。
怒られるかと思ったけど案外お母さんは優しかった。
中学生の事はお母さんから学校に報告してくれるらしい。
キュンを抱きしめた事を言ったら、お母さんは少し悲しそうな顔になった。
「お母さんやお父さんも本当は犬や動物大好きなのよ。勇気はひとっり子だからペットがいたらいいんだけどね」と言った。
そして
「でもね、今度からあとが大変だからさわるのはなるべくやめて見てるだけにしなさいね」
とも言った。

キュンが公園を駆け回るのが好きだと言うと『ドックラン』と言う所がある事を教えてくれた。
結構、近くにあるみたいでおじさんに教えてあげなさいと言われた。

僕はその日夢を見た。
僕とキュンがドックランに遊びにきている。
そして僕がキュンに言った。
「行け!キュン!」
キュンはうれしそうに駆け回りそして僕の方に駆けてきて飛びついた。
僕はキュンを思いっきり抱き締めたけど僕の目は腫れなかった。

どうぞ夢が本当になりますように。

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素晴らしい明日

2007年05月26日 | ショート・ショート
その青年は悩んでいた。
明日、自分の重大なミスを上司に報告しなければならない。
そのミスは彼の今後の昇進にも影響しかねない、いやもしかすると彼のその会社での終わりを告げるほどのミスだった。
今日の顧客からのクレーム。
もう定時をまわって1人で残業をしている時にかかっている電話。
彼は実はそんなミスをした覚えがなかったのだが、あれだけ怒っていてまた損害をかけたと言うのだから間違いなのだろう。
とりあえず謝りに謝って明日上司と一緒にお詫びに行きます・・・と言って電話を置いた。

なかなかその晩は寝つけそうになかった。
0時少し前に布団に入り思った。
「明日なんかこなければいいのに」と。
不思議な事に眠れないと思っていたのに暗闇に引きこまれるように眠りに落ちて行った。

・・・そして朝。
青年は目が覚めた。
とりあえず会社に行かなければ。
青年は着換え会社に向かった。

そして会社につき、上司の出勤を待った。
「おはよう」上司が入って来た。

「部長、お話が・・・」と彼が言いかけた時上司がにこやかに笑った。

「やあ、おはよう。昨日は災難だったな。相手の勘違いだったとはいえ最初は雷が落ちたように怒鳴られたからな。まあ、君にとっては後からの出来事が幸運だったから、皆帳消しだな」

「はあ?あのクレームの件をご存知でしたか?」青年は目を白黒させながら言った。

「ご存知も何も昨日一緒に謝りに行ったじゃないか。君まだ起きてないな~。やっぱり君は面白い男だな!あっはっは!」

上司は豪快に笑い去って行った。

青年は何がなんだかわからない。ふと横のカレンダーを見た。すると・・・なんと今日は青年が思っていた日より一日たっているではないか!
その時、彼の携帯にメールが入った。
『昨日は大変ご迷惑をおかけしました。でもあなたって本当に面白い方ですね。今日、もう一度お会い出来ませんか?父もすっかり貴方の事が気に入って昨日のお詫びに食事にご招待したいと言ってます。お返事お待ちしております』

・・・?女性のようだが彼の知らない名前だった。ただ、本来今日行くはずだったクレームの顧客の苗字と一緒だった。
その時彼の同僚が入ってきた。
「よっ!昨日の話聞いたぜ!災難だったな。でも、それで相手のご令嬢とメールアドレスの交換したんだって?本当にお前って面白いやつだよな」

・・・?青年は混乱した。席に戻りなるべく落ち着いて考えて見た。
どうやら、あのクレームは解決したらしい。青年が知らない間に。いや、知らないと言うか青年の記憶の空白の「昨日」があるようだ。
青年が「明日が来なければいいのに」と願ったとおり「明日」は来ず、明後日になってしまった。

青年はとりあえず退社後、顧客の家を訪れた。
ある会社の社長の家でかなりの豪邸だ。
チャイムを押すと中から華やかな女性が出てきた。
「お待ちしてました。どうぞ」彼女が微笑んだ。
青年はひと目で恋に落ちた。

その夜は雲の上にいるようだった。

あれだけ電話で怒られた顧客も上機嫌でことある度に「昨日の君は本当に面白かったな~」と言う。
それに応じあの華やかな女性も・・・彼女はこの社長の娘だった・・・「本当に涙が出るほど笑ってしまったわ」と父親と声を合わせて笑う。
青年は話を合わせるのが精一杯だった。

帰るときに彼女とまた会う約束をした。彼女もまた青年に好意をだいたようだ。
二人の交際は順調に進み、話はとんとん拍子に進んで結婚した。何しろ彼女の父親も彼を大変気に入っていたのだ。
結婚と同時に彼は会社を辞め義父の会社を手伝うようになった。1人娘だったためいわゆる婿養子と言う形だったが彼の肉親は早くに亡くなっていて不満はなかった。
むしろ幸せだった。仕事は遣り甲斐があり妻も優しくかわいい子供も二人できた。

ただ、ひとつの不満は・・・。
彼が「明日がこなけれないいのに」と願ったあの明日の話を妻と義父がする時だ。
二人はよくその時の事を思いだし「本当にあの時の貴方ったら」と言いながら笑う。
青年は何度も聞いてみようとしたが・・・なんだかそれはふれてはいけないことのように思い、笑うだけで話を合わした。

そして月日は流れ、義父が亡くなり青年が社長をついだ。
青年も年をとり、先に妻が旅立つ時がきた。
妻は「あの時の貴方を時々思いだすのよ。貴方に出会えてよかったわ」と言い残し幸せそうに微笑んで旅立った。
青年、いやもう老人になった彼は最後まで聞けなかった。
「あの『明日』に何があったのか」

そしてまた月日が流れ今度は彼が旅立つ時が近づいてきた。
弱った体を横たえながら彼は思う。
「明日がまた目を開けれるのだろうか。でももう思い残すことはない。会社も子供達が立派に跡をついでくれている。ただ、最後にあの空白の日の事が知りたかった」

そして彼は目を閉じ深い闇へと落ちて行った。



鳥の声がした。


彼は目を開けた。
まだ、生きていた。朝日がまぶしい。
でも、おきある事も出来ないだろう・・・と思ったのにすんなり体が起き上がった。
どうしたのだ?
目をこすりながらまわりを見渡せば・・・昨日まで彼が寝ていた病院のベットではない。

そこは・・・。

若き日の彼のワンルームの部屋だった。
慌てて時計のカレンダーを見る。
そう今日はあの『明日』だった。
自分の姿を鏡に映す。
若き日の姿があった。

彼はすべてを理解した。
そう、これからあの『明日』が始まるのだ。
彼の最後の日に。
多分、彼は若き日の妻や義父の姿を見て涙を流すだろう。
いや、何を起こるのかは『今日』を過ごして見なければわからない。

彼はスーツに着換えドアを勢いよくあけた。
外は光にあふれ彼にエネルギーを与えた。

「こんな素晴らしき明日があっていいものだろうか!」
彼は人生に感謝した。

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