認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の早期発見とその方法 Q/A Room(A-53)

2012-08-02 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:77歳になる私の義父が、先日近くの大学付属病院で診察を受け、アルツハイマー型認知症と診断されました。診断してくれた精神科医は、アルツハイマー型認知症は治らない病気なので、家族みんなで介護してあげてくださいと言われて帰ってきました。発病の原因としては、アミロイドベータとする説とタウ蛋白であるとする説があるが、どちらも仮説であって、実際のところは良くわからないのだと言われました。しかも、アミロイドベータが発病の原因とする説は、それを否定する有力なデータが出てきている状況だとも言われました。「アルツハイマー型認知症」発病の原因は、どれを信じたらいいのでしょうか。そもそも、治る可能性はないのでしょうか。

      

A:テレビ番組がいろんな種類の認知症の番組を組むので、御承知の方も多いかと思いますが、認知症にもいろんな種類があります。更に、治せる種類のものもあれば、治せないものもあるのです。脳を養っている大小の血管の障害である脳梗塞や脳出血などが原因で発病する「脳血管性認知症」もあれば、遺伝子の異常が原因で若い年齢を対象として発病する「若年性アルツハイマー病」もあります。そのほかにもいくつかの種類の認知症がありますが、それらが認知症全体に占める割合は、極めてわずかなのです。

マスコミが大々的に取り上げて、国民的な課題にすべきなのは、「アルツハイマー型認知症」(老年性アルツハイマー病とも言います)なのです。認知症の大多数、90%以上を占めている上に、末期の段階(重度認知症「大ボケ」)ではなくて早期の段階(軽度認知症「小ボケ」及び中等度認知症「中ボケ」)で発見すれば、脳のリハビリにより回復させることも出来るし(治せるし)、脳を活性化する「生活習慣」の構築により発病を予防することも出来るのが「アルツハイマー型認知症」だからです。

             

認知症の専門家は、「アルツハイマー型認知症」は治せないと言っていますが、それは重大な2つの過ちが原因なのです。「1つ目の過ち」は、末期段階の「重度認知症」(大ボケ)レベルにあった患者の解剖所見に基づいてアルツハイマー型認知症の発病原因を理解しようとしている過ちなのです。「重度認知症」の患者は、長期澗にわたって前頭葉を含む脳の働きが殆ど機能しないレベルで生活していたために(脳が持たないのに、身体がもつのがアルツハイマー型認知症の特徴)、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)を含む脳全体の機能が廃用性の加速度的な機能低下を起こしたその末期の状態で蓄積された副産物でしかないアミロイドベータの作用による「老人斑の生成」やタウ蛋白の作用による「神経原線維変化」が神経細胞の脱落や消失をもたらすことが発病の原因だと誤解している過ちです。

神経細胞の脱落や消失に過度に目が行っているために、「記憶の障害」を第一の要件と考える「もう1つの過ち」を犯すことになるのです。それは、米国精神医学会が定める「アルツハイマー型認知症」の診断基準「DSM-4」の過ちにもつながっているのです。「DSM-4」は、世界で最も権威があるとされてはいるものの、内容に二つの重大な誤りがある診断基準なのです(現在、内容の重要な改訂を検討中との情報があります)。その「二重の過ち」とは、原因である「認知」を左右している「前頭葉」の機能低下に目が向けられないで、機能低下の結果でしかない症状、特に目がつきやすい「記憶の障害」の症状を第一の要件と考える過ち及び「重度認知症」(大ボケ)の段階になって初めて現れてくる重度の症状を第二の要件と考える過ちなのです。

       

医療機関が「アルツハイマー型認知症」の診断を行う際は、この「二重の過ち」を犯している「DSM-4」に依拠して診断が行われるので、回復が可能な早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ)と「中等度認知症」(中ボケ)を見落としてしまい、回復が困難な末期の段階である「重度認知症」(「大ボケ」)でしか見つけられないでいて、「アルツハイマー型認知症」を原因不明で治らない病気と誤解しているのが実態なのです。

       

上記「2つの過ち」については、次の「3つの根拠」を指摘できるのです。1つ目は、「アルツハイマー型認知症」の早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ)或いは、「中等度認知症」(中ボケ)の段階で見つけると、脳のリハビリによって、脳の機能が正常レベルに回復してくる(認知症が治る)ことです。2つ目は、神経心理機能テストとして世界的に活用されている「MMS」により、脳の後半領域の衰えて行く状態を調べてみると、MMSで測定される脳の機能に衰えて行く順番がある(出来なくなっていく項目の順番に明確な「規則性」がある)ことです。最後の3つ目は、このブログでたびたび予告し指摘してきたように、東日本大震災の主な被災地である岩手県、宮城県、福島県に居住するお年寄りたちの間で極めて多数の「アルツハイマー型認知症」を発病(新規の発病及び症状の急速な重症化の進行)する人達が確認されてきており、その数の「異常な多さ」は、この先さらに注目されていくことになるということです。

       

マスコミ報道によると、見解を求められた東北大学の或る教授は、東北3県で起きている最近の状況についてそれを「異常な現象」だとコメントしています。これは、「異常な現象」ではなくて、「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムに係わる「構造的な問題」なのです。「アルツハイマー型認知症」が、脳の使い方という視点からの「生活習慣病」であるという私達の主張が疫学的に証明される結果となっているに過ぎないからです。「異常な現象」などという誤った見方をしてこのまま放置していると、この先、これらの地域に居住するもっと多くのお年寄り達が、「アルツハイマー型認知症」を発病(新規の発病及び症状の急激な重症化の進行)することになり、マスコミが大騒ぎするような極めて大きな社会問題となってくるはずなのです。(「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムについては、ここをクリック)。

 これまで、認知症の専門家たちから「原因不明で、治らない」と言われてきた「アルツハイマー型認知症」は、脳の使い方という視点からみた「生活習慣病」であり、「早期発見」、「早期治療」が大切な普通の病気だったのです。早く見つける程、回復する可能性が高いのです。その上、「前頭葉」を含む脳全体の活性化という「生活習慣の改善」により、予防することもできるのです。

「軽度認知症」(小ボケ)で見つければ、簡単に治せます(回復容易)。

「中等度認知症」(中ボケ)で見つければ、手間はかかり大変だけど、家族の協力があれば何とか治せます(回復可能)。

「重度認知症」(大ボケ)で見つけたのでは、見つけても手遅れ、どんなに頑張っても治らないのです(回復困難)。

            

 認知症の専門家達は、「アルツハイマー型認知症」の末期段階の大ボケの症状(特に、重度の記憶障害の症状)を物指しとして見つけます。それでは、見つける段階が遅すぎるので、せっかく見つけても治らないのです。貴女のお父さんも、末期の段階で見つけられていて、アルツハイマー型認知症との診断を受けているのです。もっと早い段階、回復可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」)で見つけられるように、医療機関が見つける方法を変える必要があるのです。

医療機関は、よくCTやMRIを使いますが、CTやMRIなどで脳の萎縮を調べても、「アルツハイマー型認知症」の早期の段階を見つけることはできません。回復可能な早期の段階を見つけるには、「二段階方式」に代表されるような「神経心理機能テスト」の活用による「前頭葉」の機能レベルの変化を含む脳の働き具合を調べる方法に変える必要があるのです。但し、神経心理機能テストの活用は、回復可能な早期の段階を正確に見つけることができるのですが、保険点数が低すぎるため医療機関としては、高額なCTやMRIとの併用でないと事業的にペイしないので、単独では神経心理機能テストを活用出来ないことが大きなネックになっているのです。

             

 ところで、このブログで「アルツハイマー型認知症」からの「回復の方法」と言うときは、「小ボケ」と「中ボケ」だけを対象として回復の方法を説明しています。「大ボケ」の段階にまで脳の機能が衰えてくると、正常レベルに回復させることは無理だからです。「中ボケ」の段階に回復させることさえも、相当に困難と言わざるをえません。

理由は、「大ボケ」の段階にまで脳の働きが衰えてきていると、とりわけ脳の司令塔の役割をしている前頭葉」の三本柱の機能(「意欲」、「注意の集中力」と「注意の分配力」)が殆ど働かなくなってきているので、どんな「生活改善」(脳の使い方としての「生活習慣」の改善)策を実施しようにも、本人の三本柱の機能がそれに反応することが出来ず(改善策の意味を理解できないし、継続的に実行する意欲が出てこないし、実行に必要なレベルでの注意の集中や分配の機能も働かない)、生活改善の実質的な効果が出てこないからなのです。

情報を伝達する神経線維の働きに問題があるのではなくて、情報を発信する源である脳自体が機能していないことが原因なのです。(脳の働きと神経線維との関係は、ポンプとチューブの関係とおなじであり、ここをクリックしてみてください)

             

(コーヒー・ブレイク)専門家(研究者や医師)は、早くこのことに気付いて欲しいのです。しばしば取り上げられる「老人斑」とか「神経原繊維変化」とかは、「アルツハイマー型認知症」を発症させる原因ではないのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続の下で、脳が加速度的な廃用性の機能低下を起こしていくことの副産物(結果)であって、原因ではないのです。その副産物(結果)を生み出す犯人として、アミロイドベータとかタウタンパクを追いかけている限り、何時まで経っても真犯人(原因)を見つけることが出来ないばかりか、解決策(治療の方法)を見出すこともできないのです。東日本大震災の主な被災地である岩手、宮城、福島の極めて多人数の高齢者たちが、アルツハイマー型認知症を発病(新規の発病及び症状の重症化の急激な進行)してきていると言う事実が、「アルツハイマー型認知症」は生活習慣病であるという私たちの主張を疫学的に証明しているのです。

注)本著作物(このブログA-53に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

         エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

    

 

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