「アルツハイマー型認知症」は、日常生活を送る中で出番が極端に少ないため(使われる機会が少なすぎる)「廃用性の機能の低下」が起きてくることが原因の病気であって、老人斑の生成とか神経原線維変化等の器質の変化が起きてくることが原因の病気ではないのです。私たちは、老人斑の生成とか神経原線維変化等の器質の変化は、「廃用性の機能の退化」の進行の副産物(「結果」)だと考えています(N-05を読み返してみてください)。
認知症の初期の段階である「軽度認知症」(小ボケ)は、左脳と右脳と運動の脳は正常レベルなのですが、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の働きだけが異常なレベルに衰えてきているのです。
そのため、前頭葉の機能の中で最も基礎的で且つ重要な働きであり、意識の構成要素に対する「認知度」を左右している「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」が的確、且つ十分に働かなくなっているのです。その結果、行為の目的であるテーマ自体とテーマの中身を構築している構成要素に対する認知機能が正常なレベルで働いていないのです。更には、認知している各構成要素の内容について、「記銘」、「保持」及び「想起」の機能の発揮も不十分なものとなっているのです。簡単に言うと、日常の「社会生活」面で発生してくる種々のテーマを実行するのに必要となるレベルでの認知機能が十分機能していないのです。こうした条件下で行われるため、状況の判断、実行テーマの計画と内容の工夫、機転や見通し及び決断等が的確にできなくなるのです。 こうした事態は、「空気ポンプ」に例をとって説明すれば、空気をチューブに送る役割のゴム管部分に支障があるからではなくて、そもそもチューブに空気を送り込む働きをするポンプの部分の機能がちゃんと働いていないせいなのです(N-15を読み返してください)。
10棟30人ほどが暮らしている、或る「仮設住宅」地を訪問してみたとしましょう。役場の人がやってきて、「1人当り3000円の給付金を渡すので、みんなが元気になるような催し物をやってください。内容は、自由です」と言う話なのです。リーダー格3人を選んで、催し物の企画を練ってもらうのです。3人の共同企画ではなくて、それぞれが企画した案を出してもらうのです。3人が出してきた案は、「3人3様」で、それぞれの「人柄の特徴」(その人独自の評価基準の表れ)があふれ出ている内容でした。
役場が費用を負担してくれるかどうかは置いといて、似たような経験を皆さんお持ちでしょう。「置かれている状況を判断して、何をどのようにするかを企画し、あれこれの視点からシミュレーションしたうえで、最終的な内容を選択し実行する」それが「前頭葉」の機能だと言いました。それは、前頭葉に内在する「評価の基準」の機能が確立されていてきちんと働いているおかげでもあるのです。こうした意思決定のいろいろな過程で必要となる「前頭葉」の機能の働き方が揺らいできている段階が、「軽度認知症」(小ボケ)のレベルなのです。余談になりますが、「自我の確立」という見方があります。私たちは、そのことを脳の機能と言う視点から言えば、「前頭葉の評価及び意思決定機能の確立」であると考えています。そんな働きをする前頭葉が、壊れてもいないのに異常なレベルに機能が衰えてきたとき(私たちの見解では、不十分にしか使われないことで、異常なレベルに廃用性の機能退化が進んできているとき)、薬さえ飲めば元の正常な機能レベルに回復できるなど理解できないのです。
「軽度認知症」(小ボケ)のレベルでは、「社会生活」にトラブルが出てくるようになるのです。
「軽度認知症」(小ボケ)のレベルになると、発想が湧いてこないし、見通しも立たないし、何をどうするのかという「テーマの構想と計画や工夫」が的確に出来なくなるのです。意欲が出てこなくなって、毎日ボンヤリと過ごし、居眠りばかりするようにもなります。その人らしい生活態度が消えていき「こんな人ではなかった」と、周りから言われるように「人柄の本質」自体が変わっていくような症状を示してきます。
「小ボケ」のイメージは、何事も人を頼るようになって、一日や一週間の計画も立てられず、指示してもらわないと動けない「指示待ち人」が特徴です。
小ボケに特有の具体的な症状は、次回に整理して報告します。
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