認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

「アルツハイマー型認知症」の発病とその「キッカケ」 (A-65)

2012-10-25 | アルツハイマー型認知症に対する正しい知識

  私達はふつう、第一の人生を自分なりに頑張って生きてきて、高齢者と呼ばれる60歳以降の年齢になってから、第二の人生に入っていきます。第二の人生を送る私達の日々に何事も起きてこなければ、脳は「正常な老化のカーブ」を描きながら、それなりに目標がある生活を送る中で、生き甲斐や喜びが得られる日が時々はあり、「社会生活」にもかかわりながら、静かに毎日が過ぎて行くはずなのです。超高齢化社会を生きるお年寄りの皆さんは、「身体」は丈夫なのですから。そうした平穏で安定した日々を過ごしているお年寄りが、「軽度認知障害」の考え方を主張する人たちが言うように、知らず知らずのうちにアミロイドベータやタウ蛋白に神経細胞が侵され脱落していくことにより、記憶の機能を中心とした脳の機能の低下が深く潜行しつつ、何年もかかってアルツハイマー型認知症の発病に向かって、進行していっている」訳ではないのです。こうした考えは、単なる推測に基づく「仮説」であって、原因と結果についての「因果関係」は何ら確認されていないのです。

「軽度認知障害」と判定される人たちには、「特定のパターンの脳血流の変化が確認される」とするその主張にも同意することはできません。そもそも意識的に何かの「テーマ」を実行する(しようとする)ときは、それに伴う脳の血流が起きるものなのです。しかも、「テーマ」の内容によって関連する脳の機能部位の働き方が異なるので、それに付随して血流量も変化するだけなのです。問題の核心は、意識的に何かの「テーマ」を実行する(しようとする)ことによって、脳のどのような「部位の」どのような「機能が」どのような「レベルで」どのように「働くのか」にあるのであって、脳血流の変化はその単なる反映に過ぎないのです。もしも特定のパターンを取り出すことができるとすれば、前頭葉の三本柱である「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」の機能レベルとそれに直接リンクした「症状」との組み合わせでしか特定のパターンを確認することはできないはずなのです。

      

私たちが主張している軽度認知症(小ボケ)、中等度認知症(中ボケ)、重度認知症(大ボケ)の三段階に症状を区分して、且つ三本柱の機能に特化してデータを集積すれば(症状とリンクさせた場合に限り)、三段階に区分された特定のパターンを検出することは可能だと思うのですが、肝心の「軽度認知障害」の考えを提起している人達の中には、私達のような考えを持っている(データに基づく、ノウハウを持っている)人は見当たらないのが実情です。「前頭葉」の三本柱の機能発揮度を測定できる特定内容の「テーマ」の実行及びそれに付随する三段階に区分される症状とリンクさせることをしないで、前頭葉の血流変化だけでのパターンを特定することは困難だというのが私たちの見解です。最新の光トポグラフィーを採用した「うつ病」の診断でさえ、その精度はまだまだ不確実な面を有するのです。「軽度認知障害」のレベルで認められる特徴的な症状とされるものについて、その時の脳の働き具合を特定のパターン化することは、「うつ病」の場合とは次元が異なるほどの複雑な脳機能の相互発揮の関係及び関連する脳機能の発揮の程度と態様とがあるので、極めて困難な問題だと考えるのです。

「加齢による脳の老化」という「アルツハイマー型認知症」発病の(第一の要件)は、第二の人生を送っているお年寄り全員に共通のものなのですが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という(第二の要件)は「アルツハイマー型認知症」を発病するお年寄りだけに(特有なもの)なのです。私達の「二段階方式」を活用するときは、「アルツハイマー型認知症」を発病した「小ボケ」及び「中ボケ」レベルのお年寄りたちの全員を対象として、発病の前後の期間の数年間についてどのような脳の使い方をしてきたのか、言い換えるとどのような「生活習慣」のもとで毎日を過ごしてきたのかという詳細な「生活歴」を、本人とその家族から必ず聞き取ることが様式化されています。この場合、脳の機能レベルが「中ボケ」だと、現在の自分の状況(「中ボケ」レベルの生活の自立度)に対する認識さえないので、本人からではなくて家族(できれば、同居の家族)からの聞き取りが必須となります。

脳は正常な老化のカーブを描きながら、それなりに目標がある生活を送る中で、生きがいや喜びが得られる日が時々はあり、静かに毎日が過ぎて行く。そんな第二の人生を過ごしているお年寄りが、脳の老化を速める原因となるナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まる「キッカケ」となる「生活状況」の発生に遭遇することになるのです。「アルツハイマー型認知症」を発病した極めて多数のお年寄りを対象とする「生活歴」の聞き取りの結果、「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳の機能の老化を加速させる原因となるナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるには、発病した全員について、「キッカケ」となる明確な「生活状況」の発生が必ず存在することが確認されるのです。言い換えると、「キッカケ」となる生活状況の発生という明確な理由もなしに、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まることにはならないのです。但し、或る「生活状況」の発生が「単調な生活」が始まる「キッカケ」となるかどうかは、遭遇した「生活状況」に対する「本人の受け止め方次第」だということにも注意が必要です。

脳の老化を速めるナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まる「キッカケ」となる「生活状況」の発生とは、どんなことを言うのか。要約すると、次の2点に集約されます。分かりやすくするために、ここでは典型的な事例をとりあえず3例ずつ挙げておきます。

(それまでの生活の中で、 生きる意欲を支えてきた「核となる生活」が継続できなくなってしまう状況が発生すること)

○ 趣味も遊びも交友もなく、仕事一筋の人生を送ってきた人の「定年退職」

○ 趣味だけが生き甲斐の人が、その「趣味を中止」せざるを得なくなる状況が発生すること

○ 親や兄弟、子や孫、友人、ペットなど大事な人や動物との「別離」

( 頑張って生きて行こうとする意欲をなくしてしまうような「問題や状況」が発生し継続されること)

○ 自身の重い病気や大きなけがなど肉体的精神的に「困難な状況」

○ 子供の失業や借金問題、孫の不登校など家庭内の「重大な問題」

○ 重大な災害の被災により、財産や家族や友人や思い出を失うこと

同じような「生活状況」が発生しても、状況の発生に対する個人ひとりひとりの受け止め方が異なるので、「生活状況」発生後の「生活習慣」(日々の脳の使い方)は、それぞれに違うのです。その意味で、ここに取り上げた状況(「キッカケ」)が、ナイナイ尽くしの「単調な生活」に必ず直結するものではないので誤解しないでください。或る人は、ここに取り上げたような「生活状況」の発生が「キッカケ」となって、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるのに対し、或る人は「生活状況」の発生があっても「キッカケ」とはならないで、日々の生活をそれなりに楽しんでいくことができるのです。このことは、以下の例示のように、具体的に考えると理解しやすいと思います。「定年退職」で仕事を取り上げられてすることもなくなり、3年もたつと見る影もなく衰えボケてしまう人もいれば(この段階では、未だ「小ボケ」)、「定年退職」で自由な時間がいっぱいできたのをきっかけに、自分なりに趣味や遊びや人づきあいを楽しんで、生き生きと生活していく人もいます。或いは、世間でよく言われるように、「夫を亡くしたおばあさん」は半年もたつと楽しげに生活をエンジョイするようになることが多いのに対し、同じように「妻を亡くしたおじいさん」の多くは次第に元気をなくしていくことが多いのです。

上述のキッカケとなる「生活状況」が発生しても、従来どおり生活をそれなりに楽しめて元気を失わない人と、「生活状況」の発生を契機に生活を楽しめなくなり元気をなくしていく人との違いを生じさせる「理由」を理解するためには、「生活状況」が発生した前後数年間のその人の「生活習慣」(脳の使い方)を、その人の目線に沿って、具体的にチェックしてみる必要があります。前者と後者とを分けるキーポイントは、発生した「生活状況」を当の本人がどのように「受け止めたのか」にあるからです。どのような「受け止め方」が、それなりに「生き甲斐や目標」があって楽しめる生活から、ナイナイ尽くしの「単調な生活」へと「生活習慣」を変化させることになるのかを理解することが、指導する「生活改善」の内容を組み立てる上でとても大切だからです。

「アルツハイマー型認知症」を発病することになるかならないか、それは最終的には、「生活状況」の発生に対する「本人の受け止め方」次第ということになるのです。

人生の大きな出来ごとの発生や生活環境の大きな変化という「生活状況」の発生に対して;

○ 「大きな障害」と受け止めて負けてしまい、そのため意欲をなくしてしまって、「目標」となるものがなくなり、「前頭葉」を使う場面が極端に減った生活に変わってしまった(「キッカケ」になった人);又は

○ 「大きな障害」と受け止めず負けないで、そのため意欲を失わず、「目標」となるものがあるので、「前頭葉」を使う場面がそれなりにある生活が従来通り継続している(「キッカケ」にはならなかった人)のです。

これまでの説明で理解していただけていると思いますが、「アルツハイマー型認知症」の発病を回避するには、ナイナイ尽くしの「単調な生活の継続」という第二の要件の充足を回避しなければならないのです。

第二の要件の充足を回避するには、上述した事例に見るような「生活状況」が発生した時、その「生活状況」に本人が負けないことが必要不可欠となるのです。「アルツハイマー型認知症」の発病を左右する原因は、脳の委縮でも、アミロイドベータでもタウタンパクでもないのです。その時遭遇した「生活状況」を「キッカケ」として、ナイナイ尽くしの「単調な生活」に入っていったことが原因となるからです。

第二の人生を送っているお年寄り(特に、東日本大震災の被災者である高齢者)は、このことを深く心に留めておいて欲しいのです。上述した「生活状況」の発生に遭遇した時は、その状況に対して自分が取るべき脳の使い方(「生活習慣」)に十分注意して欲しいのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まる「キッカケ」としないように、是非とも頑張って欲しいのです。本人の頑張り、踏ん張りが第一なのですが、家族からの支えも必要なことは言うまでもありません。何であれ、「目標」を持てるような生活状況でも心境でもないという方は、とりあえず歩いていただきたい(速足での散歩)のです。この点についての詳細な説明は、(ここを「クリック」してください)。

注)本著作物(このブログA-65に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

次回は、「キッカケ」の詳細について、事例を挙げながら解説する予定です。

エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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