
神戸文学館を出て、海から吹き上げる風を心地よく感じながら、阪神電鉄の岩屋駅に戻ります。大阪方面へ戻ること4駅、次の下車は石屋川駅です。
御影公会堂という歴史ある建物があって、その中で営業をしている御影公会堂食堂という洋食屋が結構人気があるらしい。では昼食にと思って目指したのでした。駅から石屋川という川を200mほど上ると到着です。
確かに歴史があります。早い話が古い。件の食堂は地階にあるのですが、一見さんでもちゃんとわかるように、大きな看板が出ています。公会堂そのものが閉館であっても入れるように、外から直接食堂への階段も作られています。12時少し前。私が入ると先客が2組ありました。一組は家族連れ、もう一組はカップルでした。こんなところに一人でやってくる客ってどうよと思いながら座ります。人気だというオムライスのセットを注文しました。サラダとスープがついて、850円也。
そんなに広い店内ではありません。30人も入れば一杯になってしまうでしょうか。窓は、ラウンドしていて、地階にも光が届くようになっています。フロアは2段になっていて、窓に近いほうが低い。立体的に見せる工夫でしょうか。アップライトピアノもあります。絵画もたくさん掛かっています。それからスピーカーのブランドはTRIO。どう見ても今風ではありません。昭和の香りとかレトロなんていうのは安直かもしれません。公会堂の開業時からずっと営業している、由緒ある洋食屋だそうですが、そういう気取りもありません。スタッフの女性も気さくな応対でした。
オムライスの到着を待つ間、どんどんグループ客や家族連れがやってきて、そのうちドアの外で待たされる客も1組生まれました。人気があるんでしょうね。それに、ふと気づくと、「予約席」と書かれたプレートが置かれているテーブルが2脚。予約をしてまで食べたいということですね。
私のオムライスがやってきました。実は、オムライスというものをお店で食べたことがほとんどありません。もしかしたら初めてかもしれません。ですから、美味いの不味いのってまったく言えないのですが、ふわっとした印象です。それに、手前にかかっている赤い色のソースは、ケチャップではありません。トマト由来のものだと思いますが、もう少し上品な味のように思います。これを少しずつつけながら食べるわけですね。満足です。もう少しゆっくりと寛ぎたい気持ちもあるのですが、ドアの外のお客さんも気になるので、支払いをすませて店を出ました。支払いのときスタッフの方に、「予約できるのですか」と聞いてみたら、「はい、できますよ。お願いします」と名刺をくれました。
食堂を後にしたら、公会堂の探検です。建物内部の階段を上ると1階。1000席のホールのドアがあって、覗き窓から中が見えます。ホールというよりは学校の体育館か講堂のようなシンプルな造りです。かつては、神戸市内で一番大きなホールだと誇っていた時代もあったそうです。
それから一階の正面玄関の対面に嘉納治兵衛氏の小さい像。実は、この御影公会堂の建設のために私財を投じたのが白鶴酒造の嘉納治兵衛氏。実業家が地域の文化のために社会貢献をし、1933(昭和8)年、御影公会堂は竣工します。こういう実業家の貢献が阪神間モダニズムを支えているのです。
三階まで階段で上がってみました。映画のセットかと思うほど昔のままです。トイレまで写真を撮ってしまいました。また、張り紙も雰囲気があります。2階の会議室のドアが開いていたので覗いてみましたが、ラウンドしている面が全面ガラスになっています。完成した当時は、この明るさが自慢だったでしょうね。
表から眺めてみます。南側が正面で国道2号線に面しています。地階から三階まで南西のカドを丸くラウンドしてあるのが特徴なんでしょう。この2号線、何度も通っているはずなのですが、公会堂には気づきませんでした。
駅までの帰りは石屋川の西側、石屋川公園を通ってみます。すると、「火垂るの墓」のモニュメントがありました。野坂昭如の「火垂るの墓」には、この御影公会堂が登場するそうです。
(つづく)
現場は国道2号線沿いです。交差点に御影公会堂前という案内が出でいます。広くはないけれど、公会堂の前にクルマは停められます。それから、予約をしておくのがベターです。