ワグネルは活動期間が長く、ロシア国内では一番大きな傭兵組織です。ウクライナ紛争前は、ロシア国外が活動の舞台でした。今、内戦が起こっているスーダンやシリア、その他アフリカの政情不安な国々。
ロシア政府の意をくんでロシアの政府機関の代わりに様々な活動を行い影響力を及ぼしてきました。その中には戦争犯罪に該当するような行為もあります。簡単に言うとロシアの汚れ仕事を代行しているのが実情でしょう。以前は、ロシア政府は傭兵組織の存在を否定し、ワグネルのオーナーもワグネルとの関りを否定していました。
ウクライナ紛争でワグネルの傭兵組織の有用性が証明されて、ロシア国内でおおっぴっらに活動するようになりました。
しかし、ワグネルのオーナーは、何らかの野心のある人物です。去年からロシア軍批判を繰り返しています。それでもロシア国内で無事でいられる訳は、独裁者にとって役に立つからです。
ロシアの民間軍事会社25社がウクライナ侵略に参加…公金を資金源、全社がプーチン政権と関係
2023・5・1
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230501-OYT1T50034/
実際には、ロシア国内には多数の傭兵組織があり25社がウクライナでの戦闘に参加しているようです。なぜ、こうするのかと言うと1つには、傭兵組織の犠牲者はロシア軍の犠牲には、カウントしません。戦闘による被害を実態より少なくする(数字上)事が出来ます。
2つ目には、使い捨てにすることが出来ます。便利だと言うことです。
3つ目には、独裁者はどこでも同じですが軍事組織を複数作り互いに牽制させて支配しようとします。ロシアでは、ロシア軍のほかに「ロシア国家親衛隊」と言う組織があります。正確には軍事組織ではありませんが、実質的には準軍事組織であり、しかも独裁者直属の組織です。その数40万人くらい。ロシアの正規軍をけん制するには十分な規模です。
このような軍事組織の均衡を保つための装置が、民間軍事会社=傭兵組織であると言えます。
その中でも大きな組織が、ワグネルです。そしてロシアの正規軍とは、常に仲が悪いです。
「プリゴジンは用済みなのに気づかないだけ、これからは正規軍が主役に──ISW分析」
2023年1月30日(月)18時10分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/01/post-100735.php
そのような事情によりロシア軍の関係者は、ワグネルの排除に動きます。しかし、ワグネルはロシアの独裁者の直属の組織ですから、それを実力を持って行うことは出来ません。独裁者の信頼または支持のあるうちはロシア軍には手出しが出来ません。そのため弾丸の供給を絞るなどの嫌がらせをしている訳です。
ロシア軍筋の軍事ブロガーは、ワグネル批判をしてワグネルを排除する手助けをしている構図です。
ワグネルが「軍事的反乱」を企てる──元ロシア軍情報将校
2023年5月1日(月)17時33分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/05/post-101548.php
こんな噂を煽り立てたりしています。ロシア軍関係者としては、何としてもワグネルを排除したい意図が見えます。いくら何でも反乱を企てていれば、独裁者が排除するでしょう。
ロシア軍事会社創始者プリゴジン「ワグネルは近く消滅する」 軍からの弾薬不足に不満か
2023年5月1日(月)13時51分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/05/post-101545.php
一方でワグネルのオーナーは、バフムトの戦場から部隊を撤退させたいと考えていると思います。ウクライナ軍の反撃が予想され、ロシア軍は苦戦が見込まれるからです。負け戦に参加してワグネルの部隊が壊滅するのは、避けたいでしょう。そこで弾薬不足を口実に撤退を探っていると思います。ワグネルが優勢で戦っていた内は、戦う意味がありました。ロシア国内への宣伝です。バフムトの兵力はロシア軍が主力を占め、ワグネルに美味しいところはありません。
ワグネルは、ロシア国内で大きな軍事会社ですが実際には多数の民間軍事会社が存在しウクライナの戦場に参加しています。
ワグネルはその中でも規模が大きく海外での活動実績は、ずば抜けています。ワグネルのオーナーには野心に近いような意図があるようです。そんな事情があり、大きくなりすぎたワグネルをロシア軍は排除しようとしています。しかし、独裁者とコネのあるワグネルを簡単に排除することも出来ません。
ワグネルの関して様々な情報が錯綜するのは、このような事情によります。良い悪いの問題ではなく、ロシア国内の権力闘争の一部です。