木うそにはモデルとなっている鷽という鳥がいます。
鷽という鳥の名前の由来は、口笛に似た鳴き声に由来しています。
口笛を吹くという意味の古語は「うそぶき」「うそぶく」で、
貝原益軒が宝永6(1709)年に著した『大和本草』のなかにも、
「雄をテリウソ(照鷽)と云紅し、雌をアマウソ(雨鷽)と云、
アカカラス、其声嘯如し。故に名つく」とあります。
大きさはスズメよりもやや大きめの鳥で、頭と尾が黒く、
オスはのど部分が赤色をしています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/a9/4510277f6d1c0ad776f43c46ae0a4474.jpg)
(この写真は木うそ保存会会員の宮崎さんが撮影されたものです。)
この鳥には太宰府で様々な伝承が残っています。例えば、
「菅原道真が自分の潔白を天に伝えようと天拝山に登って、行を行って
いました。満願成就の日、大量の熊蜂がやってきて、菅原道真の行の邪魔
をしました。すると何処からともなく鷽が飛んできて蜂を退治し、無事に
満願成就を果たすことができた。」
「菅原道真が亡くなり、霊廟(安楽寺)を建立していると、材木に大量の
虫が発生し、工事が進まなくなった。すると何処からともなく鷽が飛んできて
虫を退治してくれた。そして、無事に安楽寺(現在の太宰府天満宮)を建立
することができた。」
「昔追儺祭(鬼すべ)の時、御堂の中に熊蜂が巣くっていて、祭りが始まった
矢先、蜂が驚き怒って、奉仕の人々を刺し狂ったので、その後は祭事に、蜂を
好んで喰う鷽の形のものを手にするようになった。」
などがあり、鷽と太宰府天満宮の関わりが伝えられています。
鷽は太宰府天満宮やその祭事に降りかかる災難から救ってくれる幸運の鳥なのです。
太宰府周辺で聞き取り調査をすると、
「子供のころ、道端で蜂に出逢ったら、ヒューヒューと口笛を吹いていた。
鷽鳥の鳴き声を真似たら、蜂が逃げると教えられていた。」
という話を聞くことがありました。
鷽の名前の由来と伝承が息づいていた証拠です。
ただ、どの伝承でも蜂(虫)を喰らう鳥とされていますが、桜などのつぼみを好み、
虫は繁殖期に食べることがある程度です。伝承の大らかさは魅力的ですよね。
(東北などでは桜見に影響するくらいつぼみを食べてしまうため、害鳥と言われてる
そうです。)
鷽は1月末~3月初旬くらいまで、太宰府周辺に飛来しています。
出没スポットは、四王寺山や宝満山、宇美八幡宮の裏山あたりだそうです。
木うそを作っているにも関わらず、未だに鷽に遭遇した木うそ保存会の会員
は少なく、本物に逢ってみたい今日この頃です。