蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

『エネミー・オブ・アメリカ』

2017-05-05 | 音楽
という映画をNHK-BSでやっていたから、観た。いつもの大味なハリウッド・アクションかと思ったら、なかなか示唆的で面白い。

何が面白いって、NSA(アメリカ国家安全保障局)という実在の情報機関を、あたかも悪の巣窟のように描いている。盗聴器やら望遠カメラやらGPSやらを駆使して一般市民の電話も会話も盗聴し、あらゆる行動を密かに監視していることを暴き立てる。

で当然、こりゃエドワード・スノーデンの告発に触発された映画なんだろうなと思ったら、驚いたことに1998年の作品だった。告発の15年も前じゃん。

NSAの存在も活動も、その危険性も、一般にはまだそれほど認識されていなかった時代に、近づくとヤバそうなこの秘密組織の内幕を、商業映画がアクションのネタにしたことが面白い。NSAが悪事を働く理由が個人の自由を制限する法律を成立させるため、てことになってるのがまた面白い。

エンタメの体裁を採りながら、公権力の横暴を許したら市民の人権がどれだけ侵害されるかを、これでもかってぐらい克明に具体的に描き出す。

『エネミー〜』は別に正面切った権力批判映画なんかでは全然ないが、底流にはハリウッド・リベラルの気骨が見える。たとえて言うなら、安保法制や共謀罪に反対するメディアに官邸が密かに圧力を掛ける、なんて内容の映画を松竹か東宝が作ったようなものだ。ありえない。

この映画を憲法記念日の翌日、共謀罪の審議中にNHKが放送したのは、偶然? もし意図的だったなら、少しは見直すんだけど。
コメント
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