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女装子愛好クラブ

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明智探偵の命令に小林少年は...

2009年04月19日 | ★女装の本・雑誌
江戸川乱歩の小説には、かなり女装シーンが出てきます。
小林少年も事件解決のために.....


江戸川乱歩著「少年探偵団」(ポプラ社)から

 ああ、なんだか心配ではありませんか。怪盗二十面相は、どんな魔術によって、黄金塔をぬすみたそうというのでしょう。
 名探偵は、はたしてそれをふせぐことができるでしょうか。探偵と怪人の一騎うちの知恵くらべです。悪人は悪人の名まえにかけて、名探偵は名探偵の名まえにかけて、おたがいに、こんどこそ負けてはならぬ真剣勝負です。

 それと知った助手の小林少年は、気が気ではありません。どうかこんどこそ、先生の手で二十面相がとらえられますようにと、神さまに祈らんばかりです。
 「先生、何かぼくにできることがありましたら、やらせてください。ぼく、こんどこそ、命がけでやります」
 大鳥氏がたずねてきた翌日、小林君は明智探偵の書斎へはいっていってお願いしました。
 「ありがとう。ぼくは、きみのような助手を持ってしあわせだよ」

 明智はイスから立ちあがって、さも感謝にたえぬもののように、小林君の肩に手をあてました。
 「じつは、きみにひとつたのみたいことがあるんたよ。なかなか大役だ。きみでなければできない仕事なんだ」
 「ええ、やらせてください。ぼく、先生のおっしゃることなら、なんたってやります。いったい、それはどんな仕事なんです」
 小林君はうれしさに、かわいいほおを赤らめて答えました。
 「それはね」
 明智探偵は、小林君の耳のそばへ口を持っていって、なにごとかささやきました。
 
 「え? ぼくがですか。そんなことできるでしょうか」
 「できるよ。きみならば大じょうぶできるよ。ばんじ、用意はおばさんがしてくれるはずだからね。ひとつうまくやってくれたまえ」
 おばさんというのは、明智探偵の若い奥さん文代さんのことです。
 「ええ、ぼく、やってみます。きっと先生にほめられるように、やってみます」
 小林君は、決心の色をうかべて、キッパリと答えましたl
 名探偵は何を命じたのでしょう。小林君が「ぼくにできるでしょうかと、たずねかえしたほどですから、よほどむずかしい仕事にちがいありません。いったい、それはどんな仕事なのでしょうか。読者諸君、ひとつ想像してごらんなさい。

―――中略――

「それは、ぼくが命じて置きかえさせたのですよ」
 明智探偵は、あいかわらず落ちつきはらって答えました・
「え、あなたが? だれにそうお命じなすったのです」
 大鳥氏は、意外につぐ意外に、ただもうあきれかえるばかりです。
「おたくには、つい近ごろ、やといいれたお手伝いさんがいるでしょう」
「ええ、います。あなたのご紹介でやとった千代という娘のことでしょう」・
「そうです。あの娘をちょっとここへよんでくださいませんか」
「干代に、何かご用なのですか」
「ええ、たいせつな用事があるのです。すぐ来るようにおっしゃってください」
 明智探偵は、ますますみょうなことをいいだすのでした。

 大鳥氏はめんくらいながら、すぐさま千代を呼びよせました。読者諸君はご記憶でしょぅ、千代というのは、たびたび奥座敷をのそいていた、あのかわいらしい怪少女なのです。
 まもなく、りんごのようにあでやかなはおをした、かわいらしいおさげの少女が、座敷の入り口にあらわれました・

 「ここへきてすわりなさい」
 探偵は少女を自分のそばへすわらせました。そして、黄金塔、置きかえの説明をはじめるのでした。
 「大鳥さん、あなたがたが、ほんものの塔を、床の下へうめようとしていらしたとき、裏の物置きに火事がおこりましたわ」
 「ええ、そうですよ。よくごぞんじですわ。しかし、それがどうしたのですか」
 「あの火事も、じつはぼくが、ある人に命じて、つけ火をさせたのですよ
 「エッ、なんですって? あなたがつけ火を? ああ、わしは何がなんだか、さっぱりわからなくなってしまいました」

 「いや、それには、ある目的があったのです。あなたがたが火事に気をとられて、この部屋をるすになっていたあいだに、すばやく黄金塔の置きかえをさせたのですよ。床下にかくしてあったのを、もとどおり床の間につみあげ、床の間のにせものを、床下へ入れておいたのです。火事場から帰ってこられたあなたがたは、まさか、あのあいだに、そんな入れかえがおこなわれたとは、思いもよらぬものですから、そのまま、にせもののほうを床下にうずめ、床の間のほんものをにせものと思いこんでしまったのです」

 「へえー、なるほどねえ、あの火事は、わたしたちを、この部屋から立らさらせるトリックたったのですかい。しかし、それならそうと、ちょっとわしに言ってくださればよかったじぞありませんか。何も火事までおこさなくても、わし自身で、ほんものとにせものとを置きかえましたものを」

 大鳥氏は不満そうにいうのです。
 「ところが、そうできない理由があったのです。そのことはあとで説明しますよ」
 「で、その塔の置きかえをやったというのは、いったいだれなのですね。まさかあなたご自身でなすったわけじゃありますまい」
 「それは、このお手伝いさんがやったのです。 この人は、ぼくの助手をつとめてくれたのですよ」
 「へえー、千代がですかい。こんなおとなしい女の子に、よくまあそんなことができましたねえ」
 主人はあっけにとられて、かわいらしい少女の顔をながめました。
 
 「ハハハ……、千代は少女ではありませんよ。きみ、そのかつらを取ってお目にかけなさい」
 探偵が命じますと、少女はにこにこしながら、いきなり両手で頭の毛をつかんたかと思うと、それをスッポリと引きむしってしまいました。すると、その下から、ぼっちゃんがりの頭があらわれたのです。
 少女とばかりに思っていたのは、そのじつ、かわいらしい少年だったのです。
 
 「みなさん、ご紹介します。これはぼくの片腕とたのむ探偵助手の小林芳雄君です。こんどの事件が成功したのは、まったく小林君のおかげです。ほめてやってください」U
 明智探偵はさもじまんらしく、秘蔵弟子の小林少年をながめて、にこやかに笑うのでした。

 ああ、なんという意外でしょぅ。少年探偵団長小林芳雄君は、小娘のお手伝いさんに化けて、大鳥時計店にはいりこんでいたのです。そして、まんまと二十面相にいっぱい食わせてしまったのです。
 「へえー、おどろいたねえ、きみが男の子だったなんて、うちのものはだれひとり気がつかなかったのですよ。なかなかよくはたらいてくれましたね、いい人をお世話ねがったとよろこんでいたくらいですよ。小林さん、ありがとう。ありがとう。おかげで家宝をうしなわなくてすみましたよ。明智さん。あなたは、いいお弟子を持たれて、おしあわせですねえ」
 大鳥氏は、ホクホクとよろこびながら、小林君の頭をなでんばかりにして、お礼をいうのでした。
(同書から引用)


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