女装子さんの歩き方について書きました。
「はて、このこと、前に書いたことがあるよな」と気づきました。
昨年の6月、『苦い旋律』について書いた記事のなかに、こんなセリフがありました。
流石に照れ臭いので、薄暗くなってアパートを出たのだが、すれ違った職人風の男に、「お姉ちやん、はじめてハイヒール履いたのかよぉ。がに股だぜ!」 と冷やかされた時には、ぞくぞくッと肩先が震えたものであった。
以下、去年6月の記事の再掲です。
梶山季之著『苦い旋律』(1968)を本棚からひばり出して再読しています。
下着メーカーの社長・嘩道征四郎はゲイであり、異性装者です。
その嘩道征四郎のパートナーは性転換したMTFのマルーセル・佐紀です。
そう、このモデルはこの時に性転換手術を受けて女性になったカルーセル麻紀さんです。
いまから50年前に、このような小説が書かれていることに驚きます。
以下の部分は、マルーセル・佐紀の半生が描かれているところの引用です。
……マルセール・佐紀はこのところ、いつにない幸福感に浸っていた。
それは嘩道征四郎の出現によって、訪れたものである。
やっと、女になれた-という実感が、彼女の鉢に、そして精神面にあるのだった。これは性転換の手術をした人間でないと、ちょっとわからない。
子供の頃から、女姉妹のなかで育ち、女の美しい着物や、化粧に憧れつづけてきた佐紀であった。
姉のいない時、そっと着物をだして着てみたり、母親にかくれて化粧してみたりしたことも幾度か。
あるときは、母親にみつかり、泣いて叱られたこともある。そのとき母親は、中学三年生の佐紀に、「男の癖に、なぜ、そんな浅間しい恰好をするのです……。そんなに女になりたかったら、お母さんが化粧してあげるから、これっきり止めて頂戴!」
と云い、自分の手で、佐紀を鏡台の前に坐らせ、入念に化粧を施してくれ、自分の嫁入り衣裳をつけさせてくれたのだった。
その姿は、母親が惚れ惚れする位、あでやかなものだったのだ:・・・。
むろん、それ一度っきりで、佐紀の病いは癒らなかった。
かえって、火に油を注いだようなものである。
佐紀は、女になりたい一心から、高校を中退して、ゲイ・ボーイになったのであった。
天下晴れて、化粧をし、女物の下着や、ストッキングを穿き、スーツを身に纏ったときの嬉しさ。
そして憧れの、踵の高い婦人靴を履き、アパートから店へ通うときの、胸の弾みよう。
流石に照れ臭いので、薄暗くなってアパートを出たのだが、すれ違った職人風の男に、「お姉ちやん、はじめてハイヒール履いたのかよぉ。がに股だぜ!」 と冷やかされた時には、ぞくぞくッと肩先が震えたものであった。
>むすれ違った職人風の男に、「お姉ちやん、はじめてハイヒール履いたのかよぉ。がに股だぜ!」
>と冷やかされた時には、ぞくぞくッと肩先が震えたものであった。
こんなセリフは本人から取材しないと出てこないですよね。
「はて、このこと、前に書いたことがあるよな」と気づきました。
昨年の6月、『苦い旋律』について書いた記事のなかに、こんなセリフがありました。
流石に照れ臭いので、薄暗くなってアパートを出たのだが、すれ違った職人風の男に、「お姉ちやん、はじめてハイヒール履いたのかよぉ。がに股だぜ!」 と冷やかされた時には、ぞくぞくッと肩先が震えたものであった。
以下、去年6月の記事の再掲です。
梶山季之著『苦い旋律』(1968)を本棚からひばり出して再読しています。
下着メーカーの社長・嘩道征四郎はゲイであり、異性装者です。
その嘩道征四郎のパートナーは性転換したMTFのマルーセル・佐紀です。
そう、このモデルはこの時に性転換手術を受けて女性になったカルーセル麻紀さんです。
いまから50年前に、このような小説が書かれていることに驚きます。
以下の部分は、マルーセル・佐紀の半生が描かれているところの引用です。
……マルセール・佐紀はこのところ、いつにない幸福感に浸っていた。
それは嘩道征四郎の出現によって、訪れたものである。
やっと、女になれた-という実感が、彼女の鉢に、そして精神面にあるのだった。これは性転換の手術をした人間でないと、ちょっとわからない。
子供の頃から、女姉妹のなかで育ち、女の美しい着物や、化粧に憧れつづけてきた佐紀であった。
姉のいない時、そっと着物をだして着てみたり、母親にかくれて化粧してみたりしたことも幾度か。
あるときは、母親にみつかり、泣いて叱られたこともある。そのとき母親は、中学三年生の佐紀に、「男の癖に、なぜ、そんな浅間しい恰好をするのです……。そんなに女になりたかったら、お母さんが化粧してあげるから、これっきり止めて頂戴!」
と云い、自分の手で、佐紀を鏡台の前に坐らせ、入念に化粧を施してくれ、自分の嫁入り衣裳をつけさせてくれたのだった。
その姿は、母親が惚れ惚れする位、あでやかなものだったのだ:・・・。
むろん、それ一度っきりで、佐紀の病いは癒らなかった。
かえって、火に油を注いだようなものである。
佐紀は、女になりたい一心から、高校を中退して、ゲイ・ボーイになったのであった。
天下晴れて、化粧をし、女物の下着や、ストッキングを穿き、スーツを身に纏ったときの嬉しさ。
そして憧れの、踵の高い婦人靴を履き、アパートから店へ通うときの、胸の弾みよう。
流石に照れ臭いので、薄暗くなってアパートを出たのだが、すれ違った職人風の男に、「お姉ちやん、はじめてハイヒール履いたのかよぉ。がに股だぜ!」 と冷やかされた時には、ぞくぞくッと肩先が震えたものであった。
>むすれ違った職人風の男に、「お姉ちやん、はじめてハイヒール履いたのかよぉ。がに股だぜ!」
>と冷やかされた時には、ぞくぞくッと肩先が震えたものであった。
こんなセリフは本人から取材しないと出てこないですよね。