
日曜日、たまらなく女装したくなった木島宏は女装仲間の夏彦に電話をかけたのです。
その日は恰かも日曜日だった。
「……夏子さん?」
木島は、女のような声音になった。
「ええ、そう? 宏子かい?」
相手は云った。
「あたし……燃えてるのよ……」
「いいね。どこにする?」
「どっか、遠出しない?」
「いいわね。じゃあ、車で迎えに来てよ」
「わかったわ・・。なにか注文は?」
「そうねえ。こんな趣向は、どうかしら」
「どんな趣向?」
「ほら、金髪のカツラがあるじゃない?」
「ええ、あるわ」
「二人して、外国の女性になるのさ」
「それから?」
「モーテルで変身して、二人でレストランに行くのよ……」
「えッ、レストランヘ?」
「そう。横浜あたりの、さ」
「だって、声をだしたら、男ってことが、バレちゃうじゃないの」
「大丈夫。日本語が話せないふりをして、メニューを指さしたらいいのよ」
「あッ、そうか.…..」
「毛脛がばれないように、あたしはパンタロンで行くわ」
「じゃあ、ボクは?」
「きみは、毛を剃ってスカートさ」
「まあ、ひどい!」
木島宏は、嬉々として、鉢をくねらせている。
三星商事の秘書課長と云う要職にありながら、この人物の眼中には、もはや妻も、女も存在していない。
男だけである。それも、お互いに女装し合って、鏡の前でウットリとなり、相互●●と云う快感だけが生き甲斐なのだ。
出所:『血と油と運河』(梶山季之著)集英社文庫
※諸般の事情で引用者が1か所だけ伏字にしました。ご了解いただければ幸いです。


その日は恰かも日曜日だった。
「……夏子さん?」
木島は、女のような声音になった。
「ええ、そう? 宏子かい?」
相手は云った。
「あたし……燃えてるのよ……」
「いいね。どこにする?」
「どっか、遠出しない?」
「いいわね。じゃあ、車で迎えに来てよ」
「わかったわ・・。なにか注文は?」
「そうねえ。こんな趣向は、どうかしら」
「どんな趣向?」
「ほら、金髪のカツラがあるじゃない?」
「ええ、あるわ」
「二人して、外国の女性になるのさ」
「それから?」
「モーテルで変身して、二人でレストランに行くのよ……」
「えッ、レストランヘ?」
「そう。横浜あたりの、さ」
「だって、声をだしたら、男ってことが、バレちゃうじゃないの」
「大丈夫。日本語が話せないふりをして、メニューを指さしたらいいのよ」
「あッ、そうか.…..」
「毛脛がばれないように、あたしはパンタロンで行くわ」
「じゃあ、ボクは?」
「きみは、毛を剃ってスカートさ」
「まあ、ひどい!」
木島宏は、嬉々として、鉢をくねらせている。
三星商事の秘書課長と云う要職にありながら、この人物の眼中には、もはや妻も、女も存在していない。
男だけである。それも、お互いに女装し合って、鏡の前でウットリとなり、相互●●と云う快感だけが生き甲斐なのだ。
出所:『血と油と運河』(梶山季之著)集英社文庫
※諸般の事情で引用者が1か所だけ伏字にしました。ご了解いただければ幸いです。
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