松本富雄さんは1950年の埼玉県生まれ。
コンピュータ業界の営業マンとして5社を渡り歩いてきました。
またSF作家として作品も発表しています。
そして女性とは中3で、男性とし高1で初体験して以来、女性・男性・女装者を問わず好奇心と快楽の赴くままに全方位セックスを展開してきました。
その松本さんがこれまでの全方位を書いた『シーメール・レッスン』を出版したのは1994年です。
そう、インターネットがまだない時代、シーメールや女装者について書かれた本は貴重でした。
ここには松本さんが出会った女装子さんと、その彼女たちとの愛の交換がカジュアルな筆致で書かれています。
松本さんの女装子さんとの『性遍歴』について、情報に飢えていた私はそれはもう目を皿のようにして読み込みました。
取引先の男の子との話などもコンピュータの営業というビジネス場面を絡めていますので、リアリティがありますよね。
ぼくは取引先の男の子と寝ちやったくらいのヤツなのだ。
当時ぼくが勤めていたコンピュータ会社は、自社製品の単独販売以外に、自社のソフトウェアを他社のハードウェアとセットにして売ってもいた。このシステム販売の契約が成立すれば、当然ハードウェアを作っているメーカーもうれしいわけで、ぼくが契約を取ったとき、そのお礼をかねて、ぽくはそのメーカーの営業課長と部下のA君から接待を受けることになった。
接待で、課長のほうは二軒目でリタイアし、残ったA君とぼくは二人で六本木に飲みに行った。『長崎物語』という仮装舞踏ディスコに入店した。どういうディスコかというと、ステージの裏側に専門のメイクさんがいて、衣装があって、変身できるというわけだ。
ぼくたちは女性になって、ディスコダンスを踊った。その後はどうなったかよく覚えていないんだけど、気がついたら新宿のラブホテルでA君とキスしていた。
翌朝、はにかんだ表情で、会社員というより真面目な学生のイメージがぴったりのA君は、喫茶店のコーヒーをやけに急いで飲みながら、
「ゆうべのこと、覚えてますか?」
と、尋ねた。
「覚えているよ」
と、五歳くらい年上のぼくは答えた。
それから数日して、仕事とはまったく関係なしにA君を呼び出して、おなじみウグイス谷のラブホテルで、A君を犯してしまった。
驚いたことに、A君は女とも男とも、それまでしたことがなかった。
「痛いツー」
と、A君は悲鳴をあげた。でも、ぼくは容赦はしなかった。だって、
「初めてMさん(あツ、ぼくは隠す必要ないんだ)と会ったときから、したかった」
と、告白されたのだ。
美少年とは言えないけれど、学生っぽさの抜けきらない、妙に可愛いA君を、ぼくは犯しつづけた。
出所:『シーメール・レッスン』松本富雄著 1994
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