確かに、果てしなく広がる土地はあったけれど……。
ずっとむかし、満州という国であったこと
著:高橋うらら 発行:合同出版 A5判ハードカバー(144ページ) 定価:1,600円+税
これは、お父さんの仕事で4歳から13歳まで満州で暮らした少女の実体験に基づいた物語です。
広大な中国大陸につくられた「満州国」での暮らしは、最初は異国情緒に胸を躍らせるものでした。
それが、戦争が始まると生活は一変します。
敗戦後もすぐに帰国できず、逃げ惑うことになります。
食べるものもなく、幼い弟が栄養不良で病気になってしまい、薬もなく日に日に衰弱していきます。
「お砂糖が食べたい」という弟のために、街中走り回ってやっとの思いで買い求めたのが “ねじまきパン” でした。
弟は「おいしい」と言って食べてくれましたが……。
終戦からおよそ1年後に帰国の順番が回ってきますが、その引き揚げの旅も想像を絶する過酷なものでした。
引き揚げの途中で命を落とした人もたくさんいたそうです。
教科書では取り上げられない、歴史に埋もれた様々な体験が著者の丁寧な取材によって浮かび上がります。
満州国の複雑な成り立ちについては、図版や写真、注釈を入れて、子どもにもわかりやすい解説を加えています。
戦争の話を直接聞けるギリギリのタイミングで、大変貴重な記録でもあります。