武器はガチャ、そして(22)

2016-11-20 10:35:27 | SF小説
そして、JAXAから精度を高めたデータが科学推進省に提出された。

「宇宙空間ですので誤差は有ると思いますが、小惑星に保管しているブラックホールのマイナス質量が小さくてバランスは取れなく、接近してきているブラックホールに呑み込まれてしまうと思われます。」

「それでは、まだ地球上に残留しているブラックホールを調査し、小惑星に送り込んでマイナス質量のバランスを取ろう。今の計算結果ではあと何個くらいのガチャの容器が必要になるのかね?」

「おおよそ80個必要となります。」

「国内では科学推進省が専用ダイヤルを設置して広く情報の提供を依頼しよう。そして警察・自衛隊を中心に、すべての官庁が総動員して各戸へガチャの容器に入れた黒点の所持を調査し、海外へは外交ルートをフル活用してブラックホールの提出を依頼しよう。」

この要請を知った鈴本浩一郎が科学推進省に連絡してきた。
「私は鈴本浩一郎と申します。大学で宇宙工学を学び、宇宙で発生している事象の情報を趣味で収集しています。今回の地球上に降り注いでいた黒点は太陽のフレアが活発になってから観測していましたので予測していました。しかし、あまりに危険なので捕獲する事までは考えていなかったのですが、ガチャの容器で捕獲できることを知り日本中を駆けずり回りました。その結果、手元には55個の黒点があります。今回の壮大なプロジェクトに活用していただけるのであればすべて提供します。」

この提供の他に、広大な土地のアメリカとオーストラリアとロシアから計15個の提供を得て、国内からは新たに10個の提出があり、合計で80個のガチャの容器のブラックホールがJAXAに集められ、チタン合金の容器製造を行っている間に小惑星への運搬用ロケットの発射準備が行われた。

「これは地球存亡をかけたミッションになるね。」
と、科学推進省の山下局長が思わず呟いた。

こうして、80個のガチャの容器を搭載した運搬ロケットが打ち上げられ、前回打ち上げた手順に従って小惑星に送り込まれた。

ただ、前回と異なるのは、小惑星での長期保管用に基礎に固定する必要が無く、ロボットアームによる据え付けを行わず直ちに使用する準備が整えられた。

武器はガチャ、そして(21)

2016-11-19 12:02:16 | SF小説
第十七章 ブラックホールの質量バランス

宇宙で二つのガチャの容器を衝撃させた前回の画像を分析したところ、二つのブラックホールのベクトル軸がメビウスの輪のように、次元を越えて表と裏になり、プラスを呑み込むブラックホールと、マイナスを呑み込むブラックールとでバランスがとれ、周りの物質を呑み込まなくなっていた。その結果、強烈な閃光は呑み込まれなくなって外部へ放出されたのであった。

また、強力な重力の重力レンズによる遠くの光の歪も無くなり、光が呑み込まれることによる暗黒部分も無くなっていた。

 科学者のすべてが、今直面しているブラックホールに対する脅威の対抗策として、小惑星にガチャの容器に入れてチタン合金の容器に格納され保管しているブラックホールの利用方法について検討していた。

しかし、具体的なアイデアは出ないまま時間のみが過ぎて行き、観測データからブラックホールの地球接近が避けられないというデータが科学推進省に寄せられた。

それを受けて、科学推進省では、活発な議論が展開された。

「ブラックホールの軌道に変化が生じています。木星と火星との中間にある小惑星帯を通過した時に多くの小惑星を呑み込んだので軌道に変化が生じたものと思われます。」

「このままだと、直接地球にぶつかることは無いと思われますが、月が呑み込まれるのは避けられないと思われます。」

「地球にとって月は重要な引力バランスの要素となっているので、地球の気候変動は避けられず、氷河期のような急激な気象状況の変化が生じます。」

「それは、地球が呑み込まれてしますのに等しいくらいのインパクトになるのではないか?」

「何としても、小惑星に保管しているブラックホールの利用の実用化を進めていただきたい。」

「ところで、接近してきているブラックホールの質量は推測できるのかね?」

「JAXAが開発しましたマイナス質量の検知器を使用すると誤差は有ってもおおよその数値を得ることができると思われます。」

「それでは、マイナス質量の検知器を使用して、接近するブラックホールと、小惑星に保管している多数のブラックホールの質量合計のデータ提出を要請しよう。」

武器はガチャ、そして(20)

2016-11-18 22:32:50 | SF小説
第十六章 ホワイトホール化

ブラックホールは、超越した重力で光をも呑み込み、その周辺では呑み込まれる物質が高速回転してエックス線等がジェットとして吹き出しているが、ブラックホールの中心では、そのエックス線等も呑み込まれるので外部へは出られなくなる。

その現象から、ブラックホールの存在はエックス線観測や、強力な重力レンズによる遠くの光の歪みでできた暗黒領域の観測で確認されている。
また、エックス線等のジェットの確認で存在場所が特定されている。

しかし、ホワイトホールは、極小から全ての物質を放出しており、全てを呑み込むブラックホールの裏側と考えられており、存在の可能性が考えられているが、ダークマターと同様に、理論は確立されていない。

そして、地球に近づく危険性のあったブラックホールの脅威が現実化してきており、対応策として、最終保管場所に格納したブラックホールを利用したホワイトホール化という空想論的な対処法も検討が開始されていた。

質量は密度×体積であるが、ブラックホールの中では密度が限りなく無限大になると、体積が限りなくゼロの無限大の逆数となる。そうすると、密度×体積の質量は限りなく1となる。

しかし、多くの物質を呑み込むブラックホールの質量が変わらないパズがなく、呑み込んだ物質の質量を減少させているマイナス質量が存在するハズであり、それがホワイトホールであるとの仮説に立っている。

ブラックホールは全てを呑み込んでしまうが、呑み込んだものがブラックホールの反対側から全て放出されているのではないかと想像されており、それに基づく考え方から、このベクトルが相反する二つを合体させることでブラックホールを消滅させるのではなく、外部への無害化を図る計画である。

ひろく一般に利用されている電気は、電気が流れる強さの電流と、流れやすくする強さの電圧がある。例えると、電流は滝から流れ落ちる水の流量であり、電圧は滝の高さである。だから、水の量が多いほど流れる力が強く、滝の高さが高いほど勢いよく水が流れるのである。
しかし、滝壺よりも低い所にある山は滝壺から山に水が流れて行き、滝壺から見た場合の水の流れはベクトルが正反対となっている。このベクトルを変化させることにより、ブラックホールをホワイトホール化しようという理論である。

武器はガチャ、そして(19)

2016-11-17 21:28:54 | SF小説
国連総会では、小惑星でブラックホールを保管することが承認されて計画が進行している時に、地球からあまり遠くない場所に在ると想定されているブラックホールに対する脅威が、科学推進省内部で議論されていた。

「本当にブラックホールなのか?」
「宇宙の一点に暗黒の部分があり、その先の方角からの光が重力レンズの影響で歪んで見えるのです。」
「なるほど、そうすると可能性は大だな。」
「残念ながら、ほぼ間違いがありません。」

「太陽系は呑み込まれてしまうのか?」
「最終的な可能性はありますが、それまではとてつもない時間が経過した後です。」
「そのブラックホールを消滅させる方法は無いのか?」
「今の技術では宇宙に存在するブラックホールを消滅させることはできません。」
「それでは、近づいて来ている軌道を変えることはできないのか?」
「小さな小惑星ですとロケットを衝突させる方法がありますし、大きな小惑星ですと、別な小惑星の軌道を変更させて衝突させる方法も考えられます。しかし、ブラックホールは衝突しないで呑み込んでしまいますので、作用‐反作用を応用することができないのです。」
「核兵器で消滅させることはできないのか?」
「爆発の威力の大小は影響しないと思われます。ただ、核爆発の高温がどう影響するのか想定できませんが、核物質による汚染の問題は深刻なので、安全性が確保できません。ですから、人類の最終手段以外は使用すべきではありません。」
「小さくなって自然消滅はしないのか?」
「自然消滅することは有り得ません。」
「今の技術力では消滅させることも、軌道を変えることもできないのです。」
「今の大きさでは太陽系全体が呑み込まれてしまうことはないと思われるが、月は呑み込まれてしまう可能性はあると思われます。」

武器はガチャ、そして(18)

2016-11-16 08:28:46 | SF小説
第十五章 ブラックホールの存在

ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡が、地球からかなり近い所に小さなブラックホールが存在している可能性の現象を観測した。

ブラックホールは巨大な重力により光をも呑み込んでしまうので直接観測はできないが、強力な重力によって呑み込まれる物質が高速回転し、非常に高温になった物質からエックス線やガンマ線を放出されるので、そのエックス線などを調べてブラックホールであると結論付けたのであった。

また、宇宙の暗黒の部分を通過してくる光がブラックホール特有の強力な重力レンズの影響を受けて歪められていることでも、その暗黒の部分にブラックホールが存在することに確証を得ていた、

しかし、この現象が地球に対してどのような影響が生じるのかは、現時点では予測すらできないので 科学推進省は一般国民の不安をあおるので省内の情報にとどめ、観測データに基づき関係者による協議を続けた。

『果たして地球はそのブラックホールに呑み込まれる可能性はあるのだろうか?』
『また、それを回避できる方法は無いのか?』
等が議論されたが推測の域を越えなかった。
しかし、ブラックホールは小惑星やガスを吸い込みながら確実に大きくなっているのは観測データからゆるぎないものとなっていた。

国立天文台によると、宇宙に存在する銀河の多くは、その中心に太陽の数百万倍から数十億倍というとてつもない重さを持った巨大ブラックホールを持つと考えられていて、私たちの住んでいる天の川銀河の中心にも、太陽の四百万倍の重さを持った巨大ブラックホールがあることが知られており、近年観測された最大としては、アルマ望遠鏡によるブラックホールの精密体重測定により、棒渦巻銀河NGC1097の中心にある超巨大ブラックホールの質量が、太陽の一億四千万倍であることが明らかになった。

 また、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールには、電波で明るい「いて座A*【いて座エースター】」という天体が付随しており、いて座A*からは数億度から数十億度という非常に高温のプラズマガスからの光だと考えられているが、その正体はいまだはっきりとは分かっていない。

例えば、ブラックホールに今まさに落下しているプラズマガスの降着流を見ているのか、それともブラックホール付近から噴出したプラズマガスのジェットなのかなど、基本的なことが分かっていないのである。

 今まさに地球に接近しているブラックホールが現実に存在しているが、あまりにもその実態がわからないので対処の仕方が見いだせないでいた。

そして、現在確立されているブラックホールの消滅技術は、個別に管理されているブラックホールを交互に逆回転させて衝突させ、その反動により消滅させるのであるが、我々のコントロール外の宇宙に存在しているブラックホールは回転させることはできないのである。
ブラックホールの消滅実験で使用した位相を180度反転させて衝突させる方式は不可能であり、早急に他の方式を確立することが急務となった。