僕は自転車(14)

2014-05-31 10:08:00 | 童話
そして、外から帰って来た時に、何も言わないでサドルをボンポンと叩いてくれると嬉しいなぁ。

そう思いながら、この子と練習を続けている。

この子も僕に乗れるようになるのは、もうすぐだと思う。

そして、この子と一緒に公園を走るのが楽しみだ。

   おしまい

僕は自転車(13)

2014-05-30 21:31:37 | 童話
毎週、練習をして、グラグラするが、やっと転ばないようになった。

この子も僕を大事にしてくれる。
転んだ時は家に帰ってから、僕を綺麗に洗ってくれる。

この子も大きくなって、大きな自転車を買っても、僕を大事にしてくれると思う。

僕は自転車(12)

2014-05-29 20:57:45 | 童話
次の日から、自転車の練習が始まった。

『ほらほらっ、下を見ないで前を見て。』

僕は、練習する時に大人はみんな同じ事を言うのだなぁと思った。

『お父さん、手を離さないでね、離したらダメだよ。』

前の男の子の時と同じようにグラグラ、グラグラとしている。
僕は必死になってこらえて転ばないようにしていた。

しかし、おじさんが手を離した時に僕は転んでしまった。
そして、この子もひざをすりむいてしまった。
『うわ~ん、痛いよ~。』

おじさんは
『少しケガするくらいでないと自転車に乗れないよ。』

また僕は、前の男の子のお父さんと同じ事を言っていると思った。

僕は自転車(11)

2014-05-28 21:12:24 | 童話
ほどなく、自動車は今度僕に乗ってくれる子供の家に着いた。

『わ~い自転車だ、ピカピカの自転車だ。』

『大事に乗るんだよ。』

と言っておじさんが僕を自動車から降ろした。

『うん、大事にするよ。』

『明日の日曜日に、公園で乗る練習をさせてやるよ。』

『うん。』と言って男の子は、僕をずっと眺めていた。

僕は自転車(10)

2014-05-27 21:09:22 | 童話
僕が貰われて行く日の朝に男の子がやって来て、サドルをボンポンと叩いた。

僕は涙をこらえるのが大変だった。
僕は幸せだったし、今も幸せだ。

そして、僕が貰われて行く日の午後、今度の家のおじさんが自動車でやって来た。

おじさんが僕を自動車に積む時に、僕を大事にしてくれた男の子が、サドルをボンポンと叩いて『今迄ありがとう。』と言った。

僕はみんなに見つからないようにして涙を流した。

『バイバイ。』

男の子と男の子のお父さんに見送られて、走り出した自動車の中から手を振った。
いや、手ではなくハンドルを振った。