北極のペンギン(5)

2018-04-30 10:40:02 | 童話
あれっ、あそこで僕達の写真を写している人がいるよ。」
「なんで北極にペンギンがいるのかなぁ? だけれど、シロクマとペンギンベストショットだなあ。 お~い君達、こっちを向いて。」
「ああ、いいよ。こっちを向けばいいの。」
「そうそう、写すよ。」そして、おじさんはたくさんの写真を写しました。

「ペンギン君はどうして北極にいるの?」
「南極から泳いで来たんだよ。」
「すごいね。シロクマ君とは何を話していたんだい?」
「北極の氷が溶けて大変だから相談していたんだよ。」
「相談してからどうするの?」
「石油をあまり使わなくするように人間に頼むんだよ。」
「よし分かった、この北極でシロクマと話しているペンギンの珍しい写真を持って、私の知っている放送局へ行こうか。そして、この珍しい写真のペンギン君がテレビで人間に頼めばいいんだ。」
「そうできると、僕もシロクマさんもうれしいなあ。」
「よしっ、すぐ飛行機で放送局へ行こう。」
「うん、シロクマさん、行って来るね。」
「ああ、頼むね。氷が溶けるのが少なくなるとうれしいなあ。」

そして、僕は男の人と一緒にテレビ局へ行き、男の人が説明して僕がテレビに出演することになりました。

「ペンギンさんはどうして北極へ行ったんですか?」
「シロクマさんが困っているので、相談するために行ったんだよ。」
「何の相談に行ったんですか?」
「北極の氷が溶けて、シロクマさんがエサを捕れなくて困っているので相談をしに行ったんだよ。」
「相談して、これからどうするのですか?」
「人間のみんなに温室効果ガスを少なくするようにお願いをするんだよ。」
「それでは、ここで人間のみんなにお願いをしてください。」
「人間のみなさん、北極の氷が溶けて、シロクマさんがエサを捕れなくなって困っています。温室効果ガスを少なくするようにお願いします。」
「分りました、みんなで温室効果ガスを少なくするようにしましょう。そして、国連の事務局へ南極代表として会議にペンギンさんが出席できるように、働きかけます。」
「お願いします。」

僕はテレビ出演が終ったので、何日もかかって南極のお父さんやお母さんが待っている所に帰ってきました。
「お父さん、テレビに出演してシロクマさんの困っていることを人間に話したよ。」
「えらいね。」
「すばらしいわね。」

そして、しばらくして国連の事務局から連絡があり、温室効果ガス削減会議に南極代表として出席しました。
「あっ、シロクマさんも北極代表として出席できたんだ、良かったね。」
「ああ、ペンギンさんのおかげで会議に出席できたんだ。人間のみんなに温室効果ガスを少なくするようにお願いしようね。」

こうして、国連気候変動会議に、北極代表のシロクマさんと南極代表としてペンギンの僕が毎年出席して、どうすれば温室効果ガスを少なくすることができるかを人間のみんなと相談しています。

               おしまい

北極のペンギン(4)

2018-04-29 10:06:51 | 童話
どんどん泳いで行くと、海の水は急に冷たくなって遠くに氷が見え始めました。
「あっ、北極はもうすぐだ。」
小さな氷の間を泳いで行くと、氷が大きくなってきました。

シロクマさんはどこかなあ?あそこのアザラシさんに聞いてみよう。
「ねぇアザラシさん、シロクマさんはいないの?」
「今、お昼ご飯を食べに出掛けているので、もう少しすると帰って来るよ。」
「それでは、この大きな氷の上で待っているね。」
「そうだね。」
「あっ、シロクマさんが帰って来た。」
「やぁ、ペンギンさん、会うのは初めてだね。遠い南極から泳いで来たの?」
「そうだよ。北極は遠いね。それから、シロクマさんは大きいね。」
「そうだね、この北極では一番大きいよ。」
「ねえ、シロクマさん、北極の氷が溶けて北極が小さくなっているって本当なの?」
「ああ、小さくなっているのであまり遠くへ行けなくなってしまったよ。」
「大変だね。」
「そうだよ。」

「どうやれば北極の氷が溶けるのを少なくすることができるのかね?」
「人間がたくさんの石油を燃やして電気を作っているんだけれど、それを少なくして、石油を燃やした時に出る炭酸ガスを少なくするといいんだよ。」
「そうだね、遠くへ行くときは、僕のように泳いだり、シロクマさんのように歩いて行けばいいんだよね。」

北極のペンギン(3)

2018-04-28 11:53:08 | 童話
そして、またどんどん泳いで行くと、今度は水が冷たくなってきました。
もっと泳いで行くと大きな船がたくさん走っていて、その走って行く方には大きな船から荷物を下ろしている港が見えました。
「ここはどこだろう? 遠くにきれいな三角形をした高い山が見えている。あれっ、あそこは大きな船に荷物を積んでいるよ。これからどこかへ荷物を運んで行くんだね。行ってらっしゃい。」

そして、またどんどん泳いで行くと、今度は水がもっと冷たくなってきました。
またたくさんの船が留まっている港が有りました。ここの船は高い所に電球をいっぱい付けて船の横に網が付いていました。
「わあっ、眩しいなあ。お父さんから聞いたことがあったけれど、夜の暗い所を明るくしてサンマをすくう船らしいね。」
もっと泳いで行くとまた高い所に電球をいっぱい付けて船の横にクルクル回る機械が付いていました。
「わあっ、眩しいなあ。この船もお父さんから聞いたことがあったけれど、夜の暗い所を明るくしてイカを釣る船らしいね。」

「すみません、北極はどっちですか?」
「あっちだけれど遠いよ。」
「ありがとうございます。がんばって行ってきます。」

北極のペンギン(2)

2018-04-27 07:08:22 | 童話
僕は近くの冒険が終わってお父さんやお母さんが待っている所へ帰っている時に、昭和基地へ寄って観測隊員の人から南極以外の事を教えてもらいました。

その時に観測隊員の人から北極の氷が溶けて、白熊が困っている話を聞きました。
そして、その原因が熱帯の森林伐採で炭酸ガスの吸収が減り、地球の温暖化が進んで北極の氷が溶け始めていて海の水位が上昇していて、小さな島の国が水没し始めていることも教えてくれました。

僕は帰ってからお父さんとお母さんに北極へ行って白熊とお話をする計画を話しました。
「北極はずっと遠くにあるので気を付けて行きな。」
「気を付けてね。」
と言って、お父さんとお母さんが僕を見送ってくれました。
そして、僕は今までよりも、もっともっと羽を動かして、どんどん速く泳いで行くと、クジラさんが
「どこへ行くの?」と言いました。
「北極だよ。」
「北極は遠いって、みんな言っているよ。それに、暑い所の海を越えて行かないといけないよ。」
「うん、南極越冬隊員の人に教えてもらったよ。行って来るからね、バイバイ。」
もっと泳いでいくと海の水が暖かくなってきたので水の上に顔を出して周りを見ました。
すると、島が見えて人間が海水浴をしていました。

「随分遠くに来たんだね。」
「あの白い貝のような建物は、越冬隊員の人から聞いていたオペラハウスだ。」
そして、もっともっと泳いでいくと、白いライオンの口から噴水が出ているところに来ました。
「これも越冬隊員の人から聞いていたマーライオンだ。
今度は遠くに桜島が噴火している所に来ました。そして、しばらく泳いでいくと遠くに富士山が見えてきて、もっと泳いでいくと高い鉄塔が見えてきました。
「あれが越冬隊員の人が言っていたスカイツリーなんだ、大きいなあ。」
そして、水の上に顔を出していると暑いので水の中に潜ったままでどんどんと泳いで行きました。

「あれっ、今度は海が狭くなったね。」
僕が水から顔を出すと広い建物の中の丸いプールの中にいました。そして、たくさんの子供達がイルカのジャンプを見て手をたたいていました。
僕もイルカと同じようにすごいスピードで泳いでジャンプをしましたが、イルカのように高く跳び上がることはできませんでした。だけれど、たくさんの子供達が僕にも大きな拍手をくれたのでうれしかったです。
そして、イルカのトレーナーの人が、イルカにあげる魚を僕にもくれました。お魚は大きくてお腹がいっぱいになりました。
僕は、「ごちそうさま。」と言って外の海に出て、また一生懸命に泳ぎました。すると、海の水がもっと温かくなってきて、僕よりも大きな魚がたくさん泳いでいました。
「大きいなあ、お父さんから教えてもらったマグロはこのお魚なんだね。たくさん泳いでいるし、すごいスピードだね。速く泳げる僕でも追いつかないや。あ~あ、泳いで行ってしまったよ。」

北極のペンギン(1)

2018-04-26 05:57:11 | 童話
僕が卵から生まれるとお父さんの大きなお腹の下にいました。
お母さんは僕の食べる魚を捕りに遠くの海へ出掛けていましたので、僕はお父さんの温かい大きなお腹の下で何日もいました。
僕は時々お父さんのお腹の下から外を見ますが寒いのですぐにお腹の下に入ります。
そして、時々お父さんが立っている場所を移動する時があります。
その時は、僕がお腹の下にいるままに、ズズッズズッと動いて行きます。

お父さんはお母さんが帰っているまで何も食べませんが、僕には食べ物をくれます。
そして、お母さんが帰って来ると、今度はお父さんが食べる魚を捕りに遠くの海へ出掛けて行くので、今度はお母さんのお腹の下に入ります。
お父さんのお腹の下も、お母さんのお腹の下も、とても温かくて気持ちがいいです。

お父さんやお母さんにたくさんのお魚をもらって僕はどんどん大きくなって寒くなくなったので、お父さんやお母さんのお腹の下から、いつも外にいるようにしました。
そして、広い氷の平らな所の冒険に出掛けました。
山の無い平らな所なのでいっぱい歩いても、お父さんやお母さんが見えます。
もっと歩いて行くと海に着きました。

「やあ、ここがお父さんやお母さんがおいしい魚を捕っていた海なんだ。僕もお魚を捕ろう。」
僕は海へザブーンと飛び込みました。
「あれっ、氷の上を歩くのより随分楽だなあ。両方の羽を少し動かしただけで魚と同じくらいのスピードで泳げている。すごいなあ、もっと強く羽を動かすと、もっともっと速く泳げるかなあ。」
エイッと力一杯に羽を動かすと飛んでいるみたいねスピードで進みました。
僕は魚を全部追い越して一番になりました。
「わあっ、僕が一番だ。」