アリの小さな魔法使い(1)

2016-08-31 21:21:32 | 童話
僕はアリですが、魔法使いなのです。

みんなが歩いている時や、走っている時に、つまずいて転ぶ時があるよね。
あれはね、僕達アリが踏まれそうになったから、僕が魔法を使って踏まれないようにしたからなんだよ。

それと、君達は見たことがあると思うんだけれど、大きなエサの昆虫を、僕達がたくさんで運んでいる時に、少し経ってみんなが気が付いた時には、もう運び終っていることがあるよね。
これも僕の魔法なんだよ。

あとね、僕達はエサを探して遠くまで歩いて行くけれど、時々迷子になることがあるんだ。
その時僕が魔法で帰り道を教えるんだよ。

もう一つ、僕達アリが高い木に登って行くのを見たことがあるでしょ。
僕達アリも高い所から落ちることがあるんだけれど、その時も僕が魔法を使って、そっと地面に着くようにしているからケガをしないんだよ。

それから大切なことなんだけれど、僕達アリの家は地面の下にあるので、雨がたくさん降ってきて僕達の家に水が入ってくると困るので、僕が魔法を使って巣の入口にふたをするんだよ。
いつもは、雨が降ってくるのが分るので、早くから全部の巣の入口にふたをするんだけれど、急に雨が降ってくると、魔法使いの僕は忙しいんだ。

ぽろろ、ぽろろ。(3)

2016-08-30 21:29:21 | 童話
山の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
大きな杉の木が呼んでいるのだ。
『大きな木だから僕は登れないよ。なぁに、太い枝にかけたブランコに乗せてくれるの。ぶーらん、ぶーらん。楽しいね。』

僕の机を置いてある部屋から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
時計が呼んでいるのだ。
『なぁに、電池が無くなりかけているの、よし、取り換えてあげるね。だから、3時になったらおやつを食べるから教えてね。』

駅の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』
と声が聞こえてくる。
『だぁれ?』
電車が僕を呼んでいる。
『電車に乗って遠くへ行こうよだって、だめだよ、今日はね、お父さんの自動車で買い物に行くんだ。何を買いに行くのだって、お花を植え替えるので、植木鉢を買いに行くんだよ。大きな植木鉢を買うから電車に乗せられないんだ。また今度、デパートへ行く時に電車君に乗せてもらうね。』

庭の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』
と声が聞こえてくる。
『だぁれ?』
誰が僕を呼んでいるのか判らない。
『だぁれ? あっ、お花に小さなテントウ虫が止まっている。今度はこっちから『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』と聞こえる。また今度はあっちから聞こえてくる。テントウ虫君が3匹、僕の方に集まって来た。何をするの? そうか、3匹で背中の模様のファッションショーをやるんだ。うーん困ったなぁ、3匹は模様が違うけれど、全部きれいだからね。そうだ、3匹全部が一番だ。』

たくさんの友達ができて楽しいな、もっとたくさんの友達を作ろうよ。『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。小さな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。もっと小さな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。大きな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。

             おしまい

ぽろろ、ぽろろ。(2)

2016-08-29 21:19:24 | 童話
僕が家に帰るとキッチンの方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。 
『だぁれ?』
『あっ、コップ君だ。えっ、コップでお水を飲むとおいしいよ、だって。僕はジュースの方がいいなぁ。コップ君貸してね。ゴクッゴクッ、ジュースはおいしいなぁ。』

僕の机のある方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
やぁ、エンピツケース君だ。なぁに、今日の学校の勉強と宿題を頑張ったね、だって。うん、頑張ったよ。お父さんとお母さんに話をしたらほめてくれたよ。』

物置の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』、
『あっ、僕の自転車だ。なぁに、自転車に乗って公園に行こうよだって? 自転車の好きな友達を呼んで来るから待っててね。』
『友達が2人来たから3人で公園へ行くよ。この公園はね自転車に乗って走ってもいいんだよ。楽しいね。』

ぽろろ、ぽろろ。(1)

2016-08-28 09:15:36 | 童話
僕のいる窓の外から、
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
風が遠くで僕を呼んでいるのだ。
『なぁに、宿題が終ったら外で遊ぼうよと言っているの? 30分位で宿題が終るので待っててね。』
『宿題が終ったよ、何して遊ぼうか。よしっ、駆けっこをしようよ。だけど、1人だと寂しいから、いつも一緒に遊んでいる友達を呼んで来るね。』
3人の友達と僕の4人で風と競争をした。ヨーイドン 。
『風君は速いなぁ、僕達4人は全然かなわないや。』

公園の木の上から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
小鳥が呼んでいるのだ。
『なぁに、僕は羽根がないから一緒に飛べないよ。えっ、きれいな歌声の競争をするの? 僕は歌がうまくないから、小鳥君が唄ってよ。』
『ピピピピ、チチチチ、ピーピピ、ピーピピ。』
『やっぱり小鳥君は歌が上手いね。だけど、『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』とは鳴かないの? 『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』と鳴くのは友達を呼ぶ時だけなのか、だから僕を呼ぶ時はみんな『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』と言っているんだね』

小川の近くで
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
声は聞こえるけれど、だれが呼んでいるのか判らない。
『だぁれ?』
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
『あれっ、川の水君かな?』
『そうだよ、ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
『なぁに、川の中で一緒に遊ぶの? 海水パンツを持ってくるから待っててね。』
『海水パンツになったから川に入るよ。』
僕は川の中で水に押してもらった。
『たのしいな、たのしいな。』

僕の足の下の土の中から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
モグラ君かな?
『なぁに、僕は土の中には入れないよ。』
『えっ、モグラ君は昼間は眩しくて外に出られないから、夜になったらジャンケンをして遊うよ、だって。ダメだよ、僕は夜は家に帰らなければいけないんだ。だから今ジャンケンをしようよ。モグラ君は土の中から手だけ出せばいいんだよ。ジャンケンポン、僕はチョキだけどモグラ君はパーだから僕の勝ちだよ。そうか、モグラ君はパーしか出せないんだ。』

空から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
そうか、空の上の雲君だ。
『なぁに、雲君の背中に乗せてくれるの? ダメだよ、僕は重たいから乗れないよ。雲君が空に何か絵を書いてよ。わっ、おいしそうな綿菓子とドーナッツだね。それに、飛行機雲もきれいだね。』

カタツムリの富士登山(9)

2016-08-27 14:58:25 | 童話
長い間歩いたので、みんなで登山口の近くのキャベツ畑で休憩をしていました。
その時、キャベツ畑の持ち主さんがやって来て、みんなが休憩をしていたキャベツを箱に入れました。
トンボ君とチョウチョさんは羽が有るので、他のキャベツへ飛んで行きました。
だけれど、僕は飛べないので、キャベツと一緒に箱の中に入れられました。

『うわっ。』
僕は箱の穴から頭を出して、箱の外を見ました。
箱の外には「たのしい農協キャベツ」と書いてありました。
「たのしい農協」は、僕がお父さんやお母さんと一緒に住んでいる所から近いので、少し安心しました。
『トンボ君、チョウチョさん、僕はこのまま箱の中にいて、僕の住んでいる所の近くに連れて行ってもらうからね。一緒に山から下りて来てもらってありがとう。みんな元気でね。バイバイ。』

『バイバ~イ、元気でね。』
『バイバ~イ、お父さんとお母さんを大切にしてあげてね。』
『うん、わかったよ。バイバ~イ。』

キャベツを入れた箱をたくさん積んだトラックが走り始めました。
トラックはスピードが速く、トンボ君もチョウチョさんも追いつけませんでした。

トラックが「たのしい農協」に着いたので、キャベツの入った箱を全部下ろしました。

僕は箱の穴から外へ出て、お父さんとお母さんのいるお花畑へ歩いて行きました。
『お父さん、お母さん、ただいま、帰って来たよ。』

そして、僕はチョウチョさんとトンボ君と一緒に登った事や、富士山の山頂からのきれいな風景や、チョウチョさんとトンボ君と一緒に下りて来た事をお話ししました。

今度はどこへ行こうかな、考えていると楽しいよ。

 おしまい