ぽろろ、ぽろろ。(2)

2017-10-31 21:15:33 | 童話
小川の近くで
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
声は聞こえるけれど、だれが呼んでいるのか判らない。
『だぁれ?』
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
『あれっ、川の水君かな?』
『そうだよ、ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
『なぁに、川の中で一緒に遊ぶの? 海水パンツを持ってくるから待っててね。』
『海水パンツになったから川に入るよ。』
僕は川の中で水に押してもらった。
『たのしいな、たのしいな。』

僕の足の下の土の中から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
モグラ君かな?
『なぁに、僕は土の中には入れないよ。』
『えっ、モグラ君は昼間は眩しくて外に出られないから、夜になったらジャンケンをして遊うよ、だって。ダメだよ、僕は夜は家に帰らなければいけないんだ。だから今ジャンケンをしようよ。モグラ君は土の中から手だけ出せばいいんだよ。ジャンケンポン、僕はチョキだけどモグラ君はパーだから僕の勝ちだよ。そうか、モグラ君はパーしか出せないんだ。』

空から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
そうか、空の上の雲君だ。
『なぁに、雲君の背中に乗せてくれるの? ダメだよ、僕は重たいから乗れないよ。雲君が空に何か絵を書いてよ。わっ、おいしそうな綿菓子とドーナッツだね。それに、飛行機雲もきれいだね。』

ぽろろ、ぽろろ。(1)

2017-10-30 21:35:15 | 童話
僕のいる窓の外から、
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
風が遠くで僕を呼んでいるのだ。
『なぁに、宿題が終ったら外で遊ぼうよと言っているの? 30分位で宿題が終るので待っててね。』

『宿題が終ったよ、何して遊ぼうか。よしっ、駆けっこをしようよ。だけど、1人だと寂しいから、いつも一緒に遊んでいる友達を呼んで来るね。』
3人の友達と僕の4人で風と競争をした。ヨーイドン 。
『風君は速いなぁ、僕達4人は全然かなわないや。』

公園の木の上から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
小鳥が呼んでいるのだ。
『なぁに、僕は羽根がないから一緒に飛べないよ。えっ、きれいな歌声の競争をするの? 僕は歌がうまくないから、小鳥君が唄ってよ。』
『ピピピピ、チチチチ、ピーピピ、ピーピピ。』
『やっぱり小鳥君は歌が上手いね。

だけど、『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』とは鳴かないの?
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』と鳴くのは友達を呼ぶ時だけなのか、だから僕を呼ぶ時はみんな『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』と言っているんだね』

なぜだろう(3)

2017-10-29 09:40:09 | 童話
「今度は外のお花でやってみようよ。」
「そうだね、公園へ行ってみようよ。」
「そうしよう。」
「公園のお花さん、お話しできますか?」
「ああ、できるよ。ここで君達が来るのを待っていたよ。」
「公園のお花もお話しができるんだ。」
「ねえお花さん、大人はなぜ君達とお話しができないの?」
「大人の人も子供の頃は、僕達お花とお話しができたんだけれど、大きくなったからお話しができなくなったんだよ。」
「ふぅ~ん、そうなんだ。だけれど、大人の人はそれを知らないの?」
「みんな大きくなると忘れるんだよ。」
「そうなのか。」

「僕達も大きくなったら忘れるのかなぁ。」
「そうだよ、忘れるよ。」
「いやだけれど仕方ないのかな。」
「じゃ、今の内にみんなでいっぱいお話しをしようよ。」
「そうだね。だからいっぱいお話しをしようね。」

「おはよう。学校へいってくるよ。あれっ、玄関の花がしゃべらないや。僕はもう大きくなったのかな。友達の所のお花も、昨日お話しをしなかったと言っていたね。」
「やぁ、おはよう。君んちのお花はお話しをしなくなったの?」
「なぁ~に、お花がお話しをするハズがないじゃないか。」
「えっ、昨日までお花との話しをしていたじゃないか。」
「僕は知らないよ。」

「僕も明日になると、お花とのお話しを忘れてしまうのかなぁ。」
そして次の日、僕もお花とのお話しを忘れてしまった。
だけれど、僕の妹はお花とお話しをしていると言っている。

             おしまい

なぜだろう(2)

2017-10-28 09:08:02 | 童話
電車に乗っていると、窓に映った僕が話しかけてくる。
「気を付けていないと、電車が揺れた時に転ぶよ。」
「うん、わかった。」
どうしてみんなが話しかけてくるのだろうか?
何時ごろから話しかけてくるようになったのだろうか?

夏休みのある日の夕立で、近くの大きな杉の木に雷が落ちた事が有る。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ピカッ、ドド~ン。
「ビックリしたね。」
僕がおもわずつぶやいた時に、部屋の中に置いて有るサボテンが
「そうだね、ビックリしたね。」と返事をした。
「えっ、だれ?」
「僕だよ。サボテンだよ。」
「サボテン君はしゃべれるの?」
「うん、しゃべれるけれど、今迄黙っていたんだよ。」
「君以外にしゃべれる植物がいるの?」
「みんなしゃべれるよ。」
僕は玄関に飾っている花瓶の花に話しかけた。
「君もしゃべれるの?」
「うん、しゃべれるよ。」
「机の僕もしゃべれるよ。」
「テーブルの私もしゃべれるわよ。」
「植物以外もしゃべれるんだ。」
「犬や猫もしゃべれるよ。」
「わぁ、楽しいなぁ。みんなでお話しをしようよ。」
「ワイワイ、ガヤガヤ。」
僕以外にも、みんなとお話しができる子がいるのかなぁ?

僕は友達に聞いてみた。
「ねぇ、君んちのお花やテーブルは話をするの? 僕んちのお花やテーブルはお話しをするんだよ。」
「うん、お話しするよ。」
「いつから?」
「この前の雷が落ちた時からだよ。」
「ふぅ~ん。僕んちと同じだね。」
「そうだね。」
「どうしてなのかなぁ。」
「どうしてなのかね。」
「だれかに聞いてみようか?」

「ねぇお母さん お花やテーブルはしゃべれるの?」
「えっ、人間じゃないのに、しゃべれるハズが無いでしょ。」
「僕んちのお花やテーブルもお話しするよ。」
「そう、不思議ね。」
「どうしてなのかなぁ?」
「お母さんも分からないわ。」
「ねぇお母さん、このテーブルとお話しをしてみて。」
「もしもしテーブルさん、お話しができますか?」
「僕には話しかけるのに、お母さんには返事しないね。」
「そうだね。今度はお花に話しかけてよ。」
「お花さん、お花さん、返事をしてね。」
「やっぱり大人には話しかけないんだ。」
「そうだね。」

なぜだろう(1)

2017-10-27 21:16:45 | 童話
「おはよう。忘れ物は無~い? 教科書とノートは全部持ったの? 宿題のプリントも持ったの?」
「おはよう。全部持ったよ。」

僕に毎朝、玄関の花瓶の花が話し掛けてくる。
「おかえり。学校は今日も楽しかった? 宿題は有るの?」
「ただいま。宿題はね、プリントが2枚だよ。」
僕は玄関の花瓶の花に話し掛ける。

僕が宿題をしていると、机が話しかけてくる。
「今日も学校で頑張ったね。」
「うん、勉強も運動会の練習も頑張ったよ。」
「宿題が終ったらどこへ行くの?」
「友達とグラウンドで野球をするんだよ。」
「ケガをしないでね。」
「うん、わかったよ。」
「宿題が終ったからグラウンドへ行ってくるからね。」
「行ってらっしゃい。」
僕は机に行ってきますと言ってグラウンドへ向った。

家に帰って手を洗っていると、水道の蛇口から声が聞こえる。
「今日も楽しかった? せっけんをよく付けてゴシゴシと洗ってね。」
「うん、わかった。」

お母さんが用意してくれていたオヤツのケーキを食べようとするとフォークが話しかけてくる。
「今日のケーキはね、高いケーキだから特別おいしいよ。」
「そうだね、いつものケーキよりおいしいね。」
「終ったら片付けてね。」
「うん、わかった。」
「これから、どこへ行くの?」
「これからお母さんとお買い物に行くんだよ。」
「何を買いに行くの?」
「スニーカーを買ってもらうんだよ。」
「カッコいいのを買ってもらうの?」
「ううん、普通のだよ。走りやすいのがいいんだ。」
「お母さんが来たよ、行ってらっしゃい。」
「うん、行ってくるからね。」