僕とお父さんと、ボクとの約束(2)

2015-08-30 10:12:17 | 童話
僕が友達と学校へ行っている時、友達が
『だれか知らない子が一緒に歩いているけれで、君の友達かい?』
と言った。
『ううん、知らない子だよ。』
『ランドセルを背負っていないけれど、どこへ行くのかなぁ?』
『そうだね、どこへ行くのかなぁ?』

学校に着くと、その知らない子は居なくなっていた。

次の日も、僕と友達が学校へ行っている時に、その知らない子が一緒に歩いていた。

『ねぇ、君はだれ?』
『ボクの名前はツヨシ。ボクは君をよく知っているよ。』
『なんで君は僕を知っているの?』
『ボクはね、君のお父さんの子供の頃なんだ。』
『でも、お父さんは大人で大きいよ。』
『お父さんも子供の頃があって、それがボクなんだ。』
『ふぅ~ん。だけれど、僕は朝お父さんが会社へ行く時に、行ってらっしゃいと言ったんだよ。』
『それはお父さんで、ボクはお父さんの子供の頃なんだよ。』
『ふぅ~ん。だけれど君はなぜ、いつも僕の所にいるの?』
『ボクは君が頑張っているのは知っているけれど、ボクと一緒にもっと頑張れるようにしようよ。』
『どうやってやるの?』
『ボクと同じ事をするだけだよ。』
『最初は走る練習をしようか?』
『うん、いいよ。』
『走る時はね、ヒザを高く上げるようにするんだよ。一緒にやってみようよ。』
『うん、だけれど速く走れるようになれるのかぁ?』
『なれるよ、ボクと一緒に頑張ればできるよ。』
『うん、頑張る。』
『よ~い、どん。もっとヒザを高く上げて、もっと高く。そうそう、もっと高く上げて。』
『なんか、速く走ることができそうだ。』
『本当に速く走れているよ。』

僕とお父さんと、ボクとの約束(1)

2015-08-29 22:14:18 | 童話
僕はご飯を食べるのが遅く、家族みんなが食べ終っても、僕はまだ終らない。

『いつまで食べているの、早く食べなさい。』
と、お母さんにいつも注意される。

そして、

『早く学校へ行かないと遅刻するわよ。』
と、お母さんに毎日注意される。

僕は学校の徒競走では、いくら頑張ってもいつもビリになってしまうし、鉄棒の逆上がりができない。

僕は頑張っているが、できないんだ。

僕は自転車(7)

2015-08-28 20:42:23 | 童話
次の日から、自転車の練習が始まった。

『ほらほらっ、下を見ないで前を見て。』
僕は、練習する時に大人はみんな同じ事を言うのだなぁと思った。

『お父さん、手を離さないでね、離したらダメだよ。』

前の男の子の時と同じようにグラグラ、グラグラとしている。
僕は必死になってこらえて転ばないようにしていた。

しかし、おじさんが手を離した時に僕は転んでしまった。
そして、この子も膝を擦りむいてしまった。
『うわ~ん、痛いよ~。』
おじさんは『少し怪我するくらいでないと自転車に乗れないよ。』と言った。

また僕は前の男の子のお父さんと同じ事を言っていると思った。

毎週、練習をしてグラグラするが、やっと転ばないようになった。

この子も僕を大事にしてくれる。
転んだ時は家に帰ってから、僕を綺麗に洗ってくれる。
この子も大きくなって、大きな自転車を買っても、僕を大事にしてくれると思う。

そして、外から帰って来た時に、何も言わないでサドルをポンポンと叩いてくれると嬉しいなぁ。
そう思いながら、この子と練習を続けている。

         おしまい

僕は自転車(6)

2015-08-27 21:18:06 | 童話
僕が他の家に貰われて行く日、今度の家のおじさんが自動車でやって来た。

おじさんが僕を自動車に積む時に、僕を大事にしてくれた男の子が、サドルをボンポンと叩いて『今迄ありがとう。』と言った。

僕はみんなに見つからないようにして涙を流した。

『バイバイ。』
男の子と男の子のお父さんに見送られて、走り出した自動車の中から手を振った。
いや、手ではなくハンドルを振った。

ほどなく、自動車は今度僕に乗ってくれる子供の家に着いた。
『わ~い自転車だ、ピカピカの自転車だ。』
『大事に乗るんだよ。』と言っておじさんが僕を自動車から降ろした。
『うん、大事にするよ。』
『明日の日曜日に、公園で乗る練習をさせてやるよ。』
『うん。』と言って僕をずっと眺めていた。

僕は自転車(5)

2015-08-26 21:22:53 | 童話
少し経って、僕の仲間ができた。
男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。

そして、今迄乗っていた大きな自転車も綺麗にして、僕の隣り置いてある。
2台の自動車で時々お話しをするので僕は寂しくない。

ある日、僕は他の家に貰われて行くことになった。
小さな子供が居る家で、自転車の練習をしたいというのだ。

僕は昔を思い出した。
転びながら練習をしたよね。
僕は今度の小さな子供も上手く乗れるようにしてあげようと思った。

僕が貰われて行く日に、男の子がやって来て、サドルをボンポンと叩いた。
僕は涙をこらえるのが大変だった。
僕は幸せだったし、今も幸せだ。