カピバラさんの2泊3日(3)

2016-06-30 21:50:00 | 童話
僕たちカピバラは、飼い主さんと一緒でなければ電車に乗れないので仕方ないのです。

飼い主さんと一緒でも、カートの大きさ制限が、長さ七十センチ以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が九十センチ程度には、お父さんやお母さんは入らないので仕方がないのです。

お父さんが先頭で、次がお姉ちゃん、そして僕、最後がお母さんで、一列になって道路の右側を歩いて行きました。
広い道路なので、前から大きな車が沢山来て少し怖かったです。

暫くすると太陽が出てきて明るくなり、僕たちは道路の横の草むらで懐中電灯をはずし、リュックを下して休憩しました。
みんなの背中は汗でビッショリになっていました。

その草むらには美味しい草がいっぱい生えていたのでリュックの中の干し草は食べませんでした。
1時間ほどして、僕たちは懐中電灯をリュックにしまい、そのリュックをまた背負って歩き始めました。

カピバラさんの2泊3日(2)

2016-06-29 21:31:20 | 童話
そして、飼い主さんから帽子とリュックと懐中電灯を貰ってきました。
帽子には
「私たちカピバラは旅行中です。」
と書かれており、リュックは前足と後ろ足が入る様になっていて背負える物でした。
それと、懐中電灯は頭用とお尻用の2個ずつ有りました。

僕とお姉ちゃんは両手でハイタッチをして喜びました。

お父さんが、
『明日は朝早く出かけるから、今の内に出かける用意をしなさい。』
と言ったので、僕たちはお水を入れる水筒と、ニンジンやキュウリの野菜と、干し草をリュックに詰込み、今夜は早く寝ました。

お父さんの
『出発するから起きなさい。』
の声に起こされましたが、外はまだ真っ暗なので、僕たちは、リュックの中から水筒を取り出し、水を入れて再び水筒をリュックに詰込みました。
そして、みんな頭とお尻に懐中電灯を付けて、暗い道を歩き始めました。

カピバラさんの2泊3日(1)

2016-06-28 21:19:54 | 童話
僕はカピバラです。両親とお姉ちゃんと4匹で住んでいます。
僕たちはお風呂が大好きです。
美味しい草をモシャモシャモシャと食べた後のお風呂が一番好きです。
お風呂の中でボ~としていると気持ち良くて、眠くなってしまいます。
そして、お風呂から出た時に飲む牛乳は最高のご馳走です。

こんな楽しい毎日を過ごしている時、お父さんが
『向うの角に住んでいたカピバラさんから手紙が来たよ。飼い主さんが定年で田舎へ引越し、みんなも一緒に広い土地の広い家に住んでいるらしいよ。』
と言いました。

お母さんは
『あらっ、素敵ね。』
『手紙の中に、是非、遊びに来て下さい、と書いてあるよ。』
『あらっ、いいわね。みんなで行きましょうよ。
『そうだね、飼い主さんに聞いて見ようか?』
『ええ、お願い。』

そして、お父さんが飼い主さんとお話しをして、3日間のお出かけの了解を貰いました。

1年だけの友達(4)

2016-06-27 21:18:13 | 童話
また秋がきて、1年草の私はたくさんの種を残して枯れてしまいました。

その次の春に、女の子が学校へ行く時に、私は玄関の横から
『おはよう。』
と言いました。

女の子が玄関の横を見ると、去年も生えていたのと同じ小さな草の私が生えているのを見つけました。
『あなたは私を知っているの?』
『ええ、小さなお花を咲かせていたお母さんから、あなたに大切にしてもらったことを聞いていたわ。そのお母さんもおばあちゃんから、あなたのことを聞いたと言っていたわ。』
『そう、うれしいわ。あなたも大切にしてあげるからね。』
『ありがとう。』

そして、私と女の子との1年ごとの友達は、今も続いています。

 おしまい

1年だけの友達(3)

2016-06-26 08:34:31 | 童話
そして夏が過ぎて、私のたくさんの花は種となって風に乗って遠くに飛んで行きました。
私は1年で枯れてしまう1年草なので、秋には枯れてしまうことを女の子に話しました。

『今まで大切にしてくれて、ありがとう。私はたくさんの種を残したので、私と同じ小さな草が生えてきたら、私と同じように大切にしてね。そして、散歩やサイクリングに連れて行ってね。』
『ええ、わかったわ。今まで楽しくしてくれて、ありがとう。』
『今日は、あなたが学校から帰ってきた時には、もう枯れて生きていないと思うの。私の種をお願いね。さようなら。』
『わかったわ、さようなら。』

そして、秋となり、冬が終ってまた春になりました。女の子が学校へ行く朝に、次の私は玄関の横から
『おはよう。』
と言いました。
女の子は玄関の横で、去年生えていたのと同じ小さな草が生えている私を見つけました。

女の子は
『あなたは私を知っているの?』
と言ったので、
『ええ、小さなお花を咲かせていたお母さんから、あなたに大切にしてもらったことを聞いていたわ。』
と答えました。
『そう、うれしいわ。あなたも大切にしてあげるからね。』
『ありがとう。』

そして、去年と同じように、
『行ってらっしゃい。』、
『おかえりなさい。』
とお話しをして、毎日同じ夢をみました。