僕と、お父さんとボクとの約束(1)

2022-01-31 20:55:58 | 童話
僕はご飯を食べるのが遅く、家族みんなが食べ終っても、僕はまだ終らない。
『いつまで食べているの、早く食べなさい。』と、お母さんにいつも注意される。
そして、
『早く学校へ行かないと遅刻するわよ。』
と、お母さんに毎日注意される。
僕は学校の徒競走では、いくら頑張ってもいつもビリになってしまうし、鉄棒の逆上がりができない。僕は頑張っているが、できないんだ。

僕が友達と学校へ行っている時、友達が
『だれか知らない子が一緒に歩いているけれで、君の友達かい?』
『ううん、知らない子だよ。』
『ランドセルを背負っていないけれで、どこへ行くのかなぁ?』
『そうだね、どこへ行くのかなぁ?』
学校に着くと、その知らない子は居なくなっていた。

次の日も、僕と友達が学校へ行っている時に、その知らない子が一緒に歩いていた。
『ねぇ、君はだれ?』
『ボクの名前はツヨシ。ボクは君をよく知っているよ。』
『なんで君は僕を知っているの?』
『ボクはね、君のお父さんの子供の頃なんだ。』
『でも、お父さんは大人で大きいよ。』
『お父さんも子供の頃があって、それがボクなんだ。』
『ふぅ~ん。だけれど、僕は朝お父さんが会社へ行く時に、行ってらっしゃいと言ったんだよ。』
『それはお父さんで、ボクはお父さんの子供の頃なんだよ。』

『ふぅ~ん。だけれど君はなぜ、いつも僕の所にいるの?』
『ボクは君が頑張っているのは知っているけれど、ボクと一緒にもっと頑張れるようにしようよ。』
『どうやってやるの?』
『ボクと同じ事をするだけだよ。』
『最初は走る練習をしようか?』
『うん、いいよ。』

なぜだろう(4)

2022-01-29 09:49:41 | 童話
『今度は外のお花でやってみようよ。』
『そうだね、公園へ行ってみようよ。』
『そうしよう。』
『公園のお花さん、お話しできますか?』
『ああ、できるよ。ここで君達が来るのを待っていたよ。』
『公園のお花もお話しができるんだ。』

『ねえお花さん、大人はなぜ君達とお話しができないの?』
『大人の人も子供の頃は、僕達お花とお話しができたんだけれど、大きくなったからお話しができなくなったんだよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。だけれど、大人の人はそれを知らないの?』
『みんな大きくなると忘れるんだよ。』
『そうなのか。』
『僕達も大きくなったら忘れるのかなぁ。』
『そうだよ、忘れるよ。』
『いやだけれど仕方ないのかな。』
『じゃ、今の内にみんなでいっぱいお話しをしようよ。』
『そうだね。だからいっぱいお話しをしようね。』
『おはよう。学校へいってくるよ。あれっ、玄関の花がしゃべらないや。僕はもう大きくなったのかな。友達の所のお花も、昨日お話しをしなかったと言っていたね。』
『やぁ、おはよう。君んちのお花はお話しをしなくなったの?』
『なぁ~に、お花がお話しをするハズがないじゃないか。』
『えっ、昨日までお花との話しをしていたじゃないか。』
『僕は知らないよ。』

『僕も明日になると、お花とのお話しを忘れてしまうのかなぁ。』
そして次の日、僕もお花とのお話しを忘れてしまった。
だけれど、僕の妹はお花とお話しをしていると言っている。

    おしまい

なぜだろう(3)

2022-01-28 10:20:14 | 童話
僕は友達に聞いてみた。
『ねぇ、君んちのお花やテーブルは話をするの? 僕んちのお花やテーブルはお話しをするんだよ。』
『うん、お話しするよ。』
『いつから?』
『この前の雷が落ちた時からだよ。』
『ふぅ~ん。僕んちと同じだね。』
『そうだね。』
『どうしてなのかなぁ。』
『どうしてなのかね。』
『だれかに聞いてみようか?』

『ねぇお母さん お花やテーブルはしゃべれるの?』
『えっ、人間じゃないのに、しゃべれるハズが無いでしょ。』
『僕んちのお花やテーブルもお話しするよ。』
『そう、不思議ね。』
『どうしてなのかなぁ?』
『お母さんも分からないわ。』
『ねぇお母さん、このテーブルとお話しをしてみて。』
『もしもしテーブルさん、お話しができますか?』
『僕には話しかけるのに、お母さんには返事しないね。』
『そうだね。今度はお花に話しかけてよ。』
『お花さん、お花さん、返事をしてね。』
『やっぱり大人には話しかけないんだ。』
『そうだね。』

なぜだろう(2)

2022-01-27 10:09:04 | 童話
電車に乗っていると、窓に映った僕が話しかけてくる。
『気を付けていないと、電車が揺れた時に転ぶよ。』
『うん、わかった。』

どうしてみんなが話しかけてくるのだろうか?
何時ごろから話しかけてくるようになったのだろうか?
夏休みのある日の夕立で、近くの大きな杉の木に雷が落ちた事が有る。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ピカッ、ドド~ン。
『ビックリしたね。』
僕がおもわずつぶやいた時に、部屋の中に置いて有るサボテンが
『そうだね、ビックリしたね。』と返事をした。
『えっ、だれ?』
『僕だよ。サボテンだよ。』
『サボテン君はしゃべれるの?』
『うん、しゃべれるけれど、今迄黙っていたんだよ。』
『君以外にしゃべれる植物がいるの?』
『みんなしゃべれるよ。』
僕は玄関に飾っている花瓶の花に話しかけた。
『君もしゃべれるの?』
『うん、しゃべれるよ。』

『机の僕もしゃべれるよ。』
『テーブルの私もしゃべれるわよ。』
『植物以外もしゃべれるんだ。』
『犬や猫もしゃべれるよ。』
『わぁ、楽しいなぁ。みんなでお話しをしようよ。』
『ワイワイ、ガヤガヤ。』
僕以外にも、みんなとお話しができる子がいるのかなぁ?

なぜだろう(1)

2022-01-26 09:53:33 | 童話
『おはよう。忘れ物は無~い? 教科書とノートは全部持ったの? 宿題のプリントも持ったの?』
『おはよう。全部持ったよ。』
僕に毎朝、玄関の花瓶の花が話し掛けてくる。
『おかえり。学校は今日も楽しかった? 宿題は有るの?』
『ただいま。宿題はね、プリントが2枚だよ。』
僕は玄関の花瓶の花に話し掛ける。

僕が宿題をしていると、机が話しかけてくる。
『今日も学校で頑張ったね。』
『うん、勉強も運動会の練習も頑張ったよ。』
『宿題が終ったらどこへ行くの?』
『友達とグラウンドで野球をするんだよ。』
『ケガをしないでね。』
『うん、わかったよ。』
『宿題が終ったからグラウンドへ行ってくるからね。』
『行ってらっしゃい。』
僕は机に行ってきますを言ってグラウンドへ向った。

家に帰って手を洗っていると、水道の蛇口から声が聞こえる。
『今日も楽しかった? せっけんをよく付けてゴシゴシと洗ってね。』
『うん、わかった。』

お母さんが用意してくれていたオヤツのケーキを食べようとするとフォークが話しかけてくる。
『今日のケーキはね、高いケーキだから特別おいしいよ。』
『そうだね、いつものケーキよりおいしいね。』
『終ったら片付けてね。』
『うん、わかった。』
『これから、どこへ行くの?』
『これからお母さんとお買い物に行くんだよ。』
『何を買いに行くの?』
『スニーカーを買ってもらうんだよ。』
『カッコいいのを買ってもらうの?』
『ううん、普通のだよ。走りやすいのがいいんだ。』
『お母さんが来たよ、行ってらっしゃい。』
『うん、行ってくるからね。』