僕の背中(1)

2020-07-31 07:23:10 | 童話
僕が走る時はいつも友達の背中を見ながら走っている。遊んでいる時も、運動会の時も、僕はみんなの背中を見ながら走っているが、みんなが僕の背中を見ながら走ることが無い。

もっと速く走りたいし、みんなに背中を見せながら走りたい。しかし、一生懸命に練習をしても速くならない。

僕の家のボチに聞いてみた。
『ねぇ、どうすれば速く走れるようになれるの?』
『僕みたいに4本足で走るといいんだよ。』
『無理だよ、両手両足では上手く走れないよ。』

僕はお猿さんに聞いてみた。
『ねぇ、どうすれば速く走れるようになれるの?』
『地面を走るのではなく、木から木に飛び移れば速く遠くへ行けるよ。』
『だめだよ、運動場には木が植わって無いよ。』

ぼく(7)

2020-07-30 07:12:15 | 童話
『もう一つあるよ。お母さんやお父さんが手を近付けてきたときに、手のひらを握るのではなく、指を一本だけを強く握るんだ。そうすると、みんな喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『わたしも指を一本だけ握ってあげて、みんなに喜んでもらっているわ。』
『僕もやっているよ。そうすると、みんなが「かわいいわねえ。」と言って喜んでいるよ。』

『もう他に無いかなあ。』
『いっぱい有るよ。大人の人が「居ない居ない、バァ。」と言ったら、声を出して笑ってあげるんだ。これも喜ばれるよ。それからね、足の裏をコチョコチョされた時は、足だけではなく、両手両足を全部バタバタさせるんだ。足だけでは喜ばれないよ。あっ、バタバタさせる時に口を大きく開けることを忘れないようにね。』

『うん、分かった。今日からやってみるよ。』
『わたしもやるわ。』
『僕はもう大きいからハイハイをしているんだけれど、ハイハイしている時にドテッと転んで見せると笑いながら喜ぶよ。テレビのお笑い番組で、時々わざと転んでいるのを見て、わざと転んだのを知っていて笑っているけれど、僕の転ぶのは本当に転んでいると思っているみたいだよ。』
いっぱい有るんだね。

だけれど、お母さんやお父さんもぼくと同じ事をやっていたと思うんだけれど、大人になると全部忘れるのかなあ?
ぼくも大きくなったら忘れると思うので、今の内にお母さんやお父さんを喜ばせてあげようと思うんだ。

おしまい

ぼく(6)

2020-07-29 09:29:03 | 童話
『ねえ、みんな、お母さんやお父さんを喜ばせる方法が有るんだけれど、みんなのお母さんやお父さんはどうかなあ?』
『どうするの?』

『大きく口を開けて、両手と両足をバタバタさせるんだよ。そうすると、みんなが「かわいい、かわいい。」と言って喜ぶよ。お母さんは、ぼくの顔に自分の顔を押しつけて喜ぶよ。』

『わたしもやっているけれど、お母さんもお父さんも喜ぶわよ。』
『僕のお母さんも喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、よし、僕も家に帰ったらベッドの上でやってみるよ。』
『すごく喜ぶよ。』

ぼく(5)

2020-07-28 07:36:30 | 童話
『あっ、また赤ちゃんがお医者さんの診察が終って出て来た。』
『お医者さんは何と言ったの?』
『うん、順調に成長していますねと言ったよ。』
『良かったね。』
『うん、お母さんも喜んでいたよ。ぼくはたくさんオッパイを飲んでいるからね。』
『もうお母さんと帰るからね。みんなバイバイ。また今度ね。』
『うん、バイバ~イ。』
『バイバ~イ。』

『赤ちゃんのお友達がたくさん居てよかったね。』
『・・・』
『さあ、帰ってきたからベビーベッドで寝ててね。』
『・・・』
ぼくはお母さんのお話ししている事は全部分るんだけれど、まだ口でお話しができないので黙っています。
だけれど、目でお話しをしているのがお母さんには分かりません。お母さんも赤ちゃんの時には目でお話しをしていたのになあ。
ぼくもきっと、大きくなったらみんなと目でお話しができなくなるんだね。

ぼく(4)

2020-07-27 09:09:38 | 童話
『お母さんとお医者さんがお話しをして、ぼくはもう少し経ったら離乳食も食べるんだよ。』
『離乳食って、おいしいのかなあ?』
『食べたことが無いから分らないよ。』
『ぼくは食べたことがあるよ。オッパイに比べておいしくなかったので、ベェと出しちゃったよ。だけれど、今はちゃんと食べているよ。』
『ふぅ~ん、えらいね。』

『ぼくは君達より五ヵ月早く産まれたお兄ちゃんだから偉いんだよ。』
『何が偉いの?』
『う~んとね、離乳食を食べているからエライんだよ。』
『ふぅ~ん。』
『ぼくも五ヵ月くらいすると離乳食を食べるから偉くなるのかなあ。』
『そうだね、僕達赤ちゃんは生まれてから五ヵ月くらいになると離乳食を食べ始めるので、みんな偉くなるんだね。』
『そうだね。』