火星ネズミ(3)

2019-03-31 07:39:43 | 童話
僕はすごい衝撃を受けて体が床に押しつけられ、三人の宇宙飛行士も座席に押し付けられていた。
しばらくして押し付けられる力が弱くなり、立てるようになった。
そのあと、こんどは体が浮かび上がった。
今迄隠れていたが、空中に浮かんだので3人に見つかってしまった。

僕は仕方なくみんなに挨拶をした。
『僕も宇宙飛行士になりたかったのです。みんなに迷惑をかけないので火星に連れて行ってください。僕の食べる物とお水は持っていますし、オシッコやウンチを貯めて押し固める袋も持っています。』
三人の宇宙飛行士は相談した。
『今この宇宙船から外へ出したらハツカネズミは死んでしまう。食べ物もお水も持っているし、ハツカネズミは体が小さいので酸素もあまり使わないので連れて行こうか。』

僕は大喜びをして、
『みんなの訓練の様子はずっと見ていましたので、この宇宙船のことは大体分かりますので、僕を宇宙飛行士として手伝わせてください。』
『よしっ、分かった。君には機械の操作はできないが計器の見張りをやってもらうよ。
空気の圧力や炭酸ガス濃度、それと電気の状態を毎日記録するんだ。
いいかい、君は宇宙飛行士なんだから。』
僕はすごく嬉しかった。
『よしっ、頑張るぞ。』

こうして、僕は宇宙飛行士となり、3人の宇宙飛行士と一緒に、今も火星に向けて飛行している。
みんなとミッションを成功させて帰ってくるように頑張っている。
 
      おしまい

火星ネズミ(2)

2019-03-30 09:35:15 | 童話
それから僕は、みんなが宇宙の勉強をしている教室に入って行き、テーブルの隙間から勉強の様子を見ていた。

そうか、地球の空気が無い宇宙では、宇宙に飛んでいる宇宙線や、太陽からの太陽風が直接当たるので体を悪くするのか。宇宙船はその影響を少なくするようになっているが、太陽の爆発が大きくなった時は、それでも防げない場合が予想されるので、その時は安全な宇宙服を着るんだ。勉強は大切なんだね。
そうすると僕も宇宙服を作らないていけないね。だけれど、僕は機械が使えないので宇宙服が作る事ができない、どうしようか?
そうだ、倉庫に有る宇宙服用の布地を少しもらってきて、ロケットに乗り込む時に持って行こう。もし宇宙で危険になった時に、宇宙服用の布地にくるまっていればいいや。

そして僕は倉庫に行った時に、実験に使った宇宙服用の布地を僕の住家に持ってきた。
その時に、宇宙食とお水、それとオシッコとウンチを貯めて押し固めておく袋も一緒に持ってきた。宇宙飛行士として、人間に迷惑をかけないようにするためだ。

そして、人間の訓練が順調に進み、僕の訓練も進んだ。
今回のロケットの行先は火星であり、永い宇宙旅行による。
そして訓練が終り、10名の宇宙飛行士から今回乗り込む3名が決定した。
発射の1ヶ月前となり念入りの最終チェックが続いた。僕もロケットに乗り込む物の最終チェックをした。

機体の確認ができたのでロケットに荷物が積み込まれたが、その時に僕が荷物を持って、そっと乗り込んだ。
成功だ、僕は宇宙飛行士になれるのだ。
いよいよ、ロケットに燃料が入れられて、発射の秒読みが始まった。
僕は足を踏ん張って、発射の時に体にかかる重力のGに耐えられるようにした。
大きな声のカウントダウンのアナウンスがあった。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射。

火星ネズミ(1)

2019-03-29 05:32:02 | 童話
僕はハツカネズミ、僕の仲間には宇宙環境の実験のために、小さなオリに入れられて宇宙へ行ったネズミも居る。
だけれど、僕は宇宙飛行士として宇宙に行きたいと思っている。
日本の宇宙飛行士10人は、ロケットの発射による重量に耐える訓練や宇宙船の操縦、そしてロボットアームの操作の訓練を毎日行なっていた。
一日の訓練が終ると疲れて、宿舎に帰って食事をしてお風呂に入ったら、すぐ寝てしまうのだ。

ハツカネズミの僕はみんなが寝ている間に訓練の装置を見て回った。
僕は機械の操作はできないが、全部見ておけば人間が実際に訓練している様子が良く分かる。
しかし、昼間は見つかってしまうので夜の間の探検だ。
僕の一番のお気に入りは操縦室だ。
コンピュータ画面や計器がいっぱい並んでいるので。まだ全然分からないが、打上げまであと一年くらいかかるのではないかと思うので、その頃までには全て分かる予定だ。

『訓練開始!』教官の大きな声が響いた。
僕は訓練装置の隙間から訓練の様子を見ている。
『ふぅ~ん、そうなんだ。ハッチを閉めるのは、そのボタンで、船内の気圧は、あのメーターで、炭酸ガス濃度は、こっちのメーターなのか。』

計器類の確認が終わったら『Gをかけます。』とのアナウンスがあり、徐々に僕の体が重くなってきて、ついに体が床に張り付いて動けなくなった。
『そうか、ロケットが打上げられる時に体にかかる重力なんだ。』

しばらくしてやっと歩けるようになった。『ふぅ、大変なんだね。』
それからみんなは、いろいろな計器が異状を示した時に、原因を調べて修理する訓練をやっていた。
『ふぅ~ん、予備の装置がいっぱい付いているんだ。誰もいない宇宙に何年も飛んで行くから、全部自分達で直さなければならないから大変なんだね。』
何日か見ている間にいろいろ分かってきだした。

僕と、お父さんとボクとの約束(3)

2019-03-28 05:29:16 | 童話
そしてある日、僕は友達とボクの3人で、自転車で近くの公園に行った。公園までの道は上り坂だが、ボクが1番で僕が2番で、友達が3番目だった。
今迄は僕は友達にかなわなかったので、友達が
『どうしてそんなに速く走れるようになったの。』
と言って驚いていた。
 
僕を頑張れるようにしてくれたボクはすごいと思う。
ボクは本当に僕のお父さんの子供の頃なのだろうか?
『ねぇお父さん、お父さんは小さな子供の頃は、走るのが速く、鉄棒の逆上がりもできていたの?』
『走るのが遅く、鉄棒の逆上がりも全然できなかったよ。』
『でも、今はできるでしょ?』
『そうだね、逆上がりはできるけれど、今は走るのは遅くなっただろうね。全然運動をしていないからね。』
『でも速かったんでしょ?』
『そうだね、速かったよ。』

『お父さんはだれから教えてもらったの?』
『お父さんのお父さんから教えてもらったのだよ。』
『ふぅ~ん。僕はね、お父さんに教えてもらったんだよ。』
『お父さんは教えていないよ。』

『ううん、お父さんの子供の頃の男の子から教えてもらったんだよ。』
『そうか、お父さんも、お父さんのお父さんの子供の頃の男の子から教えてもらったんだよ。』
『僕と同じだね。』
『これは、お父さんとお前との秘密だよ。』
『うん、僕とお父さんとの秘密だよね。それから、僕はボクとずっと仲良くするからね。』

     おしまい

僕と、お父さんとボクとの約束(2)

2019-03-27 05:33:38 | 童話
『走る時はね、ヒザを高く上げるようにするんだよ。一緒にやってみようよ。』
『うん、だけれど速く走れるようになれるのかぁ?』
『なれるよ、ボクと一緒に頑張ればできるよ。』
『うん、頑張る。』
『よ~い、どん。もっとヒザを高く上げて、もっと高く。そうそう、もっと高く上げて。』
『なんか、速く走ることができそうだ。』
『本当に速く走れているよ。』

僕は、その日から毎日、ヒザを高く上げて走る練習を続けていて、学校の徒競走で5人で走って3番目になった。
『今度は逆上がりをやってみようよ。』
『うん、頑張るよ。』
『分かった、手が伸びてしまっているからできないんだ。鉄棒を回り始める時にヒジを曲げて、体を鉄棒にくっつけるようにするんだよ。ボクがやってみるね。』
『本当だ、すごいね。』
『ボクと一緒にやれば君もできるようになるよ。』

僕は、その日から毎日、ヒジを曲げるようにして練習を続けていて、逆上がりができるようになった。
僕は速く走ることと、逆上がりができるようになる練習を続けていたので、ご飯を食べるのも、学校へ行くのも早くできるようになった。

僕は、ご飯を食べている時に、徒競走で3番になった事と、鉄棒の逆上がりができるようになった事を、お父さんとお母さんに話をした。
お母さんは
『すごいわね。』
と言ってくれて、お父さんは
『どうしてできるようになったんだい?』
と聞いたので、僕は
『新しい友達が教えてくれたんだよ。』
と答えた。

だけれど、ボクの事は話をしなかった。