武器はガチャ、そして(2)

2016-10-31 21:28:17 | SF小説
第二章 日常生活での出来事

直之の食べていたご飯粒が、お箸からこぼれたのを見た母親の裕子が、
「こぼしたわよ。ご飯を粗末にしてはダメだから拾いなさい。」
と言って注意した。
直之は
「わかっているよ。」
と言ってテーブルの下を探したがご飯粒は見つからなかった。
「ちゃんと拾ったの?」
「見つからないんだよ。」
「じぁ、後で拾うからいいわ。」
と母親の裕子が言った。
「ごちそうさま。」
と言って直之は席を立った後で、母親の裕子がテーブルの下を探したが、やはり御飯粒は見つからなかった。
「そういえば、私も昨日こぼしたイクラが見当たらないんだ。」
と新二郎も続けて言った。

そして、テーブルに戻って来た直之が、
「昨日、グラウンドで野球をやっていて、ショートゴロを捕ろうとしたらボールが無くなってしまい、ランナーをアウトにできなかったんだ。そしてみんなからは
『なにやってんだよ!』
『へたくそだなぁ』
と言われたんだ。だけれど、全員でボールを探したが見つからなかったんだよ。」
と話した。
それをじっと聞いていた父親の新二郎が
「そうか、直之がこぼしたご飯粒も、私がこぼしたイクラも見当たらなかったのは、テーブルの下からどこか異次元につながっているのだろうか? 落としてからすぐに探したのだからゴキブリに食べられたのではないからなぁ。メビウスの輪のように空間の歪でもできているのかなぁ? 宇宙空間ではブラックホールが呑み込む可能性はあるが、地球上でブラックホールの存在はあり得ないしなぁ。それにしても、野球のボールを呑み込むくらいのブラックホールだと大きくて危険だなぁ。」
と一人で納得するようにつぶやいた。

 「お母さん、僕のペンケースが無いんだけれど、知らない?」
「知らないわよ。ランドセルの中や机の引き出しに無いの? ちゃんと片づけていないからいけないのよ。無くなったらすぐ買うというのはダメよ。ちゃんと探しなさい。」
「分かっているから大事にしているんだけれど、どこを探しても無いんだよ。」
「ねえお父さん、僕のペンケースも宇宙にあるブラックホールが呑み込んだのかなあ?」
と、宇宙に興味のある直之が冗談半分に言った。
「あんな大きいペンケースが呑み込まれるブラックホールだと相当大きいし、そんな大きなブラックホールだと危険だよ。それに、そもそも、地球上ではブラックホールは存在していないよ。」
と父親の新二郎は否定したが、内心では可能性を感じていた。
「お父さん、思い出したよ。教科書とノートはカバンに入れたけれど、ペンケースはカバンに入れるのを忘れて、学校においてきたんだった。」
「そうだろう、ペンケースを呑み込むブラックホールなら、もっといろいろな物を呑み込んで危険な状態になっているよ。」
と父親の新二郎は言ったが、感覚的に可能性を感じるものが有った。

武器はガチャ、そして(1)

2016-10-30 09:27:18 | SF小説
第一章 ルアーフィッシング

遠山新二郎は妻の裕子と長男の直之と三人で渓谷にキャンプに来ていて、新二郎の趣味のルアーフィッシングをしている。
「あっ、お父さんまたヒットしたよ。」
「おう、凄いなぁ。お前は腕を上げたね。」
「うん、でもこのルアーが良いんだと思うよ。」
「そうだね、ミノーも良いけれど毛ばりは良く釣れるよね。」
「僕の作ったスプーンはダメだったけれど、今度はもっと良いルアーを作って試そうと思うんだ。」
「ルアーは奥が深いから難しいよ。」
「そうだね、お父さん。」
「釣った魚は全部リリースしてしまいましたけれど、今日はもう十匹も釣れましたわね。そろそろお昼にしましょうか。」
「お父さん、海水浴も楽しいけれど、ルアーフィッシングも楽しいね。」
「そうだね。」
「ここは渓谷で空気も良いから素晴らしいですわね。」
「渓谷で食べるおにぎりは美味しいよね。」
「たくさんお食べ。」
「もうお腹が一杯だよ。」
と長男の直之が言い、父親の新二郎も
「私もお腹が一杯になったね。」
と言った。

「ねえお父さん、ここだと空気が綺麗だから星がはっきり見えるよね。」
「そうだね。うちで見るより綺麗に見えるだろうね。」
「今度、望遠鏡を持ってきて泊まろうよ。」
「テントを買わないといけないね。」
と、新二郎は妻の裕子の顔を見ながら言った。
「今年はお金をいっぱい使ったから、テントは来年ね。」
「お父さん、昨日の夜は土星の輪が少し見えていたよ。」
「うちの望遠鏡もハワイ観測所のすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡みたいだと、もっともっと遠くの星が見えるんだけれどね。」
「お父さん、うちも八十ミリの望遠鏡よりもっと大きい反射望遠鏡にしようよ。」
「お父さんのお小遣いで買ってもらいなさい。」
と妻の裕子があっさりと言った。
「直ぐには買えないけれど、もっと口径の大きい百五十ミリくらいの反射望遠鏡が欲しいね。」
「そうだね、お父さん買ってよ。」
「お小遣いを貯めて来年買おうか。」
「うん、僕もお小遣い貯めるようにするよ。」
「そうだね、もっと大きい望遠鏡が買えるまで家にある望遠鏡を使って今夜も星を眺めようか。」
「そうしなさい。」
と、またもや妻の裕子はそっけなく言った。
「うん、そうしようよ、お父さん。」
「それでは、遅くならないうちに帰ろうか。」
「そうしましょう。」
「昼間はルアーフィッシングをやって、夜は星を見るなんて、最高の一日だね。」
このように、直之は父の影響を受けて、ルアーフィッシングや天体観測を楽しんでいた。

霧のおじいさん(2)

2016-10-29 11:24:30 | 童話
『あなたはだ~れ?』
『わしは霧のおじいさんだよ。わしが現われると霧も出てくるんだよ。』
『なぜ霧が出るの?』
『霧の中には夢が詰まっているんだよ。だから、みんなに夢をあげるために、霧がでるんだよ。大人の人も霧の中の景色をきれいだと感じる人が多くいるんだよ。中国の「桂林(けいりん)」や北海道の「釧路(くしろ)」という霧の景色がきれいな所へ、旅行する人も多くいるんだよ。』
『ふぅ~ん。僕も大きくなったら「けいりん」や「くしろ」へ行きたいな。』
『そうだね、きれいだから行ったほうがいいよ。』

『僕や友達が霧の中で靴が脱げた時に、足の裏がふわふわとしていたのはなぜなの?』
『それはね、君たちの靴がわしのヒゲに絡まって脱げて、はだしでわしのヒゲの上を歩いていたからだよ。』
『そうなんだ。』

『霧が出ない時は、おじいさんはどこに居るの?』
『高い山の上に居るんだよ。そして、霧が出る時に、わしはその高い山から下りて来るんだよ。』
『それでは、高い山から下りて来た時は、いつもここに来てよ。』
『それがダメなんじゃ。いろいろな所から来てほしいと言われているので順番で行っているのだよ。』
『今度はいつ来るの?』
『いつなのかねぇ。わしにも分からないのだよ。』

そして、霧のおじいさんが高い山に帰ってからも、僕は霧のおじいさんが来るのを毎日待っている。

僕は『ハクショ~ン』と大きなクシャミが聞こえてくるのをずっと待っている。

霧のおじいさんのヒゲの上をはだしでふわふわと歩くのを楽しみにしている。

霧のおじいさんは明日来てくれるかなぁ。

  おしまい

霧のおじいさん(1)

2016-10-28 21:12:26 | 童話
霧の朝は不思議だ。
霧の中を歩いていると雲の中にいて、ふんわりと浮かび上がりそうな感じがするだ。
僕が学校へ歩いて行っている時に右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、やっぱり足の裏に何も当たらないで、ふわふわとしている。

『早く起きないと、学校に遅刻するわよ。』とお母さんに起こされた。
『ああっ、夢か。』僕は急いで歯を磨き、顔を洗って朝ご飯を食べた。

そして、僕が学校へ歩いて行っている時に右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、やっぱり足の裏に何も当たらないで、ふわふわとして、夢と同じようになった。

学校に着いて、僕は友達にふわふわとしていた話をすると、友達も同じようにふわふわとしていたと言った。
学校から帰る時間には霧は無かったので、ふわふわとはしなかった。

そして、何日間か霧は出なかったので、ふわふわする感じは忘れかけいた。

ある日の朝に霧が出た。僕が学校へ歩いて行っている時に、また右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、やっぱり足の裏に何も当たらないで、ふわふわとしている。

『早く起きないと、学校に遅刻するわよ。』と、またお母さんに起こされた。
『ああっ、今度も夢か。』僕は急いで歯を磨き、顔を洗って朝ご飯を食べた。

そして、僕が学校へ歩いて行っている時に、また右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、足の裏に何も当たらないで、ふわふわとして、前と同じようになった。

一緒に歩いている友達も同じようにふわふわするねと言った。
その時『ハクショ~ン。』と大きなクシャミが聞こえた。
友達のクシャミではない、だれのクシャミだろうか?
その時『ごめんごめん、びっくりしたかい?』と大きな声が聞こえた。
だけれど、近くには誰もいない。
『ここだよ。』と聞こえる上の方を見ると、白いヒゲを生やしたおじいさんの大きな顔が有った。

僕の順番(2)

2016-10-27 21:34:49 | 童話
そして、葉っぱから落ちた僕は、小川に流れ込んで行き、やがて、僕は川の水になって、みんなで小川を下流へ進んで行きました。
『やあ、魚さんがいっぱいだ。』
僕達はたくさん集まったので川が段々広くなり、流れが速くなりました。
大きな岩がいっぱい有る所では、あっちこっちの岩にぶつかりながら進んで行きました。
右の岩にドスン。
今度は左の岩にドスン。
次から次からぶつかりながら進んで行きました。

そして、急に前が何も無くなり、勢いよく下に落ちて行きました。
『あっ、これは滝だ。』
一番下の滝壷に落ちて行き、上か下か分らなくなりました。
『ブクブクブク。』
僕は滝壷の中で一回転してから上に上がって来ました。
『ブァ。』

滝が終ると川幅が広くなり、ゆっくりと進んで行きました。
広い河原ではたくさんの人がキャンプをしているのが見えます。
そして木の船をさおで押しながら進んで行く遊覧船が見えます。
僕はゆっくりゆっくりと何日もかかって川を下って行きました。
ずっと進んで行くと、大きな橋がいくつも見えてきました。
そして、目の前が広くなり、大きな船がたくさん停泊している所に来ました。

『あっ、塩辛い。海だ海だ。もう川は終ったんだ』
僕は、また海に帰って来たのです。
僕は、しばらくすると、また水蒸気になって空へ行き、雲になってから雨になり、川から海に戻って来るのです。

だから、家や森や山や大きな木や小さな木やお魚さんや大きな岩や滝やキャンプをしている人や遊覧船のみんな、もうすぐ、また行くから待って居てね。

おしまい