グー、グー、グー(2)

2018-10-26 05:49:21 | 童話
『起きなさい、映画が始まるよ。』
僕はお父さんに起こされた。
『あれっ。ここはロケットの中ではなく、映画館の中だ。おかしいなぁ。』

そして、映画が始まった。
外国の小さな町の、中心部から遠く離れた草原の中に家が有り、その家には老人夫婦が住んでいる
この老人夫婦の家のテレビに、毎日同じ時間にビビッ、ビビッと雑音が入ってくるのだ。
少し離れた家のテレビには雑音は入らないので、この老人夫婦に対する宇宙からメッセージではないかと調査を行なった。
そうして、大きな電波望遠鏡を作り、時間をかけて調査した。その結果、宇宙からのメッセージだと確認ができたので、電波の来る方角にある星の調査を行うことにしたのだ。
そして、多くの技術者が乗り組んだロケットが打ち上げられ、宇宙探検が始まった。
永い宇宙旅行なので、火星と土星を経由して飛んで行く計画である。

永い時間の映画なので、火星に着いた時間で10分間の休憩があった。

『土星に近付いてきたので起きなさい。』
とお父さんに起こされた。僕は火星を出発してからずっと寝ていたんだと言われた。
『あれっ、またロケットの中だ。さっきは映画館の中だったのに、おかしいなぁ。』

ロケットの外を見ると、土星の大きなリングが見えた。
『わぁ、きれいだね。お父さんの言ったとおりだね。』
『ああ、きれいだね。前に土星に来た時に見たのと同じだね。』
『また、土星の基地で休憩するの?』
『そうだよ、最後の休憩だね。』

そして、ロケットは土星に着いた。
『やっと土星に着いたね。地球に向って電波を出している星はもう少し遠いらしいよ。』
『どんな生き物か楽しみだね。』
『今晩は、この土星の基地の休憩室で寝るよ。』

『うん、分かった。だけれど、今度起きたら僕はどこにいるのかなぁ?』


グー、グー、グー(1)

2018-10-25 05:40:30 | 童話
今日はお父さんと宇宙探検の映画を見に行く日だ。昨日はワクワクしてなかなか寝られなかった。
今は月へ人間が行っているし、火星では探査の電気自動車が走って、写真を地球に送ってきている。
僕が大きくなった時は、宇宙のどこまで行けるようになっているのかなぁ?
今日の映画は、遠い宇宙のはてから人間にメッセージを送ってきている星を探しに行くらしいんだ。どんな生き物がいるのかなぁ。

『もうすぐ火星に着くから起きなさい。』
僕は昨日あまり寝られなかったので映画を観ながら寝てしまったのかなぁ。
『火星でロケットに燃料を補充している間、火星基地の中で休憩するよ。』
僕はお父さんに起こされた。

『あれっ、ここは映画館の中ではないや。』
『ロケットから基地の休憩室へ行くまでの間は、宇宙服を着るルールになっているんだよ。』
『うん、分かった。だけれど、僕は今、映画を観ていたんだけれどなぁ。』
『また同じ席に座るから荷物はそのままでいいよ。早く、休憩室へ行くよ。』
『う、うん。変だなあ。』

僕は変だなあと思いながら、お父さんや他のクルーと一緒に基地の休憩室へ行った。
休憩室は大きなドーム型で、全体がガラスのように透明になっていて、ロケットに燃料を入れている所がよく見えている。周りは暗いが空にはたくさんの星が輝いている。
『うわっ、きれいだなぁ。』
『そうだね、お前は初めての宇宙旅行だったね。』
『うん、そうだよ。宇宙はすごいんだね。』
『サンドイッチを食べたら、またロケットに戻ろうか。』

『今度はどこまで飛んで行ったら休憩するの?』
『土星かな?』
『大きなリングのある星だね。』
『そうだよ。リングは近くで見ると、写真よりずっときれいだよ。』
『お父さんは土星に行ったことがあるの?』
『ああ、お前と同じくらいの子供の時に、一度行ったことがあるよ。』
『ふぅ~ん、すごいね。』
そして、ロケットは土星に向って飛行を続けた。

お話君のお話

2018-10-24 05:44:02 | 童話
お話くんはお話が大すきです。
お話くんは、ぼくがお母さんとお話しするときも、お父さんとお話しするときも、そばにいっしょにいます。
ぼくがポチとお話しするときも、タマとお話しするときも、ずっとそばにいます。
お母さんやお父さんとお話をしているときに、ぼくがわらうとお話くんもわらいます。
お母さんやお父さんにしかられて、ぼくが泣いているときにはお話くんは、ぼくのそばにはいません。
学校で先生やともだちと話しているときも、お話くんはそばにいます。

お父さんが会社でお話をしているときには、お父さんのそばにお話くんはいません。
お母さんが美容院やスーパーでお話をしているときには、お母さんのそばにお話くんはいません。

ぼくが寝ているときには、お話くんも寝ています。
ぼくがくしゃみをすると、お話くんもくしゃみをします。
ぼくが病気で寝ているときは、お話くんはおふとんの中でぼくをあたたかくしてくれます。

ぼくが元気になって外で走っているときにお話くんもぼくといっしょに走ります。
ぼくが自転車に乗っているときに お話くんは、ぼくがころんでけがをしないように、いつも注意してくれます。
運動会でぼくが一等になったとき、お話くんは、よくがんばったねとほめてくれます。
ぼくがビリのとき、お話くんは、こんどがんばろうねとはげましてくれます。

ぼくのところにいるお話くんは、ともだちのところにもいるのかなぁ。
ともだちみんなのところに、お話くんがいるといいね。

ねえお母さん、ともだちみんなのところにお話くんはいるの。
ええ、みんなにひとりずつお話くんがいますよ。

ねえお母さん、お父さんにはどうしてお話くんがいないの。
そうね、お父さんも子供のころにはお話くんがいっしょにいたのよ。
だけどね、お話くんはたくさんいないので、ちいさな子のところへ行ってしまったのよ。

    おしまい

夢の入口(2)

2018-10-23 05:37:38 | 童話
その夜、向うから友達がノートと2本のエンピツを持ってやって来た。
僕も自分の手を見ると、両手にノートと2本のエンピツを持っていた。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、家の玄関の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は洋服ダンスの中からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のノートは文字がいっぱいで書くところが無いや。』
『僕のノートも文字がいっぱいだ。』
『今度は前の時よりもっと、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』
そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。

『僕の持っている携帯電話は録音機能があるから、今度はこの携帯電話を持って行って、夢の入口が分かった時に録音しようよ。』
『うん、良い方法だね。』
その夜、向うから友達が携帯電話を持ってやって来た。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、物置の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は2階に上がる階段の下の夢の入口からだよ。』
『よし、録音するよ。夢の入口は、物置と2階に上がる階段の下だよ。』
『録音できたかどうか聞いてみようよ。』
『そうだね、録音されていないと困るからね。』
「夢の入口は、物置と2階に上がる階段の下だよ。」
「夢の入口は、物置と2階に上がる階段の下だよ。」
「夢の入口は、物置と2階に上がる階段の下だよ。」
『わぁ、録音されている。』
『今度は大丈夫だね。』
『二人とも夢の入口を録音できたのを確かめたので、夢から出るよ。』

そして、目がさめて、携帯電話の録音を聞いてみた。
『グウ~、グウ~、グウ~。』
『あれっ、お父さんのイビキだ。』
『本当だ、おじさんのイビキだ。』
『おかしいなぁ、イビキ以外は、何も聞こえないや。』
『そうだね、何も聞こえないね。』

今は、自分達の家で二人別々に寝て、夢の入口を探している。
夢の入口が見つかったら教えあうことにしているが、二人とも入口はまだ見つかっていない。

     おしまい

夢の入口(1)

2018-10-22 05:37:37 | 童話
ある日、僕は夢の事を書いてある本を見つけた。
その本には、
『みんなで楽しく遊んでいる時に目がさめて、夢が終ってしまうことがあるよね。それは、夢の出口から出て来たからなんだ。夢には入口もあるんだけれど、夢の出口から出てくると、みんな夢の入口の場所は忘れてしまうから、夢の入口はだれにも分からないだよ。』
と書いてあった。

それで、僕は友達と二人で夢の入口を探すことにして、友達が僕の家に泊まった。
そして、夢を見ることが一番多い場所を、家の中で探すことにした。
僕達は夢の中に入ったらお互いに教えることにして、家の中の別々の場所で寝た。
最初の日は二人とも夢を見なかった。

次の日、向うから友達がやって来る夢を見たので、僕は友達に夢を見ている事を教えてあげた。すると、友達も夢をみている事を教えてくれた。
朝になって、目がさめた時に二人とも夢の中でお話しをした事は覚えていたが、夢の入口がどこだったのかは覚えていなかった。

『夢の中で君に会ったのに夢の入口のことを覚えていないのは残念だね。』
『そうだね、もう一度夢の入口を探しに行こうよ。』
『うん、二人でまた行こうか。今度はノートとエンピツを持っていて、夢の入口が分かった時に、ノートに書いておこうよ。』
『そうだね、良い考えだね。』
そして、二人はノートとエンピツを枕元に置いて寝ることにした。

向うから友達がノートとエンピツを持ってやって来た。
僕も自分の手を見ると、両手にノートとエンピツを持っていた。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、机の下の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は食堂のテーブルの下からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のエンピツは芯が折れていて書けないや。』
『僕のエンピツも芯が折れていて書けないや。』
『しかたがないので、夢の入口の場所を、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』

そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。
『今度は、エンピツが1本折れても大丈夫なように2本持って行こうよ。』
『そうしようよ。今度は大丈夫だよね。』
そして、二人はノートと2本のエンピツを枕元に置いて寝た。