アリの小さな魔法使い(2)

2018-12-11 05:43:59 | 童話
毎日働いていたアリ達が、冬になって巣穴でじっとしている間に、僕のようなアリの魔法使いが集まって会議をするんだよ。
そうだよ、遠くからも、みんな魔法を使って飛んでくるんだ。

えっ、どうやって飛んでくるのかだって。
僕達アリは、人間の魔法使いのように、空飛ぶホウキや空飛ぶジュータンは持っていないので、木の葉っぱに乗って飛んでくるんだ。
寒い時に、木の葉っぱがいっぱい飛んでいるでしょ。全部の葉っぱに、僕達アリの魔法使いが乗っているんだよ。

そうそう、遠くから集まってくる時は、魔法が遠くまで届かないので、魔法が切れた時は、一度地面に下りてから、また魔法で飛んでくるんだ。
だから、葉っぱは高くまで上がったり、地面に落ちてきたりしながら遠くへ飛んでいるんだ。

そして、魔法使いのみんなが集まったら会議が始まり、今年生まれたアリの数や、今年集めたエサの量などが報告されるんだ。
そのあとで、来年の計画を考えるんだけれど、来年のアリの数を予測して、みんなに必要なエサの量を考えて、そのエサの見つけ方や、エサを運ぶ方法を相談するんだよ。
だから、計算するのが大変なんだ。そうしないと、たくさんのアリが生きて行けないからね。

来年の計画ができると、僕達魔法使いは葉っぱに乗って、元いた所へ帰って行くんだ。
そう、遠くから集まって来た魔法使いは、魔法が切れたら、一度地面に下りてから、また魔法で飛んで帰るんだ。

アリの小さな魔法使い(1)

2018-12-10 05:42:14 | 童話
僕はアリですが、魔法使いなのです。
みんなが歩いている時や、走っている時に、つまずいて転ぶ時があるよね。
あれはね、僕達アリが踏まれそうになったから、僕が魔法を使って踏まれないようにしたからなんだよ。

それと、君達は見たことがあると思うんだけれど、大きなエサの昆虫を、僕達がたくさんで運んでいる時に、少し経ってみんなが気が付いた時には、もう運び終っていることがあるよね。
これも僕の魔法なんだよ。

あとね、僕達はエサを探して遠くまで歩いて行くけれど、時々迷子になることがあるんだ。
その時僕が魔法で帰り道を教えるんだよ。

もう一つ、僕達アリが高い木に登って行くのを見たことがあるでしょ。僕達アリも高い所から落ちることがあるんだけれど、その時も僕が魔法を使って、そっと地面に着くようにしているからケガをしないんだよ。

それから大切なことなんだけれど、僕達アリの家は地面の下にあるので、雨がたくさん降ってきて僕達の家に水が入ってくると困るので、僕が魔法を使って巣の入口にふたをするんだよ。
いつもは、雨が降ってくるのが分るので、早くから全部の巣の入口にふたをするんだけれど、急に雨が降ってくると、魔法使いの僕は忙しいんだ。

だから、僕達アリが行列を作って歩いている時に、出かけるアリと帰って来るアリとが、頭でコッツンコをしているよね。あれはね、出かけるアリが帰って来るアリに、魔法使いの僕がどこにいるのか教えてあげているんだよ。
僕の魔法が必要になった時に、僕のいる所を知らないと困るからなんだよ。

えっ、僕のような魔法使いは僕だけかい、だって?
僕達アリは体が小さいので、魔法も小さくて遠くまで届かないから、僕みたいな魔法使いはたくさんいるんだよ。

霧のおじいさん(2)

2018-12-09 09:15:57 | 童話
その時
『ハクショ~ン。』
と大きなクシャミが聞こえた。しかし、友達のクシャミではない、だれのクシャミだろうか?
その時『
ごめんごめん、びっくりしたかい?』
と大きな声が聞こえた。だけれど、近くには誰もいない。
『ここだよ。』
と聞こえる上の方を見ると、白いヒゲを生やしたおじいさんの大きな顔が有った。
『あなたはだ~れ?』
『わしは霧のおじいさんだよ。わしが現われると霧も出てくるんだよ。』
『なぜ霧が出るの?』
『霧の中には夢が詰まっているんだよ。だから、みんなに夢をあげるために、霧が出るんだよ。そして、大人の人も霧の中の景色をきれいだと感じる人が多くいるんだよ。
中国の「桂林(けいりん)」や北海道の「釧路(くしろ)」という霧の景色がきれいな所へ、旅行する人も多くいるんだよ。』
『ふぅ~ん。僕も大きくなったら「けいりん」や「くしろ」へ行きたいな。』
『そうだね、きれいだから行ったほうがいいよ。』

『僕や友達が霧の中で靴が脱げた時に、足の裏がふわふわとしていたのはなぜなの?』
『それはね、君たちの靴がわしのヒゲに絡まって脱げて、はだしでわしのヒゲの上を歩いていたからだよ。』
『そうなんだ。』

『霧が出ない時は、おじいさんはどこに居るの?』
『高い山の上に居るんだよ。そして、霧が出る時に、わしはその高い山から下りて来るんだよ。』
『それでは、高い山から下りて来た時は、いつもここに来てよ。』
『それがダメなんじゃ。いろいろな所から来てほしいと言われているので順番で行っているのだよ。』
『今度はいつ来るの?』
『いつなのかねぇ。わしにも分からないのだよ。』

そして、霧のおじいさんが高い山に帰ってからも、僕は霧のおじいさんが来るのを毎日待っている。

僕は『ハクショ~ン』と大きなクシャミが聞こえてくるのをずっと待っている。

霧のおじいさんのヒゲの上をはだしでふわふわと歩くのを楽しみにしている。

霧のおじいさんは明日来てくれるかなぁ。

      おしまい

霧のおじいさん(1)

2018-12-08 09:35:36 | 童話
霧の朝は不思議だ。
霧の中を歩いていると雲の中にいて、ふんわりと浮かび上がりそうな感じがするだ。
僕が学校へ歩いて行っている時に右側のクツが脱げた。あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、やっぱり足の裏に何も当たらないで、ふわふわとしている。

『早く起きないと、学校に遅刻するわよ。』
とお母さんに起こされた。
『ああっ、夢か。』
僕は急いで歯を磨き、顔を洗って朝ご飯を食べた。
そして、僕が学校へ歩いて行っている時に右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、やっぱり足の裏に何も当たらないで、ふわふわとして、夢と同じようになった。

学校に着いて、僕は友達にふわふわとしていた話をすると、友達も同じようにふわふわとしていたと言った。
学校から帰る時間には霧は無かったので、ふわふわとはしなかった。
そして、何日間か霧は出なかったので、ふわふわする感じは忘れかけていた。

ある日の朝に霧が出た。僕が学校へ歩いて行っている時に、また右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、やっぱり足の裏に何も当たらないで、ふわふわとしている。

『早く起きないと、学校に遅刻するわよ。』
と、またお母さんに起こされた。
『ああっ、今度も夢か。』
僕は急いで歯を磨き、顔を洗って朝ご飯を食べた。
そして、僕が学校へ歩いて行っている時に、また右側のクツが脱げた。
あれっ、足の裏に何も当たらない。
今度は左側のクツが脱げたが、足の裏に何も当たらないで、ふわふわとして、前と同じようになった。
一緒に歩いている友達も同じようにふわふわするねと言った。

僕の元気君(3)

2018-12-07 05:33:55 | 童話
しばらくしてから友達が遊びにきた。
『僕にも元気君が来たよ。今はね、消しゴムになっているんだ。』
『本当だ、消しゴムが動いている。』
『昨日は鉛筆だったけれど、やっぱり動いていたよ。』
『僕の元気君は消しゴムの時は、お話しはしていたけれど、動かなかったよ。えっ元気君、動けるの、なんだ動けるのか。』
『明日、二人の元気君に自転車になってもらって、二人で公園へ行こうか。』
『ああ、いいね。』
『元気君にカッコいいマウンテンバイクになってもらおう。』
『僕もマウンテンバイクがいいな。』
『じゃ、明日ね、バイバイ。』
『バイバイ。』

次の日、僕の元気君は赤い色に青色のラインの入ったカッコいいマウンテンバイクになっていた。
『わぁ、カッコいいなぁ。』
公園に行くと友達は、黄色に赤いラインの入ったマウンテンバイクに乗ってきていた。二人は自分のマウンテンバイクを自慢したが、お互いのマウンテンバイクをカッコいいと思った。

公園からの帰りに、信号待ちしていたお年寄りがいたので、僕と友達はマウンテンバイクから降りて、手を挙げてお年寄りと一緒にゆっくりと信号を渡った。
僕達はそのお年寄りから、
『ありがとうね。』
と言われた。

僕達は、元気君に明日何になってもらおうか相談した。
『明日は月曜日だから、宿題する時に教えてもらえる先生がいいよ。』
『そうだね。』

ある日、僕はおやつのケーキの大きさで妹とケンカをした。
『僕のケーキの方が妹のより小さいよ。』
『お兄ちゃんのイチゴの方が大きいわ。』
『そんなことないよ、うるさいなぁ。』
『うわ~ん。』
その時、僕のフォークになっていた元気君が、
『兄弟ケンカするのなら居なるよ。』
と言ったので僕はあわてて妹に
『ゴメンね。』
を言って仲直りをした。

しばらくして、僕と友達は明日、小学校の卒業式を迎えることになった。
そして、僕の元気君が話し掛けてきた。
『今迄楽しかったね。君は明日で小学生じゃなくなるから、僕は次の子供の所へ行かなくてはならないんだ。今迄、いろいろな所へ行ったし、いっぱい楽しい事も有ったよね。中学生になっても、お父さんやお母さんの言う事を良く聴いて良い子でいるんだよ。そして、お年寄りや小さい子供に優しくするんだよ。』
『うん、分かった。今迄すごく楽しかった、ありがとう。元気君も次の子供の所で頑張ってね。明日の朝起きた時に居ないと思うので、今バイバイするね。おやすみなさい。』

     おしまい