20センチの巨人(1)

2021-01-09 09:44:11 | 童話
『おはようございます。』
『ああ、おはよう。』
僕は毎日絵本の中の巨人とお話しをします。だけれど、巨人は絵本の中から出ることができませんし、僕も絵本の中に入ることもできません。
だから、巨人とジャンケンをすると巨人の手がグーチョキパーと動きますが巨人と手をつなぐことはできません。

ある日、友達とゲームをしている時に、ひろげていた巨人の本の上にサイコロが転がって行きました。僕がサイコロを取ろうとした時にサイコロが本の中に入ってしまいました。
その時、本の中の巨人が
『お~い、サイコロが入ってきたよ。ほれっ。』
と言ってサイコロを本の中から投げ返してくれました。
『ありがとうございます。』
僕は巨人にお礼を言いましたが、なぜサイコロが本の中に入ることができたのか、なぜ巨人がサイコロを投げ返してくれることができたのか分かりません。
サイコロの代わりに消しゴムを本の上に置きましたが、消しゴムは本の中には入って行きませんでした。

『本の中の巨人さん、消しゴムを取ってみてよ。』
『そんな高い所にある消しゴムには手が届かないよ。』
『さっきはサイコロを投げ返してくれたでしょ。』
『サイコロはわしの手に落ちてきたから投げ返せたんだよ。』
『ふ~ん、そうなんだ。それでは、今度はど~お?』
僕は消しゴムを本の上にポトンと落としてみました。
『ああ、消しゴムが届いたよ。ほれっ。』
と言って消しゴムを投げ返してくれました。
『置くのではなく、ポンと落とすといいんだね。』

僕の魔法のズボン(3)

2021-01-08 10:07:24 | 童話
僕は学校で遠くへ歩いて行く遠足も頑張った。
ついにズボンの脚の折り返しが無くなった。そのまま履いて丁度良くなり、お兄ちゃんのように大きくなったのだ。
だけど、お兄ちゃんのようにカッコいいかなぁ?僕は女の子をいじめたりしないし、年寄りの人が信号待ちをしている時は、青信号になったら手を挙げて一緒に渡ってあげている。お兄ちゃんと同じように、僕もカッコ良くなっていると思う。

僕はお母さんに聞いてみた。
『ねぇ、お母さん、僕もお兄ちゃんと同じようにカッコいいかなぁ。』
『そうねぇ、そのズボンを履いている時は良い子でカッコいいけれど、そのズボンじゃない時はもう少し良い子になったらカッコいいわよ。』

『う~ん、まだカッコ良くないのか。どうすればカッコ良くなれるのかな? そうだ、魔法のズボンに聞いてみよう。』
『ねぇ、魔法のズボン君、どうすれば君を履いていない時もカッコ良くなれるのかな?』
『それはね、君がいつも僕を履いている時と同じように頑張っていればいいんだよ。僕はいつも君を見ているからね。』
『そうか、いつも同じように頑張らないといけないんだね。』

そして、僕は大きくなって魔法のズボンが履けなくなってしまったが、ズボンの魔法がなくても頑張れるようになった。そして、今も魔法のズボンは大切にしているし、時々話もする。僕はいつまでもこの魔法のズボンを大切にしていこうと思う。

    おしまい

僕の魔法のズボン(2)

2021-01-07 09:50:52 | 童話
僕は時々公園で友達と駆けっこをするが、いつも友達に負けてばっかりだったが、今日はお兄ちゃんにもらった魔法のズボンを履いているので、友達に勝てる気がする。
『ヨーイ、ドン。』僕は友達みんなを追い越して1番になった。
友達みんなが『速いなぁ。』と言って驚いていた。
そして、僕も驚いた。
お兄ちゃんのズボンは魔法のズボンだ。

僕は家に帰ってお母さんに『お母さん、お兄ちゃんからもらったこのズボンは魔法のズボンだよ。』
『どうして?』
『いつも、駆けっこの時には友達にかなわないけど、この魔法のズボンを履いて駆けっこをするとみんなに勝てるんだ。だから、このズボンは魔法のズボンなんだよ。』
『そうなの、じゃ、魔法のズボンね。お兄ちゃんに魔法のズボンを貰って良かったわね。』
『うん、大切にするね。』
『そうね。だけれど自分でも頑張らないと魔法のズボンじゃなくなるわよ。』
『うん、僕と魔法のズボンの両方で頑張るよ。』

そして、僕は大きくなり、お兄ちゃんからもらったズボンの脚の折り返しが1回となった。僕の魔法のズボンを履いて、友達と広場で戦隊ごっこをしている。
しかし、徒競走ではまだ1等賞は取れない。いつも2等賞だ。

僕の魔法のズボン(1)

2021-01-06 09:44:27 | 童話
僕のズボンは、お兄ちゃんが小さい時に履いていたズボンだ。ポケットが前に2つ、後に2つ付いていて、後のポケットには模様が付いている。そして、色は薄いブルーで、カッコいいズボンだ。

お兄ちゃんはこのズボンを履いて、友達と戦隊ごっこをやっている時はカッコ良かった。僕もこのズボンを履いたから怪獣をやっつけて、カッコ良くなれるかなぁ

お兄ちゃんは小学校の運動会の時に、このズボンを履いて徒競走で1等賞になった。僕はまだ小さくて、小学校も幼稚園も行っていないので1等賞は取れない。

お兄ちゃんが遠くまで歩いて遠足に行った時に履いていたのも、このズボンだ。僕も頑張って遠くまで歩いて行けるかなぁ

お兄ちゃんは剣道を習っていて、僕も一緒に見に行ったことが有る。剣道場まで魔法のズボンを履いて行き、剣道場で稽古着に着替えて剣道の練習をやっていた。魔法のズボンを履いている時もカッコ良かったが、ズボンを脱いで稽古着の時もカッコ良かった。その時に僕も大きくなったら剣道を始めたいなぁと思っていた。

僕は今この魔法のズボンを履いているが、脚の所が長くて2回折り畳んでいる。お兄ちゃんのように、折り畳まないで履けるようになるのはいつかなぁ?
次の次の日曜日には僕もこのズボンを折り畳まないで履けるかなぁ?

お兄ちゃんもお母さんも、牛乳をたくさん飲むと大きくなれるよと言っているので僕は頑張って牛乳を飲んでいる。僕も早くお兄ちゃんのようになりたい。

ぼく(8)

2021-01-05 09:16:56 | 童話
『もう一つあるよ。お母さんやお父さんが手を近付けてきたときに、手のひらを握るのではなく、指を一本だけを強く握るんだ。そうすると、みんな喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『わたしも指を一本だけ握ってあげて、みんなに喜んでもらっているわ。』
『僕もやっているよ。そうすると、みんなが「かわいいわねえ。」と言って喜んでいるよ。』

『もう他に無いかなあ。』
『いっぱい有るよ。大人の人が「居ない居ない、バァ。」と言ったら、声を出して笑ってあげるんだ。これも喜ばれるよ。それからね、足の裏をコチョコチョされた時は、足だけではなく、両手両足を全部バタバタさせるんだ。足だけでは喜ばれないよ。あっ、バタバタさせる時に口を大きく開けることを忘れないようにね。』
『うん、分かった。今日からやってみるよ。』
『わたしもやるわ。』

『僕はもう大きいからハイハイをしているんだけれど、ハイハイしている時にドテッと転んで見せると笑いながら喜ぶよ。テレビのお笑い番組で、時々わざと転んでいるのを見て、わざと転んだのを知っていて笑っているけれど、僕の転ぶのは本当に転んでいると思っているみたいだよ。』

いっぱい有るんだね。
だけれど、お母さんやお父さんもぼくと同じ事をやっていたと思うんだけれど、大人になると全部忘れるのかなあ?
ぼくも大きくなったら忘れると思うので、今の内にお母さんやお父さんを喜ばせてあげようと思うんだ。

おしまい