膝にサポーターを巻いて、落ち葉に埋もれた奥山の渓谷を歩いて来た。
空身で、登山靴ではない軽いスポーツシューズで、両手にポールを持って、階段も含めて登り下りをゆっくりと、牛歩よりも遅く歩いて来た。
鈍痛が時々あるくらいで、ゆっくりであればなんとか荒れた道でも歩けた。
自由を失った身体に焦っても仕方が無いし、人と出会うことのない、紅葉した渓谷は気分良かった。
朝と深夜はバイクで動き、エレベーター設備の酷い地下鉄には乗らないようになった。
ハードな63年は、身体もガタガタになっている。
もう充分に生きたと言う想いはいつもあるが、今は高齢者の面倒があるから元気でいなければならず、メンドクサイとは想うがリハビリに精を出している。
4日に一度の腹のパウチの交換作業も、膝を傷めてからなかなかにシンドイもんだが、障害を負ってる訳だからこれもゆっくりとイライラせずにやるようにしてる。
こういう身体で、あちこちの高齢者の面倒を見てやって、大工仕事もやり、付き合って出掛けてと、キリが無いくらいにやることが多い。
深夜に布団に入れば即、爆睡。
自慢の元気な男根が、勃起することも減ってしまってる。
これはいよいよやばいぞと、笑うしかない。
いつもは体力も精力も余って居って、余裕そうな顔して動き回っておったものが
・・・あ~、疲れたよ!!・・・そんなことをはっきりと皆に言うことが多くなってる。
本当に、疲れ果てておるようだ。
年金事務所から、入居者の照会が来て居った。
今年の正月明けに、ボロアパートの4,5畳の部屋で、動けなくなって孤独死しそうだった独り暮らしの86歳の爺様を、救急で搬送して病院に入れたことがあったが、2週間後に亡くなった。
暖かいベットで亡くなったことが救いだった。
その後に音信不通だった貧しい娘を見つけて部屋の片づけをしてやって・・・よくある話だが、その爺様の確認だった。
・・・この世には、もうおらんでよ
世の中社会には、金と宣伝広告ばかりを使って、壮大で素敵なキレイごとをほざいてる成金野郎やオツムチンチクリン野郎らばかりが脚光を浴びてスター気取りだが、身近な者を無視して放置して、食い潰しているケースが多い。
手の届く範囲の人を強く抱擁してやるよりも、大勢の拍手を求める行動を選ぶ時代、大人社会は味気ないもんだ。
いずれ、大勢の拍手喝采だと思っていた音が、揺れ堕ちる多くの枯葉の音だったと気がつく頃には、身近な者は、あなたの傍にはだ~れもいない。
そんな手の相談もいろいろと来るが、優秀な弁護士をつけて裁判起こすのも良いが、もっと周旋屋風のオモシロいアクションはたくさんある。
金を使うだけの安易な行動は、ナニも残らず、ナニも生まれない。
俺のスタンスは、フナ虫のような不特定多数には向かわず、必ず特定多数、手の届く範囲の身近な者に向かってる。
ただそれも63年のスタンスだから、身近な者がどんどん増えてしまってる。
ひとりひとりにキチンと寄り添い、正面から取り組むのは難しいと、酒を呑みながら語り合ってる連中には、寄り添ったり取り組むという行動すらナニも解ってない自意識過剰だけだ。
何気ないあんたの日常を見ている者には、うすら寒い冗談にしか聴こえない。
ずっとあちこちの高齢者に付き合い、関わって、朝から深夜まで動き回っていると、病気や介護という安易な嘘が馬鹿馬鹿しくなってくる。
普通に老いている者との関わり、それでエエんじゃ~ないのか?
線引きして、要介護、要支援なんて、老いて来れば誰しも手を貸して欲しくなり、他人の手がなければ生きて行けなくなるのは、それまでの安易な生き様のせいではあるが、放置する訳にもいかんだろう。
・・・ということで、自腹を切って、あいかわらず動き回ってる。
どうしようもない社会の崩壊の足音が、聴こえて来てるがね。
このまんま、残酷な戦争を世界中に起こさせるつもりなんだろうかね?
高齢者の通院が大病院だったりすると、それだけで4時間5時間かかってしまうのを見ていると、医療が人殺しになり果てているということを実感する。
金儲けとモルモットの飼育、商売を学び、経済や政治を学ぶ前に、医学を学ぶ前に、もっと人間として身に付けなきゃ~いけない大事なことがあるが、それがおざなりになって久しいから、酷い現場の惨状を目にすることが増えた。
自分の身体のことを、他人や医者に聞かなければ解らないと言う幼児な大人社会と、それに巣食う医療行為、どっちもどっち、俺なんざ年中医者と言い合って喧嘩してるようなもんだ。
さ~、また区の福祉に出掛けて話をしてくるが、周旋屋はだいたい都市計画とか土木か建築に行くが、俺の仕事は福祉の方が多くなってる。
今年は夏以降は利益にブレーキをかけているせいでもあるが、それにしても戦後に苦労したとほざいておった連中の老後の哀れさは、見る影も無い。
本当に苦労しておったのは、今の高齢者の親の世代だった。
大笑いするしかない。