ヘイトスピーチについて、…去年5月、当時の谷垣法務大臣は、参議院法務委員会の答弁で「人種や国籍、ジェンダーなどの特定の属性を有する集団をおとしめたり、差別や暴力行為をあおったりする言動、あるいは少数者集団に対する侮辱、名誉毀損、憎悪、排斥、差別などを内容とする表現行為」と説明しています。(下記、文中より)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140923/k10014816511000.htmlより転載
ヘイトスピーチ 15都道府県で確認
ヘイトスピーチと呼ばれる民族差別的な言動や行為が、少なくとも全国15の都道府県で確認されていることがNHKの調査で分かりました。
また、ヘイトスピーチは問題だと認識している自治体が9割以上に上る一方、規制については、必要とするところがおよそ4割、「国で慎重に検討されるべき」などとして、必要か分からないとするところがおよそ5割で、意見が分かれています。
ヘイトスピーチと呼ばれる民族差別的な言動や行為が問題となるなか、NHKは今月、全国の都道府県と政令指定都市、それに東京23区の合わせて90の自治体を対象に調査を行い、すべてから回答を得ました。
ヘイトスピーチについて、政府は「人種や国籍、ジェンダーなどの特定の属性を有する集団をおとしめたり、差別や暴力行為をあおったりする言動や表現行為」などと説明していて、これに当てはまる行為が去年からことしにかけてあったか聞きました。
その結果、「ある」と答えたのは、13の都府県と6つの政令指定都市、それに東京23区のうち6つの区で、少なくとも15の都道府県でヘイトスピーチが確認されていたことが分かりました。
また、ヘイトスピーチについて問題だと思うか聞いたところ、「問題だ」が94%、「分からない」が4%で、「問題ではない」と答えたところはありませんでした。
一方、ヘイトスピーチに対して、何らかの規制が必要だと思うか聞いたところ、「必要」が41%、「必要ではない」が2%、「分からない」が53%、「いずれにも当てはまらない」が3%でした。
それぞれに回答の理由を聞いたところ、規制が必要とした自治体からは、「人権侵害であるのみならず、犯罪にもつながる恐れがあり、歯止めが必要だ」とか、「差別を助長するような発言は放置すべきではない」といった意見が出されました。
一方、規制が必要か分からないとした自治体からは、「国で慎重に検討されるべき」とか、「表現の自由との兼ね合いが難しい」といった意見が出されました。
さらに、ヘイトスピーチに国や自治体がどう対応すべきか聞いたところ、国が統一した方針を決めて対応すべきといった意見や、規制だけでは解決できず、自治体として人権意識の啓発に粘り強く取り組んでいく必要があるといった意見が出されました。
「自治体もやめさせる義務がある」
ヘイトスピーチの法的な規制に積極的な立場で、憲法や人権の問題に詳しい東京造形大学の前田朗教授は「ヘイトスピーチは被害者の人権の問題であり、自治体は住民の生活や権利を守るため、悪質なヘイトスピーチをやめさせる義務がある」と、政府だけでなく自治体もヘイトスピーチを規制していくべきだと指摘しています。
そのうえで前田教授は、「規制は処罰だけではなく、民事規制や行政指導などさまざまな規制がありえる。社会が人種差別にどう向き合うのかを定めた基本法を作り、それに基づく調査や研究を行って、将来的に本当に処罰が必要かどうか議論を行っていく必要がある」と話しています。
「法的な規制である必要はない」
ヘイトスピーチの法的な規制に慎重な立場で、表現の自由や規制の問題に詳しい専修大学の山田健太教授は「ヘイトスピーチに対して、国や自治体ができるかぎり早く具体的なアクションを取るべきだが、それが法的な規制である必要はない」と指摘しています。
そのうえで、山田教授は「法的な規制をすることによって、表面的には差別的な言動がなくなるかもしれないが、一番大事なのは差別をしている人が納得してこうした言動をやめることだ。もっと教育や啓もうに力を入れるべきで、『差別はよくない』という社会的な合意を作っていくことが大事だ」と話しています。
ヘイトスピーチの定義は
ヘイトスピーチについて、政府は、概念や定義が確立されていないとしていますが、去年5月、当時の谷垣法務大臣は、参議院法務委員会の答弁で「人種や国籍、ジェンダーなどの特定の属性を有する集団をおとしめたり、差別や暴力行為をあおったりする言動、あるいは少数者集団に対する侮辱、名誉毀損、憎悪、排斥、差別などを内容とする表現行為」と説明しています。
また、安倍総理大臣は去年5月、参議院の予算委員会でヘイトスピーチについて「憎しみをあおるような、人種的な、あるいは性差に基づくひぼう中傷のたぐいだろうと思います」としたうえで、「一部の国、民族を排除しようという言動のあることは極めて残念だ」と答弁しています。
ヘイトスピーチ巡りさまざまな動き
ヘイトスピーチを巡っては、ことしの夏以降、国の内外で規制や制限を巡るさまざまな動きが出ています。
ことし7月、京都の朝鮮学校を運営する学校法人が、ヘイトスピーチと呼ばれる民族差別をあおる街宣活動で授業を妨害されたとして賠償などを求めた裁判で、2審の大阪高等裁判所は、1審に続いて、被告の団体に、学校周辺での街宣活動の禁止と賠償を命じました。
また、先月、東京都の舛添知事が安倍総理大臣との会談で、ヘイトスピーチについて「オリンピックの開催都市でこういう言論がまかり通るのは極めて恥ずかしい」と述べ、何らかの形の規制が必要だという考えを示しました。
これに対し、安倍総理大臣が規制を検討する考えを示したのを受けて、自民党は先月、ヘイトスピーチの対策を巡って作業チームの初会合を開き、法律で規制する必要があるかどうかも含めて議論していくことを確認しました。
また、今月、大阪市の橋下市長は、ヘイトスピーチは許されない行為だとして、市内で行うのを制限するための具体策を検討するよう市の審議会に諮問しました。
一方、国連の人種差別撤廃委員会は先月、日本での在日韓国・朝鮮人らに対する差別的な言動について法律で規制するよう日本政府に勧告しました。