http://matome.naver.jp/odai/2137187986019723901より転載
基本的人権がなくなる!?自民党が削除しようとしている憲法第97条
参院選を前に、自民党による憲法改正草案の内容が話題になっています。その中でも特にセンセーショナルに議論されるのが、「基本的人権」について定めた第97条。これが、今回の自民党改憲案では、まるごと削除されています。自民党は、「基本的人権」を否定しようとしているのでしょうか…?
更新日: 2014年12月10日
自民党による改憲案では、第97条がまるごと削除
日本国憲法 第97条は、日本国憲法第10章最高法規にある条文で、憲法の基本的人権の本質について規定している
「基本的人権」は、永久の権利として全国民に与えられたものである、としています。
自民党改憲案では、この97条が全部削除されている
2012年に発表された自民党による憲法改正草案では、この第97条が、まるごと削除されています。
GettyImagesThe National Diet Building stands in Tokyo, Japan, on Friday, Nov. 16, 2012. Prime Minister Yoshihiko Noda dissolved the lower house of parliament today after the upper house passed a bill to issue bonds to finance spending for the rest of this fiscal year, following a months-long impasse that left the government weeks away from running out of money. The election will be held on Dec. 16. Photographer: Junko Kimura/Bloomberg via Getty Images
【現行憲法】
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
【憲法改正草案】
(削除)
(※画像はイメージ)
削除すべきではないだろうと思う条文も納得がゆく説明も無いままに削除されては不安にならざるを得ない
草案を作成した自民党による、国民に対する充分な説明がないのも問題と思います。
自民党の #憲法 改正案は壊憲案。例えば、憲法第97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は(中略)現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」を丸ごと削除しているとか酷いね reishiva.exblog.jp/20614991/
ジャーナリストによる意見。
なぜこんな大事そうな条文を…削除したのだろう?
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【現行憲法】
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
【憲法改正草案】
国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。
(※画像はイメージ)
自民党憲法改正案で、現行の97条を削除したのは現行11条と内容が重複しているためで、11条が「国民は全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利である。」としています。
自民党・片山さつき参議院議員による改正案の97条削除に関する説明。
では、なぜ11条と重複した内容の97条が現行憲法にはあるのだろう?
日本国憲法があえて、重複をいとわずに、最高法規の章に基本的人権の条項を持ってきたのはなぜだろうか
11条があれば基本的人権は守られそうな感じがしますが、そもそもなぜ同じような条文が2つも存在しているのでしょうか。そこには何かしら意味はあるはず…?
沿革的には、総司令部から民政局長コートニー・ホイットニー将軍自筆の条文であるので残すよう懇願され、既に11条があるにもかかわらず条文として加えられたという経緯がある
コートニー・ホイットニーはGHQ民政局の局長時代に憲法草案制定会議の責任者として、日本国憲法草案作成を指揮した人物。GHQ案と日本政府案の間での幾度にも及ぶやり取りの結果、11条と97条が残ったという経緯があるらしい。
人権保障をこの憲法の最大の目的として設定し、過去の人間の努力でかちとられた成果を、現在に生きる者が守り、未来の人間に引き継いでいくことを、最高法規の章で再確認することは、決して過少に評価されてはならない
「第十章 最高法規 」は、97条から始まっています。
97条に明記されている、すべての人に平等に与えられた基本的人権という考え方は、人類が長い歴史の中で、時には血を流し、近年ようやく勝ち得たものなのです。
憲法の中の「最高法規」が、人権尊重を説くこの97条から始まることに、もっとも大きな意味があるとする意見も。
確かに97条は11条と内容は酷似しております。しかしだからといって、意味が「重複」しているわけではありません
97条という基本的人権に関する条文が削除された、という上っ面の事実だけで、云々を語ることは少々私たちには難しいことではないでしょうか。
割と重要な憲法問題だと思っています。9条や96条の話も大事だけど、人権というのは、けっきょく、こういう局地戦の積み重ねで得られたもの。「基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であ」り、それが「過去幾多の試錬に堪へ」てきた(憲法97条)というのは、そういうこと。
法学者による見解。
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第九条 日本国ノ人民ハ何等ノ干渉ヲ受クルコト無ク一切ノ基本的人権ヲ享有スル権利ヲ有ス
第十条 此ノ憲法ニ依リ日本国ノ人民ニ保障セラルル基本的人権ハ人類ノ自由タラントスル積年ノ闘争ノ結果ナリ時ト経験ノ坩堝ノ中ニ於テ永続性ニ対スル厳酷ナル試練ニ克ク耐ヘタルモノニシテ永世不可侵トシテ現在及将来ノ人民ニ神聖ナル委託ヲ以テ賦与セラルルモノナリ
(※画像はイメージ)
改憲の真意の説明と、国民はそれを知ろうとする姿勢が大切
自民党は、去年まとめた憲法改正案の趣旨が国民に十分、理解されていないとして、国民の疑問に対応する態勢を整えたり、解説資料を新たに作成したりして、国民への周知を図りたいとしています
現行憲法も、自民党による改正草案も、ちゃんと概要を「知っている」と答えられる人はこの国にどのくらいいるでしょうか?
「基本的人権について定めた97条が削除!!」のように、一部だけを取り上げてセンセーショナルに騒がれるのは、現状では仕方ないことなのかもしれません。
今の日本に必要なことは、国民一人一人が憲法を知ることだと言うこと
先人たちが、どのような思いで現在の平和憲法を作り上げてきたかを汲み取り、憲法の内容を国民も充分に知識として持つこと。これがとても重要なことのように思います。
憲法を変えることがいいとか悪いとかの主張をする前に、まずは、今の憲法を読み、憲法を知ることが不可欠
議論の対象となる憲法そのものを知らなければ、結局は誰かの情報に流されてしまうだけです。憲法を変えるかどうかを判断するためには、自ら憲法を知ろうとする姿勢が必要です