新潟の野鳥・フィールドノート

新潟で観察した野鳥を写真で紹介します.野鳥の日常生活に光を当てられたらいいなーと思っています.

秋の粟島探鳥行(2018-1) メボソムシクイ上種-1

2018-10-06 05:37:02 | ムシクイ科
メボソムシクイ上種 学名・Phylloscopus borealis s.l.

 秋の粟島探鳥行(2018-1)の最大の目的は,ムシクイ類の渡りを観察することでした.

 撮影できたムシクイ類の全ては,かってメボソムシクイと分類されていたメボソムシクイ上種に属するものでした.

 かってのメボソムシクイ(Phylloscopus borealis)は,複数の亜種を含む多形種とされていましたが,現在は,

  コムシクイ(Phylloscopus borealis

  オオムシクイ(P. examinandus

  メボソムシクイ(P. xanthodryas

 の3種の独立種に分けられています.

 この3種は,外部形態(羽色など)が似通っており,野外では,鳴き声の違い以外での識別は困難とされています.

 日本鳥類標識協会誌の Vol.26 No.2 2014 に掲載された齋藤武馬・茂田良光・上田恵介著「メボソムシクイ上種3種の外部形質を用いた識別方

 法」は,羽色,初列風切の形状,測定値による識別について述べています.

 上記の論文の要点を僕の勉強のために次のようにまとめてみました.

  コムシクイ
   
   上面の色は,褐色を帯びた緑色味が少ない灰緑色で,下面は,基本的には汚白色であるが,黄色の筋が入ることがある.

   胸にはオリーブ色のまだら模様が入ることもある.

   上下面の色は,成鳥と幼鳥でも異なり,幼鳥は,成鳥に比べて黄色味が強い.

   嘴は,他の2種より細くて短く,下嘴の黒斑が顕著な傾向がある.

   P10(初列風切最外羽)がPC(最長初列雨覆)より短い個体が多い.

   P10の形状は,細く,先端が尖っている傾向が強い.

  オオムシクイ
   
   メボソムシクイよりも,上面の緑色は鮮やかさに欠け,下面の黄色味も淡い.下面の黄色味がメボソムシクイのように強い個体もいる.

   幼鳥の羽色は,成鳥とほとんど違いがないが,下面は黄色味が強い傾向がある.

   コムシクイよりも,上面,下面ともに黄色味が強い.

   他の2種と比べて,最外2対の尾羽の下面の外弁と内弁の白い羽縁が目立つ傾向がある.

   P10のPCからの突出は,長い個体や短い個体が混在し,平均値ではコムシクイとメボソムシクイの中間となる.

   P10の形状は,コムシクイとメボソムシクイの中間的な傾向がある.

  メボソムシクイ

   他の2種よりも上面の色は明るい緑色味を帯び,下面は黄色味が強い.

   幼鳥の羽色は,成鳥とよく似ているがさらに黄色味が強い.     

   P10はPCよりも長く,3~4㎜は突出するのが普通である.

   P10の形状は,全体,先端ともに丸みを帯びている.

 上記論文は,さらに測定値による識別について詳しく論じていますが,割愛しました.

 さて,長々と書き連ねましたが,今回粟島で観察したメボソムシクイ上種は,P10の形状からコメボソムシクイの可能性を除外しました.

 しかし,オオムシクイかメボソムシクイのどちらかとも確定できませんでした.

 よって,メボソムシクイ上種として投稿する次第です.

 この個体は,内浦の畑で観察されたものです.

メボソムシクイ上種
撮影日時 2018.09.28 撮影場所 新潟県・粟島


メボソムシクイ上種
撮影日時 2018.09.28 撮影場所 新潟県・粟島


メボソムシクイ上種
撮影日時 2018.09.28 撮影場所 新潟県・粟島


メボソムシクイ上種
撮影日時 2018.09.28 撮影場所 新潟県・粟島


メボソムシクイ上種
撮影日時 2018.09.28 撮影場所 新潟県・粟島


最新の画像もっと見る

コメントを投稿