昭和30年代は、まだクーラーも冷蔵庫もなく扇風機と団扇の時代だった、
時々鐘を鳴らしながら自転車の荷台にアイスボックスを付けて廻ってくる、
アイスキャンデー売りのおじさんから、1本5円か10円のアイスキャンデー
を買って食べるのも楽しみだった。
あとはマクワウリやスイカを、裏の井戸で冷やして食べるのも夏の楽しみで、
ウリは実家の畑で作っていたので採りに行くのが楽しみで、畑で食べ頃に
熟れるとツルのヘタがポコッと抜けるので、それを待ちきれず引っ張っては
確かめてみていたものである。
スイカなどはたまにしか食べられず、母がスイカ栽培をしている農家へ手伝
いに行った帰りに、一個か二個担いで持ってきてくれるのが楽しみであった。
それから夜は部屋に蚊帳を吊って寝たが、蚊帳の中はまるで異次元の別
世界のような気がして、そこに入って寝るのも楽しかった、当時は夏はハエ
や蚊やアブなどが飛び回るのが当たり前の世界で、食卓の側にハエ捕り紙
を吊していたのも懐かしい思い出である。
あと夏休みの小遣い稼ぎとしては、当時田んぼには刈り取った稲を自然
乾燥させる為の、稲掛け用のはさを作るためのはさ木が植えられていて、
このはさ木にイボタという白い寄生虫?のような苔状のものが付くのでこ
れをはさ木に登って採取すると、このイボタから油が採れるので売って
小遣いにする事が出来た。
今ではコンバインで刈り取った稲は乾燥機で人工乾燥させる為、このはさ
木もすっかり用済みとなり、全て伐採されてしまった。
田んぼの農道にはさ木の並んだ、懐かしい田園風景も見られなくなって、
遠い日の思い出の風景となってしまった。