人の一生には、その人だけに訪
れる、八番目の曜日がある。
わたしにそのことを教えてくれ
たのは、父方の曾祖母だった。
名前を、キヨエといった。
キヨエはあちゃんは、わたしが
中学一年生の時になくなって
いるから、わたしがその話しを
聞いたのは、それ以前という
ことになる。
「でも、いつ来るの?日曜日の
次に来るの?それとも土曜日と
に日曜日の次に来るの?」
「さあ、それはわからん。人に
よっていろいろじゃ。来ても、
気づかない人もおる」
「あたしにも来るの?」
「ああ、詩音ちゃんにも来る。
その日には、詩音ちゃんの一生で
起こることが何もかも全部、一日
のうちに起こるんよ。ええことも、
悪いことも、全部な」
「そこにいたんだ?呼び出し音
なしでいきなりつながったんで、
びっくりしたよ。同時に受話器
を取ったんだね?」
「嬉しい」
と、わたしは言った。
「ありがとう。電話をくれて」
そう言ったきり、言葉が喉につか
えて、あとはもう何も、言えなく
なった。べっトに縛りつけられて、
まるで蛹のような姿になっていた、
哀れな父の姿が浮かんだ。
お父さんが、死んだの。ついこの
あいだまで、生きてて、偉そうに、
タバコ臭い息で、わたしに説教な
んかしていたのに。もうすぐアメ
リカへ行くよと言ったら、「ニュー
ヨークでジャズを聞いてこい」な
んて、わかったようなことを言っ
ていたのに。
わたしの口から実際に出た言葉
は、
「もう会えなくなったの、お父
さんに」
それだけだった。
「どうしてなんだろう。きょうに
限って俺、朝からずっと胸騒ぎが
して、何がなんでも絶対に電話し
なきゃて思った」
と、あのひとは言った。
海の向こうで、気が遠くなるほど、
遥か彼方にある岸部から。
「会いたい」
と、わたしは言った。それは
言葉ではなくて、叫びだった。
会いたくて、会いたくて、た
まらない。そばにいて欲しい。
抱きしめて欲しい。
なのに、会えない。会いに行
けなくなった。心も躰も岩に
ぶち当たり、木っ端微塵(こ
っぱみじん)に砕け散る、
波飛沫(はしぶき)のようだ。
「何も話さなくていいから」
海の向こうから、遥か彼方から、
見えない岸部から、あのひとの
声が耳に流れ込んできて、躰中
を巡り、わたしを拐って、どこ
かへ運んでいこうとしていた。
希望と絶望の渦に、わたしを巻
き込んだまま。
「泣いていいよ。泣きたければ、
いつまでだって、好きなだけ泣
いて。俺はずっとそばにいるから。
ずっと、詩音ちゃんのそばにいる
から」
あのひとはいつまでも、わたしの
そばにいてくれる。
あのひとはいつでも、わたしの手
の届かない場所にいる。
その日――――八番目の曜日に、
ふたつの思いに引き裂かれたわた
しの躰は、それからもう二度と、
もとに戻ることはなかった。
れる、八番目の曜日がある。
わたしにそのことを教えてくれ
たのは、父方の曾祖母だった。
名前を、キヨエといった。
キヨエはあちゃんは、わたしが
中学一年生の時になくなって
いるから、わたしがその話しを
聞いたのは、それ以前という
ことになる。
「でも、いつ来るの?日曜日の
次に来るの?それとも土曜日と
に日曜日の次に来るの?」
「さあ、それはわからん。人に
よっていろいろじゃ。来ても、
気づかない人もおる」
「あたしにも来るの?」
「ああ、詩音ちゃんにも来る。
その日には、詩音ちゃんの一生で
起こることが何もかも全部、一日
のうちに起こるんよ。ええことも、
悪いことも、全部な」
「そこにいたんだ?呼び出し音
なしでいきなりつながったんで、
びっくりしたよ。同時に受話器
を取ったんだね?」
「嬉しい」
と、わたしは言った。
「ありがとう。電話をくれて」
そう言ったきり、言葉が喉につか
えて、あとはもう何も、言えなく
なった。べっトに縛りつけられて、
まるで蛹のような姿になっていた、
哀れな父の姿が浮かんだ。
お父さんが、死んだの。ついこの
あいだまで、生きてて、偉そうに、
タバコ臭い息で、わたしに説教な
んかしていたのに。もうすぐアメ
リカへ行くよと言ったら、「ニュー
ヨークでジャズを聞いてこい」な
んて、わかったようなことを言っ
ていたのに。
わたしの口から実際に出た言葉
は、
「もう会えなくなったの、お父
さんに」
それだけだった。
「どうしてなんだろう。きょうに
限って俺、朝からずっと胸騒ぎが
して、何がなんでも絶対に電話し
なきゃて思った」
と、あのひとは言った。
海の向こうで、気が遠くなるほど、
遥か彼方にある岸部から。
「会いたい」
と、わたしは言った。それは
言葉ではなくて、叫びだった。
会いたくて、会いたくて、た
まらない。そばにいて欲しい。
抱きしめて欲しい。
なのに、会えない。会いに行
けなくなった。心も躰も岩に
ぶち当たり、木っ端微塵(こ
っぱみじん)に砕け散る、
波飛沫(はしぶき)のようだ。
「何も話さなくていいから」
海の向こうから、遥か彼方から、
見えない岸部から、あのひとの
声が耳に流れ込んできて、躰中
を巡り、わたしを拐って、どこ
かへ運んでいこうとしていた。
希望と絶望の渦に、わたしを巻
き込んだまま。
「泣いていいよ。泣きたければ、
いつまでだって、好きなだけ泣
いて。俺はずっとそばにいるから。
ずっと、詩音ちゃんのそばにいる
から」
あのひとはいつまでも、わたしの
そばにいてくれる。
あのひとはいつでも、わたしの手
の届かない場所にいる。
その日――――八番目の曜日に、
ふたつの思いに引き裂かれたわた
しの躰は、それからもう二度と、
もとに戻ることはなかった。
まことに残念ながら、
酔って欲しいような女は、
まずこんなことは口にし
ないと思ったほうがいい。
(だいたい並か以下の女が、
今宵我が身を投げだそうと
いう決意のもとに言う言葉
なのである)
↓
据え膳食うのは恥だと言うく
らいに己の好みに忠実かつ
毅然とした男が今はステキ
なのだ。
酔って欲しいような女は、
まずこんなことは口にし
ないと思ったほうがいい。
(だいたい並か以下の女が、
今宵我が身を投げだそうと
いう決意のもとに言う言葉
なのである)
↓
据え膳食うのは恥だと言うく
らいに己の好みに忠実かつ
毅然とした男が今はステキ
なのだ。
<ブログ:甘えられて、嫌な
人はいない>
普段から言いたいことを言っ
ている人は、以外とおとなしく、
いいお酒の飲み方をする。
これは普段がんばっている
からできる。
普段気を張っている人ほど、
酔うと、すごく腰が低くなる。
ほとんどの人は逆だ。
酔うと、急に態度が大きく
なる。会社での様子を見てい
れば、それはだいたいわかる。
恋愛も、それと同じだ。
普段、がんばっているのだから、
たまには甘えてみればいいのだ。
人との出会いは、たいてい相手
に借りを作ることから始まる。
「すみませんが、教えてください」
とか何か頼みに行って、人と知り
合うことが多い。/特に若いときは。
相手に借りを作りながら、人脈が
広がっていくのだ。
いつも自分が甘えているから、とき
は相手の力になってあげようと思う。
「あいつはいつも甘えてばかりイヤだ」
と思う人は、以外と少ないんだ。
人はいない>
普段から言いたいことを言っ
ている人は、以外とおとなしく、
いいお酒の飲み方をする。
これは普段がんばっている
からできる。
普段気を張っている人ほど、
酔うと、すごく腰が低くなる。
ほとんどの人は逆だ。
酔うと、急に態度が大きく
なる。会社での様子を見てい
れば、それはだいたいわかる。
恋愛も、それと同じだ。
普段、がんばっているのだから、
たまには甘えてみればいいのだ。
人との出会いは、たいてい相手
に借りを作ることから始まる。
「すみませんが、教えてください」
とか何か頼みに行って、人と知り
合うことが多い。/特に若いときは。
相手に借りを作りながら、人脈が
広がっていくのだ。
いつも自分が甘えているから、とき
は相手の力になってあげようと思う。
「あいつはいつも甘えてばかりイヤだ」
と思う人は、以外と少ないんだ。