クロネコの執事

黒猫一匹と茶虎二匹とのまったりネコライフ

「極北ラブソディ」海堂尊著

2021-05-08 12:38:29 | 本と雑誌

皆様いかがお過ごしでしょうか。

世良先生のその後を知りたいと思いつつ海堂尊氏の本を読んでいたところ「スカラムーシュ・ムーン」を手に取る機会がありまして、読みました。
内容はワクチン行政の在り方を若いエネルギーを取り込んで物語に紡いでいます。

が、私は彦根先生の先読みの実力よりも、Dr,アマギの残り香が気になったのです。

彦根が北海道に世良先生を訪ねていき、Dr,アマギのエンブレムを借りてモンテカルロに趣く描写がありました。
彦根はそこでシャンス・サンプルに挑み、見事(見せ金ではありますが)巨額の金を勝ち取ります。
その時、クルピエに白にも自在に入れることができると聞いているので目かくしをと要求。
この場面で、世良先生がスリジエセンター設立のためにDr,アマギを招へいするためにシャンス・サンプルを行ったときのことを思い出しました。
そのときは確か「白」
それがここの答えかとか考えかとかつぶやいていたことも思い出しました。
Dr,アマギの考えを尊重するという答えだったのかと。

それで、この極北クレイマー、極北ラプソディです。

財政破綻した極北市に市民病院再建のために乗り込んできた、その人が世良先生でした。
自分を除いて、唯一の医師今中に出向を命じます。
世良院長のことが心配だという今中に世良が放った一言が
「潰しちゃえばいいんだよ」
失敗したら帰ればいいんだと言ったDr,アマギに重なってなぜかとても悲しい気持ちになりました。
本心ではないと思いつつでも、そんな義理はないんだよなと納得してしまう自分もいて、今中先生と同じに心寒い思いをしました。


「本当に私は必要ないんですね」
ああこの言葉は本来なら世良先生が、Dr,アマギに面と向かって言うべき言葉だったのはと、言わなければいけない言葉だったのではないかと思いました。
ここでやっと心の重しが外れた感じがしました。世良先生も私も。
自分が言えなかった言葉をこの若者は何のてらいもなく口にすることができる、今中が羨ましい。
かぶせて、世良先生の見方は私一人ですと言ってしまう今中万歳です。

「昔、故郷にさくらの樹を植えようとした人がいた。そして僕は、その樹の下で一生、花守をしていくんだと信じていた」
それに続く、運命に流されて生きてきた世良先生の悔恨と懺悔。

今回は逃げずに踏みとどまり、大きな宝物を18年ぶりに手に入れます。
嬉しいです。
極北市の冬は続きますが応援しています。


久しぶりに楽しい読書タイムになった海堂尊氏の著書でした。
遅れてきて正解?
続きはいつでるの~とやきもきしないで済んだからですが。。。

では、この辺で。










「シリジエセンター1991」 海堂尊 著 

2021-03-25 13:26:38 | 本と雑誌


皆様いかがお過ごしでしょうか。
気温が20度を超える日もあれば、15度を下回る日もありと目まぐるしく季節が入れ変わっていますね。
花粉が今が最盛期とばかりに、目が、鼻がかゆい日々が続いています。
完全武装でも、隙間をかいくぐってヤツは入り込んできます。
4月に入ればスギ花粉は少し落ち着くと思われます。。
それまで頑張りましょう!

今回は、タイトルにあります通り、海堂尊氏の「チームバチスタの栄光」の過去編というか、バブル(ブラックペアン)三部作の完結編と言われている作品のレビューです。

以下、ネタバレを含みます。 未読の方はお控えくださいね。




何から書けばいいんでしょうか。
気障な外科医でいけ好かないヤツと思っていたが、いざ、亡くなると喪失感にさいなまされました。
世良先生と同じです。
猫ブログに読後感というか心持ちをぶつけるほどショックを受けています。


桜宮に「スリジエ・ハートセンター」を作ってほしいと遠くモナコから招へいしたのに、いざやってきたら梯子を外された状態に。
手術しようにも欲しい人員は拒否されて挑まなければならない状態に追い込まれ、挙句、厚生省から横やりが入り計画は頓挫。
天城先生はモナコに帰って行ってしまいました。
世良先生は田舎の診療所に逃げ込み、惰性で診療し天城先生に手紙を書く日々。

天才の名をほしいままにし、世界中の大金持ちが手術をしてほしいと全財産の半分を差し出してシャンス・サンプルに挑み、その勝者にのみ手術を行う。
アラブの石油王の財産の半分って?なんて頭の中で0の数を数えたりして、気に入らない男だなというのが最初の印象でした。
気障でイヤミ、でも見た目は最高の天才外科医。
ヴェルデ・モトやマリツィアを駆るモンテカルロのエトワール。
手に入らないものもここまで突き抜けると羨ましを通り越してしまいます。


しかし「チームバチスタの栄光」からの「アリアドネの弾丸」に続く作品の高階先生(東城大医学部付属病院院長)の暗躍ぶりにびっくりしました。
この人こんなに腹黒だったっけ?
一生懸命にお金を集めて、世界に二人とできない手技を持って人を救っているのに、なんで邪魔をするのかと読みながらすでに天城シンパになっていました。

季節は春、スリジエ(桜)の開花や満開の便りも多くニュースになる季節です。
これも何かの縁なのか、必然なのか。

天城先生は世良先生に「Adiru(アデュー)」の言葉を残しましたが、私は天城先生にいつかどこかで出会えることを願いつつ「Au revoir(オーヴォアー)」を。


セ・フィニ、ビアンシュールもう一度聞きたいです。

おじさまと猫にゃ

2021-01-14 12:56:57 | 本と雑誌


皆様いかがお過ごしでしょうか?
松の内も過ぎてしまい、新年のあいさつとすっ飛ばして、

寒中お見舞い申し上げます。

タイトルにもありますように今回は「おじさまと猫」TV版。
おじさまを草刈正雄さんがおやりになるということで執事としてはもうワクワクが止まりません。
草刈正雄さんといえばチョコレートのCMの王子様に恋焦がれ、映画「汚れた英雄」の北野晶夫にドキドキし、NHK時代劇「真田丸」の真田昌幸にこれが地なのか?と笑いました。

で、何が言いたいかというと、大好きということです!

先ほど第二回を(夜中なので録画した)視聴しました。
猫のぬいぐるみに違和感をいだきつつ、草刈おじさまステキ~と。
なぜか、笑いながら涙を流しておりました。
猫グッツを山ほど買って部屋が占領されている場面で、あるある~、わかる~と笑いつつ、おじさまのふくまるへの気持ちを思って泣けてしまいました。
こんな調子で最後まで観ました。何度鼻をかんだことか。

来週も観ます。録画だけど。

草刈おじさま、楽しみです。

「おじさまと猫」テレビ東京公式HPで最新情報をチェック


磐音 最終巻

2016-03-01 17:24:42 | 本と雑誌
陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 (双葉文庫)
一巻から読みたい方はこちらから。

旅立ノ朝-居眠り磐音江戸双紙(51) (双葉文庫)
最終巻です。


坂崎磐音の半生にわたる旅が完結しました。 前途洋洋の19歳。
三日後には親友の妹との結婚が控えていた。それが藩を牛耳る者どもの策略にはまり上意打ちとはいえ親友を殺めなければならなった陽炎の辻。
脱藩し江戸へ流れ着き・・・。
重き荷を背負っての半生。
そして幕府御用道場の道場主なるまで長い歳月が51巻に収められています。

磐音、よくぞここまで。

他にかける言葉が見つかりません。
読み始めたのはこの3、4年からですので本当に初心者です。恥ずかしながらNHKのドラマで知ったのです。
エンディングの猫のイラストが可愛くて可愛くて。
それが楽しみで見始めたようなものですが、いつしか磐音のすがすがしさに目が離せなくなっていたのです。

読み終わって時間が経ち、思うのは磐音の父正睦のこと。
江戸勤番が終わりこれから父と嫡男磐音とで藩政改革をしようと思った矢先の出来事。
その息子は許嫁の兄を上意討ちで打果たし、脱藩し生き方知れず。
諸々あり自身も取り潰しにはならなかったものの蟄居閉門。
嫡男磐音が居てくれてさえいたらとその無念はいかばかりであったことだろうと、今になって思います
正睦にとってのどん底であったろうと思います。 この物語は正睦の半生と言っても良いかもしれません。

胸躍る半生をありがとうございました。
次回は是非磐音の嫡男空也の剣術家としての話をお願い致します。

陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 (双葉文庫)
旅立ノ朝-居眠り磐音江戸双紙(51) (双葉文庫)


見知らぬ明日

2009-12-13 21:56:36 | 本と雑誌

栗本薫著「見知らぬ明日―グイン・サーガ(130)」
店頭で手に取った時の感想は「薄い」でした。
この薄さにわかっていた事でありますが、胸が痛くなりました。
この物語はこの薄さをもって終わってしまうのだ。この140Pを読みきったら終わりなのだと。
話は連綿と続いているはずなのに、私たちの目の前には無情にも「未完」の二文字。
不気味な胎動を見せ始めたグイン・サーガはグインの出生の謎をそのままに終わってしまった。
イシュトバーンの不可解な行動、カメロンとイシュトの対立の予兆、グインの寵姫ヴァルーサの登場、ヴァリレウスやマリウス、そしてリンダ、スカールの運命を全て飲み込みこの物語は終わったのだ。
終わってしまったのだ。
地団太を踏み、もがいても終わったのだ。

高校生のとき出合った「グイン・サーガ」以来20年以上読んできました。正直、もう読むのを止めようと思ったこともあります。しかし新刊が出ると買いに走りました。文字通り走ったのです。

未完のままここに最終巻。

ありがとうございました。