楢篠賢司の『人間とは』

人間とは何かを研究しています。現在は経済学を自分のものにしたいと目下勉強中です。

ケインズが捉えた社会

2010-06-01 07:11:22 | Weblog
 ケインズが置かれていた社会的背景、それは昨日の引用文で書いたが、1929年のウオール街の株式暴落に端を発した恐慌、やがて世界恐慌へと発展していくことになり、銀行や企業の倒産、そして雇用の減少から失業者の増大という、深刻な社会問題化になっていった。
 
 そこでケインズが考えたことは、企業に活力を与え雇用を増やすことができる施策はどういうものであろうかということであったといえる。
 
 現代でもよく言われるように経済を活性化させるには失業対策にもなるピラミッドを作ればいいという人がいるのと同じだが、しかしそこには財源が必要になるということを忘れているのではないだろうか。
 
 私が以前何らかの文章で書いた『通貨発行益』(シニョレッジ)が通貨を発行できる者にはあるということ。ただしそれは一つの条件下で有効になるということになる。その条件とは市中に貨幣(通貨)が充足していない時という条件になる。このような条件とはそれまでの社会とは違った人物が国を統一したとき、例えば日本に例を挙げれば江戸時代から明治に変わったときということにもなる。

 それまで江戸時代で通用していた貨幣が明治政府になったとき、紙幣として発行されていた藩札は1871年(明治4年)の明治政府による藩札処分令が発せられ、藩札は廃止された。

 つまりここではそれまで通用していた藩が発行していた紙幣が紙切れになってしまったことになる。これに変わるものは新しい政府が発行する貨幣ということになり、古い藩札と新しい政府発行の貨幣を交換するというものではない。
 
 藩の庶民が物の売買をするとき必要とするものは新政府の発行した貨幣を手に入れなくてはならない。その貨幣を手に入れる方法は発行元(新政府)に物を売って貨幣を手に入れなくてはならない。つまり新政府は貨幣を発行し、それを庶民に持たせるには庶民が作り出した物(商品)を自己が発行した貨幣と交換することになる。ここに貨幣発行費用が僅かであるならば多額の通貨発行利益を得ることになる。

 ただこの辺のいきさつ(通貨発行益)を研究している人が少ないため充分な資料がないというのが現状である。

 また別のほんの小さな文章であるが引用しておこう。

 家斉の治世は、はじめ質素倹約の政策が引き継がれたが、貨幣悪鋳による出目の収益で幕府財政が一旦潤うと、大奥での華美な生活に流れ、幕政は放漫経営に陥った。              ウィキペディア江戸時代より引用

 なぜこのような文章を持ち出すのかというと。ケインズの考え方が「ピらミット建設が失業対策」という発想からではないかと考えるからである。

 市中に貨幣が充分行き渡らない状態では貨幣量を増やすことによって経済は活発になる。そのとき市中に貨幣を行き渡らせるにはピらミットであるならば庶民の労働と交換に貨幣を渡す。その貨幣が他の者が作った商品と交換される(A・Eの関係参照)

 ただ貨幣が充足されている社会ではこのような政策は経済を一時的には活性させることができるが長い目で見たとき疲弊させてしまう。そこでどこに原因があるのかということになる。