≪ほほえみ・微笑の東西比較~英語の例文より≫
(2021年12月30日投稿)
前々回のブログでは、岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社、2001年[2000年第1刷])から、テーマ別に英文を抜き出して、英文解釈力を高めることを意図した。そのテーマとは、〇言語、〇国の特徴と国民性、〇人生(・幸福・友情など)、〇歴史、〇文学、〇自然と科学を扱った英文を選択した。 その岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社)には、微笑に関して興味深い英文が載っていた。
また、野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)においても、微笑に関して偉人の名言が載っている。そして、新渡戸稲造の『武士道』にも、日本人の笑いに関する鋭い考察が見られる。
今回は、英文の例文の中から、この微笑に関して述べた文を取り上げて、考えてみたい。
ここに東西の笑いに対する見方の相違の一端が表れているようにも感じる。
【岡田伸夫『英語の構文150』(美誠社)はこちらから】
英語の構文150―リスニング用CD付
【野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』はこちらから】
Vision Quest 総合英語 2nd Edition
【『「武士道」を原文で読む』(宝島社)はこちらから】
「武士道」を原文で読む (宝島社新書)
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)には、次のようなマザー・テレサ(1910~1997)の微笑に関する名言が載っている。
"Every time you smile at someone, it is an action of love, a gift to that person,
a beautiful thing. ― Mother Teresa"
あなたが誰かにほほえむたびに、それは愛の行為なのです。その方への贈り物です。
美しいものなのです。―マザー・テレサ
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、360頁~
361頁)
Peace begins with a smile. ― Mother Teresa
平和はほほえみから始まるのです。―マザー・テレサ
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、448頁~
449頁)
その他にも、次のような名言もある。
Let us always meet each other with smile,
for the smile is the beginning of love.
(いつもお互いに笑顔で会うことにしましょう。笑顔は愛の始まりですから。)
Love is a fruit in season at all times, and within reach of every hand. -- Mother Teresa愛は一年中が旬で、誰でも手が届くところになっている果実である。―マザー・テレサ
マザー・テレサは、北マケドニア共和国に生まれ、幼い頃から修道女を目指し、18歳になってからアイルランドで修道女としての訓練を受け、インドのカルカッタにあるキリスト教系の高校で地理と歴史の教師になる。校長になったテレサは、カルカッタの貧しい人達を救おうと、スラム街の子供たちに無料で勉強を教え始める。
そんな姿を見た人達から、ボランティアの参加や寄付も増えていき、救済施設などを開設していく。
その活動はインドをはじめ、世界中に広がり、ローマ教皇からも認められる。そして、1979年にノーベル平和賞も受賞する。授賞式の際にも特別な正装はせず、普段と同じく白い木綿のサリーと革製のサンダルという粗末な身なりで出席した。賞金もカルカッタの貧しい人々のために使われた。インタビューの中で、「世界平和のために私たちはどんなことをしたらいいですか」と尋ねられたテレサの答えはシンプルなものであった。
「家に帰って家族を愛してあげてください。」
Love begins by taking care of the closest ones ― the ones at home. ― Mother Teresa
愛は最も身近にいる人たち、つまり家族を大切にすることから始まる。―マザー・テレサ
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、478頁~479
頁)というマザー・テレサの名言も載せられている。
野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)には、次のようなポール・マッカートニー(1942~)の微笑に関する名言が載っている。
□Smile when your heart is filled with pain. ― Paul McCartney
(心が痛みでいっぱいになったときはほほえもう。―ポール・マッカートニー)
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、第6章受動態、128頁~129頁)
ポール・マッカートニーは、イギリスのロックバンドのビートルズのメンバーであった。「ポピュラー音楽史上最も成功した音楽家」ともいわれる。
彼のその他の名言として、次のようなものもある。
If you love your life, everybody will love you too.
(あなたの人生を愛せば、みんながあなたを愛するようになる。)
愛されるためには、まず自分自身が自分の人生を愛さなければならない。そうすれば、自然とまわりの人もあなたを大切に愛してくれるようになるという。
ポールにとって、歌とは「人の心と繋がることのできる構造体のようなもの」であったらしい。
名曲「Let It Be」(1970年)の歌詞には、次のようにある。
When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be
(苦境に立たされたことに気づけたら
マリア様が現れて
叡智の言葉をくれた
なすがままに)
聖母マリアのささやき、あるがままに生きなさい。
名曲「Let It Be」(なすがままに、ありのままに、そのままでいいんだよ)は、メッセージ性の強い歌詞であると改めて思う。
岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社)には、微笑について、次のような興味深い例文が見られる。
・What flowers are to city streets, smiles are to humanity.
They are but trifles, to be sure; but scattered along life’s path-
way, the good they do is inconceivable.
<語句>
・humanity(名)人間性
・but=only
・trifle(名)ささいなもの
・to be sure~, but…なるほど~だが…(⇒構文129)
・scatter(動)まき散らす
・pathway(名)道
・inconceivable(形)想像もつかない、たいへんな
<考え方>
・第2文のTheyはsmiles を受ける。
・scattered along life’s pathwayは前にbeingが省略された受動態の分詞構文で、if smiles are scattered along life’s pathwayという意味。
・またthe good [that]they doは「微笑の効用」という意味。
<訳例>
・微笑と人類との関係は、花と都市の道路の関係と同じである。なるほど微笑はささいなものにすぎないが、人生行路にばらまかれると、その効用には想像もつかないものがある。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、91頁、練習問題No.117.)
なお、ここで使われている構文は、A is to B what C is to D(「A と Bの関係は、CとDの関係と等しい」)である(構文39)。
この構文は、CとD は、A と Bの関係を説明する例として用いられている。
このwhatは関係代名詞であり、what C is to Dは、主節のis の補語になっている。
関係代名詞whatの代わりに従属接続詞asを用い、“A is to B as C is to D”とすることもある。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、90頁)
新渡戸稲造の『武士道』には、日本人の笑いについて、次のような鋭い考察が見られる。
Indeed, the Japanese have recourse to risibility
whenever the frailties of human nature are put to
severest test.
I think we possess a better reason than
Democritus himself for our Abderian
tendency, for laughter with us of temper veils an
effort to regain balance of temper when
disturbed by any untoward circumstance.
It is a counter poise of sorrow or rage.
The suppression of feelings being thus
steadily insisted upon, they find their safety-valve
in poetical aphorisms.
A poet of the tenth century writes “In Japan
and China as well, humanity when moved by
sorrow, tells its bitter grief in verse.”
A mother who tries to console her broken
heart by fancying her departed child absent on
his wonted chase after the dragon-fly hums,
“How far to-day in chase, I wonder,
Has gone my hunter of the dragon-fly!”
<英単語>
・risibility 笑い
・frailty 弱点
・veil 隠す
・untoward 都合の悪い
・circumstance 状況
・poise 釣り合い
・suppression 抑圧
・safety-valve 安全弁(ハイフン-を入れないつづりが一般的)
・aphorism 格言
・console なぐさめる
・departed 亡くなった
・hum 鼻歌を歌う
<英文の読み方>
・The suppression of feelings being~の前半は分詞構文が使われている。
・引用符の中“In Japan and China as well,~の主語はhumanity、述語はtells。
・A mother who tries to console~の文の主語はA mother、動詞はhums。
関係代名詞whoで導く節がA motherを説明している。
・by fancying ~the dragon-flyは、「~を想像することによって」の意。
<訳文>
・実際、日本人は人間の弱さが試される場面で、笑いを頼みの綱としてきた。
しかし、私達がなぜこのように笑うかには、デモクリトスの笑い癖よりもまともな理由があると思う。というのも、私達の笑いには、逆境において心乱されたときに心のバランスを取り戻そうと努力する姿を隠す役割があるからだ。
つまり、笑いは悲しみや怒りのバランスをとるためのものである。
こうして絶えず感情を抑えてきたため、心の安全弁の役割は詩歌に託してきた。
10世紀の歌人は「日本は中国と同様、悲しみにくれる者はそのつらい思いを歌に表現する」と書いている。
これは、亡くなった子供のことを、いつものようにただとんぼつりに出かけてしまっただけだと思うことで、傷ついた心を癒そうとしたある母親の詠んだ歌である。
とんぼつり 今日はどこまで 行ったやら
「第11章 克己」より
(別冊宝島編集部編『「武士道」を原文で読む』宝島社、2006年、130頁~133頁)
このように、新渡戸稲造によれば、日本人は人間の弱さが試される場面で、笑いを頼みの綱としてきたというのである。そして、笑いは悲しみや怒りのバランスをとるためのものであったという。
因みに、risibility(笑い)を手元の電子辞書で調べてみると、次のような意味が出てくる。
・risibility(名)
①笑い性[癖]、②笑いの感覚、③笑い、陽気(hilarity)
(『ジーニアス英和大辞典』大修館書店、2008年)
(cf.) ・risible(形)
①笑える、笑いたがる、②笑いに関する、③笑わせる、ばかげた
(『ジーニアス英和大辞典』大修館書店、2008年)
・risible(adj.)
deserving to be laughed at rather than taken seriously
[SYN] ludicrous, ridiculous
(『オックスフォード現代英英辞典』Oxford University Press, 2005.)
(2021年12月30日投稿)
【はじめに】
前々回のブログでは、岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社、2001年[2000年第1刷])から、テーマ別に英文を抜き出して、英文解釈力を高めることを意図した。そのテーマとは、〇言語、〇国の特徴と国民性、〇人生(・幸福・友情など)、〇歴史、〇文学、〇自然と科学を扱った英文を選択した。 その岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社)には、微笑に関して興味深い英文が載っていた。
また、野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)においても、微笑に関して偉人の名言が載っている。そして、新渡戸稲造の『武士道』にも、日本人の笑いに関する鋭い考察が見られる。
今回は、英文の例文の中から、この微笑に関して述べた文を取り上げて、考えてみたい。
ここに東西の笑いに対する見方の相違の一端が表れているようにも感じる。
【岡田伸夫『英語の構文150』(美誠社)はこちらから】
英語の構文150―リスニング用CD付
【野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』はこちらから】
Vision Quest 総合英語 2nd Edition
【『「武士道」を原文で読む』(宝島社)はこちらから】
「武士道」を原文で読む (宝島社新書)
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・マザー・テレサの微笑に関する名言
・ポール・マッカートニーの微笑に関する名言
・微笑について(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』より)
・日本人の笑いについて (新渡戸稲造の『武士道』より)
マザー・テレサの微笑に関する名言
野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)には、次のようなマザー・テレサ(1910~1997)の微笑に関する名言が載っている。
"Every time you smile at someone, it is an action of love, a gift to that person,
a beautiful thing. ― Mother Teresa"
あなたが誰かにほほえむたびに、それは愛の行為なのです。その方への贈り物です。
美しいものなのです。―マザー・テレサ
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、360頁~
361頁)
Peace begins with a smile. ― Mother Teresa
平和はほほえみから始まるのです。―マザー・テレサ
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、448頁~
449頁)
その他にも、次のような名言もある。
Let us always meet each other with smile,
for the smile is the beginning of love.
(いつもお互いに笑顔で会うことにしましょう。笑顔は愛の始まりですから。)
Love is a fruit in season at all times, and within reach of every hand. -- Mother Teresa愛は一年中が旬で、誰でも手が届くところになっている果実である。―マザー・テレサ
マザー・テレサは、北マケドニア共和国に生まれ、幼い頃から修道女を目指し、18歳になってからアイルランドで修道女としての訓練を受け、インドのカルカッタにあるキリスト教系の高校で地理と歴史の教師になる。校長になったテレサは、カルカッタの貧しい人達を救おうと、スラム街の子供たちに無料で勉強を教え始める。
そんな姿を見た人達から、ボランティアの参加や寄付も増えていき、救済施設などを開設していく。
その活動はインドをはじめ、世界中に広がり、ローマ教皇からも認められる。そして、1979年にノーベル平和賞も受賞する。授賞式の際にも特別な正装はせず、普段と同じく白い木綿のサリーと革製のサンダルという粗末な身なりで出席した。賞金もカルカッタの貧しい人々のために使われた。インタビューの中で、「世界平和のために私たちはどんなことをしたらいいですか」と尋ねられたテレサの答えはシンプルなものであった。
「家に帰って家族を愛してあげてください。」
Love begins by taking care of the closest ones ― the ones at home. ― Mother Teresa
愛は最も身近にいる人たち、つまり家族を大切にすることから始まる。―マザー・テレサ
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、478頁~479
頁)というマザー・テレサの名言も載せられている。
ポール・マッカートニーの微笑に関する名言
野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)には、次のようなポール・マッカートニー(1942~)の微笑に関する名言が載っている。
□Smile when your heart is filled with pain. ― Paul McCartney
(心が痛みでいっぱいになったときはほほえもう。―ポール・マッカートニー)
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、第6章受動態、128頁~129頁)
ポール・マッカートニーは、イギリスのロックバンドのビートルズのメンバーであった。「ポピュラー音楽史上最も成功した音楽家」ともいわれる。
彼のその他の名言として、次のようなものもある。
If you love your life, everybody will love you too.
(あなたの人生を愛せば、みんながあなたを愛するようになる。)
愛されるためには、まず自分自身が自分の人生を愛さなければならない。そうすれば、自然とまわりの人もあなたを大切に愛してくれるようになるという。
ポールにとって、歌とは「人の心と繋がることのできる構造体のようなもの」であったらしい。
名曲「Let It Be」(1970年)の歌詞には、次のようにある。
When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be
(苦境に立たされたことに気づけたら
マリア様が現れて
叡智の言葉をくれた
なすがままに)
聖母マリアのささやき、あるがままに生きなさい。
名曲「Let It Be」(なすがままに、ありのままに、そのままでいいんだよ)は、メッセージ性の強い歌詞であると改めて思う。
微笑について(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』より)
岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社)には、微笑について、次のような興味深い例文が見られる。
・What flowers are to city streets, smiles are to humanity.
They are but trifles, to be sure; but scattered along life’s path-
way, the good they do is inconceivable.
<語句>
・humanity(名)人間性
・but=only
・trifle(名)ささいなもの
・to be sure~, but…なるほど~だが…(⇒構文129)
・scatter(動)まき散らす
・pathway(名)道
・inconceivable(形)想像もつかない、たいへんな
<考え方>
・第2文のTheyはsmiles を受ける。
・scattered along life’s pathwayは前にbeingが省略された受動態の分詞構文で、if smiles are scattered along life’s pathwayという意味。
・またthe good [that]they doは「微笑の効用」という意味。
<訳例>
・微笑と人類との関係は、花と都市の道路の関係と同じである。なるほど微笑はささいなものにすぎないが、人生行路にばらまかれると、その効用には想像もつかないものがある。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、91頁、練習問題No.117.)
なお、ここで使われている構文は、A is to B what C is to D(「A と Bの関係は、CとDの関係と等しい」)である(構文39)。
この構文は、CとD は、A と Bの関係を説明する例として用いられている。
このwhatは関係代名詞であり、what C is to Dは、主節のis の補語になっている。
関係代名詞whatの代わりに従属接続詞asを用い、“A is to B as C is to D”とすることもある。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、90頁)
日本人の笑いについて (新渡戸稲造の『武士道』より)
新渡戸稲造の『武士道』には、日本人の笑いについて、次のような鋭い考察が見られる。
Indeed, the Japanese have recourse to risibility
whenever the frailties of human nature are put to
severest test.
I think we possess a better reason than
Democritus himself for our Abderian
tendency, for laughter with us of temper veils an
effort to regain balance of temper when
disturbed by any untoward circumstance.
It is a counter poise of sorrow or rage.
The suppression of feelings being thus
steadily insisted upon, they find their safety-valve
in poetical aphorisms.
A poet of the tenth century writes “In Japan
and China as well, humanity when moved by
sorrow, tells its bitter grief in verse.”
A mother who tries to console her broken
heart by fancying her departed child absent on
his wonted chase after the dragon-fly hums,
“How far to-day in chase, I wonder,
Has gone my hunter of the dragon-fly!”
<英単語>
・risibility 笑い
・frailty 弱点
・veil 隠す
・untoward 都合の悪い
・circumstance 状況
・poise 釣り合い
・suppression 抑圧
・safety-valve 安全弁(ハイフン-を入れないつづりが一般的)
・aphorism 格言
・console なぐさめる
・departed 亡くなった
・hum 鼻歌を歌う
<英文の読み方>
・The suppression of feelings being~の前半は分詞構文が使われている。
・引用符の中“In Japan and China as well,~の主語はhumanity、述語はtells。
・A mother who tries to console~の文の主語はA mother、動詞はhums。
関係代名詞whoで導く節がA motherを説明している。
・by fancying ~the dragon-flyは、「~を想像することによって」の意。
<訳文>
・実際、日本人は人間の弱さが試される場面で、笑いを頼みの綱としてきた。
しかし、私達がなぜこのように笑うかには、デモクリトスの笑い癖よりもまともな理由があると思う。というのも、私達の笑いには、逆境において心乱されたときに心のバランスを取り戻そうと努力する姿を隠す役割があるからだ。
つまり、笑いは悲しみや怒りのバランスをとるためのものである。
こうして絶えず感情を抑えてきたため、心の安全弁の役割は詩歌に託してきた。
10世紀の歌人は「日本は中国と同様、悲しみにくれる者はそのつらい思いを歌に表現する」と書いている。
これは、亡くなった子供のことを、いつものようにただとんぼつりに出かけてしまっただけだと思うことで、傷ついた心を癒そうとしたある母親の詠んだ歌である。
とんぼつり 今日はどこまで 行ったやら
「第11章 克己」より
(別冊宝島編集部編『「武士道」を原文で読む』宝島社、2006年、130頁~133頁)
このように、新渡戸稲造によれば、日本人は人間の弱さが試される場面で、笑いを頼みの綱としてきたというのである。そして、笑いは悲しみや怒りのバランスをとるためのものであったという。
因みに、risibility(笑い)を手元の電子辞書で調べてみると、次のような意味が出てくる。
・risibility(名)
①笑い性[癖]、②笑いの感覚、③笑い、陽気(hilarity)
(『ジーニアス英和大辞典』大修館書店、2008年)
(cf.) ・risible(形)
①笑える、笑いたがる、②笑いに関する、③笑わせる、ばかげた
(『ジーニアス英和大辞典』大修館書店、2008年)
・risible(adj.)
deserving to be laughed at rather than taken seriously
[SYN] ludicrous, ridiculous
(『オックスフォード現代英英辞典』Oxford University Press, 2005.)
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