≪囲碁の攻め~新垣武氏の場合≫
(2024年9月22日投稿)
今回のブログでも、引き続き、囲碁の攻めについて、次の著作を参考に、考えてみたい。
〇新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]
この著作の特徴は、とりわけ、「第25節 石の取り方」に象徴されるように、石の取り方を攻めの一つとして積極的に説いている点にある。
例えば、「第25節 石の取り方」において、著者は置碁では白石を囲んで外勢を取る打ち方を勧めている。
※勢力圏に侵入した白をさらに攻めるのであるが、白にすべて生きられては勝てない。
勝つためには取らねばならない石がある(168頁)という。
【新垣武(あらがき たけし、1956-2022)氏のプロフィール】
・1956年生まれ、沖縄県出身。坂田栄男二十三世本因坊門下。
・1971年入段、1973年二段、1974年三段、1976年四段、1977年五段、1982年六段、
1985年七段、1989年八段、1994年九段。2020年引退。2022年、66歳で死去。
<著書>
・新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』NHK出版、2000年
【新垣武『攻めは我にあり』日本棋院はこちらから】
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・著者は、一間とケイマで攻めることを勧めている。
・置き石は多いほど攻めに持ち込むのが容易であるが、五子局ぐらいからはハサミ、打ち込みという互先実戦でも役立つ打ち方をしないと勝てない。
・従って、実戦例は四、五子局を中心として、互先にも通じる一間とケイマによる攻めの基本を、解説するように努めたという。
・本書を通じて、「石を攻めて取る喜び」を味わってほしいとする。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、3頁~4頁)
5低いワタリ(26頁~30頁)
第1譜~第6譜(五子局)
【第1譜】攻めを保留、大場へ
・ここでも隅のケイマガカリに、黒はすべて一間に受ける。
・白5には黒も6と大場を占める。
・白9のヒラキには、すぐA(9, 十六)と打ち込まず、黒10と上辺の星を占めた。
・白B(6, 三)の時、ハサミになっているので、これも攻めを含んだ打ち方である。
【第2譜】攻めの転機
・白1のケイマガカリに、すでに三角印の黒(10, 四)のハサミがあるので、黒2とコスミツケてから、4と一間に受ける。
・白5に黒A(6, 六)と打っても、すぐには封鎖できないので、いったんここは保留し、黒6に回った。
※これも立派な攻めの戦法。
【第3譜】ノゾキのテクニック
・三角印の黒の打ち込みに、白1、3のトビ出しには、黒も2、4と中央へトビ出す。
・白7のノゾキには、黒8、10と逆ノゾキでツギを省略して、黒12のオサエに回る。
・白13と低いワタリとなっては、黒の大成功。
【第5譜】ツケオサエで弱石補強
・下辺の白もワタリ、上辺も三角印の白と手を入れたので、白の弱石は一応無くなった。
・この辺で黒も右下隅の弱石を補強する。
このためには、黒1、3のツケオサエがしっかりしている。
・黒9まで、これで心配ない。
【2図】白の三々の生死
・黒が右下隅を整形した後、白はこの隅で生きることはできない。
一例として、白1から黒14まで白死に。
・左上隅は、白1から9までのように、白は小さく生きることができる。
しかし、黒は10と中央の大場に回れば黒成功。
【第6譜】切り離し
・白が左辺の黒の一等地に、1と打ち込んできた時は、黒2と鉄柱にサガって、左辺でのサバキを封じる。
・白3、5と隅に生きを求めてくれば、黒6と白1の一子を切り離して、十分。
・白13を省くと、黒A(2, 一)で白死。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、26頁~30頁)
第7節 地を与えて石を取る(36頁~39頁)
【総譜】
【第1譜】(1-18)穏やかな序盤
〇互先の実戦例。
・序盤は、穏やかで、黒7から白12までは一つの定石であるし、黒13から15も一つの型。
・黒17のカカリに普通は白Aくらいだろうが、白18はいっぱいにがんばった着手。
※このあと、黒が地を稼ぎ、白が攻める展開になる。
【第2譜】(1-17)実利
・白8の時、黒9と下辺に地を作ろうとしたのが問題だった。
・白10から14に対し、黒11から15と、さらに守り続けなければならなくなる。
※これにより白に外勢ができ、当然、このあと白は二つの黒に対して、攻撃を始める。
【第3譜】(1―9)シボリ筋
・白1とハザマを衝くのが、常用の攻め方。
・黒のサバキとして、黒2とカケる手を選んだ。
・そうなれば白3の出から、ほぼ一本道の進行で、白9の抜きとなる。
※黒の中央への進出が止まりつつある。
【第4譜】(1-14)黒を封鎖
・黒1とワタらなければならず、その間に白2、4と黒を封鎖した。
・黒5のアテから、7以降11までを利かして、後手でも黒13のコスミはこの黒が生きるために必要な手。
・白14に回られ、外側の黒も薄い。
【第5譜】(1-24)代償
・黒1と左下方の黒の補強。
・白2には、黒3が省けない。
・黒5は24だったか。
・黒9、11と白一子を取らないと、白2を助ける白12の手が先手。
※その分、必然的に外の白が強くなり、それに隣接する黒の大石が危険になる。
【1図】(生死の急所)
・黒a、白b、黒cの切り取りを打たないと、白dと打たれ、さらに手を抜くと、白1以下で左辺の黒に生きがない。
かといって、前譜での切り取りは外の黒を生きづらくし、囲まれた代償を払うことになる。
【第6譜】(大石死ぬ)
・黒は1から逃げるが、白16のホリコミまで、黒の大石が取られた。
※その第一の原因は、黒が下辺で地を稼いだこと。
その結果、白石が外側にきて、戦いが白の有利に進んだのである。
地を稼げばよいというものではない。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、36頁~39頁)
【総譜】(1-77)五子局
<序盤の工夫>
【第1譜】(1-12)
〇本局は級位者の指導碁実戦。
・黒は2カ所で一間受けの後、白7に黒8と二間に受けた。
珍しい手であるが、工夫が見られる。
・その後、白11と黒の切断をみた時、構わず黒12とケイマで攻めに回ったのは、一法。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、50頁)
【第2譜】(1-8)捨て石
・白1から3と隅の黒を分断するが、黒4とサガり、これを捨てる。
・その代償に黒は6から8とケイマで、白を攻める展開になった。
※石を捨てることを覚えれば、もう有段者。
なお、白1のとき黒2は省けない。省くと―
【1図】(ノゾキに注意)
〇著者はケイマの攻めを、再三勧めているが、
・白1のノゾキにツギを省略して、黒2とケイマの攻めに回るのはいけない。
・白3と白がつながる上に、黒がバラバラになる。
※ノゾキやアタリの時は注意せよ。
【第3譜】(1-14)生きか脱出か
・白1から生きを図る。
・黒6を先手で決めるのを忘れないように(次図参照)。
・白13の時、黒14と目を取った。
※生かさないという意味であるが、黒14ではAと封鎖して、白の生きを催促するのも一法だった。
【2図】(先手最優先)
〇攻めは先手から打つことを肝に銘じてほしい。
・黒1、3と後手から始めると、白4、6で簡単に生きられてしまう。
※前譜の実戦が正着。
囲んだ石を取る時は、先手で相手の地を狭めていくのが原則。
【第4譜】(1-16)新たな囲み
・黒は4とケイマで、囲みの再構築。
・黒16まで、ついに封鎖。
※黒2で3に切るのは、次図に見るとおり、無理。
※黒10で11から切る4図(次のページ)の厳しい打ち方もある。
※また、黒14で15にツグ手も成立(5図、6図)
【3図】(攻守逆転)
・三角印の白のとき、黒1と切るのは、白2から10と黒一子を制し、立場が逆転してしまう。
※下方の黒五子がまとめて攻められる展開になる。
・ケイマは攻めに適しているが、白6から10のように、アタリがあると囲みが破ける。
【4図】(攻めは切りにあり)
・三角印の白のとき、黒1から3と出切るのも厳しく、黒23までが想定される。
➡左方の白を殺した。自信ができたら実行してほしい。
・途中白12に黒13と控えたが、22の点にオサえると、白を強くして三々に入られる。
【5図】(手筋)
・三角印の白のアテに、黒1とツグ手もあるが、白の手筋に注意せよ。
・続いて、白は2のハネコミから4とアテ。
・このあと、白6から8となっては、白生き。
・黒15、17は次図を防いで、すぐ決めてしまってほしい。
【6図】(ハサミツケ)
・黒2のサガリを決めておかないと、白1のハサミツケが成立。
・勢い黒2のサガリには、白9までの後、黒10に白11とオサえて、コウになる。
※黒はここがコウになってはたまらない。
黒2で3と後退するようでは大損害。
【第5譜】(1-13)大々ゲイマ
・白1、黒2を交換の後、白3と大々ゲイマ。
・黒は喜んで4から10で簡明かつ十分。
※黒4を7(次図)に打つのも一法だが、この場合は後の打ち方が難しく、問題。
・また、白は11、13のハネツギが必要(8図)
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、50頁~57頁)
第19節 両ガカリ・ケイマと一間(117頁~126頁)
【第1譜】(1-3)
☆悩み
・皆さんの悩みの一つは、定石の選び方ではないかと思う。
●下譜は四子局。
・白1のケイマガカリにすぐ黒2とハサみ、白3と一間に高く両ガカリしてきた。
・このあと、どのような定石を選ぶかである。
【第2譜】(1-11)ツケノビの一手
・黒1とツケる一手と覚えてほしい。
※この定石選択で黒がよい。
・白は2とハネ、黒3のノビに白4のノビ。
※ツケノビ定石の定型。
・三角印の白が一間と高いので、黒5の二丁ツギ(タケフ)の守りは、この一手。
・次に黒Aのオサエが地と根拠に関して大きく、白は6とケイマにスベって、それを防ぐとともに、自らの根拠を得る。
・このとき、黒7、9とオサえつけるのが、この定石の眼目で、先に三角印の黒とハサんだ石と関連して、強力な厚みを作る。
・このあと、白10に黒11と展開するぐらいで、黒十分。
※途中、白8で9に二段バネするのは無理手。
しっかりとがめなければならない。(4図以降参照のこと)
※定石は双方五分の分かれのはずであるが、このようにどちらか、この場合は白の、悪い進行を定石とした例は他にもたくさんあるという。
【4図】(シボリ形)
・第2譜の黒7、つまり三角印の黒とマゲたあと、白1の二段バネは無理手。
・これをとがめるには、黒2、4のアテから6とカケる形に持っていく。
・白9の切りが入っても、構わない。
・黒10とアテて……
【5図】(鉄壁)白5ツグ(1の左)
・白1の抜きに黒2とノビて、二子にして捨てる手筋で、4とシボリ。
・さらに黒6の鼻ヅケが打てれば満点。
・以下、黒10とカケて、白が外に出るのを阻む。
・白13は低位であり、黒の外勢は鉄壁。
・黒16で勝負あり。
【第1譜】(1-6)押しあげ対策
・黒がツケノび、三角印の白、黒のあと、白A(18, 三)でなく、1と押しあげた時は、黒2と隅をオサえる。
・白3には黒4、白5には黒5とケイマして十分。
※黒4の時、白B(14, 五)からの出切りは心配ない。
【第2譜】(1-6)ケイマ攻め発見
・白1とカカリ。
※この時、黒は3に受けては落第。
・白を攻めるには、黒2が肝要。
・白3に黒4、白5を交換して、次に黒6のケイマ攻めが強烈。
※これを発見できれば、相当な実力。
【第3譜】(1-15)ケイマの威力
・黒1とカケた前譜に続き、黒の外からの圧迫に白2から6はやむを得ない。
・さらに黒7と外からのすばらしいケイマ。
・白8、10と出ても、黒9、11と切り離す。
・この後、白12と動いても、黒13、15で取れている。
【第4譜】(1-15)新展開
・白1、3と逃げても、黒2、4とゆるみシチョウで取れている。
・次に白は7、9の切りから戦うが、黒は14までを先手で決めることができる。
※この後、黒が要石の三角印の黒を引っ張り出して、右辺での戦いが始まる。
【第5譜】(1-6)要石
・黒1と要石の三角印の黒を引っ張り出すと、白は大石を生きなければならない。
・そのためには、白2から6を打たねばならないので、自然と周りの黒が丈夫になる。
・この後、黒は右下隅の弱点をAと補強して、上辺の白の攻めをみる。
【第6譜】(1-18)攻めの準備
・まず黒1と補強し、白2には黒3と白一子をゲタで取る。
・白4には外回りのボウシのケイマで、黒5と封鎖して、攻めの準備は完了。
・右下隅の折衝の後、上辺黒11以下に、白14から18と一応生きた。
【1図】(読み切り)
・上辺の白は一応生き形であるが、黒3がくると、黒5と打ち込みに白6が省けないので、白14までコウになる。
※長い手数であるが、囲んだら失敗してもいいから取りにいってほしいという。
【第7譜】(1-18)コウ立て準備
・前図の手順で、三角印の黒と白を決めたあと、コウ立てを読み切れないので、すぐ黒9とはいかず1と強化した。
・白2から8まで、この白は黒に二手打たれると死にそう。
※黒に立派なコウ立てができた。
・黒9からコウ決行。
【第8譜】(1-25)コウ争い 白4コウ取る(1の右)黒7〃白10〃黒13〃白16〃
※コウ立て十分な状況を作って、コウ争いを始めると、楽しいこと請け合いという。
・左辺の白にコウ材はあるが、とりあえず中央の白に黒5以下、コウ立てした。
・黒17に白は18とコウを解消し、戦いが下辺に移る。
【第9譜】(1-12)コウ移し 白9コウ取る(1)
・白は上辺のコウを解消したかわりに、下辺にコウが移った。
※今後のコウも白は負けると大変。
黒は負けても致命傷にならない。
・黒は左辺の白に10、12と連打できた。
※本局はコウで一局を制した例である。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、117頁~126頁)
第20節 両ケイマガカリ(133頁~142頁)
〇両ケイマガカリ
【第1譜】(1-8)簡明・コスミ
・白1のケイマガカリに黒2とハサみ、白3と両ケイマガカリされたときの打ち方。
・この場合、黒4のコスミから、以下、黒8の一間トビが簡明かつお勧め。
【第2譜】(1-10)ケイマ
〇第1譜の続き
・白1とケイマし、黒2、4に白は手を省けないだろう。
・白7、9の動き出しに、黒8、10とケイマで封鎖。
※白は中で生きなければならない。
攻めのケイマの黒6、8、10を身に付けてほしい。
【第3譜】(1-7)後手生き
・白は中で生きるために、1、3のツケヒキを打たなければならない。
・黒は2、4と受けるだけで、何も難しいことはない。
※すっかり外勢が強固になった。
・白は7を省けないので、後手生き。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、133頁、140頁~142頁)
【総譜】
<守りの布石>
【第1譜(1-6)】守りの布石
・著者は特に黒には積極的な攻めを勧めているが、黒がハサミを打たず積極的に攻めないと、下譜から始まって第2譜までのような布石がよくできる。
うっかり攻めを忘れて、こうなったという場合もあるだろう。
・双方守っているので、お互い急な攻めはないが、何とか今からでも攻め形に持っていってもらいたい。
【第2譜(1-6)】攻めの考え方
・そのためには、白からAやBに打たれた時の黒の考え方を心得ておかなければならない。
・逆に黒からCの打ち込みは攻めの立場からどうなのか、また黒からDのツケは……。
どれも実戦で頻繁に現れる形を採り上げたという。
【第3譜(1-9)】打ち込み
・白からの1はよくある打ち込みの形である。
・黒2とツケて中へトビ出す手を妨げ、白9まで定石の進行。
※ここで黒にとって重要なことは、黒Aと付き合わないこと。
先手を取って要点に回ってほしい。
【第4譜(1-5)】ツケ
・上辺で先手を取った黒は、要点といえば黒1のツケなどがある。
※黒が先手で外勢を築くのに有効。
・黒5のあと、白にはAとツグ手と、Bとカカえる手がある。
☆それぞれについて、その後の進行をみておこう。
【1図】(白ツギ)
・白が1のツギの時は、黒2のカカエ。
・白3のアテのワタリに、黒4と抜いて外勢を得る。
・白はしっかりワタるために、もう一手白5が必要。
・この後、右辺に呼応して、黒6、8と外から打って、中央に大勢力を築き、満足できる。
【第5譜(1-4)】白カカエ
・白2のツギでなく、1とカカえた時は、黒2と切りアテて、白3の抜きになる。
・次に、黒はコウを恐れず、4とアテる一手と覚えよ。
※白はコウに負けると、ひどい形になるので、ここではツギが普通。
【2図】(コウ材作り)
・もしも白がコウを始めるには、まずコウ材作りをしなければならない。
・そのためには、白1、3と切り違うなどの準備をし、白5のアテからコウが始まる。
※白はコウに勝つため、右上隅は損をすることになる。
【3図】(コウ争い)
・まず黒1の抜きは当然。
・白は2以下ここに用意したコウ立てを使う。
・そして白16のコウ取りまでとなって、右上隅の黒地がすっかり固まった。
※コウ争いは続くが、たとえ黒はコウに負けてもよい。
【第6譜(1-10)】外勢
・コウを避けて、白1のツギなら、黒2と白一子をカカえ、白3に黒4と白一子を抜く。
・この後、黒10まで黒は外勢を作って十分。
※ただし、この厚みを作った以上、白Aの打ち込みは許してはいけない。
【4図】(取り方)
・白1の打ち込みを許さないということは、白が生きを図っても、全部取るということ。
・黒2のサガリから黒4、6で外へは出さない。
・白7には黒8で隅を防ぐ。
・以下、黒22まで取り方を確認してほしい。
【第1譜(1-5)】白のトビ
・白Aの打ち込みでなく、1、3のトビで守った時は、黒も各々2、4と受けておいて、お互い様という所。
・ただし、黒2や4を打ったからには、白Aや5の打ち込みを楽々生かすような勝手を許してはいけない。
【第2譜(1-13)】白を捕獲
・黒1とコスミツケて、白のサバキを封じる。
※白6で7なら黒6で、白を隅に小さく生かして、黒十分。
・白8に黒9のオキが機敏。
※これで11は次図のようにコウとなる。
・黒13まで、白には二眼を作る広さはなく、脱出も不可能。
【1図】(白コウねばり)
・三角印の白のハネに、黒1とすぐオサえると、白2と急所にカケツがれる。
・黒3とアテても、白4とコウにがんばってくる。
※コウ材は白の方が多い。
※だから、2の点が双方の急所で、死んでいる石をコウにしては、黒いけない。
【2図】(打ち込み)
・三角印の白とトンだとき、黒aでなく、1と打ち込むのは、いかがなものか。
・答えは、定石どおり、黒13までとなったとしても、中で生きても閉じ込められて、黒最悪。
※白からいろいろと利きを見られ、他への影響も抱えている。
【3図】(利き)
・黒が中に閉じ込められると、白からいろいろと利きをみられる。
・たとえば、白1、3の形から、上方では白5、7が利くので、白9、11と安々と隅に入られてしまう。
※また、白aも利くので、左下隅も入られ易い形。
【4図】(切りからの戦い)
・前図黒13では、せめて1の切りから戦いを起こさないと、黒の五分の進行は期待できない。
・白2のノゾキに、構わず黒3とノビて戦う。
※隅は白に譲るほかない。
・黒9に……
【5図】(五分の戦い)
・白も1と一子を逃げるが、逃げ合いながら、上方を白に譲り、黒は10と下方につながる。
・しかし、封鎖した白は案外と強く、白11とツケ、13のフクラミから白17まで、コウ争いが始まる。これで五分の進行。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、159頁~167頁)
【第1譜】(1-11)取って勝つ
●著者は置碁では白石を囲んで外勢を取る打ち方を勧めている。
※勢力圏に侵入した白をさらに攻めるのであるが、白にすべて生きられては勝てない。
勝つためには取らねばならない石がある。
序盤から進めてみよう。
【第2譜】(1-11)両ケイマガカリ
※白のケイマガカリに、黒は3か所で一間に受けたが、左下隅に両ケイマガカリが生じた。
・黒1のコスミから黒11のケイマまでの簡明策で十分。
【第3譜】(1-8)白を囲む
※左方の黒がこれだけ厚くなると、右下隅の白をなんとかしなければならない。
・白1とスベリ、3と構えるぐらいだろう。
※黒は外から白を囲むように打つ。
・黒4のケイマはその基本。
・白5から黒8まで、左方が固まる。
【第4譜】(1-12)中央に勢力
・次に白1と上辺に打ち込んだが、ここでも黒2と上からツケて、白を封鎖しにいくことを忘れないでほしい。
・白11の後手生きに、黒12と中央の大勢力の構築に向かう。
【第5譜】(1-10)中央侵入
・白1、黒2と替わると、中央の黒地が大きくなりそうなので、白3、黒4のあと、白は侵入を図る。
・黒6、8は必要。
※ケイマと一間を使い、囲む。
・黒10をA(9, 十一)のケイマなら、次図のように簡単に取れていた。
【1図】(ケイマ)
・三角印の白の時、黒1とケイマに打てば、白に眼形がなく、話は簡単だった。
・黒9は白の目を取る急所。
※石を取る時は、一着で結果が一転する。
囲んだ石はねらって、取るための読みの力をつけてほしい。
【第6譜】(1-15)勝負所
・白は1から生きを図る。
・以下、黒14にここを手抜きして、白15と三々に回った。
※黒にとっては、ここからが問題。
実戦では、白15の大きな所に回られたうえに、中央の白を取りそこねてしまった。
≪棋譜≫172頁、第7譜
【第7譜】(1-12)認識
・囲んだ白石のどれかを取らないと勝てないという認識が黒に無いと、黒1から5のあと、黒7から11と地を囲いにいった。
・白も12と守り、このままヨセ合うと、白勝ち。
※実はこの後、黒から中央か下辺の白を取る手がある。
≪棋譜≫172頁、第8譜
【第8譜】(1-10)ねらい
・黒が白の下辺や中央へのねらいをもって、1から3と進めた時、白は4の悪手を打ってしまった。
※いよいよ黒が白を取りに出る時である。
どちらか好きな方を取ればよい。そうすれば黒の勝ち。
≪棋譜≫173頁、2図
【2図】(中央の白を取る方法)
※以下にみる実戦の進行でも、白に生きはないが、ここでは読みの勉強のため、もう一つの手順を示す。
・白4までは実戦と同じであるが、黒5のホウリ込みの手順もある。
・白地を狭める手筋で、黒9まで白は一眼。
≪棋譜≫173頁、3図
【3図】(下辺白を取る方法1)
※中央への攻めとは別に、下辺の白に目を向けるのもある。
黒先手なら下辺の白石は取れる。
・黒1以下は中手で取る方法。
・黒1のハサミツケは急所で、黒11のサガリまで、白は一眼の死に形。
※応用の利く方法である。
【4図】(下辺白を取る方法2)
・黒1が急所であることは、前図と同じ。
・白2には黒3とアテ込んで、ワタリをみる。
・黒5の切りからシボリ形にもっていき、この後どう打っても、白に生きはない。
※詰碁を別に勉強するより、実戦で急所を覚えてほしい。
【第9譜】(1-10)実戦の進行
・まず黒1の白のスペースを狭めた。
・黒3は殺しの急所。
・続いて、黒5、7に中手をねらう。
※黒5あるいは9で10の点にホウリ込めば殺せた。
・黒9ではセキになり、さらに下辺も生きられ、黒負けになった。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、168頁~174頁)
第28節 白の選択(183頁~188頁)
〇白の応手A、B
【第1譜】白の応手A、B
・白のケイマガカリに、黒は全て一間に受け、黒8と攻めの態勢を作った時、白の応手としては、Aの一間トビまたはBの守りがよく打たれる。
・白のAとBについて、黒の立場から黒が攻め続けるための打ち方をみていこう。
【第2譜】(1)三角印の白への打ち方
・前譜の白A、三角印の白の局面では、右下の石数は3対2で黒が少ない。
・すぐにケイマで黒AまたはBと攻めるのは、黒にも切断が残り、後の戦いが不利になる。
・まず黒1とコスみ、次に黒CまたはDのケイマを見合いにする。
【第3譜】(1-8)上方への攻め
・白が1と下方を守れば、黒はただちに上方の三角印の白の二子への攻めに回る。
・黒2を利かし、白を重くしてから、4のケイマ。
・黒8までピッタリと白を囲むと、白は生きる守りの手が必要になる。
【第4譜】(1-14)タイミング
・白1と守った時、ここは黒2と上辺の三角印の白の一子の攻めに転戦するタイミング。
・攻めの常套手段、黒2のコスミツケから始める。
・黒4、6と外から一間で攻め、14とケイマでアオる。
※黒の攻めは絶好調。
【第1譜】(1-8)下方への攻め
・白が1と上方に着手すれば、黒は白の守らなかった下辺の白一子へ、2とケイマでカケ。
・続いて、黒4のケイマ以下、8と簡単に外勢を作れる。
・この後、白A(5, 十五)のような手は次図に示すように心配ない。
【1図】(ハザマは心配無用・1)
・白1のハザマに、黒は上方を大切にしたいので、2とツギ。
・辺の方は切りを入れた白5を盤側に押しつけるように打てば、何とかなるもの。
・この場合も、黒12まで白を取れる。
※ハザマには手は無いということ。
【第1譜】(1-9)白Bへの打ち方
・最初の局面で、白B、三角印の白なら三角印の黒の二子への直接の攻めではないので、黒
1で四角印の白の攻めに回る。
・白2に黒3の一間トビが大切。
・黒5と白6を決める。
・黒7に白8を待って、黒9とつながれば、黒成功。
※白Aは恐くない。
【1図】(ハザマは心配無用・2)
・白1のハザマには、重要な方、この場合は上方の白の攻めをみているので、黒2とツギ。
・白3、5の出切りには、以下黒8のツケを用意。
・白9には、黒10と切り込み、白13ツギにも黒18まで、白は助かる余地がない。
【第2譜】(1-7)ボウシ対策
・前譜に続く、白1のボウシには、彼我の力関係から見て、黒2とケイマで戦えるところ。
・白3の動き出しには、黒4とオサえ、白5の切り違いに黒6とアテ。
※黒の次の一手はかなりのヨミを必要とするだろう。
【第3譜】(1-13)突き出し
・ここは、黒1と突き出すのが正解。
・白2と切られても黒3と逃げて、黒は何も取られないので、黒1が成立する。
・以下、黒13と一子を抜いたところで、この戦いにそろそろ黒の勝ちが見えてくることだろう。
【第4譜】(1-16)白13ツグ(10)先手決め
・白1には黒2、4と先手で決めてから、黒6とオサエ。
※戦いにおいては、先手を探して、それを有効に利用してほしい。
・黒10のホウリ込み、黒12のアテも絶対先手。
・黒16まで、大きな白が取れた。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、183頁~188頁)
第32節 互先・攻めへの道程(206頁~210頁)
〇二間高ガカリ
・本書のテーマは、置き石必勝法で、互先必勝法ではない。
互先必勝法というのは、現段階では存在しないはずで、もしあれば著者も知りたいものだという。
・置碁必勝のために、著者が勧める方法は、「ケイマと一間で白石を囲んで取る」ということ。
その基本的精神は、「攻め」という一語に尽きる。
これを実践するためには、基本的に石は高く打ってほしい。
・本局は、著者の指導碁。
黒はアマチュア高段者。
・置き石のない場合には、互先必勝法なるものはないが、著者の置碁必勝法における基本的な考え方を応用することができる。
黒でも白でも、序盤からできるだけ、これを応用できるように心掛けて、打ち進めていくのである。
・互先では、お互いに一手ごとに均衡を保って打ち進めていくので、すぐには一方的な攻めのパターンはできない。
【第1譜】(1-13)二間高ガカリ
・第1譜、黒3の小目に白8の二間高ガカリから、黒13までほぼ定石どおりの進行。
※ここでは、まだ「囲み形」も「囲まれ形」の気配も現れていない。
【第2譜】(1-15)大場
・白1から9と、上辺の形を決めたあと、黒は白の上方の勢力を考慮して、10とこの隅を固めるのが、大切。
・白11から白15まで、大場を打ち合った。
※この段階では、まだ形勢にも大差ない。
黒の次の一手が重要。
【第3譜】(1-13)白10(1) 打ち込み
・実戦では、黒1と打ち込み。
・そして、黒3とハネ込み、白4と下から受け、6と黒一子をカカえた。
・以下、黒11と白一子をシチョウに取れば黒よしというのが定石。
・白12に黒13では、A(17, 十)と受ける手があった。
【第4譜】(1-10)競り合い
・三角印の白に三角印の黒とすぐ抜いてくれたので、白は1と黒を分断。
・黒2の攻めを兼ねた守りと、白3のトビを交換したあと、黒4のトビ出しは仕方のないところ。
・白5以下黒10まで、連絡と分断の絡んだ競り合い。
【第5譜】(1-11)黒を分断
・白1の利かしに黒2と反発したが、白3とハズして、目標は黒の分断。
・以下、黒8と上辺は黒が少し得をしたが、その間に白7から9を利かして、11と、黒の上下の連絡を絶った。
※黒五子は逃げなければならない。
【第6譜】(1-7)白の攻め
・黒1から逃げるが、白2から4、6とケイマと一間で攻める要領は、置き石の有無を問わない。
※黒は一手でも手を抜くと取られてしまう。
・黒7と弱石を逃げている間に、三角印の黒の六子が大きく白の囲みに包まれてしまった。
【第7譜】(1-15)大儲け
※白は「取れない時は他で大儲けをする」という打ち方をする。
・ここでは、まず白1の急所から9まで、攻めの効果で下辺と隅が固まった。
・実戦では、白11に黒12と守ったため、コウになり、コウ材不足で、黒の投了となった。
【1図】(皮肉)
〇碁とは皮肉なもの。生きようとすると死に、攻めると生きるもの。
すなわち、自らの危機をシノぐために、相手の攻めに出るのである。
・ここでは、三角印の白(12, 十四)の時、黒1から5を決め、黒7から13と攻めて、シノぐ例を示した。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、206頁~210頁)
新垣武氏は、2子局(1-63)の棋譜を掲げて、左下隅の死活について、次のような実戦死活問題を出している。
≪棋譜≫2子局(1-63)、208頁
【基本図45~48】
【基本図45】(1-28)
・2子局
・互先、2子局、3子局は、囲めるのは50手以降が多い。
・囲碁の上達の基本は、囲んだ石を取りに行くこと。
失敗をおそれて取りに行かないのでは、上達は望めない。
【基本図46】(29-49)
・三々で生きるのは、小さい生き方。
・白39から48までが、この形での大きい生き方。
・但し、白49はよくばり。
※A(16, 二)とツイで、しっかり生きるところ。
黒取りに行く。
(新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』日本放送出版協会、2000年、200頁)
【基本図47】(50-57)
・こんどは白の番。
・黒54では、A(17, 十八)で生きだった。
※この形も大きくコウが正解。
(睡眠薬の代わりに、ゆっくり反復トレーニングしてほしい。)
(新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』日本放送出版協会、2000年、204頁)
【基本図48】(57-63)
・黒の地の中に、57と入ってきた。
・三角印の黒(6, 十五)がいいところにある。
※これがないと、白を取りにいけない。
実戦でこの形は活用してほしいという。
≪棋譜≫問題1、209頁
【問題1】黒番
・取り方四通り。皆さんの取り方の好みはどちらでしょう。
≪棋譜≫問題1の解答の一つ、210頁
<問題1の解答>4通りの一つ。
【正解図1】
・まず1とスベリ、白2に黒3、白4に黒5まで。
≪棋譜≫問題3、209頁
【問題3】黒番
・実戦ではこの形が多い。
これは殺す方法は一つ。なんとかクリアしてほしい。三角印の白が問題。
≪棋譜≫問題3の正解図、211頁
<問題3の解答>
【正解図】
・黒1が正しい。
・白2は黒3以下、ゆるめずに一歩一歩の9まで死。
≪棋譜≫問題3の失敗図、211頁
【失敗図】
・黒1は失敗。
・白2が三角印の白の石とツナガるか生きるための好手。
・a、bが見合い。
(新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』日本放送出版協会、2000年、196頁~211頁)
(2024年9月22日投稿)
【はじめに】
今回のブログでも、引き続き、囲碁の攻めについて、次の著作を参考に、考えてみたい。
〇新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]
この著作の特徴は、とりわけ、「第25節 石の取り方」に象徴されるように、石の取り方を攻めの一つとして積極的に説いている点にある。
例えば、「第25節 石の取り方」において、著者は置碁では白石を囲んで外勢を取る打ち方を勧めている。
※勢力圏に侵入した白をさらに攻めるのであるが、白にすべて生きられては勝てない。
勝つためには取らねばならない石がある(168頁)という。
【新垣武(あらがき たけし、1956-2022)氏のプロフィール】
・1956年生まれ、沖縄県出身。坂田栄男二十三世本因坊門下。
・1971年入段、1973年二段、1974年三段、1976年四段、1977年五段、1982年六段、
1985年七段、1989年八段、1994年九段。2020年引退。2022年、66歳で死去。
<著書>
・新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』NHK出版、2000年
【新垣武『攻めは我にあり』日本棋院はこちらから】
〇新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]
【目次】
まえがき
第1節 行く手を止める
第2節 囲んで取る
第3節 辺の星
第4節 脱出
第5節 低いワタリ
第6節 両ガカリ・ケイマと一間
第7節 地を与えて石を取る
第8節 ケイマ実験
第9節 黒快勝の譜
第10節 攻め優先
第11節 二間高バサミ
第12節 私のお勧め・ケイマ
第13節 私のお勧め・一間トビ
第14節 天王山・一間トビ
第15節 定石の疑問
第16節 若手の挑戦
第17節 守りの七子局
第18節 三々研究モデル
第19節 両ガカリ・ケイマと一間
第20節 両ケイマガカリ
第21節 二つの道
第22節 囲んで取る
第23節 大々ゲイマ
第24節 守りから攻めへ
第25節 石の取り方
第26節 五子局の卒業
第27節 一間バサミ
第28節 白の選択
第29節 両ケイマガカリ補足
第30節 互先・一間とケイマ
第31節 互先・目ハズシ
第32節 互先・攻めへの道程
第33節 アマ五段・四子局
□コラム
ある思い・パートⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
あとがき
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・まえがき
・第5節 低いワタリ~五子局
・第7節 地を与えて石を取る~互先の実戦例
・第10節 攻め優先~五子局
・第19節 両ガカリ・ケイマと一間
・第20節 両ケイマガカリ
・第24節 守りから攻めへ
・第25節 石の取り方~四子局
・第28節 白の選択
・第32節 互先・攻めへの道程~二間高ガカリ
・【補足】実戦死活(二子局より)~新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』より
まえがき
・著者は、一間とケイマで攻めることを勧めている。
・置き石は多いほど攻めに持ち込むのが容易であるが、五子局ぐらいからはハサミ、打ち込みという互先実戦でも役立つ打ち方をしないと勝てない。
・従って、実戦例は四、五子局を中心として、互先にも通じる一間とケイマによる攻めの基本を、解説するように努めたという。
・本書を通じて、「石を攻めて取る喜び」を味わってほしいとする。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、3頁~4頁)
5低いワタリ(26頁~30頁)
第5節 低いワタリ
第1譜~第6譜(五子局)
【第1譜】攻めを保留、大場へ
・ここでも隅のケイマガカリに、黒はすべて一間に受ける。
・白5には黒も6と大場を占める。
・白9のヒラキには、すぐA(9, 十六)と打ち込まず、黒10と上辺の星を占めた。
・白B(6, 三)の時、ハサミになっているので、これも攻めを含んだ打ち方である。
【第2譜】攻めの転機
・白1のケイマガカリに、すでに三角印の黒(10, 四)のハサミがあるので、黒2とコスミツケてから、4と一間に受ける。
・白5に黒A(6, 六)と打っても、すぐには封鎖できないので、いったんここは保留し、黒6に回った。
※これも立派な攻めの戦法。
【第3譜】ノゾキのテクニック
・三角印の黒の打ち込みに、白1、3のトビ出しには、黒も2、4と中央へトビ出す。
・白7のノゾキには、黒8、10と逆ノゾキでツギを省略して、黒12のオサエに回る。
・白13と低いワタリとなっては、黒の大成功。
【第5譜】ツケオサエで弱石補強
・下辺の白もワタリ、上辺も三角印の白と手を入れたので、白の弱石は一応無くなった。
・この辺で黒も右下隅の弱石を補強する。
このためには、黒1、3のツケオサエがしっかりしている。
・黒9まで、これで心配ない。
【2図】白の三々の生死
・黒が右下隅を整形した後、白はこの隅で生きることはできない。
一例として、白1から黒14まで白死に。
・左上隅は、白1から9までのように、白は小さく生きることができる。
しかし、黒は10と中央の大場に回れば黒成功。
【第6譜】切り離し
・白が左辺の黒の一等地に、1と打ち込んできた時は、黒2と鉄柱にサガって、左辺でのサバキを封じる。
・白3、5と隅に生きを求めてくれば、黒6と白1の一子を切り離して、十分。
・白13を省くと、黒A(2, 一)で白死。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、26頁~30頁)
第7節 地を与えて石を取る(36頁~39頁)
第7節 地を与えて石を取る
【総譜】
【第1譜】(1-18)穏やかな序盤
〇互先の実戦例。
・序盤は、穏やかで、黒7から白12までは一つの定石であるし、黒13から15も一つの型。
・黒17のカカリに普通は白Aくらいだろうが、白18はいっぱいにがんばった着手。
※このあと、黒が地を稼ぎ、白が攻める展開になる。
【第2譜】(1-17)実利
・白8の時、黒9と下辺に地を作ろうとしたのが問題だった。
・白10から14に対し、黒11から15と、さらに守り続けなければならなくなる。
※これにより白に外勢ができ、当然、このあと白は二つの黒に対して、攻撃を始める。
【第3譜】(1―9)シボリ筋
・白1とハザマを衝くのが、常用の攻め方。
・黒のサバキとして、黒2とカケる手を選んだ。
・そうなれば白3の出から、ほぼ一本道の進行で、白9の抜きとなる。
※黒の中央への進出が止まりつつある。
【第4譜】(1-14)黒を封鎖
・黒1とワタらなければならず、その間に白2、4と黒を封鎖した。
・黒5のアテから、7以降11までを利かして、後手でも黒13のコスミはこの黒が生きるために必要な手。
・白14に回られ、外側の黒も薄い。
【第5譜】(1-24)代償
・黒1と左下方の黒の補強。
・白2には、黒3が省けない。
・黒5は24だったか。
・黒9、11と白一子を取らないと、白2を助ける白12の手が先手。
※その分、必然的に外の白が強くなり、それに隣接する黒の大石が危険になる。
【1図】(生死の急所)
・黒a、白b、黒cの切り取りを打たないと、白dと打たれ、さらに手を抜くと、白1以下で左辺の黒に生きがない。
かといって、前譜での切り取りは外の黒を生きづらくし、囲まれた代償を払うことになる。
【第6譜】(大石死ぬ)
・黒は1から逃げるが、白16のホリコミまで、黒の大石が取られた。
※その第一の原因は、黒が下辺で地を稼いだこと。
その結果、白石が外側にきて、戦いが白の有利に進んだのである。
地を稼げばよいというものではない。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、36頁~39頁)
第10節 攻め優先~五子局
【総譜】(1-77)五子局
<序盤の工夫>
【第1譜】(1-12)
〇本局は級位者の指導碁実戦。
・黒は2カ所で一間受けの後、白7に黒8と二間に受けた。
珍しい手であるが、工夫が見られる。
・その後、白11と黒の切断をみた時、構わず黒12とケイマで攻めに回ったのは、一法。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、50頁)
【第2譜】(1-8)捨て石
・白1から3と隅の黒を分断するが、黒4とサガり、これを捨てる。
・その代償に黒は6から8とケイマで、白を攻める展開になった。
※石を捨てることを覚えれば、もう有段者。
なお、白1のとき黒2は省けない。省くと―
【1図】(ノゾキに注意)
〇著者はケイマの攻めを、再三勧めているが、
・白1のノゾキにツギを省略して、黒2とケイマの攻めに回るのはいけない。
・白3と白がつながる上に、黒がバラバラになる。
※ノゾキやアタリの時は注意せよ。
【第3譜】(1-14)生きか脱出か
・白1から生きを図る。
・黒6を先手で決めるのを忘れないように(次図参照)。
・白13の時、黒14と目を取った。
※生かさないという意味であるが、黒14ではAと封鎖して、白の生きを催促するのも一法だった。
【2図】(先手最優先)
〇攻めは先手から打つことを肝に銘じてほしい。
・黒1、3と後手から始めると、白4、6で簡単に生きられてしまう。
※前譜の実戦が正着。
囲んだ石を取る時は、先手で相手の地を狭めていくのが原則。
【第4譜】(1-16)新たな囲み
・黒は4とケイマで、囲みの再構築。
・黒16まで、ついに封鎖。
※黒2で3に切るのは、次図に見るとおり、無理。
※黒10で11から切る4図(次のページ)の厳しい打ち方もある。
※また、黒14で15にツグ手も成立(5図、6図)
【3図】(攻守逆転)
・三角印の白のとき、黒1と切るのは、白2から10と黒一子を制し、立場が逆転してしまう。
※下方の黒五子がまとめて攻められる展開になる。
・ケイマは攻めに適しているが、白6から10のように、アタリがあると囲みが破ける。
【4図】(攻めは切りにあり)
・三角印の白のとき、黒1から3と出切るのも厳しく、黒23までが想定される。
➡左方の白を殺した。自信ができたら実行してほしい。
・途中白12に黒13と控えたが、22の点にオサえると、白を強くして三々に入られる。
【5図】(手筋)
・三角印の白のアテに、黒1とツグ手もあるが、白の手筋に注意せよ。
・続いて、白は2のハネコミから4とアテ。
・このあと、白6から8となっては、白生き。
・黒15、17は次図を防いで、すぐ決めてしまってほしい。
【6図】(ハサミツケ)
・黒2のサガリを決めておかないと、白1のハサミツケが成立。
・勢い黒2のサガリには、白9までの後、黒10に白11とオサえて、コウになる。
※黒はここがコウになってはたまらない。
黒2で3と後退するようでは大損害。
【第5譜】(1-13)大々ゲイマ
・白1、黒2を交換の後、白3と大々ゲイマ。
・黒は喜んで4から10で簡明かつ十分。
※黒4を7(次図)に打つのも一法だが、この場合は後の打ち方が難しく、問題。
・また、白は11、13のハネツギが必要(8図)
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、50頁~57頁)
第19節 両ガカリ・ケイマと一間(117頁~126頁)
第19節 両ガカリ・ケイマと一間
【第1譜】(1-3)
☆悩み
・皆さんの悩みの一つは、定石の選び方ではないかと思う。
●下譜は四子局。
・白1のケイマガカリにすぐ黒2とハサみ、白3と一間に高く両ガカリしてきた。
・このあと、どのような定石を選ぶかである。
【第2譜】(1-11)ツケノビの一手
・黒1とツケる一手と覚えてほしい。
※この定石選択で黒がよい。
・白は2とハネ、黒3のノビに白4のノビ。
※ツケノビ定石の定型。
・三角印の白が一間と高いので、黒5の二丁ツギ(タケフ)の守りは、この一手。
・次に黒Aのオサエが地と根拠に関して大きく、白は6とケイマにスベって、それを防ぐとともに、自らの根拠を得る。
・このとき、黒7、9とオサえつけるのが、この定石の眼目で、先に三角印の黒とハサんだ石と関連して、強力な厚みを作る。
・このあと、白10に黒11と展開するぐらいで、黒十分。
※途中、白8で9に二段バネするのは無理手。
しっかりとがめなければならない。(4図以降参照のこと)
※定石は双方五分の分かれのはずであるが、このようにどちらか、この場合は白の、悪い進行を定石とした例は他にもたくさんあるという。
【4図】(シボリ形)
・第2譜の黒7、つまり三角印の黒とマゲたあと、白1の二段バネは無理手。
・これをとがめるには、黒2、4のアテから6とカケる形に持っていく。
・白9の切りが入っても、構わない。
・黒10とアテて……
【5図】(鉄壁)白5ツグ(1の左)
・白1の抜きに黒2とノビて、二子にして捨てる手筋で、4とシボリ。
・さらに黒6の鼻ヅケが打てれば満点。
・以下、黒10とカケて、白が外に出るのを阻む。
・白13は低位であり、黒の外勢は鉄壁。
・黒16で勝負あり。
【第1譜】(1-6)押しあげ対策
・黒がツケノび、三角印の白、黒のあと、白A(18, 三)でなく、1と押しあげた時は、黒2と隅をオサえる。
・白3には黒4、白5には黒5とケイマして十分。
※黒4の時、白B(14, 五)からの出切りは心配ない。
【第2譜】(1-6)ケイマ攻め発見
・白1とカカリ。
※この時、黒は3に受けては落第。
・白を攻めるには、黒2が肝要。
・白3に黒4、白5を交換して、次に黒6のケイマ攻めが強烈。
※これを発見できれば、相当な実力。
【第3譜】(1-15)ケイマの威力
・黒1とカケた前譜に続き、黒の外からの圧迫に白2から6はやむを得ない。
・さらに黒7と外からのすばらしいケイマ。
・白8、10と出ても、黒9、11と切り離す。
・この後、白12と動いても、黒13、15で取れている。
【第4譜】(1-15)新展開
・白1、3と逃げても、黒2、4とゆるみシチョウで取れている。
・次に白は7、9の切りから戦うが、黒は14までを先手で決めることができる。
※この後、黒が要石の三角印の黒を引っ張り出して、右辺での戦いが始まる。
【第5譜】(1-6)要石
・黒1と要石の三角印の黒を引っ張り出すと、白は大石を生きなければならない。
・そのためには、白2から6を打たねばならないので、自然と周りの黒が丈夫になる。
・この後、黒は右下隅の弱点をAと補強して、上辺の白の攻めをみる。
【第6譜】(1-18)攻めの準備
・まず黒1と補強し、白2には黒3と白一子をゲタで取る。
・白4には外回りのボウシのケイマで、黒5と封鎖して、攻めの準備は完了。
・右下隅の折衝の後、上辺黒11以下に、白14から18と一応生きた。
【1図】(読み切り)
・上辺の白は一応生き形であるが、黒3がくると、黒5と打ち込みに白6が省けないので、白14までコウになる。
※長い手数であるが、囲んだら失敗してもいいから取りにいってほしいという。
【第7譜】(1-18)コウ立て準備
・前図の手順で、三角印の黒と白を決めたあと、コウ立てを読み切れないので、すぐ黒9とはいかず1と強化した。
・白2から8まで、この白は黒に二手打たれると死にそう。
※黒に立派なコウ立てができた。
・黒9からコウ決行。
【第8譜】(1-25)コウ争い 白4コウ取る(1の右)黒7〃白10〃黒13〃白16〃
※コウ立て十分な状況を作って、コウ争いを始めると、楽しいこと請け合いという。
・左辺の白にコウ材はあるが、とりあえず中央の白に黒5以下、コウ立てした。
・黒17に白は18とコウを解消し、戦いが下辺に移る。
【第9譜】(1-12)コウ移し 白9コウ取る(1)
・白は上辺のコウを解消したかわりに、下辺にコウが移った。
※今後のコウも白は負けると大変。
黒は負けても致命傷にならない。
・黒は左辺の白に10、12と連打できた。
※本局はコウで一局を制した例である。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、117頁~126頁)
第20節 両ケイマガカリ(133頁~142頁)
第20節 両ケイマガカリ
〇両ケイマガカリ
【第1譜】(1-8)簡明・コスミ
・白1のケイマガカリに黒2とハサみ、白3と両ケイマガカリされたときの打ち方。
・この場合、黒4のコスミから、以下、黒8の一間トビが簡明かつお勧め。
【第2譜】(1-10)ケイマ
〇第1譜の続き
・白1とケイマし、黒2、4に白は手を省けないだろう。
・白7、9の動き出しに、黒8、10とケイマで封鎖。
※白は中で生きなければならない。
攻めのケイマの黒6、8、10を身に付けてほしい。
【第3譜】(1-7)後手生き
・白は中で生きるために、1、3のツケヒキを打たなければならない。
・黒は2、4と受けるだけで、何も難しいことはない。
※すっかり外勢が強固になった。
・白は7を省けないので、後手生き。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、133頁、140頁~142頁)
第24節 守りから攻めへ
【総譜】
<守りの布石>
【第1譜(1-6)】守りの布石
・著者は特に黒には積極的な攻めを勧めているが、黒がハサミを打たず積極的に攻めないと、下譜から始まって第2譜までのような布石がよくできる。
うっかり攻めを忘れて、こうなったという場合もあるだろう。
・双方守っているので、お互い急な攻めはないが、何とか今からでも攻め形に持っていってもらいたい。
【第2譜(1-6)】攻めの考え方
・そのためには、白からAやBに打たれた時の黒の考え方を心得ておかなければならない。
・逆に黒からCの打ち込みは攻めの立場からどうなのか、また黒からDのツケは……。
どれも実戦で頻繁に現れる形を採り上げたという。
【第3譜(1-9)】打ち込み
・白からの1はよくある打ち込みの形である。
・黒2とツケて中へトビ出す手を妨げ、白9まで定石の進行。
※ここで黒にとって重要なことは、黒Aと付き合わないこと。
先手を取って要点に回ってほしい。
【第4譜(1-5)】ツケ
・上辺で先手を取った黒は、要点といえば黒1のツケなどがある。
※黒が先手で外勢を築くのに有効。
・黒5のあと、白にはAとツグ手と、Bとカカえる手がある。
☆それぞれについて、その後の進行をみておこう。
【1図】(白ツギ)
・白が1のツギの時は、黒2のカカエ。
・白3のアテのワタリに、黒4と抜いて外勢を得る。
・白はしっかりワタるために、もう一手白5が必要。
・この後、右辺に呼応して、黒6、8と外から打って、中央に大勢力を築き、満足できる。
【第5譜(1-4)】白カカエ
・白2のツギでなく、1とカカえた時は、黒2と切りアテて、白3の抜きになる。
・次に、黒はコウを恐れず、4とアテる一手と覚えよ。
※白はコウに負けると、ひどい形になるので、ここではツギが普通。
【2図】(コウ材作り)
・もしも白がコウを始めるには、まずコウ材作りをしなければならない。
・そのためには、白1、3と切り違うなどの準備をし、白5のアテからコウが始まる。
※白はコウに勝つため、右上隅は損をすることになる。
【3図】(コウ争い)
・まず黒1の抜きは当然。
・白は2以下ここに用意したコウ立てを使う。
・そして白16のコウ取りまでとなって、右上隅の黒地がすっかり固まった。
※コウ争いは続くが、たとえ黒はコウに負けてもよい。
【第6譜(1-10)】外勢
・コウを避けて、白1のツギなら、黒2と白一子をカカえ、白3に黒4と白一子を抜く。
・この後、黒10まで黒は外勢を作って十分。
※ただし、この厚みを作った以上、白Aの打ち込みは許してはいけない。
【4図】(取り方)
・白1の打ち込みを許さないということは、白が生きを図っても、全部取るということ。
・黒2のサガリから黒4、6で外へは出さない。
・白7には黒8で隅を防ぐ。
・以下、黒22まで取り方を確認してほしい。
【第1譜(1-5)】白のトビ
・白Aの打ち込みでなく、1、3のトビで守った時は、黒も各々2、4と受けておいて、お互い様という所。
・ただし、黒2や4を打ったからには、白Aや5の打ち込みを楽々生かすような勝手を許してはいけない。
【第2譜(1-13)】白を捕獲
・黒1とコスミツケて、白のサバキを封じる。
※白6で7なら黒6で、白を隅に小さく生かして、黒十分。
・白8に黒9のオキが機敏。
※これで11は次図のようにコウとなる。
・黒13まで、白には二眼を作る広さはなく、脱出も不可能。
【1図】(白コウねばり)
・三角印の白のハネに、黒1とすぐオサえると、白2と急所にカケツがれる。
・黒3とアテても、白4とコウにがんばってくる。
※コウ材は白の方が多い。
※だから、2の点が双方の急所で、死んでいる石をコウにしては、黒いけない。
【2図】(打ち込み)
・三角印の白とトンだとき、黒aでなく、1と打ち込むのは、いかがなものか。
・答えは、定石どおり、黒13までとなったとしても、中で生きても閉じ込められて、黒最悪。
※白からいろいろと利きを見られ、他への影響も抱えている。
【3図】(利き)
・黒が中に閉じ込められると、白からいろいろと利きをみられる。
・たとえば、白1、3の形から、上方では白5、7が利くので、白9、11と安々と隅に入られてしまう。
※また、白aも利くので、左下隅も入られ易い形。
【4図】(切りからの戦い)
・前図黒13では、せめて1の切りから戦いを起こさないと、黒の五分の進行は期待できない。
・白2のノゾキに、構わず黒3とノビて戦う。
※隅は白に譲るほかない。
・黒9に……
【5図】(五分の戦い)
・白も1と一子を逃げるが、逃げ合いながら、上方を白に譲り、黒は10と下方につながる。
・しかし、封鎖した白は案外と強く、白11とツケ、13のフクラミから白17まで、コウ争いが始まる。これで五分の進行。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、159頁~167頁)
第25節 石の取り方~四子局
【第1譜】(1-11)取って勝つ
●著者は置碁では白石を囲んで外勢を取る打ち方を勧めている。
※勢力圏に侵入した白をさらに攻めるのであるが、白にすべて生きられては勝てない。
勝つためには取らねばならない石がある。
序盤から進めてみよう。
【第2譜】(1-11)両ケイマガカリ
※白のケイマガカリに、黒は3か所で一間に受けたが、左下隅に両ケイマガカリが生じた。
・黒1のコスミから黒11のケイマまでの簡明策で十分。
【第3譜】(1-8)白を囲む
※左方の黒がこれだけ厚くなると、右下隅の白をなんとかしなければならない。
・白1とスベリ、3と構えるぐらいだろう。
※黒は外から白を囲むように打つ。
・黒4のケイマはその基本。
・白5から黒8まで、左方が固まる。
【第4譜】(1-12)中央に勢力
・次に白1と上辺に打ち込んだが、ここでも黒2と上からツケて、白を封鎖しにいくことを忘れないでほしい。
・白11の後手生きに、黒12と中央の大勢力の構築に向かう。
【第5譜】(1-10)中央侵入
・白1、黒2と替わると、中央の黒地が大きくなりそうなので、白3、黒4のあと、白は侵入を図る。
・黒6、8は必要。
※ケイマと一間を使い、囲む。
・黒10をA(9, 十一)のケイマなら、次図のように簡単に取れていた。
【1図】(ケイマ)
・三角印の白の時、黒1とケイマに打てば、白に眼形がなく、話は簡単だった。
・黒9は白の目を取る急所。
※石を取る時は、一着で結果が一転する。
囲んだ石はねらって、取るための読みの力をつけてほしい。
【第6譜】(1-15)勝負所
・白は1から生きを図る。
・以下、黒14にここを手抜きして、白15と三々に回った。
※黒にとっては、ここからが問題。
実戦では、白15の大きな所に回られたうえに、中央の白を取りそこねてしまった。
≪棋譜≫172頁、第7譜
【第7譜】(1-12)認識
・囲んだ白石のどれかを取らないと勝てないという認識が黒に無いと、黒1から5のあと、黒7から11と地を囲いにいった。
・白も12と守り、このままヨセ合うと、白勝ち。
※実はこの後、黒から中央か下辺の白を取る手がある。
≪棋譜≫172頁、第8譜
【第8譜】(1-10)ねらい
・黒が白の下辺や中央へのねらいをもって、1から3と進めた時、白は4の悪手を打ってしまった。
※いよいよ黒が白を取りに出る時である。
どちらか好きな方を取ればよい。そうすれば黒の勝ち。
≪棋譜≫173頁、2図
【2図】(中央の白を取る方法)
※以下にみる実戦の進行でも、白に生きはないが、ここでは読みの勉強のため、もう一つの手順を示す。
・白4までは実戦と同じであるが、黒5のホウリ込みの手順もある。
・白地を狭める手筋で、黒9まで白は一眼。
≪棋譜≫173頁、3図
【3図】(下辺白を取る方法1)
※中央への攻めとは別に、下辺の白に目を向けるのもある。
黒先手なら下辺の白石は取れる。
・黒1以下は中手で取る方法。
・黒1のハサミツケは急所で、黒11のサガリまで、白は一眼の死に形。
※応用の利く方法である。
【4図】(下辺白を取る方法2)
・黒1が急所であることは、前図と同じ。
・白2には黒3とアテ込んで、ワタリをみる。
・黒5の切りからシボリ形にもっていき、この後どう打っても、白に生きはない。
※詰碁を別に勉強するより、実戦で急所を覚えてほしい。
【第9譜】(1-10)実戦の進行
・まず黒1の白のスペースを狭めた。
・黒3は殺しの急所。
・続いて、黒5、7に中手をねらう。
※黒5あるいは9で10の点にホウリ込めば殺せた。
・黒9ではセキになり、さらに下辺も生きられ、黒負けになった。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、168頁~174頁)
第28節 白の選択(183頁~188頁)
第28節 白の選択
〇白の応手A、B
【第1譜】白の応手A、B
・白のケイマガカリに、黒は全て一間に受け、黒8と攻めの態勢を作った時、白の応手としては、Aの一間トビまたはBの守りがよく打たれる。
・白のAとBについて、黒の立場から黒が攻め続けるための打ち方をみていこう。
【第2譜】(1)三角印の白への打ち方
・前譜の白A、三角印の白の局面では、右下の石数は3対2で黒が少ない。
・すぐにケイマで黒AまたはBと攻めるのは、黒にも切断が残り、後の戦いが不利になる。
・まず黒1とコスみ、次に黒CまたはDのケイマを見合いにする。
【第3譜】(1-8)上方への攻め
・白が1と下方を守れば、黒はただちに上方の三角印の白の二子への攻めに回る。
・黒2を利かし、白を重くしてから、4のケイマ。
・黒8までピッタリと白を囲むと、白は生きる守りの手が必要になる。
【第4譜】(1-14)タイミング
・白1と守った時、ここは黒2と上辺の三角印の白の一子の攻めに転戦するタイミング。
・攻めの常套手段、黒2のコスミツケから始める。
・黒4、6と外から一間で攻め、14とケイマでアオる。
※黒の攻めは絶好調。
【第1譜】(1-8)下方への攻め
・白が1と上方に着手すれば、黒は白の守らなかった下辺の白一子へ、2とケイマでカケ。
・続いて、黒4のケイマ以下、8と簡単に外勢を作れる。
・この後、白A(5, 十五)のような手は次図に示すように心配ない。
【1図】(ハザマは心配無用・1)
・白1のハザマに、黒は上方を大切にしたいので、2とツギ。
・辺の方は切りを入れた白5を盤側に押しつけるように打てば、何とかなるもの。
・この場合も、黒12まで白を取れる。
※ハザマには手は無いということ。
【第1譜】(1-9)白Bへの打ち方
・最初の局面で、白B、三角印の白なら三角印の黒の二子への直接の攻めではないので、黒
1で四角印の白の攻めに回る。
・白2に黒3の一間トビが大切。
・黒5と白6を決める。
・黒7に白8を待って、黒9とつながれば、黒成功。
※白Aは恐くない。
【1図】(ハザマは心配無用・2)
・白1のハザマには、重要な方、この場合は上方の白の攻めをみているので、黒2とツギ。
・白3、5の出切りには、以下黒8のツケを用意。
・白9には、黒10と切り込み、白13ツギにも黒18まで、白は助かる余地がない。
【第2譜】(1-7)ボウシ対策
・前譜に続く、白1のボウシには、彼我の力関係から見て、黒2とケイマで戦えるところ。
・白3の動き出しには、黒4とオサえ、白5の切り違いに黒6とアテ。
※黒の次の一手はかなりのヨミを必要とするだろう。
【第3譜】(1-13)突き出し
・ここは、黒1と突き出すのが正解。
・白2と切られても黒3と逃げて、黒は何も取られないので、黒1が成立する。
・以下、黒13と一子を抜いたところで、この戦いにそろそろ黒の勝ちが見えてくることだろう。
【第4譜】(1-16)白13ツグ(10)先手決め
・白1には黒2、4と先手で決めてから、黒6とオサエ。
※戦いにおいては、先手を探して、それを有効に利用してほしい。
・黒10のホウリ込み、黒12のアテも絶対先手。
・黒16まで、大きな白が取れた。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、183頁~188頁)
第32節 互先・攻めへの道程(206頁~210頁)
第32節 互先・攻めへの道程~二間高ガカリ
〇二間高ガカリ
・本書のテーマは、置き石必勝法で、互先必勝法ではない。
互先必勝法というのは、現段階では存在しないはずで、もしあれば著者も知りたいものだという。
・置碁必勝のために、著者が勧める方法は、「ケイマと一間で白石を囲んで取る」ということ。
その基本的精神は、「攻め」という一語に尽きる。
これを実践するためには、基本的に石は高く打ってほしい。
・本局は、著者の指導碁。
黒はアマチュア高段者。
・置き石のない場合には、互先必勝法なるものはないが、著者の置碁必勝法における基本的な考え方を応用することができる。
黒でも白でも、序盤からできるだけ、これを応用できるように心掛けて、打ち進めていくのである。
・互先では、お互いに一手ごとに均衡を保って打ち進めていくので、すぐには一方的な攻めのパターンはできない。
【第1譜】(1-13)二間高ガカリ
・第1譜、黒3の小目に白8の二間高ガカリから、黒13までほぼ定石どおりの進行。
※ここでは、まだ「囲み形」も「囲まれ形」の気配も現れていない。
【第2譜】(1-15)大場
・白1から9と、上辺の形を決めたあと、黒は白の上方の勢力を考慮して、10とこの隅を固めるのが、大切。
・白11から白15まで、大場を打ち合った。
※この段階では、まだ形勢にも大差ない。
黒の次の一手が重要。
【第3譜】(1-13)白10(1) 打ち込み
・実戦では、黒1と打ち込み。
・そして、黒3とハネ込み、白4と下から受け、6と黒一子をカカえた。
・以下、黒11と白一子をシチョウに取れば黒よしというのが定石。
・白12に黒13では、A(17, 十)と受ける手があった。
【第4譜】(1-10)競り合い
・三角印の白に三角印の黒とすぐ抜いてくれたので、白は1と黒を分断。
・黒2の攻めを兼ねた守りと、白3のトビを交換したあと、黒4のトビ出しは仕方のないところ。
・白5以下黒10まで、連絡と分断の絡んだ競り合い。
【第5譜】(1-11)黒を分断
・白1の利かしに黒2と反発したが、白3とハズして、目標は黒の分断。
・以下、黒8と上辺は黒が少し得をしたが、その間に白7から9を利かして、11と、黒の上下の連絡を絶った。
※黒五子は逃げなければならない。
【第6譜】(1-7)白の攻め
・黒1から逃げるが、白2から4、6とケイマと一間で攻める要領は、置き石の有無を問わない。
※黒は一手でも手を抜くと取られてしまう。
・黒7と弱石を逃げている間に、三角印の黒の六子が大きく白の囲みに包まれてしまった。
【第7譜】(1-15)大儲け
※白は「取れない時は他で大儲けをする」という打ち方をする。
・ここでは、まず白1の急所から9まで、攻めの効果で下辺と隅が固まった。
・実戦では、白11に黒12と守ったため、コウになり、コウ材不足で、黒の投了となった。
【1図】(皮肉)
〇碁とは皮肉なもの。生きようとすると死に、攻めると生きるもの。
すなわち、自らの危機をシノぐために、相手の攻めに出るのである。
・ここでは、三角印の白(12, 十四)の時、黒1から5を決め、黒7から13と攻めて、シノぐ例を示した。
(新垣武『攻めは我にあり』日本棋院、2000年[2001年版]、206頁~210頁)
【補足】実戦死活(二子局)~新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』より
新垣武氏は、2子局(1-63)の棋譜を掲げて、左下隅の死活について、次のような実戦死活問題を出している。
≪棋譜≫2子局(1-63)、208頁
【基本図45~48】
【基本図45】(1-28)
・2子局
・互先、2子局、3子局は、囲めるのは50手以降が多い。
・囲碁の上達の基本は、囲んだ石を取りに行くこと。
失敗をおそれて取りに行かないのでは、上達は望めない。
【基本図46】(29-49)
・三々で生きるのは、小さい生き方。
・白39から48までが、この形での大きい生き方。
・但し、白49はよくばり。
※A(16, 二)とツイで、しっかり生きるところ。
黒取りに行く。
(新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』日本放送出版協会、2000年、200頁)
【基本図47】(50-57)
・こんどは白の番。
・黒54では、A(17, 十八)で生きだった。
※この形も大きくコウが正解。
(睡眠薬の代わりに、ゆっくり反復トレーニングしてほしい。)
(新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』日本放送出版協会、2000年、204頁)
【基本図48】(57-63)
・黒の地の中に、57と入ってきた。
・三角印の黒(6, 十五)がいいところにある。
※これがないと、白を取りにいけない。
実戦でこの形は活用してほしいという。
≪棋譜≫問題1、209頁
【問題1】黒番
・取り方四通り。皆さんの取り方の好みはどちらでしょう。
≪棋譜≫問題1の解答の一つ、210頁
<問題1の解答>4通りの一つ。
【正解図1】
・まず1とスベリ、白2に黒3、白4に黒5まで。
≪棋譜≫問題3、209頁
【問題3】黒番
・実戦ではこの形が多い。
これは殺す方法は一つ。なんとかクリアしてほしい。三角印の白が問題。
≪棋譜≫問題3の正解図、211頁
<問題3の解答>
【正解図】
・黒1が正しい。
・白2は黒3以下、ゆるめずに一歩一歩の9まで死。
≪棋譜≫問題3の失敗図、211頁
【失敗図】
・黒1は失敗。
・白2が三角印の白の石とツナガるか生きるための好手。
・a、bが見合い。
(新垣武『実戦に役立つ死活反復トレーニング』日本放送出版協会、2000年、196頁~211頁)
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