歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪ヨセの練習問題≫

2021-10-29 18:15:22 | 囲碁の話
≪ヨセの練習問題≫
(2021年10月29日投稿)

【はじめに】


前回のブログでは、坂田栄男『囲碁名言集』(有紀書房、1988年[1992年版])の終盤のヨセといったテーマを扱った。
 今回は、ブログの読者の棋力向上をめざして、ヨセに関連した練習問題を掲載したい。
 手元にある次のような著作を参照にした。
〇小林泉美『NHK囲碁シリーズ 小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]
〇桑本晋平『新ポケット ヨセ200』日本棋院、2008年[2009年版]
〇片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年
〇趙治勲『ヨセの手筋』土屋書店、1990年[1993年版]

あわせて、趙治勲氏が江戸時代の秀和の「ヨセの妙手」を紹介しておられたので、参照にしていただきたい。



【坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房はこちらから】

囲碁名言集




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・はじめに
・ヨセに関連した問題~小林泉美氏の著作より
・もったいないアテ~『新ポケット ヨセ200』より
・ヨセ問題~『新ポケット ヨセ200』より
・“イタチの腹ツケ”という手筋にも注意せよ~『新ポケット ヨセ200』より
・ヨセに関連した囲碁格言~片岡聡氏の著作より
・逆ヨセに関連した問題~片岡聡氏の著作より
・サルスベリに関連した問題~片岡聡氏の著作より
・ヨセの順序~趙治勲氏の著作より
・秀和のヨセの妙手~趙治勲氏の著作より






ヨセに関連した問題~小林泉美氏の著作より


小林泉美『NHK囲碁シリーズ 小林泉美のやさしい基礎』(日本放送出版協会、2000年[2003年版])の「5章 ヨセに強くなろう=ヨセ編=」に、ヨセについて述べている。
最後まで打てば、ヨセは必ず出てくる。
ヨセも大切で、上手に打てば、10目や20目はすぐ違ってくる。
実戦では決まったパターンがよく出てくるので、身につけてしまえば必ず勝率はアップする。
ヨセでは先手を取ることも大事であるが、何よりも大きいところから順番に打つことが大切であると、小林泉美氏はいう。
また捨て石を使って、相手の欲張りをとがめること。
(小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]、154頁)

【 2 Question】(黒番)<問題のレベル=ふつう(初段を目指すレベル)>
≪棋譜≫(157頁の問題図)
棋譜再生
☆白1とハネたところである。黒の受け方を考えよ。

【正解:ゆるめること】
≪棋譜≫(158頁の正解図)
棋譜再生
・黒1とゆるめる。
・白2で黒3とオサえてアタリにできる。
・黒5とツグのも忘れずに。

【失敗:オサえると切られる】
≪棋譜≫(158頁の失敗図)
棋譜再生
・黒1とオサえると、白2と切られ困る。
・黒3と取っても、白4と切られ、黒5でコウになってしまう。

【ポイント】~2ヶ所の切りに注意
〇失敗図において、黒1(1, 十七)とオサえると、2ヶ所切り(黒1の右とその斜め右上、つまり白2と白4)があるときは、緩めることも考えよ。
(小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]、157頁~158頁)

【 3 Question】(黒番)<問題のレベル=むずかしい(有段者の素質あり)>
≪棋譜≫(159頁の問題図)
棋譜再生
☆前図2 Questionと似ているが、違いがわかればしめたもの。
【正解:オサエて可】
≪棋譜≫(160頁の正解図)
棋譜再生
・黒1とオサえていい。
・黒3のツギは省けない。

【参考:オサエに切ってきたら】
≪棋譜≫(160頁の参考図)
棋譜再生
☆黒1のオサエに白が2と切ってきたら、どうなるか?
・黒は3と抜けばいい。取ると白(2, 十五)がアタリになっている。
・白は4とツギ。黒も5とツゲば、何事もない。
(小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]、159頁~160頁)

【 4 Question】(黒番)<問題のレベル=かんたん(初級レベル)>
≪棋譜≫(161頁の問題図)
棋譜再生
☆黒はオサえられるか。それとも緩めるか。(先のポイントがヒント)

【正解:オサエて可】
≪棋譜≫(162頁の正解図)
棋譜再生
・黒1はオサえて大丈夫。

【参考:オサエに切ってきても抜く】
≪棋譜≫(162頁の参考図)
棋譜再生
・黒1のオサエに白2と切ってきても、黒は3と抜く。
※白はa(3, 十六)に入れないので、手が出ない。

【ポイント】~切りが1つしかない
≪棋譜≫(162頁のポイント図)
棋譜再生
☆黒1とオサえたとき、a(2, 十七)には切りがあるが、b(3, 十六)には切りがない。
⇒切りが1つなので、オサえていい。
(小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]、161頁~162頁)

【 5 Question】(黒番)<問題のレベル=ふつう>
≪棋譜≫(163頁の問題図)
棋譜再生
☆白の形をよく見ること。オサえて大丈夫だろうか?

【正解:緩める】
≪棋譜≫(164頁の正解図)
棋譜再生
・黒1と緩めなくてはいけない。
・黒5までになる。

【失敗1:切られてコウ】
≪棋譜≫(164頁の失敗図1)
棋譜再生
・黒1とオサえると、白2と切られる。
・黒3と取ってコウになって失敗。

【失敗2:逃げても取られる】
≪棋譜≫(164頁の失敗図2)
棋譜再生
・黒1と逃げても向かう先は盤の隅。
・白6まで取られてしまう。
(小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]、163頁~164頁

【 6 Question】(黒番)<問題のレベル=ふつう>
≪棋譜≫(165頁の問題図)
棋譜再生
☆黒の受け方が問題であるが、黒の間違えたときの白も難しいかもしれないという。

【正解:緩めるところ】
≪棋譜≫(166頁の正解図)
棋譜再生
・黒は1と緩めるところ。
・1回緩めたら、黒3とオサえる。
・黒5ツギまでとなる。

【変化:切ってきても抜けばよい】
≪棋譜≫(166頁の変化図)
棋譜再生
・正解図白4で、白1と切ってきても、黒2と抜けば、何でもない。

【失敗1:オサえると切れらて逃げられない】
≪棋譜≫(167頁の失敗図1)
棋譜再生
・黒1とオサえると、白2と切られる。
・黒3と取っても、白4と切られてだめ。
・白6まで黒は取られてしまう。
※隅に向かうので、黒が逃げられない。

【失敗2:ツイでも取られて荒らされる】
≪棋譜≫(168頁の失敗図2)
棋譜再生
・切った白石(2, 十五)に、黒1とツイでも、白2と取られてしまう。
・抜かれて、黒地は荒れてしまう。

【ポイント】~断点を数えてみること
≪棋譜≫(168頁のポイント図)
棋譜再生
※黒1とオサえたときの黒の断点を数えてみること
⇒断点が2つある。 a(2, 十五、つまり黒1の右)、b(3, 十五、つまりaの右)
 オサえてはいけない形
(小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会、2000年[2003年版]、165頁~168頁)


【小林泉美『小林泉美のやさしい基礎』日本放送出版協会はこちらから】

小林泉美のやさしい基礎 (NHK囲碁シリーズ)




もったいないアテ~『新ポケット ヨセ200』より


坂田栄男九段は、中盤において「アテるな切るな」と警告していた。
このことは、終盤のヨセにも気をつけておかなければならない。
たとえば、桑本晋平『新ポケット ヨセ200』(日本棋院、2008年[2009年版])において、「俗筋④もったいないアテ」と題して、次のような局面を紹介している。

【1図:アテてしまうのは、もったいない】
≪棋譜≫(140頁)
棋譜再生
☆黒1とアテてしまうのは、もったいない。
・この後は、白a(16, 一)から、黒b(15, 二)、白c(15, 一)、黒d(14, 一)、白e(17, 一)、黒f(14, 二)までが白の権利。

【2図:シャレた筋】
≪棋譜≫(140頁)
棋譜再生
〇黒1というシャレた筋がある。
・白2なら黒先手である。
・白が手抜きなら、黒2のサガリが残る。
(桑本晋平『新ポケット ヨセ200』日本棋院、2008年[2009年版]、140頁)

同様に、「俗筋⑤余計なアテ」と題して、次のような局面を紹介している。
【1図:アテが余計】
≪棋譜≫(182頁)
棋譜再生
☆白(11, 三)の出に対し、黒1は当然として、黒3のアテが余計だった。
・喜んで白6のツギ。

もし黒3を決めなければ、次のようになる。
【2図:白の全滅コース】
≪棋譜≫(182頁)   白6(黒3の所)
棋譜再生
〇黒1の切りから3とホウリ込む手が残されている。
・白6(14, 一、つまり黒3の所)とツゲば、黒7から全滅コース。
(桑本晋平『新ポケット ヨセ200』日本棋院、2008年[2009年版]、182頁)

ヨセ問題~『新ポケット ヨセ200』より


また、第3章に、問題36(黒番)として、次のようなヨセ問題がある。
【問題36】(黒番)
≪棋譜≫(133頁の問題図)
棋譜再生
☆この白地が十二目に見えるようでは修行が足りない。
 先手で九目に値切るには?

【問題36の解答:ワリコミ】
≪棋譜≫(134頁の正解図)
棋譜再生
・黒1のワリコミを打つには、読みの裏付けが必要。
・白2と受けるのはやむを得ず、黒3、5、7が決まって、白地は九目となる。

【変化:ツケ】
≪棋譜≫(134頁の変化図) 
棋譜再生
・白2の反発には、黒3のツケが用意されている。
・a(14, 三、つまり黒1の右)とb(16, 三)が見合い。
(桑本晋平『新ポケット ヨセ200』日本棋院、2008年[2009年版]、133頁~134頁)

“イタチの腹ツケ”という手筋にも注意せよ~『新ポケット ヨセ200』より


桑本晋平『新ポケット ヨセ200』(日本棋院、2008年[2009年版]、98頁)には、「俗筋③ハサミツケは後手」と題して、次のようなヨセの問題をだしている。

【1図:“イタチの腹ツケ”は後手】
≪棋譜≫(98頁)
棋譜再生
☆黒1のハサミツケは、“イタチの腹ツケ”とも呼ばれるカッコイイ手筋である。
 しかし、黒1から7まで、黒が後手となる。

【2図:ハネが正着】
≪棋譜≫(98頁)
棋譜再生
〇黒1のハネが正着。
・白6まで黒が先手。
※1図の黒1はこの場合、俗手であった。

(桑本晋平『新ポケット ヨセ200』日本棋院、2008年[2009年版]、98頁)

【『新ポケット ヨセ200』日本棋院はこちらから】

終盤の底力!新ポケットヨセ200



ヨセに関連した囲碁格言~片岡聡氏の著作より


片岡聡氏は、ヨセに関連した囲碁格言として、次の4つを紹介している。
①サルスベリ9目
②二線のコスミ先手6目
③両先手逃すべからず
④地中に手にあり

それぞれ、次のような棋譜をあげて、説明している。
①サルスベリ9目
【サルスベリ9目】
≪棋譜≫(414頁のA図)
棋譜再生
・この黒1のサルスベリは先手、9目の大きなヨセになる。

②二線のコスミ先手6目
【二線のコスミ先手6目】
≪棋譜≫(414頁のB図)
棋譜再生
・黒1以下白6までは白1の場合の出入りで先手6目である。

③両先手逃すべからず
【両先手逃すべからず】
≪棋譜≫(414頁のC図)
棋譜再生
・黒1とハネるか白3とハネるかでは、4目の差がある。

④地中に手にあり
【地中に手にあり】
≪棋譜≫(414頁のD図)

棋譜再生

・黒1で手。黒3で地を荒らした。
※白2で白a(1, 十五)と取れない。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、414頁)

逆ヨセに関連した問題~片岡聡氏の著作より


「3終盤(ヨセ)」の「ヨセの手筋」(第1問~第20問)、「第11問 2目得の決め方」に、次のような問題がある。

【第11問 2目得の決め方】[黒先]
≪棋譜≫(377頁の問題図)
棋譜再生
<ヒント>
☆これはよくあるヨセの手筋である。
 白にハネツがれる前に、なんとか損をしないようにしたい。

【正解図:早いもの勝ちで決める】
≪棋譜≫(378頁の正解図)
棋譜再生
・黒1から5と決めるのが、じょうずなヨセ方。
※放置して白5ハネから黒a(3, 十九)、白4、黒b(3, 十八)となる図よりも、2目の得である。

【失敗図:後手1目】
≪棋譜≫(378頁の失敗図)
棋譜再生
・普通に黒1、3とハネれば、上図よりも白地は1目減っている。
⇒これでは黒後手1目のいわゆる逆ヨセである。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、377頁~378頁)

サルスベリに関連した問題~片岡聡氏の著作より


「3終盤(ヨセ)」の「ヨセの手筋」(第1問~第20問)、「第17問 サルスベリ対策」に、次のような問題がある。

【第17問 サルスベリ対策】[黒先]
≪棋譜≫(389頁の問題図)
棋譜再生
<ヒント>
☆黒地の広いところに、白が(6, 十九)へサルスベリしてきた。
 こんなときには、黒はどう対応したらよいか?

【正解図:味良く決める~侵入を止める】
≪棋譜≫(390頁の正解図) 白10ツグ(5)
棋譜再生
・こう広いところでは、黒1と応ずるより仕方がない。
・黒3、5が好手順。
・黒11まで白の侵略を止めた。

【失敗図:荒らされる】
≪棋譜≫(390頁の失敗図)
棋譜再生
・黒1とツケるのはかなり危険。
・白2に黒3のとき、白4と反発されて弱る。
・白10までと生きられてしまう。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、389頁~390頁)

【片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版はこちらから】

これだけできれば囲碁初段―初段・1・2級の問題



ヨセの順序~趙治勲氏の著作より


趙治勲『ヨセの手筋』(土屋書店、1990年[1993年版])の「第3章 実戦のヨセ」の「第2問 ハネツギの順序」として、次のような問題がある。

【第2問】<黒番>
≪棋譜≫(205頁の問題図)
棋譜再生
☆ヨセる場所は、三カ所。
 焦点は上辺と右辺のハネツギである。 
 どちらを先にしても同じかどうか。
 黒番で、その結果を考えよ。

【正解:黒1目勝ち】
≪棋譜≫(206頁の1図)
棋譜再生
※黒1と5、どちらを共にハネツぐかによって結果が違ってくる。
・黒1とこちらのハネツギから決めていく。
・黒5、7に白8、そして黒9が手止まりである。
〇結果は、黒16目、白15目、黒1目勝ちが正解。

【失敗:ハネツギの順序違い】
≪棋譜≫(206頁の2図)
棋譜再生
・黒1、3と、こちらのハネツギを先にするのは失敗。
・黒7のとき、白8とオサえられ、黒1目負けとなる。

【証明:切りは不成立】
≪棋譜≫(206頁の3図)
棋譜再生
・前図のあと、黒1の切りは成立しない。
・黒1、3から5としても、白6で、この白はつかまらない。
(趙治勲『ヨセの手筋』土屋書店、1990年[1993年版]、205頁~206頁)

秀和のヨセの妙手~趙治勲氏の著作より


趙治勲『ヨセの手筋』(土屋書店、1990年[1993年版])には、江戸時代の古碁より、ヨセの妙手を紹介している。
その碁譜は、江戸時代(1839年)の本因坊丈和と土屋秀和の対局である。
終盤、秀和にヨセの妙手が出て、先番・3目勝ちした碁である。

【本因坊丈和と土屋秀和の対局:ヨセの妙手】
≪棋譜≫(202頁の「実戦の妙手」)
棋譜再生
・妙手とは、黒1のノゾキから3のコスミである。
・黒3で単に7とサガると、白5のハネツギを先手で打たれてしまう。
・白4に黒5で、白のハネツギを防いだことになる。
※この図を見れば、それほどむずかしい手筋とは思えないでしょうと、趙治勲氏はいう。
 好手といわれるものは、ちょっとした工夫で発見できるものであるようだ。
(趙治勲『ヨセの手筋』土屋書店、1990年[1993年版]、202頁)

【趙治勲『ヨセの手筋』土屋書店はこちらから】

ヨセの手筋―終盤の逆転力をつける (有段者シリーズ)



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