歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪囲碁の攻め~山田規三生氏の場合≫

2024-08-25 18:00:08 | 囲碁の話
≪囲碁の攻め~山田規三生氏の場合≫
(2024年8月25日投稿)
 

【はじめに】


 引き続き、囲碁の攻めについて、山田規三生氏の次の著作を参考にして、考えてみたい。
〇山田規三生『NHK囲碁シリーズ 山田規三生の超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]

 山田規三生九段は、プロフィールにあるように、攻めを主体とした魅力的な棋風で知られ、「ブンブン丸」の異名をもつプロ棋士である。
 本書の叙述スタイルは、テーマ図を問題形式で出題し、失敗図と正解図を載せ、必ずテーマ図に到る手順図が加えてある。だから、棋譜並べにも役立つ。
 山田氏も、「はしがき」(2頁~3頁)において強調されているように、戦っているときには「攻め」と「守り」があるが、攻める目的は得を図ることである。決して「相手の石を取りにいくことではない」点は肝に銘じておくべきである。
 大切なのは、状況判断である。つまり、石の強弱や周囲の配置を見極めることが大事である。この意味で、「5章 実戦に学ぶ」の中の「薄みをこじあける」(192頁~197頁)、「ちょっとの違いで」(198頁~202頁)は、この本を通読して、もっとも参考になった点である。テーマ図は、24手まで打たれた場面で、黒が一間トビの図あるいは二間トビ(二間ビラキ)+ケイマで打った以外は、全く同じ石の配置なのに、攻めや守りの打ち方が大きく変わってくることを実例を通して学べる。一路違いは大違いになる例である。
 そして、石の強弱に関連して言えば、1章の「弱い石を作って攻める」(19頁~23頁)、「弱いほうの石から攻める」(56頁~62頁)、3章の「厚みの判断」(111頁~114頁、とくに114頁の「弱い石に手をかける」)が参考になる。
 また、攻めのテクニック習得という点では、2章の「戦いの常用手段」(99頁~104頁)、3章の「利かした石は捨ててもいい」(142頁~146頁)が勉強になる。
 また、本書の目次を見てもわかるように、「4章 モタレ攻めの極意」とあり、1つの章をモタレ攻めの解説に当てられており、モタレ攻めについて本腰を入れて習得したい人にとっては、有用であろう。
 そして、プロ棋士の実戦譜が、テーマ図として取り上げられている。
●1章の「弱いほうの石から攻める」(56頁~62頁)
 ➡桑原陽子五段(黒番)VS小林泉美六段
●5章の「反撃の好機」(203頁~207頁)
 ➡高尾紳路本因坊(当時、黒番)VS山田規三生九段
 (黒番は低い中国流の布石)

※ブログの【補足】として、サバキとシノギについて触れておく。
 サバキとシノギについては、山田氏の著作でも、1章の「サバキを封じる急所」(33頁~39頁)や、4章の「モタれてシノぐ」(160頁~165頁)で言及されていた。
 ここでは、誰でも参照しやすいYou Tubeにアップされた、清成哲也九段の囲碁学校の講義より、実戦型について紹介しておきたい。
 格言にあるように、「サバキはツケ」とされるが、サバキとシノギの違いの一つとして、石が多くなるとサバけなくなると、ポイントを指摘しておられる。

【山田規三生(やまだ・きみお)氏のプロフィール】
・1972(昭和47)年生まれ。大阪市出身。山下順源七段門下。
・1989年入段。1997年新人王獲得。同年王座を獲得し、日本棋院関西総本部に初のビッグタイトルをもたらす。
・2006年本因坊戦挑戦者。
※攻めを主体とした魅力的な棋風で、ブンブン丸の異名をもつ。
・趣味は楽しいお酒。





〇山田規三生『NHK囲碁シリーズ 山田規三生の超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]

本書の目次は次のようになっている。
【目次】
1章 厚みを生かせ
 厚みは戦ってこそ
 周囲の状況を見極めて
 シチョウ回避のテクニック
 弱い石を作って攻める
 強気で突破
 うわ手でもスキがある
 サバキを封じる急所
 攻めて得をする
 勢力圏では厳しく
 簡単に治まらせない
 弱いほうの石から攻める
 急所に一撃

2章 模様を荒らす
 孤立させて攻める
 正しい方向とは
 相手のスキを見つける
 攻めの効果を実感
 「深く」か「浅く」か
 戦いの常用手段

3章 かわして戦う
 どちらがいい?
 厚みの判断
 ツメの方向
 模様比べ
 戦うか、かわすか
 まともに戦わない
 捨てる発想
 利かした石は捨ててもいい

4章 モタレ攻めの極意
 直接攻めない
 攻める石の遠くから
 モタれてシノぐ
 攻めながら逃げる
 ツケてモタれる
 ツケて固めていいとき

5章 実戦に学ぶ
 チャンスをつかめ
 薄みをこじあける
 ちょっとの違いで
 反撃の好機
 強烈なねらい
 攻める気持ちで
 風変わり




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・はしがき
・1章 厚みを生かせ
・厚みは戦ってこそ
・シチョウ回避のテクニック~中国流の布石より
・弱いほうの石から攻める
・正しい方向とは~両ガカリ定石より
・戦いの常用手段~トビマガリへの対策
・3章 かわして戦う
・どちらがいい?~ワリ打ちの場合
・厚みの判断~ワリ打ちの場合
・戦うか、かわすか~打ち込みの場合
・利かした石は捨ててもいい~ミニ中国流の布石より
・4章 モタレ攻めの極意
・直接攻めない~モタレ攻め
・モタれてシノぐ
・5章 実戦に学ぶ
・薄みをこじあける~トビマガリの場合
・ちょっとの違いで
・反撃の好機~高尾本因坊VS山田九段の対局より
・【補足】サバキとシノギ~You Tube清成哲也九段の講義より
(囲碁学校「戦いの百科 第9巻 サバキとシノギの技術」(2016年5月15日付))
・【補足】ツケ切りのサバキ形~石田芳夫『基本定石事典』より

※タイトルのあとの副題は、私が加筆してみた




はしがき


・囲碁の醍醐味は戦いにある、と著者はいう。
 戦いが強くなれば、勝率アップすることができるとする。
 しかし、やみくもに切った張ったで戦えばよい、というものでもない。
・まず、戦いを起こすタイミングが大事。
 石の強弱や周囲の配置などを見極めて、チャンスをつかまえられるように、ポイントを解説している。
(タイミングさえ間違えなければ、戦いを有利に運んでいく事が出来る)
〇戦っているときには、「攻め」と「守り」がある。
・攻める目的は、得を図ることである。
 相手の石を取りにいくことではない。
 自陣が厚くなったり、地が固まったり、相手の地が減るような展開になれば、成功。
※攻めを成功させるため、方向や眼形の急所なども、具体例を出して、解説している。

・一方、守るときのコツも考えている。
 自分の立場が弱くなり、シノギを考えるときの、良い打開策も伝授している。

〇最後には、著者の実戦譜を題材にしているので、生きた碁のおもしろさを味わってほしいという。

※大切なのは、状況判断。
 同じ碁はないから、考え方や流れ、呼吸の特徴をつかんで、考え方を身につけるよう、心がけてほしいとする。

(なお、本書は、2006年10月から2007年3月までの半年間、「NHK囲碁の時間」で放送したものを、さらにわかりやすくまとめたものである)
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、2頁~3頁)

1章 厚みを生かせ


・この章では、自分の強いところでの戦い方を伝授している。
 自分の模様の中に打ち込まれたとき、楽に生かしては、相手の思うツボ。
 根こそぎ攻めることをまず考える。
 そのためには、眼形を奪う急所を心得て、味方の厚い方へ追い立てるのが、良い考え方。
・また、さして悪い手を打っていないはずなのに、非勢になっていることはないだろうか?
 原因のひとつに、「利かされ」がある。
 利かされては、いけない。まず逆襲することを考えること。
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、7頁)

厚みは戦ってこそ


【テーマ図A】(黒番)
・白が三角印の白とツケてきた。
・白の目的は何かを考えると、黒の進むべき道が見えてくる。
 どう打てばいいだろうか。
※ヒントは、厚みは攻めに使うと有効、ということ。
●厚みを地にするな



【手順図】(1~22)
・白8のカカリから、黒19まで。
※黒は後手ながら、厚い形の定石。


≪棋譜≫11頁、3~6図

【3図】(正解)
・黒1とハネ出すのが、最強の反撃。
・白2の切りには、黒3からアテるのが、さらに厳しい手段。
・白4と逃げさせ、重くしてから、黒5とソイ、全体に襲いかかる。




【4図】
・白6のハネには、黒は7といったん下から受けるのが冷静で、9とノビ切って、力を蓄える。

【5図】
・白12のカカエに、黒は13、15とノビて、17にトビ。



【6図】
・白から先にaにスベられるのは大きいので、黒19は重要な利かし。
・黒23まで、下辺が立派な模様になりつつあり、黒が大成功。

(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、8頁~11頁)


シチョウ回避のテクニック



シチョウ回避のテクニック
【テーマ図C(黒番)】
白が三角印の白にツケてきた。
ここのがんばり次第で、黒はペースをつかめるかどうかが、かかっている。
さあ、作戦の岐路。
右辺から下辺にかけては、黒の勢力圏。
白に楽をさせてはつまらない。
気合い負けしない次の一手とは、どこか。



【手順図(1~14)】
・黒は、9、11と下辺方面を占め、模様を広げていった。
・白は14とツケてサバキにきている。




【1図】
・黒1の下ハネには、白2に切られる好手が待っている。
・白8まで軽い形で、サバいた白に軍配があがる。
・黒9の切りには、三角印の白を捨て石に白10、12と丸めこんで、白大成功。


【2図】
・黒1とハネ出してから、3と引くのは、白4とシチョウにカカえられて、大損。




【3図】(正解)
・黒1とハネ出したあと、3と上からアテるのが、シチョウ関係を黒有利にするテクニック。
・ここで黒5と引く。
・白6の切りには、黒7と逃げることができるのが、3の効果。
・白は8と黒一子をカカえて、右辺で生きをはかる。
・黒9のアテを決めてから、11と二子の頭を気持ちよくタタく。
※下辺の黒模様の谷が深くなって、黒が成功。



(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、16頁~18頁)

 弱いほうの石から攻める~桑原五段と小林六段の対局より


【テーマ図K】(黒番)
≪棋譜≫56頁、テーマ図

・今回の題材は、桑原陽子五段(黒番)と小林泉美六段の一局。
・白が三角印の白に打ち込んできた。左上一帯は黒模様。
 ここで威張らせてはいけない。
・黒はいかに攻め、どうやって得を図るべきか?
●消しや荒らしは模様完成直前に

≪棋譜≫57頁、手順図

【手順図】(1~34)
・白18では19がふつうであるが、26まで工夫がみられる。
・黒も先手で生きたことに満足。
・しっかり準備をして、白は34と打ち込んだ。

≪棋譜≫62頁、10図

【10図】これが正解!
・黒1のコスミツケが厳しい攻め。
・白2のトビなら、黒は3とかさにかかる。
※黒の石、左上と上辺を比べてみよう。
 どちらが弱いか? 石の強弱は眼形があるかないか、生きているか、まだ生きていないかで判断する。
 すると、上辺のほうが不安定で、弱そう。
●攻めるときには、弱いほうの石から動くのが、コツ。
(弱い石から動こう)

・白4には、黒5のツメがまた名調子。
※黒6からの出切りをねらっている。
・黒9まで、白は根無し草状態で、黒が勝勢。
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、56頁~62頁)

2章

正しい方向とは


【テーマ図B】(白番)
≪棋譜≫75頁、テーマ図

・黒が三角印の黒とケイマに構えた。
・右上を中心に、黒模様が着々と築かれている。
・白としては、もうそろそろ荒らすタイミング。
・白はAとBどちらから、カカるのが良いか?

≪棋譜≫76頁、手順図

【手順図】(1~25)
・黒9のハサミに白10と両ガカリして、定石が始まった。
・白18まで白が実利を占め、黒が厚みをとったワカレとなった。

≪棋譜≫77頁、2図

【2図】(正解)
・白1と上辺のほうからカカるのが正しい方向。
・黒が2とコスミツケれば、白5が二立三析の好形の上、三角印の黒の弱点をついている。
・次にaにスベリ込まれてはたまらないので、黒は6とコスミツケ。
・白9までふっくらとした治まり形を得ては、白大成功。
●厚みに近寄るな
●相手の弱点をついてサバく
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、75頁~77頁)

戦いの常用手段


【テーマ図F】(白番)
≪棋譜≫99頁、テーマ図

・布石が終わり、全体的に落ち着いた場面。
・自分の弱い石がないか確かめたら、相手の弱い石を見つけて、打込んだり攻めたりする。
・ここで三角印の白に打ち込むのは、好点である。
☆三角印の黒と封鎖されたときの対応を考えていこう。
〇ここは少々テクニックが必要。この形はよく出てくるので、覚えておくと役に立つ。

≪棋譜≫100頁、手順図

【手順図(1~31)】
・黒17から白26まで定石ができあがった。
・黒も27とヒラいて落ち着いている。

≪棋譜≫100頁、1~2図

【1図】
・白1とツケてワタれればいいのだが、三角印の黒のマガリトビの形は、ツナガることができない。
・まず黒に、2、4と反発される。

【2図】
・白は9とツイで手を戻さざるを得ない。
・黒10にカカえられては12まで、白は生還できなかった。
※左下が大きな確定地になっては大損。


≪棋譜≫102頁、3~5図

【3図】(正解)
・まず白1と一本利かす。
・黒2と交換したあと、それから白3にツケるのが巧い。
・黒4のオサエには、白5とコスんでノゾくのが、絶妙のタイミングの手筋。
※この形も実戦でたいへんよく現れるので、この機会にしっかり身につけてもらいたい。

【4図】
・黒が6とツイだときに、白7と引くのが、またまた巧い手順。

【5図】
・白9、11と出切り。
・黒が12と一子を助けると、白13から17まで、下辺の黒の要石を取ることができる。
➡黒はツブレ
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、99頁~104頁)

3章 かわして戦う


・自分の強い場所でなら、戦い、戦いで良いのだが、相手の強い場所では、まともに戦うよりも、サバいたり、かわしたりするのが、いい場合が多い。
・全局を見て、どの石が強いのか弱いのかを考え、判断するのが肝要。
・まず最初に、強いか弱いかの見分け方から、解説していこう。

どちらがいい?


【テーマ図A(白番)】
≪棋譜≫106頁、テーマ図

☆黒が三角印の黒(3, 九)とワリ打ちした場面。
 ここはすぐツメたいところであるが、AとB、どちらがいいか?

≪棋譜≫107頁、手順図

【手順図(1~17)】
・左辺の模様を気にした黒が17とワリ打ってきた。
・白はすぐツメることで、形勢をリードすることができる。
※どちらからツメるかで、運命が大きく違ってくる。

≪棋譜≫109頁、2~3図

【2図】(正解)
・左上にカカらせないためにも、白1からツメ。
・黒2とヒラかせ、さらに白3とケイマして、白の厚みに押しつけるのがよい。
●厚みに近寄るな
※相手の厚みだけでなく、自分の厚みにも近寄るのはよくない。

【3図】
・続いて、黒6のトビには、白7といったんは中央に顔を出す。
・黒に8と地を与える損は、気にとめる必要はない。
※左辺の黒を攻めることを第一に考えよう。
・白9、11と左上を盛り上げていく。
➡白成功の布石
●序盤では、地よりも石の強弱に気をつけよう

≪棋譜≫110頁、5~7図

【5図】
・白3とアオったときに、黒4の急所を衝かれるのは心配だが、弱気になって白6などツイではいけない。
・断固、白5と包囲する一手。
【6図】
・黒6の切りには、白7のアテから生きることができる。
【7図】
・白は15まで生き、黒も16までと生きるが、きゅうくつで仕方ない。
・先手で白17にまわって、白十分。
(山田規三生超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、106頁~110頁)

厚みの判断


【テーマ図B(白番)】
☆左辺は黒が楽をした。
 今度は白が、下辺に三角印の白(11, 十七)とワリ打ちをしてきた。
 ここは手を抜けないところ。
 黒はAとB、どちらからのツメを選ぶか?
※厚みをどう判断するかがポイント。

【1図】
・「厚みに近寄るな」の格言があるから、黒1の大ゲイマを選んだ人が多かったかもしれない。
・ところが、白4のスベリから6とブツカられてみると、左下の黒は、眼形がはっきりしない。
※眼形がないと厚みではない。

【5図】(正解)
・白aと眼形をおびやかされずにすむ、黒1からのツメが正しい方向。
※石は常に、弱い石のほうに手をかけてあげることが鉄則。
 特に左下の黒は、石数が多いわりには、まだ眼形がはっきりしないので、守るのが急務。
・黒1は逃せない。
・白も2とヒラキ。
・黒3のコスミツケ一本で、白を凝り形にさせて、5のケイマまでが相場。
●弱い石に手をかける
(山田規三生超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、111頁~114頁)

戦うか、かわすか


【テーマ図E】(黒番)
・3、4線のヒラキが終わり、そろそろ戦いが始まりそうな局面。
・白が三角印の白と打ち込んできた。
 どう対応するか。
 周囲の状況をよく見て、判断してほしい。

【手順図】(1~22)
・黒9には、白10と守っておく。
・黒13のワリ打ちには、白12が4線にあるので、白は14からツメた。
・黒17はヒラキの限度。これ以上、左上に近づくと反撃される。
・白はいったん18とツメた。
・黒19から21で、左下の定形が完成。


≪棋譜≫124頁、1~3図

【1図】
・黒1のトビは、自然に見える。
・しかし、白2のツケがうまいおまじない。
・白4のツケで連絡される。


【2図】
・黒5のハネ出しには、三角印の白(18, 九)を捨て石に、白8、10と突き抜かれる。
・黒11の切りには、白12が厚い良い手。


【3図】
・黒19まで、右辺上の白を捨てても、三角印の黒(15, 九)を切り離した白が、大満足のワカレ。

【10図】(正解1)
・白の打ち込みには、黒1のコスミが、断固ワタらせないのが大切。
※右辺下の白はまだ弱い。
・白は2とツケて、4と中央に逃げていくのがよく、相場。
・しかし、黒7、9の両方を打てては、右辺の白がふたつとも不安定で、黒のペース。


【11図】(正解2)
・黒1と逆にコスむのも、考えられる。
※右辺下の白がまだ弱い姿で、攻めが効くのが、ポイント。
 三角印の黒をしっかり逃げることで、白を分断し、「絡み攻め」に持って行くことが、肝要。
・黒3が厚い押し。
・黒7の要所を占めた上、9と厚くトンで、黒が好調。
※右辺の白はふたつともまだ完全に治まっておらず、攻めが効く。
 黒の楽しみが多い。
(山田規三生超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、122頁~127頁)

3章 かわして戦う

利かした石は捨ててもいい


・白が三角印の白に打ち込んできた。
 左下にある黒の三子をどうするかを、中心に考えていこう。
 局面の流れを、次の一手が決める。


【テーマ図1】(黒番)


【手順図(1~20)】
・黒1、5、7と、流行のミニ中国流の布石。
・対して、白は8とワリ打ちするのがもっともポピュラー。
・黒17と一間ジマリのタイミングで、白は18とサガって、大ナダレ定石にならないよう備えた。
・黒19のヒラキに、白がすぐ20と打ち込んだのが、テーマ図。
 どう対応するのが、いいのだろうか?


≪棋譜≫144頁、1~3図

【1図】
・黒1は部分的には形。
・白2のトビには、黒3とトンで、頭を出す。


【2図】
・黒5まで、黒は厚い形になったが、左辺の白はがちがちに強く、攻めることはできない。
※厚みは攻めてこそ働く。
 ●働く場所ばあってこその厚み

【3図】
・それに引きかえ、白は6のカカリから8とかぶせて、攻めに転じることができる。
※白の打ちやすい局面。


≪棋譜≫144頁、4~6図

【4図】これが正解!
・黒1とケイマして、左下の黒三子を軽く見るのが、明るい打ち方。
※黒三子は利かした石で、強い白にへばりついている廃石とみることもできる。
 場合によっては捨ててもいいと考えよう。
●利かした石は捨ててもいい。

・白2の受けは絶対。
※黒は一転、右辺の白二間ビラキに焦点をあてる。
・黒3、5は模様拡大の常用手段。


【5図】
・白が6、8とワリツいできたら、黒は9と引く。
・白10の切りには、黒11と黙ってノビるのが肝心。



【6図】
・白は手を抜いて、黒12と眼を奪われるとつらいので、12とナラんで生きるのが本手。
・そこで黒は13と模様に芯をいれれば、右下から中央にかけての大模様が現実味を帯びて、光り輝いてきた。黒の楽しみな形勢。

●模様には、芯を入れる。


(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、142頁~146頁)

4章 モタレ攻めの極意


・ねらいを定めた石を直接追いかけたり、攻めたりしても逃げられるだけで、何も得るものがなかった、なんてことはよくある。
 ここでは「からめ手」から攻める高等技術、「モタレ攻め」を伝授するという。
攻撃を厳しく成果あるものにする。
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、147頁)

直接攻めない


【テーマ図A(黒番)】
≪棋譜≫148頁、テーマ図

・下辺にある黒模様を消そうと、白は△の白に臨んできた。
・△の白は良い手ではない。
・状況をよく判断して、△の白をどう悪手にするかを考えよ。

≪棋譜≫149頁、手順図

【手順図(1~36)】白26ツグ(19)
・黒13ノビに、白14と押す定石を選んだ。
・黒はすぐ15と出て、17と隅に近い方を切るのが、この形の急所。
・黒29ツギまでが定石。

・黒33のトビは絶好点。
・すぐ白34とコスミツけて、黒35のサガリとかわっておくのが、タイミング。
・白36に臨み、テーマ図の場面である。


≪棋譜≫150頁、1~3図

【1図】
・黒1とボウシで攻めるのは、白2と連絡を目指されて、うまく行かない。

【2図】
・白はいかにも薄そうで、黒3から5とブツカリ、7のハネ出しで、分断されそうにみえる。
・白8の切りに……。

【3図】
・黒9の切りから11とオサえ、13と三々にトンで、左下の白数子を包囲しにいく。
・けれども、白14のワリ込みがうまい手筋。
・白16で種石の黒二子が落ちては、黒が破綻している状態。
⇒これは黒が失敗。

≪棋譜≫151頁、4図

【4図】
・黒1と迫ると、白は2とトンで逃げる。
・白4まで。
※ただ逃がしただけでは、黒に得るものがない。
 攻めたら得をはかることが大切で、これも大失敗。

≪棋譜≫151頁、5図

【5図】
・下辺の模様を地にしようとすると、黒は1と囲いたくなる。
・黒5と囲のでは9まで。
※できた地は40目に満たず、一方地では小さい。
 左上方面に向かう白がこんなに豊かになっては、黒劣勢。

≪棋譜≫153頁、6~7図

【6図】(正解)
・黒1の肩ツキを思いついた人は、攻めのセンスがある。
※黒1は全局的で、すばらしく厚い手である。

※攻める目標は、三角印の白である。
 それをにらみながら、他の石にモタれていくのが、攻めの常とう手段。
●モタれて攻めよう
 直接攻めてうまくいかないことのほうが、実は多い。
 相手の周囲の石の近くからプレッシャーをかけるのが、巧い作戦。
 ここで攻めの下地を作ることができる。

【7図】
・白が2からまともに受けるのは、むさぼりである。
・白6まで稼がれるが、黒7のボウシで、大きく攻めることができる。
※白の逃げ道をふさいで、相当いじめがききそうである。
 白は逃げようにも目指す右上が遠くてたいへん。
 黒が大いに優勢。

≪棋譜≫153頁、8図

【8図】
・白が2とハザマをついて反撃してきたら、黒3と出て、大丈夫。
・白は4と連絡するほかなく、黒5とハネては、左辺白の傷みが激しく、白が大損。

≪棋譜≫154頁、9図

【9図】
・白2の押し上げから、4のスベリもよくある形。
・しかし、黒5がバランスのよい手で、白6には黒7、9と連絡する形があり、好調の流れに乗ることができる。
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、148頁~154頁)

4章 モタレ攻めの極意

モタれてシノぐ


【テーマ図C(黒番)】
☆白が三角形印の白(3, 十四)とケイマした場面。実は、現在大切なのは上辺方面。
 黒はどこにねらいを定めるのが良いか?
 白が左辺に向かったので、黒は上辺の不備をつきたいところ。

【手順図(1~26)】
・黒19までできた姿は、黒、低いけれども、がっちり堅い形である。
・黒25のケイマは、左下へのカカリと上辺白模様への仕掛けを見合いにした好手。


【1図】(もうけは小さい)
・黒1に切れば、5まで白一子を取り込んで、隅を地にすることができる。
・しかし、白も6となっては、上辺が厚くなった。
 この取引は、黒大損。


【2図】
・黒1のノゾキから3とハイ、5と広げれば、9まで、
 眼形は簡単にできる。
・しかし、白10まで立派な形に整えられては、黒はせっかくのチャンスを逃している。
※これでは超攻撃法とはいえない。



【3図】
・黒1ケイマの攻めには、白2の肩ツキがうまい反撃。
・黒3には白4のオサエがぴったりで、黒は逃げられない。





【4図】
・黒1のケイマでは、白2とトバれて、黒のほうが弱い立場になり、攻めにはならない。
・黒3には、白4と落ち着いて受けられ、aのノゾキがねらわれる。
※自ら攻められる目標を作っただけでは、大失敗といえる。



【5図】
・上辺の右側に黒1と打ち込むのも魅力的であるが、白に2とトバれ、4と左上を守られる。
 三角印の白(14, 四)は軽いのである。
・いったんは捨てたふりをして、隙あらばaにツケたり、bにスベったりの値切りをねらわれる。





【6図】正解
・黒1と肩をついて、モタれながら動くのが絶好。
・白2の押し上げには、黒3とノビ、白4のトビには、黒5のマゲとあくまで上辺にモタれていくことが大切。
・白が6にハネて8にノビると、黒9のカケがぴったり。
※もし左上の白に生きられても、周りの黒は鉄壁。
 全局を圧倒している。
※ターゲットの石の近くにモタれるのが、うまい攻め。




【7図】(正解変化1)
・黒5のマゲに白が6とコスんで逃げたら、黒は7とケイマで上辺を攻める。
・白が8、10とツケ切っても、黒は11のブツカリがよく、13と突き破っては、黒断然よしの形勢。






【8図】(正解変化2)
・黒1の肩ツキに、白2と一本ハウのはがんばった応手。
・黒7から9のカケツギが厚く良い手。
・黒11までのしっかりした形と比べて、白が弱々しく、黒有利な形勢。



(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、160頁~165頁)

5章 実戦に学ぶ
 薄みをこじあける

薄みをこじあける


【テーマ図B(黒番)】
≪棋譜≫192頁、テーマ図

・白が左上へ打ち込まれないよう、三角印の白と守った場面。
・こんな序盤でも、チャンスはあるもの。
 さて、黒はどこに打つか?


【手順図】(1~24)
≪棋譜≫193頁、手順図

・左下で白が6から10とツケ引き定石を選んだので、白は実利、黒は外勢という骨格。
・下辺の厚みを生かそうと、黒は13とハサんでいく。
・黒21のトビマガリは良い形。
・白22のナラビはお互いの急所で、逃すことはできない。
※逆に、黒に22とツケられると、黒が安定してしまう。

≪棋譜≫196頁、5~6図

【5図】(正解)
・右上の白の一団が弱い今が、攻めるチャンス。
※三角印の白の二間が薄いのに気がついただろうか。
・黒1のノゾキから3と躍り出して、こじあけるすごい手段がある。
・白4、6の出切りに、黒7と白のダメをつめながら整形するのが肝心。
・白8のノビは絶対。
※右上からの白の一団と、白4、三角印の白二子を比べて、どちらが強いかを判断する。
・そして、黒9と強いほうに押すのが、戦いのときの鉄則。
●攻めたい石の逆を押す

【6図】
・上辺の黒は眼形が豊富なので、白がきても、びくともしない。
・白が14とノビたときが、またチャンス。
・黒15と切れば、白はまだ眼形を持っていない弱い石だらけ。
※白収拾不能。
 黒が主導権を握ることができた。

(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、192頁~197頁)

ちょっとの違いで


【テーマ図C(黒番)】
≪棋譜≫198頁、テーマ図

・テーマ図のBと、三角印の黒の二子の配置が変わっている。
 その少しの違いで、黒の打ち方が大きく変わってくる。
・さて、黒はどのような考え方で臨めばよいだろうか。
 一路違いは大違いというが、攻めや守りの手段は、お互いの石の配置によって変化する。
 白の反撃手段も考えながら、適切な次の一手を求めよ。

≪棋譜≫199頁、1図

【1図】
・テーマ図Bと同じように、黒1、3と裂いていくのはどうだろうか。
・白は4と押してくる。
・黒5なら、三角印の白を制することが出来るが、白6とタタかれてしまい、黒大変。
※白の一団はとても強くなって、右辺の三角印の黒が働きのない石となる。
 また、下辺の黒模様も一気に薄くなってしまう。
 いくら三角印の白を制しても、こんなに損をしては、黒が悪い。


【2図】
・黒はタタかれてはいけないので、黒1とノビると、白2、4と反撃される。

【3図】
・黒1とマゲれば、ゲタを防げる。
・しかし、白2のトビが好手。
※ねらっている石から遠いほうにトブのがコツ。
 白がaのゲタで取るのをねらっているから、黒3とノビることになるが、白4まで、白に分がある。

≪棋譜≫201頁、6図

【6図】(正解)
※三角印の黒の構えは、テーマ図Bの一間トビのときと比べ、aの押しが利くので、中央での戦いになると、うまくいかない。
・そこで、黒1と好点を占めて、白2と誘って、調子で黒3と守っておくことが大事。

≪棋譜≫202頁、7~8図

【7図】
・白1の両ノゾキから5の切りには、黒6としっかりとツイで、戦う準備をする。
【8図】
・次の一手は黒8のツケに限る。
・白が9とハネると、黒10、12で、種石が取れる。

【9図】
・白は1とノビるしかない。
・しかし、黒6、白7に黒8と切れば、白の姿はダメ詰まり。
※白参っている。
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、198頁~202頁)

【補足】小目の定石~一間高ガカリ・二間高バサミ


小目の定石で一間高ガカリ・二間高バサミは、「薄みをこじあける」のテーマ図B(192頁)と「ちょっとの違い」のテーマ図C(198頁)の右上隅に出てくる。
 手順図(193頁)でいえば、黒1、白12~白18までの定石である。
 この点について、石田芳夫『基本定石事典(上)小目の部』(日本棋院)を参考に補足しておきたい。
8 二間高バサミ
【基本図】
≪棋譜≫416頁、基本図

・黒1と二間に高くハサむのは、比較的新しい手である。
※白の打ち方によっては、険しい変化を生じることから、「村正の妖刀」という呼び名がある。

①一間トビ
【2図】(簡明)
≪棋譜≫417頁、2図

・白1と一間にトベば、何よりも分かりやすく、複雑な変化はすべて避けることができる。
・黒2のトビに、なお白は3、4のトビを加えて、5とハサむ。
※白3を打たないと、黒から4の左へのケイマが好形となる。

【3図】(互角)
≪棋譜≫417頁、3図

・白1に黒2と二間にヒラくのは、白3に4と、右辺を盛り上げようとの意図である。
・やはり白は5とハサむ。
※白3は一路右にカケるのもあろう。
(石田芳夫『基本定石事典(上)小目の部』日本棋院、1996年[2002年版]、416頁~417頁)


反撃の好機~高尾本因坊VS山田九段の対局より


〇高尾紳路本因坊(当時)と著者・山田規三生九段の白番の一局を見てみよう。
【テーマ図D(白番)】
≪棋譜≫203頁、テーマ図

・高尾さんが黒1といっぱいに迫ってきたところ。
 白は守るべきだろうか。それとも攻めるべきだろうか。
※中盤戦入り口の関所。ここで、著者はどう打ったのだろうか。

≪棋譜≫204頁、手順図

【手順図】(1~21)
・黒11と狭く、高くヒラいたのが、趣向の一手。
・白に右上星にカカるのに、右辺からではなく、上辺からカカらせようという作戦。
・黒13、白14が白を窮屈にさせる交換。
・さて、黒21といっぱいに迫ってきた。
 どう考えるか。

【テーマ図D(白番)の候補手】
≪棋譜≫候補手、A~E

☆著者は、A~Eの候補手を挙げて、検討している。
A:コスミ
B:左辺へのツケ
C:上辺へのツケ
D:コスミ
E:ツメ
※このうち、Eが正解とする。下辺の模様から、ヒラキとツメを兼ねる手である。

≪棋譜≫206頁、5図

【5図】(正解)
・下辺の模様から、白1とヒラキとツメを兼ねるのが正解。
※上辺だけを見れば黒が強く見えるが、下辺方面を見れば、白のほうが強いので、十分戦うことの出来る局面。
➡まず、反発するところから、始まる。
 黒に楽をさせないという気持が大切。

≪棋譜≫207頁、6図

【6図】
・黒1と根拠を奪う攻めには、白2のツケ一本で強くしてから、白4とたたみかける。
・白10までとなれば、白厚くてやれる。

≪棋譜≫207頁、7図

【7図】
・黒1のコスミから、左上白を封鎖にきた。
・白は、生きを目指して、白6までしっかりと生きる。
※正解図白1とツメることで、相手の出方をきいてから、自分の打ち方を決めたという。

≪棋譜≫207頁、8図

【8図】
・前図白6で手を抜くと、黒1のハイが厳しくなる。
・白2、4のハネツギは、黒7まで死に。
※白2では7とコスんで、黒a、白6と生きるくらいだが、とてもつらい。
(山田規三生『超攻撃法』日本放送出版協会、2007年[2008年版]、203頁~207頁)


【補足】サバキとシノギ~You Tube清成哲也九段の講義より


【補足】サバキとシノギ~You Tube清成哲也九段の講義より
(囲碁学校「戦いの百科 第9巻 サバキとシノギの技術」(2016年5月15日付))

※ブログの【補足】として、サバキとシノギについて触れておく。
 サバキとシノギについては、山田氏の著作でも、1章の「サバキを封じる急所」(33頁~39頁)や、4章の「モタれてシノぐ」(160頁~165頁)で言及されていた。
 ここでは、誰でも参照しやすいYou Tubeにアップされた、清成哲也九段の囲碁学校の講義より、実戦型について紹介しておきたい。

<シノギの形>
〇左辺において、次の白の手順に注目すると、ツケノビ、ツケヒキ、一間トビは、生きを図る打ち方で、シノギの打ち方であるという。
・白22+白24➡ツケノビ
・白26+白28➡ツケヒキ
・白30➡一間トビ
≪棋譜≫清成、実戦のシノギ


<サバキの形>
〇先の図の白22のツケ+すぐに白24ツケ+白26切り(つまりツケ切り)
➡つまり、白は、ツケにすぐにツケ切りをするのが、サバキのコツという。
≪棋譜≫清成、実戦のサバキ1


<サバキの形~振り替わり>
〇ツケ切り後の変化~振り替わりの場合
 白は左辺で生きるのではなく、白二子を捨てて、左下で得をはかる。
≪棋譜≫清成、実戦のサバキ2


【補足】ツケ切りのサバキ形~石田芳夫『基本定石事典』より


〇ツケ切りのサバキ形について、石田芳夫『基本定石事典』より、実戦譜を補足しておきたい。
・定石としては、小目・一間高ガカリ・二間高バサミである。
【参考譜124】
〇第28期十段戦1回戦
 白 長谷川直
 黒 武宮正樹
≪棋譜≫参考譜124、419頁

・黒2のトビに白3と受け、黒を中に追い立てたところで、白は右辺5の大場に回った。
・黒6は好形。
※上辺の白が薄いため、黒の薄みをとがめられない。
・白7のシマリに、黒は8とハサんで、左上の勢力を働かせた。
・白9は隅を守り、左辺に、白a、黒b、白cのサバキ形を作る。
(石田芳夫『基本定石事典(上)小目の部』日本棋院、1996年[2002年版]、419頁)

【補足】山田規三生氏の実戦譜~依田紀基『基本布石事典』より


 山田規三生氏の実戦譜から、次の文献を参考に、サバキの例について紹介しておこう。
〇依田紀基『基本布石事典 下』日本棋院、2008年

<小目タスキ>【参考譜】
②1999年 加藤正夫-山田規三生 (298頁)
第18型 【参考譜】
1999年 第47期王座戦本戦
白七段 山田規三生
黒九段 加藤正夫

【参考譜】(1-56)
≪棋譜≫298頁、参考譜

・白10のカケに黒11、13と出切り、白14のツケ以下18までは、代表的な定石。
・黒19のカカリに、白は手を抜いて、20のカカリから22とヒラいた。
・黒21のシマリでは、下記のような変化もある。
・黒27以下37は常套の封鎖手段。

※依田氏は、黒21のシマリについて、次のようなサバキの変化図を示している。
≪棋譜≫299頁、2図

【2図】(サバキ・1)
・前図の黒21のシマリで、黒1のハサミなら、白2のツケがサバキの筋。
・黒3に白4以下10となる。
・続いて、黒aと押し、白b、黒cなら自然。

≪棋譜≫299頁、3図

【3図】(サバキ・2)~ツケ切り
・前図の黒3で黒1のハネは、白2の切り以下の定石に戻り、これも白サバキ。
(依田紀基『基本布石事典 下』日本棋院、2008年、298頁~299頁)







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