(2022年2月24日投稿)
【はじめに】
ことば・言語に関連した科目は、やはり単語・語彙力を上げることが一番の課題である。
そういう意味では、いい単語帳に出あうことが肝腎である。
今回は、英単語を覚えるのに際して、次の参考書を紹介してみたい。
〇清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]
英語以外のものに関しては、後日、次の単語帳を紹介してみる予定である。
〇Z会出版編集部『現代文 キーワード読解』Z会出版
〇武田博幸『読んで見て覚える重要古文単語315』桐原書店
〇山村由美子『GROUP30で覚える古文単語600』語学春秋社
さて、英単語を機械的に覚えようとしても、どうしても限界がある。そこで、英語の語源を辿ることで、関連性をもたせて、記憶に定着させる方法がある。
これは、昔から(私の高校時代)、とられてきた方法でもある。
私は、英語の語源を、次の書物から学んだ。
〇森一郎『試験に出る英単語』青春出版社、1975年
【森一郎『試験に出る英単語』青春出版社はこちらから】
試験にでる英単語―実証データで重大箇所ズバリ公開 (青春新書)
上記の本は、絶版ではないらしいが、何せ古い。
そこで、最近、話題になっている、清水建二氏の『英単語の語源図鑑』(かんき出版、2018年[2021年版])を紹介してみたい。
この本は、You Tubeでも多くの人が取り上げている。
例えば、
〇やり直し英語達成道場(師範代 Shinya)「『英単語の語源図鑑』の具体的な使い方」
(2018年7月17日付)
1回目は無理に覚えようとせず、さらっと目を通すのがコツだという。
〇Morite 2 English Channel「語源マニアが勧める英単語の語源参考書&辞書」
(2020年8月13日付)
もりてつ、こと森田鉄也氏のサイトであるが、嶋津幸樹氏との対談形式で、本書は語源を厳選しているのが良いという。
【清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版はこちらから】
英単語の語源図鑑
なお、本書には続編も出版されている。
【『英単語の語源図鑑』の続編はこちらから】
続 英単語の語源図鑑
清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]
【目次】
はじめに
語彙がケタ違いに増える「語源」学習法とは?
語源で学ぶ3つの効果
本書の構成
Chapter 1 ad-(~の方へ、~の方を)
Chapter 2 con-, com-, co-(共に)
Chapter 3 de-(離れて、下に)
Chapter 4 sub-(下に)
Chapter 5 sur-, super-(上に、超えて)
Chapter 6 ex-(外に)
Chapter 7 pro-, pre-, for-(前に、前で)
Chapter 8 re-(再び、元に、後ろに)
Chapter 9 in-, im-, en-(中に、上に)
Chapter 10 ab-, dis-, se-(分離、否定、反対)
Chapter 11 un-, im-, in-, a-(否定)
Chapter 12 mono-, uni-, bi-, du-, tri-, multi-(数)
索引
接頭辞で整理したもの
なお、各章の各節まで記すと次のようになっている。
Chapter 1 ad-(~の方へ、~の方を)
1-1 administer / mini =小さい
1-2 advocate / voc, vok, vouch =声、呼ぶ
1-3 admonish / mon =示す、警告する
1-4 adjust / just, jur =正しい、法
1-5 appoint / point, punct =指す、点
1-6 attend / tend, tens =伸ばす、向ける
1-7 accurate / cure, care =世話、注意
1-8 achieve / chief, cap, cup =頭、つかむ
1-9 accept / cept, ceive =つかむ
1-10 assign / sign =しるし
1-11 observe / serve, sert =保つ、守る、仕える
1-12 occur / cur =走る、流れる
1-13 offend / fend, fens, fest =打つ、たたく
Chapter 2 con-, com-, co-(共に)
2-1 conform / form =形
2-2 contract / tra(ct) =引く
2-3 congress / gre(ss), grad =行く、進む
2-4 confine / fin =終わる
2-5 consent / sens, sent =感じる
2-6 concrete / cre(ase), cru =増える、成長する
2-7 compete / pet[e], peat =求める
2-8 conquest / quest, quire =求める
2-9 conclude / clude, close =閉じる
2-10 commemorate / memo, min(d) =心、記憶
2-11 compel / pel, peal, pul =駆り立てる
2-12 corrupt / rupt =崩れる
Chapter 3 de-(離れて、下に)
3-1 decide / cide, cise =切る
3-2 debate / bat =たたく
3-3 depart / part =分かれる、部分
3-4 depress / press =押す
3-5 detour / tour, turn, tir =曲がる、回る
3-6 deficit / fic =する
Chapter 4 sub-(下に)
4-1 substitude / stitude =立つ
4-2 substance / sta, stat =立つ
4-3 subordinate / ord =順番
4-4 submit / mit, mis =送る
4-5 supply / ply, ple, pli =満たす
4-6 suspend / pend, pense =つるす、はかる
4-7 substain / tain =保つ
Chapter 5 sur-, super-(上に、超えて)
5-1 survey / vey, view =見る
5-2 survive / vive =生きる
5-3 surpass / pass, pace =歩く、通る
5-4 supervise / vise =見る
5-5 superfluous / flu =流れる
Chapter 6 ex-(外に)
6-1 exceed / ceed, cede, cess =行く
6-2 exist / sist =立つ
6-3 expatriate / patri =父
6-4 evacuate / va[c], void =空(から)
6-5 emancipate / man(i) =手
Chapter 7 pro-, pre-, for-(前に、前で)
7-1 promote / mo(t), mo(v) =動く
7-2 project / ject, jet =投げる
7-3 prospect / spect =見る
7-4 prolong / long, ling =長い
7-5 protest / test =証言する
7-6 produce / duce, duct =導く
7-7 program / gram, graph =書く
7-8 prohibit / hibit =置く、持つ
7-9 prefer / fer =運ぶ
7-10 predict / dict =言う
7-11 preside / side, sit, set, seat, ses, sed, sad =座る
7-12 pregnant / gna, na(t) =生まれる
7-13 perfect / fect, fact =なす、作る
7-14 forecast / cast =投げる
Chapter 8 re-(再び、元に、後ろに)
8-1 retreat / treat, trait =引く
8-2 restrict / stri(ct), strai(n), stress =引っ張る
8-3 resemble / seem, sem, simil =同じ
8-4 result / sul(t), sal(t) =跳ぶ、跳ねる
8-5 reinforce / forc, fort =強い
8-6 revolve / vol(ve) =回転する
8-7 remodel / mod[e] =型
8-8 rely / ly, li(g) =結ぶ
8-9 relieve / lev(i) =軽い、持ち上げる
Chapter 9 in-, im-, en-(中に、上に)
9-1 inspire / spir[e] =息をする
9-2 incline / cli(n), cli(m) =傾く
9-3 indigenous / gen =種、生まれる
9-4 import / port =運ぶ、港
9-5 impediment / ped =足
9-6 embarrass / bar =棒、横木
9-7 encourage / co(u)r, cord =心
9-8 initiate / it =行く
9-9 impose / pose =置く
9-10 instruct / struct =積む
9-11 invent / vent =来る、行く
Chapter 10 ab-, dis-, se-(分離、否定、反対)
10-1 abuse / use, uti =使う
10-2 abort / ori, orig, origin =生まれる、始まり
10-3 disappear / par, pear =見える
10-4 distinguish / stin(k), stick, stinct =刺す
10-5 disarm / arm =腕、武器
10-6 discharge / car =車、走る、運ぶ
10-7 separate / pare, pair =並べる、そばの
Chapter 11 un-, im-, in-, a-(否定)
11-1 apathy / path, pass =感じる、痛む
11-2 anonymnous / nom, name =名前
11-3 intangible / tact, tang =触れる
11-4 infant / fa =話す
11-5 immediate / mid, med(i) =中間
11-6 irregular / reg, roy =王、支配
11-7 uncertain / cert, cri =ふるいにかける
11-8 uncover / cover =覆う
Chapter 12 mono-, uni-, bi-, du-, tri-, multi-(数)
12-1 monotonous / ton, tun =音
12-2 universal / vers[e] =回る、向ける
12-3 biennial / ann(i), enn(i) =年
12-4 duplicate / ple, pli, ply, ploy =重ねる
12-5 trivial / via, vey, voy =道
12-6 multiple / ple, pli, ply, ploy =重ねる
※このように、重要な12のグループの接頭辞と、103の語根が各章と各節を構成している。
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・清水建二氏の「はじめに」
・語源学習法について~すずきひろし氏の解説
・接頭辞の解説の例
・英単語の記述形式
・参考となる例文
・森一郎『試験に出る英単語』について
・森一郎氏の「まえがき」
・derive とdepriveという英単語について
・いろいろな接頭語
※なお、接頭辞、接頭語といった用語は、各著者の用例にしたがう
清水建二氏の「はじめに」
英単語を一番効率的に覚えるには、どうすればいいのか。
これは、よく聞かれる質問である。
この質問に対して、約40年間、英語を指導してきた清水建二先生は、「最も効率的な英単語の覚え方は、語源学習によるものである」という結論である。
それを可能にするのが本書であるという。
語源学習だと、より少ない時間でより多くの単語を身につけることができるとする。
清水建二先生が語源の本を書こうと思ったきっかけは、大学時代に lavatory「トイレ」とlaboratory「実験室(研究室)」の区別ができなかったことであるそうだ。
語源辞典で調べてみると、laboratoryは「labor(労働)-ory(場所)」。つまり「“労働する場所”だから実験室」となる。一方、lavatoryの「lav[a]には、「流れる」「洗う」という意味がある。だから、lavatoryは「lava(流れる)-ory(場所)」で「洗面所」「トイレ」である。
そして、lavaをつかった他の単語としては、次のようなものがある。
・laundry~「洗濯物」
・lavish~湯水のようにお金を使うことから「気前のよい」
・lava~流れる「溶岩」
・lavender~ラベンダー(かつて洗濯物の香り付けや浴用の香水として用いられていた)
このように、語源学習では、連想的に語彙を増やせることを強調している。
語源の力によって、1万語レベルの語彙が身につくことは、すでに語源研究によって実証されているそうだ。
※「1万語」というと、英字新聞や雑誌を不自由なく読める程度の語数とされている。
ちなみに、ネイティブの平均語彙数は3万語、東京大学の入試合格に必要なのは6000語だと言われているとか。
このようなネイティブレベルに匹敵する語彙数が、語源学習によって効率的に手に入れることが可能になると説く。
なお、清水建二先生は、これまで語源に関する本を数冊、出版されているが、今までは、幅広い概念を具体的な絵として抽出することが難しかったり、大量のイラスト作製ではコストがかかりすぎたため、本書のように、英単語のイラスト化は実現できなかったらしい。
ところが、今回は、すずきひろし氏やイラストレーターの本間昭文氏の協力により、長年の夢が実現できたようだ。
(清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]、「はじめに」、2頁~5頁)
語源学習法について~すずきひろし氏の解説
共著者のすずきひろし氏は、「語彙がケタ違いに増える「語源」学習法とは?」において、語源学習法について解説している。
語源学習法とは、英単語を構成する「パーツ(語源)」ごとに分けて考える方法である。
たとえば、「-tract」は、「引く」を意味する語根である。様々な接頭辞と接尾辞と組み合わさって意味をつくる。
語根「-tract(引く)」を共通に持つ単語としては、
・attraction(魅力←引きつけるもの) 接頭辞at-(~の方へ)、接尾辞 -ion
・contract(契約する←引き合う) 接頭辞con-(共に)
・extract(引き出す←外に引く) 接頭辞ex-(外に)
・distraction(気晴らし←引き離すもの) 接頭辞 dis-(離れて)、接尾辞 -ion
さて、語源のパーツには3種類ある。
①「接頭辞」~主に語の先頭に付いて方向や位置関係・時間関係、強調や否定などを表すもの
②「語根」~主に語の真ん中に来てその単語の意味の中核を表すもの
③「接尾辞」~単語の最後に付いて単語の品詞の機能や意味を付加するもの
たとえば、attractionの場合
①接頭辞 adの異型であるat ~方向や対象を表して「~の方へ」を意味する
※接頭辞 adはあとに続く音によって、ac, at, al, ar, apなどに変化する
②語根-tract~「引く」を意味する
③接尾辞 –ion~名詞をつくる働き
・大半の英単語は、このように語源によって成り立っている。
たとえば、日本語の漢字における、偏(へん)や旁(つくり)をイメージしてみるとわかりやすい。
英語の接頭辞、語根、接尾辞の知識があれば、語彙数をケタ違いに増やすことができると、すずきひろし氏も主張している。
そして、「語源で学ぶ3つの効果」として、次のように指摘している。
①同じルーツ(語源)の単語を芋づる式に増やせる。
②語源を知ると、単語の「正確な意味」が見えてくる。
③語源とイラストの「イメージ」で、記憶に強く定着する。
≪②について≫
辞書や単語に載っている「訳語」というのは、必ずしもその単語の「正確な意味」をつかむためには十分なものではないという。
たとえば、surveyとinspectは、どちらも「調べる」という訳語が載っているが、両者の「意味」は大きく異なる。
・surveyが「上から(sur)見る(vey)」、つまり「見渡す」「概観する」という意味である。
それに対して、
・inspectは「中から(in)見る(spect)」、つまり「(隅々まで)調べる」「検査する」という意味になる。
⇒このように語源で学ぶと、単なる「調べる」という訳語では、わからない意味が見えてくる。つまり、「似ている単語」の意味の違いを知ることができるという利点があると説く。
≪③について≫
本書では、1単語につき1つのイラストを付けているのが特徴であるという。
たとえば、語根 tract「引く」には、カナカナ語で馴染みのある「トラクタ」のイラストを用い、語根 press「押す」には「関取」のイラストを用いている。
このように、単なる「挿絵」ではなく、語源が持つ意味の直感的な理解を促せるよう工夫したそうだ。
イラストと語源のイメージ力によって、従来の暗記では得られない、より立体的な語彙のネットワークが脳内に構築されるとする。
(清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]、すずきひろし氏執筆、6頁~11頁)
接頭辞の解説の例
接頭辞については、各章の冒頭に、次のような説明を記している。
Chapter 1 ad-(~の方へ、~の方を)
接頭辞 adは英語の前置詞 toに相当するラテン語に由来し、「方向」や「対象」を表します。
また、obはある対象物に向かってぶつかるイメージをもつ接頭辞です。
obはc, f, g, pの前でoc, of, og, opになります。"
Chapter 2 con-, com-, co-(共に)
接頭辞の coは、英語のwith やtogetherに相当するラテン語に由来し、「共同の(に)」「相互の(に)」という意味を持つ。
また、これらは「完全に」の意味になることもある。
Chapter 3 de-(離れて、下に)
接頭辞の deはdi(s)と同様に「分離」「下に」「否定」などを表すラテン語に由来するが、
その場から消失するイメージから「完全に」という意味で使うこともある。
Chapter 4 sub-(下に)
接頭辞の subは、ラテン語で「下に」や「下から上に」の意味を持ち、後に続く文字によって、suc, suf, sug, sup, sus などに変化する。"
Chapter 5 sur-, super-(上に、超えて)
接頭辞の surやsuperは印欧祖語で「上の」や「上に」という意味のuperから派生した。
Chapter 6 ex-(外に)
接頭辞の exは、「外に」という意味のギリシャ語に由来する。
b, d, g, i, l, m, n, vの前ではxが取れる。
Chapter 7 pro-, pre-, for-(前に、前で)
接頭辞の preやproは「前に」を表すラテン語に由来し、for[e]や perに変化して様々な語を作る。
perは、「通して」「完全に」の意味を表す。
Chapter 8 re-(再び、元に、後ろに)
接頭辞のreは、ラテン語で「再び」「元に」「後ろに」「完全に」「対立」などの意味をもつ。
re-elect(再選する)のように、後に続く単語が eで始まる場合は、ハイフン(-)を入れる。
Chapter 9 in-, im-, en-(中に、上に)
"接頭辞の inは印欧祖語で「中に」という意味のenからラテン語に入ったもので、b, m, pで始まる語の前では imに、lの前では ilに、rの前では irになる。
元の形(en)がそのまま英語に入った語もたくさんあるが、b, m, pで始まる語の前ではemになる。
Chapter 10 ab-, dis-, se-(分離、否定、反対)
ラテン語で「離れて」の意味の abは、m, p, vの前では aに、また c, t の前ではabsに変化する。
dis は「離れて」の意味の他に「~しない」という否定の意味もあり、seにも「離れて」の意味がある。
Chapter 11 un-, im-, in-, a-(否定)
「~でない」という意味の inはラテン語に由来し、b, m, pで始まる語の前では imに変化し、
lで始まる語の前では ilに、rで始まる語の前では irに変化する。 aはギリシャ語源である。
Chapter 12 mono-, uni-, bi-, du-, tri-, multi-(数)
数を表す接頭辞には次のようなものがある。
mono/uni [1], bi/du[2], tri[3], multi [たくさん]。
接頭辞の意味については、中には捉えにくいものがある。
ただ、「語源メモ」などに、理解の手助けとなることが書いてある。
例えば、2章(2-6)cre(ase), cru=増える、成長するについて、
音楽用語で、次第に音の大きさを増す記号が「クレッシェンド(crescendo)」で、その逆が「デクレッシェンド(decrescendo)」。
接頭辞の deは、「下に」や「離れて」を表す。「三日月」を意味するcrescentは「増える」を意味する同じ語源から生まれた。
「月の満ち欠け」から「増減」をイメージするとよい。
(清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]、64頁)
また、7章(7-13)fect, fact=なす、作るについて、
「事実」を意味するfactは、「なされた事」が原義で、fectは同じ語源。
・factoryなら≪fact(作る)-ory(場所)≫から「工場」に、
・factorなら結果をもたらす「要因・要素」に、
・factionなら「派閥・党派」に、
・manufactureなら≪manu(手)-fact(作る)-ure(名詞に)≫から「製品・製造」の意味になる。
(清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]、168頁)
また、上記に引用したように、第3章には、接頭辞のde-ついて次のように説明していた。
Chapter 3 de-(離れて、下に)
接頭辞の deはdi(s)と同様に「分離」「下に」「否定」などを表すラテン語に由来するが、
その場から消失するイメージから「完全に」という意味で使うこともある。
deriveは(動)由来する、引き出す/de(離れて)-rive(水源)→水源から
そのderiveの「語源メモ」には、次のように記している。
「川」のriverは「川岸」が本来の意味で、ライバル(rival)は川の両岸に住む人が原義である。「到着する」のarriveも「岸に向かう」から生まれた。
そして、次のdepriveは、(動)奪う/de(離れて)-private(個人の) →個人から離す
そのdepriveの「語源メモ」には、次のように記している。
・「私用の」とか「個人の」という意味のprivateに「分離」を表す deがついてできた単語。
・「特権」のprivilegeは≪privi(個人の)-leg(法)≫に由来する。
(清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]、80頁)
英単語の記述形式
目次をみてもわかるように、本書の構成としては、各章ごとに接頭辞を取り上げ、各節で語根の変化をみていくという、スタイルで列挙している。
つまり、次のような記述形式である。
①チャプター1からチャプター12まで、各チャプターに1つまたは同種の「接頭辞」を取り上げ、その接頭辞の意味を解説している。
たとえば、チャプター6では、接頭辞「ex-」を取り上げている。そして代表語としてexplain
とexcelを挙げている。
②さらに、右ページでは、その接頭辞を共有する6語(example, exalt, exchange, exhale, exotic
explode)を示している。
③その次のページでは、再び同じ接頭語を持つ語(右図では、exceed)を挙げ、その語に使われている「語根」(右図ではceed)を解説している。
④その右のページでは、語根(ceed [ceed, cede, cess =行く])を共有する4語(succeed, proceed, concede, recession)を示している。
目次に示したように、重要な12のグループの接頭辞と、103の語根が各章と各節を構成している。つまり、本書を読み終えたときには、語源学習をするうえで、特に重要な12の接頭辞と103の語根が理解できるようになっている。
もう少し、具体的に第6章の接頭辞「ex-」の第1節を例に紹介しておく。
Chapter 6 ex-(外に)接頭辞の exは、「外に」という意味のギリシャ語に由来する。
b, d, g, i, l, m, n, vの前ではxが取れる。
explain (動)説明する ex(外に)+plain(明らかな)➡(疑問を排して)明白にする
excel (動)秀でる、勝る ex(外に)+cel(そびえる) ➡そびえたつ
example (名)例、見本 ex(外に)+ample(取る) ➡取り出されたもの
exalt (動)高める、上げる、ほめたたえる ex(外に)+alt(高い) ➡高く上げる
exchange (動)交換する、(名)交換 ex(外に)+change(換える) ➡手放して換える
exhale (動)吐き出す ex(外に)+hale(息) ➡息を出す
exotic (形)異国風の ex(外に)+tic(形容詞に) ➡外の
explode (動)爆発させる、爆発する ex(外に)+plode(拍手) ➡拍手して役者を追い出す
6-1 exceed / ceed, cede, cess =行く(動)超える、まさる
ex(外に)+ceed(行く) ➡外に出る
succeed (動)相続する、成功する su(c)(下に)+ceed(行く) ➡下に続く
proceed (動)進む、続ける pro(前に)+ceed(行く) ➡前に行く
concede (動)譲る、容認する con(共に)+cede(行く) ➡一緒に行く
recession (名)景気後退 re(後ろに)+cess(行く)+ion(名詞に)➡後退すること
上記のことがイラスト入りで例文や関連語とともに掲載されている。
(清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]、128頁~131頁)
参考となる例文
清水建二ほか『英単語の語源図鑑』(かんき出版、2018年[2021年版])には、英単語だけではなく、例文も載っているのがよい。
その中でも、参考となるべき例文も載せられているので、少し紹介しておこう。
なお、1-9という表記は第1章9節の例文であることを示す。
【参考となる例文】
1-9 concept(名)概念、観念
What's your concept of happiness?
あなたの幸福の概念とは何ですか
2-4 define(動)定義する、限定する
How do you define the word, "happiness"?
幸福という言葉をどう定義しますか
2-10 remind(動)思い出させる
That song always reminds me of our first date.
その歌を聴くといつも初めてのデートを思い出す
5-2 invigorate(動)元気づける、活性化する
The important thing is to invigorate the economy.
大事なのは経済を活性化することである
5-3 surpass / pass, pace =歩く、通る(動)まさる、しのぐ、越える
The beauty of the sunrise surpassed description.
日の出の美しさは言葉で表現できないほどだった
5-5 influence(名)影響(力)、(動)影響を及ぼす
He stressed the influence of television on children.
彼はテレビによる子供への影響を力説した
11-3 intangible / tact, tang =触れる(形)触れることができない、実体のない、無形の
(名)触れることができないもの、無形資産、(商売上の)信用"
The dance is designated as intangible cultural property.
その踊りは無形文化財に指定されている
12-2 versatile(形)多芸の、用途の広い
Few foods are as versatile as cheese.
チーズほど用途の広い食べ物はほとんどない
【今日的なテーマの例文】
7-13 infect(動)伝染させる、影響を与える
The virus has infected many people.
そのウイルスは多くの人に伝染している
8-9 relieve / lev(i) =軽い、持ち上げる(動)軽減する、取り除く、楽にさせる
I was relieved to hear that I don't have cancer.
ガンではないことを知って安心しました
【語学関係の例文】
2-3 gradual(形)徐々の
His English gradually improved.
彼の英語は徐々にうまくなっていった
2-6 concrete / cre(ase), cru =増える、成長する(形)具体的な、コンクリート製の、(名)コンクリート(動)(コンクリートで)固める"
It is easier to think in concrete terms rather than in the abstract.
"抽象的な言葉よりも具体的な言葉で考える方が楽である。
3-1 concise(形)簡潔な、簡明な、簡約版の
Make a concise summary of this report.
この報告書を簡潔に要約しなさい
5-1 review(名)再調査、批評、(動)再調査する、批評する
His book reviews are always strict.
彼の書評はいつも厳しい
9-5 impediment / ped =足 (名)障害、妨害、身体障害
The lack of funds is a major impediment to research.
資金不足が研究を大きく妨げている
【法学関係の例文】
1-13 defendant(名)被告(人)
The defendant pleaded not guilty.
被告人は無罪の申し立てをした
7-2 subject(形)服従している、~を受けやすい、(動)服従させる(名)学科、主題"
We are subject to the laws of our country.
私たちは国の法律に従わなければならない
7-10 verdict(名)評決、意見
The judge will hand down a verdict in January.
裁判官は1月に評決を言い渡すであろう
8-5enforce(動)施行する、強要する
The law must be strictly enforced.
その法律は厳格に施行されなければならない
10-1 abuse / use, uti =使う"(動)悪用する、乱用する、虐待する(名)悪用、乱用、虐待"
Nixon was accused of the abuse of presidential power.
ニクソンは大統領の権力の乱用で告発された
10-3 disappear / par, pear =見える (動)見えなくなる、消失する
The police are investigating the girl's disappearance.
警察はその少女の失踪を捜査している
12-6 comply(動)従う、応じる
You have to comply with the law.
法律を遵守しなければならない
【歴史の例文】
2-8 conquest / quest, quire =求める(名)征服、克服
The Norman Conquest took place in 1066.
ノルマン征服は1066年にあった
6-5 emancipate / man(i) =手(動)解放する、釈放する
Slaves were not emancipated until 1863 in the United States.
アメリカでは1863年まで奴隷は解放されなかった
In the 1960s, they carried out a campaign for the emancipation of women.
1960年代に女性解放運動が行われた
7-11 preside / side, sit, set, seat, ses, sed, sad =座る "(動)議長を務める、司会を務める、主宰する、演奏者を務める
George Washington was the first President of the U.S.A.
アメリカの初代大統領はジョージ・ワシントンだった
8-6 revolve / vol(ve) =回転する(動)回転する
The revolution marked the end of the French monarchy.
その革命はフランスの君主政治に終止符を打った
※英単語の理解において、最近では例文を付すことは、不可欠であろう。
各章各節において、工夫された例文が載っている。ただ、歴史関係に限って言えば、単なる歴史事実を述べた例文がほとんどで、もうひとひねりした例文を載せてほしかったように思う。
森一郎『試験に出る英単語』について
清水建二ほか『英単語の語源図鑑』(かんき出版、2018年[2021年版])と同じく、英単語の語源を扱った本としては、名著の誉れがある森一郎『試験に出る英単語―実証データで重大箇所ズバリ公開』(青春出版社、1975年)を合わせて、紹介してみたい。
その目次は次のようになっている。
森一郎『試験に出る英単語―実証データで重大箇所ズバリ公開』青春出版社
【目次】
Ⅰ ビクッとする―この重大箇所
Ⅱ 試験に出る最重要単語
名詞/形容詞/動詞
Ⅲ 試験に出る重要単語
名詞/形容詞/動詞
Ⅳ だれもがひっかかる罠
間違えやすい訳語/特殊な意味をもった単語
Ⅴ これだけは実行すべし
日本語になった英単語
Ⅵ スーパー記憶術
接頭語/語幹/接尾辞
森一郎氏の「まえがき」
「まえがき」によれば、森一郎氏は、明治時代の夏目漱石の嘆きに共感して、効果的・能率的な英語の学習法を思案したという。つまり、夏目漱石が、昔、松山の中学校で英語の教師をしていた頃、「生徒たちは、英語の勉強にあまりにも多くの時間を使いすぎる」と、嘆いたそうだ。
森氏は、現代の高校生の中にも、勉強時間の半分以上を英語に費やしている者が多く、しかも、そのわりには能率が上がっていないのが現状だとみて、むだのない英語征服法を模索したという。
この『試験に出る英単語』は、「英単語のための最も能率的でむだのない本」を目指したそうだ。執筆に当たっては、「最少の時間と最少のエネルギーで英単語を克服する本」を念頭に置いたとのことである。
そのために、次の4点に留意したと記す。
①従来の単語集のように、ただ漫然とアルファベット順に単語を羅列することの愚を避け、最も重要な単語から順番に配列すること。
②収録語数を最小限度にすること。
(本書の見出し語は、わずか1,800語あまり。従来の10,000語前後という世間の常識を破ったと自負している)
③一つの単語に一つの訳語ということを目指すこと。
④収録した単語について、できる限り語源その他の点から記憶法を記すこと。
⇒このために、第6章全部を、詳細な語源集に当てたとする。
ここで、特に④に注目したい。
つまり、収録単語は、記憶にとどめるために、できるだけ語源などの点から説明している点である。
そして、第6章、つまり「Ⅵ スーパー記憶術―これだけで絶対の語源集」と題して、接頭語/語幹/接尾辞をあわせて、合計444個を挙げている。
そのうち、接頭語として、70個を単語の具体例を示しつつ、明記している。
(森一郎『試験に出る英単語』青春出版社、1975年[1997年版]、237頁~260頁)
derive とdepriveという英単語について
derive (No.638) とdeprive(No.636)という英単語は、「Ⅱ 試験に出る最重要単語」の動詞編にでてくる。
①derive (No.638)について
(自)(他)引き出す、由来する[~from…]
※de(21)=from, rive=river 「川から水をひいてくる→引き出す」
と説明している。
de(21)については、「Ⅵ スーパー記憶術」の接頭語の21番目に次のようにある。
21) de
①down 下へ :decrease 減少する(crease=grow)
②away from 「分離」 :depart 出発する(part=別れる)
③「強意」 :declare 宣言する(clare=clear)
④「悪意」 :deceive あざむく(ceive=take)
⑤「否定・反対」 : destroy 破壊する(st=stand)"
(森一郎『試験に出る英単語』青春出版社、1975年[1997年版]、110頁、239頁)
①deprive(No.636)について
(他)奪う[~of…]
※de(21)=away, prive(259)=’切りはなす’「~から切りはなして取ってしまう」
・de(21)については、上記参照。
・prive(259)については、「Ⅵ スーパー記憶術」の語幹の259番目に次のようにある。
259) priv[e] 切りはなす、私的な:private 私的な、個人の
(森一郎『試験に出る英単語』青春出版社、1975年[1997年版]、110頁、251頁)
いろいろな接頭語
接頭語の4番、26番、43番、52番、53番には次のようにある。
4 ad, a, ab,ac,ag,al,an, ap,ar, as, at
①to, at, towards ~へ、~に「移動・方向・変化・完成・付加・開始」
②「強意」
<具体例>
①admit 入れる、許す(mit=put)、announce告げる、放送する(nounce=speak)
②appetite 食欲(pet=seek)
26 dis, di, dif
①「否定・反対・逆」
②away, apart 「分離」
③「強意」
<具体例>
①dishonest 不正直な、disappear 消える
②diffuse まき散らす、普及させる(fuse=pour注ぐ)
③disturb かき乱す(turb=混乱)
43 ob, oc, of, op
①against さからって
②towards ~の方へ
③over 上におおって
④near 近くに
⑤「強意」
<具体例>
①obstacle 障害物(sta=stand, cle=名・尾)
②offer 提供する、申し出る(fer=bring)
③obscure 暗い、無名の(scure=covered)
④obvious 明白な(vi<via=way, ous=形・尾)
⑤obtain 手に入れる(tain=hold)"
52 pro, pur, por
①forth, forward 前へ
②before, beforehand 前に
③according to ~に応じて
④「代理」
<具体例>
①progress 前進(gress=go)
②prophesy 予言する(phesy=speak)
③proportion 比率、釣合い(portion=share 分け前)
④pronoun 代名詞"
53 re
①back 後へ
②after, behind 後に
③again 再び
④against さからって
⑤「強意」
<具体例>
①repay 払い戻す
②remain 残る(main=stay)
③reappear 再び現れる
④resist 抵抗する(sist=stand)
⑤research 探究する"
(森一郎『試験に出る英単語』青春出版社、1975年[1997年版]、237頁~260頁)
≪参考文献≫
清水建二ほか『英単語の語源図鑑』かんき出版、2018年[2021年版]
森一郎『試験に出る英単語』青春出版社、1975年[1997年版]
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます