昨日のブログで紹介した
タワーホール船堀に行ったのは、
この芝居↓を観るため。
劇団フーダニットの公演。
「フーダニット(whodunit) 」とは、
「Who [has] done it?(誰がそれをやったか)」
の口語的な省略形。
簡単に言うと、「犯人は誰だ」。
誰が犯罪を犯したのかという謎に焦点を当てた、
複雑な筋書きのある推理小説を指す。
バリエーションに「ハウダニット(Howdunnit )」がある。
こちらは、犯人とそ犯罪行為が最初から明らかにされており、
捜査官が真実を突き止めようとする過程と
犯人がそれを阻止しようとする姿が描かれる。
倒叙ミステリと呼ばれる。
「刑事コロンボ」シリーズや「古畑任三郎」もこのジャンルに属する。
その「フーダニット」を名前にした劇団。
江戸川区を中心に活動するミステリ劇専門の劇団だという。 タワーホール船堀について調べている時に、
イベント紹介で見つけ、
興味深かったので、観に行った次第。
演目の「罠」は、
フランスのロベール・トマの出世作。
1960年パリで初演され、大評判に。
映画化は2度されており、
日本でも初演以来、
テアトル・エコー、PARCO プロデュース、
松竹、日本テレビ、俳優座プロデュースなど
多くの舞台が創られ、
2~3年に1度、
どこかで上演される人気作。
この劇団でも3度目の上演だという。
フランスのリゾート地、シャモニー付近の山荘、
窓からアルプスを望む一室が舞台。
新婚3ケ月のカップルがバカンスのため訪れていたが、
些細な夫婦喧嘩から妻のエリザベートが
家を飛び出し、
行方知れずになってしまう。
夫のダニエルは警察に捜査を依頼するが、
担当した警部は、
じきに帰って来ますよ、と取り合わない。
しばらくすると、
修道院で保護したと言って、
シスターが妻を連れて来る。
驚くダニエル。
妻とは似ても似つかわない女だ、
とダニエルは断言する。
警部立ち合いのもと、
その前に立ち寄ったベニス旅行のことを訊くと、
すらすらと答える。
ダニエルの身体的特徴についても知っている。
状況証拠はどれもこれも
現れた女が妻であると印象づけるものばかり。
しかし、ダニエルは強固に妻ではない、と主張する。
女がニセモノなのか、
それとも、ダニエルの頭がおかしいのか。
そのうち、二人の結婚に立ち会ったという浮浪者の絵描きが現れ、
奥さんはブロンド、つまり、今の妻とは
別人だったと証言する。
絵描きは銃で撃たれてしまう。
また、二人を診断したという医師が現れ、
今の妻という女に山荘で会ったという。
一体真実はどこにあるのか・・・
セットは一つ。
登場人物はわずか6人。
(もう一人、セリフのほとんどない役が1人。)
典型的な「ウェルメイドプレイ」。
俳優の都合か、
男性の役を女性が演じたりしていた。
(神父→シスター、浮浪者のじいさん→女性)
10周年記念公演では、
消えた妻、消えた夫の2ヴァージョンで上演という、
粋なこともやっている。
大変よくできた脚本で、
誰もが怪しく、誰もが真実を語っているとは思えない中、
新たな殺人が起こり、
事件の取り調べは二転三転、
緊張感漂うセリフの応酬が続く。
そして、ラスト5分、
衝撃的なクライマックスが・・・。
このラストの展開で、
あれ? と思った。
何かに似ている。
そうか、2022年の中国映画で、
昨年Netflixで配信された
秀作「妻消えて」だ。
あの映画でも、
失踪した妻とは別人が「あなたの妻よ」
と現れ、二転三転する展開。
そして、驚愕のラストが。
この「罠」が元ネタだったのか。
「罠」は日本で付けた題名で、
元のフランス語原題は、
「一人の男のための罠」が正式名称。
これでは、分かる人には分かってしまうか。
なお、劇団フーダニットの過去の演目を見ると、
ギルフォード「六人の令嬢」、
刑事コロンボのルーツ「殺人処方箋」、
アガサ・クリスティ「ホロー荘の殺人」「ナイル殺人事件」、
ロベール・トマ「8人の女」など多彩。
ミステリ専門劇団というのは、珍しく、
他に聞かないので、
追いかけてみるかもしれない。
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