変化を受け入れることと経緯を大切にすること。バランスとアンバランスの境界線。仕事と趣味と社会と個人。
あいつとおいらはジョージとレニー




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都心のホテルとしては広い部屋。恋人達に用意されたキングサイズの
ベッドとは反対側に位置する窓には、今も幸せ色の夜景が広がっていた。
しかし、彼らの目には恋人色のフィルターがかかっている。彼らには美しく
きらめいて見える夜景の中には、クリスマスイブの夜には不似合いな哀愁
や苦痛も存在するのだ。それは遠い世界の話ではない。

深く愛に溺れれていた二人。そんな彼らから僅か十メートル少々の距離。
恋人達が愛し合っていたその時、隣の部屋は恋愛とは対極の感情で満ち
溢れていた。言葉にするならそれは、憎悪や恐怖と呼ぶのだろうか。

それぞれが隔離された空間を占有する。ホテルというのはそういう場所だ。
故に、隣近所で何が起こっていようとも、それに関知しないことは責められ
ないだろう。同様に、たまたま隣接してしまったという偶然についても、それ
は誰の責任でもない。
邪悪に蝕まれた空気が、徐々に周囲に拡散していく。それを停める手立て
は、恋人達の与り知らぬことなのである。

僅かに隣の部屋から漏れ聞こえる声。聞き耳を立てていたとしてもそれが
テレビ等の騒音か、あるいは悲鳴のような窮地の知らせか、聞き分けるの
は難しかっただろう。増して、愛の語らいに夢中な恋人達にとって、そこは
彼らだけの世界なのである。周囲からのサインを受け止めることなど、有り
得ないのだ。

幸せな状況故にこれから起こる事象に気付かないとは、何たる巡り会わせ
か。しかし、その時点の幸せを満喫せず、常に周囲のアラームにアンテナ
を張り巡らせていたとしたなら、本当の幸せはいつになったら訪れるのか。
そんなジレンマを感じることもないまま、恋愛と邪悪の時間軸が、今ここで
交差しようとしていた。

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