天災というものは人間の尺度とは一致しない、したがって天災は非現実的なもの、やがて過ぎ去る悪夢だと考えられる。ところが、天災は必ずしも過ぎ去らないし、悪夢から悪夢へ、人間のほうが過ぎ去って行くことになり、それもヒューマニストたちがまず第一にということになるのは、彼らは自分で用心というものをしなかったからである。わが市民たちも人並み以上に不心得だったわけではなく、謙虚な心構えを忘れていたというだけのことであって、自分たちにとって、すべてはまだ可能であると考えていたわけであるが、それはつまり天災は起こりえないとみなすことであった。
新型コロナが始まった頃には、この本は手に入らなかった。感染症への恐怖の中で何かしらの手がかりになるものがほしいと、多くの人が考えたからだろう。
いつの時代にあっても、人間の行動や政府の対応というものは、同じような道をたどるものだなと思う。沢山の人が亡くなり都市が封鎖されたあとには経済がめちゃくちゃになることも、貧乏人はとことん苦しみ、裕福な人にはさほどのダメージをもたらさないことも。
ただ、死だけは平等だ。