日毎の糧

聖書全巻を朝ごとに1章づつ通読し、学び、黙想しそこから与えられた霊想録である。

聖霊行伝

2010-09-28 | Weblog
   使徒言行録第23章 
 
   11節「…『勇気を出せ。エルサレムでわたしのことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない』」(使徒言行録)

   最高法院に引き出されたパウロは身の潔白を訴えた(1節)。大祭司アナニヤが彼の口を打てと命じると、その人物が大祭司職にあることを知らず、不当な命令に反発し「白く塗った壁よ、神があなたをお打ちになる」(3節)と言った。白く塗った壁とは倒れかかった壁が漆喰で厚化粧し危険な状態を覆っていることを指す。彼は大祭司職を非難するつもりはないと弁明する(5節)。しかし彼は少しも怯まないで法廷に問題の火種を投じ、消すことの出来ない勢いに燃え広がり議会は混乱状態に陥る。この時大祭司の家系はすべてサドカイ派でエルサレムの政務はこの派の意のままになっていた。しかし多くのパリサイ派の人々が席を占める議会の開催では、そのようには行かなかった。パウロは議会の中にこの対立を見抜き、「わたしは生まれながらのファリサイ派です。死者が復活するという望みを抱いていることで、わたしは裁判にかけられている」と叫んだ(6節)。復活はパリサイ派とサドカイ派のもっとも悩ました教義上の相違点だったので、激しい論争と対立が起き、遂に最高法院は分裂した(7節)。
   この様な成り行きに千人隊長は会議では決着が出来ないと判り、パウロを力ずくで助け出し、兵営に連れ戻した。
   この時、主はパウロの宣教はエルサレムでなく、帝都ローマであることを再度示された(11節・19章21節cf)。どんな危険な状況に置かれようと、聖意の変らないことを信じさせたのである。彼に対するエルサレムでの危機は去っていなかった。それは(呪いで誓う)シカリ派と言われる40人の集団がパウロ暗殺計画を立てたことである。それは千人隊長にもう一度詳しく尋問するという口実で最高法院に連れて来る途中に、パウロを殺すというものであった(12~15節)。
   ところがパウロの姉妹の子が突然現れて、この暗殺計画をどうしてか聞き込んで兵営の中にいるパウロに伝える。この甥の存在は全く不明だが、ここでも危機一髪の中をかいくぐり難を逃れることになる。パウロは百人隊長からこの若者を千人隊長の元に連れていくように頼み、ユダヤ人たちが仕組んだ暗殺計画は実現しないことになる(16~22節)。
   この事件の結末が23~35節に出ている。彼はエルサレム在駐兵力の約半分に当たる歩兵、騎兵、軽装備兵ら470名の厳重な警護で100キロ先のカイサリヤにいる総督フェリクスの許に書簡を認(したた)めて移送された。書簡の差出人は千人隊長クラウデュウス・リシアだった。訴えられている者はローマの市民権を持つ人物だが、ユダヤの律法で死刑や投獄に相当する理由はない。しかし陰謀を企てているというので、ユダヤ教の指導者らが総督に告発するよう命じたものである(26~30節)。
   ここから、パウロの身柄は初代エルサレム教会から離れて、ローマ政府の統治下に置かれる。口語訳「使徒行伝」を「聖霊行伝」と呼ぶが、カイサリヤ幽閉生活(二年以上24章27節)とそれに続くローマ行きの背後に、聖霊の働きが強くあったことを示される(1章8節)。